死に戻りの公爵令嬢は嫌われ者の下僕になりたい

荒瀬ヤヒロ

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第88話 彼女達の見た前回

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「だって、私はアダム様に好かれていませんもの」

 昨日の爆弾発言について尋ねると、イベリスはあっけらかんとそう言った。

「私達の婚約は、騎士団長と私のお父様が知人だった縁で結ばれたものです。年が同じだからちょうどいいという理由だけなんですよ。ですから、アダム様は最初から私に興味がなかったんです」

 昼休み。
 いつもはヒューと一緒に昼食をとるのだけれど、殿下達に彼を拉致されてしまった。
 私からヒューを奪うだなんて許されざる大罪よ。もちろん、私はすぐさまヒューを救出しようとした。けれど、「男同士の話があるっていうからちょっと行ってくるわ」とヒューが言うので、仕方がなく見送ることにしたのだ。心配だけど、今のヒューなら殿下になど負けないと信じているわ!

 ヒューがいないので、私はフアナ、イベリス、エリーナと一緒に昼休みを過ごすことにした。そのついでに、イベリスに昨日の発言の真意をうかがってみたのだが、彼女はそう遠くないうちに婚約がなくなることを疑っていない様子だった。
 アダムは自分に興味がないから、と言うイベリスだけど、私の目には昨日のアダムは婚約解消という言葉にショックを受けていたように見えた。

「それに、前回のアダム様はステラ様のことが好きだったのです」
「ふえ?」

 思いもよらないことを言われて、私は間抜けな声を漏らした。
 目を丸くする私の前で、フアナとエリーナは驚く様子もなく「うんうん」と頷いている。

「アダム様だけではありまえせんわ。バーナード様も」
「もちろん、コリン様もそうです」

 えええ? そんな馬鹿な……全然心当たりがないわよ。

「気のせいじゃあ……」
「いいえ。見ていればわかりますわ」
「彼らは殿下のおそばについていますから、必然的にステラ様とも近しくなり好意が芽生えたのでしょう」
「コリン様の場合は、お母様の洗脳によるところも大きいですけれど」

 三人の婚約者であった彼女達がそう断言するので、私はなんだかいたたまれなくなった。

「ステラ様に向けていた好意がルナマリアに向けられたからこそ、あんな事態になったのですわ」

 あんな事態……もう二度とあんなことを起こしてはいけないと思うけれど、もしも、ルナマリアが現れて前回と同じように殿下達が言いなりにされてしまったらどうすればいいのかしら。
 これまではルナマリアが魔女になるのを防ぐことばかり考えていたけれど、万一それが失敗してルナマリアが現れてしまった場合にそなえて、魔女の洗脳を解く方法もみつけておいた方がいいかもしれない。

 ああ、なんだかいろいろとやるべきことがあって頭がいっぱいいっぱいだわ。
 これ以上考えることが増えたら、ヒューのことを考える時間が減ってしまう。おのれルナマリアめ。ヒューを讃えるために費やすべき私の時間を奪おうとするなんて。

 ルナマリアへの怒りを新たにした私は、食堂の隅っこで殿下達がちらちらとこちらの様子をうかがっていることに気づいていなかった。



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