百物語〜霊感少年の憂鬱な日常〜

荒瀬ヤヒロ

文字の大きさ
27 / 104
第一話「白い手」

27

しおりを挟む




 ***



 大透は前の席に掛かったままの鞄を眺めて首を傾げた。

 鞄の持ち主は部活に所属していないというのに、一向に教室に戻ってこない。掃除の班が同じ奴を捕まえて尋ねると、図書室の方へ歩いていくのを見たと教えてくれた。

(図書室?)

 大透は困惑の表情を浮かべて眉を下げた。
 本当に図書室にいるのか気になって探しに行った大透が目にしたのは積み重ねられた本に埋まりそうになりながら本の背表紙を睨んでいる稔の姿だった。

「何やってんの?」
「うるさい」

 稔は不思議そうに見つめてくる大透を無視して、本を並べる作業に集中しようとした。

「おっし、こっちの棚は終わり。…お?倉井の友達か?」

 奥の書棚から戻ってきた里舘がめざとく大透を見つけてニヤリと笑った。



 三人がかりで本を並べ終えた時には外は薄暗くなりかけていた。

「やー、助かったよ。一度ちゃんと五十音順に並べ直したいと思っててさ」

 里舘は力尽きてぐったりしている中学生二人に上機嫌で言った。

「他の図書委員は都合がつかなかったり、面倒くさいって嫌がられてさ。ははは」

(だからって図書委員でも何でもない下級生を使うなよ……っ)

 抗議する気力もないので稔は心の中で悪態をついた。

「順番に並べるより先に、図書カード廃止したらどうっすか?」

 大透がジト目で里舘を睨む。

「新しく入ってくる本はバーコード管理になってるよ。元からある本も少しずつ登録してるんだけど、この本の量だからな。なかなか終わらなくて。あ、良かったら手伝ってくれるか?」
「絶対嫌です……あー、もう帰ってもいいですか?」

 さすがの大透も疲れた顔をして言う。

「おう。サンキューな」

 里舘はそう言いながら稔の手に小さな紙片を握らせた。

「?」

 渡された紙片を見た稔は目を丸くした。そこには渡辺和子の名前と住所が記されていた。

「内緒だからな。悪いことすんなよ」

 稔が目線を上げると、里舘は悪戯っぽく笑って手を振った。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

異世界でカイゼン

soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)  この物語は、よくある「異世界転生」ものです。  ただ ・転生時にチート能力はもらえません ・魔物退治用アイテムももらえません ・そもそも魔物退治はしません ・農業もしません ・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます  そこで主人公はなにをするのか。  改善手法を使った問題解決です。  主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。  そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。 「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」 ということになります。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する

克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。

処理中です...