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第一話「白い手」
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大透は前の席に掛かったままの鞄を眺めて首を傾げた。
鞄の持ち主は部活に所属していないというのに、一向に教室に戻ってこない。掃除の班が同じ奴を捕まえて尋ねると、図書室の方へ歩いていくのを見たと教えてくれた。
(図書室?)
大透は困惑の表情を浮かべて眉を下げた。
本当に図書室にいるのか気になって探しに行った大透が目にしたのは積み重ねられた本に埋まりそうになりながら本の背表紙を睨んでいる稔の姿だった。
「何やってんの?」
「うるさい」
稔は不思議そうに見つめてくる大透を無視して、本を並べる作業に集中しようとした。
「おっし、こっちの棚は終わり。…お?倉井の友達か?」
奥の書棚から戻ってきた里舘がめざとく大透を見つけてニヤリと笑った。
三人がかりで本を並べ終えた時には外は薄暗くなりかけていた。
「やー、助かったよ。一度ちゃんと五十音順に並べ直したいと思っててさ」
里舘は力尽きてぐったりしている中学生二人に上機嫌で言った。
「他の図書委員は都合がつかなかったり、面倒くさいって嫌がられてさ。ははは」
(だからって図書委員でも何でもない下級生を使うなよ……っ)
抗議する気力もないので稔は心の中で悪態をついた。
「順番に並べるより先に、図書カード廃止したらどうっすか?」
大透がジト目で里舘を睨む。
「新しく入ってくる本はバーコード管理になってるよ。元からある本も少しずつ登録してるんだけど、この本の量だからな。なかなか終わらなくて。あ、良かったら手伝ってくれるか?」
「絶対嫌です……あー、もう帰ってもいいですか?」
さすがの大透も疲れた顔をして言う。
「おう。サンキューな」
里舘はそう言いながら稔の手に小さな紙片を握らせた。
「?」
渡された紙片を見た稔は目を丸くした。そこには渡辺和子の名前と住所が記されていた。
「内緒だからな。悪いことすんなよ」
稔が目線を上げると、里舘は悪戯っぽく笑って手を振った。
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