義妹がやらかして申し訳ありません!

荒瀬ヤヒロ

文字の大きさ
15 / 55

第15話 子爵令息ジム・テオジールの懇願

しおりを挟む





「どうしてなのよっ!!」

 外まで聞こえる大声でミリアが怒鳴っている。馬車から降りたエリオット達は目を見合わせ、男爵家の敷地に走り込んだ。
 玄関を叩こうとして、その寸前に向こう側から扉を開けられる。勢いよく走り出てきたミリアとぶつかって、エリオットはその体を抱き留めた。

「何事だ?」
「フレイン様っ……皆様も、どうしてここにっ」
「ミリア!待ってくれ、落ち着いて話をっ」

 家の中から、青年がミリアを追いかけてきた。玄関前に並ぶ王太子以下生徒会役員に気づき、青年ーージム・テオジールが面食らう。

「お、王太子殿下?何故?」

 わたわたと戸惑うジムを、ミリアが振り返って睨みつけた。

「落ち着ける訳ないでしょう!どうして止めてくれなかったのよっ!?」
「と、止めたに決まっているだろう!でも、スカーレットの意志が固くて……」

 ジムは悔しそうに顔を歪めた。ミリアは彼を無視して走り出ようとする。

「待て。何が起きているんだ?」
「放して!まだ間に合うわ!お姉様を止めなくちゃ!」

 止めようとしたエリオットの手を振り払って、ミリアは駆け出していった。

「いったい、何があったのだ?」

 アレンが取り残されたジムに尋ねた。
 王太子の質問にジムは顔を青くしてうなだれた。

 その時、家の奥から憔悴した様子の女性が現れた。疲れた顔をしているが、どことなく面立ちがミリアに似ている。男爵の後妻となったミリアの母親であろう。

「ジムくん、この方達は……」
「王太子殿下と、その婚約者様と、側近の方々です……」

 女性は目をいっぱいに見開いた後で、慌てて平伏した。

「王太子殿下とは知らず、ご無礼を……」
「夫人、顔を上げてくれ。それよりも、いったい何があったのだ?」

 アレンが尋ねるが、ミリアの母親は顔を上げないまま肩を震わせた。

「……私と、スカーレットの婚約が解消になったのです」

 力ない声で、ジムがそう言った。そして、ジムは男爵夫人に向かって頭を下げた。

「本当に、申し訳ない。スカーレットを守れず……」
「いいえ……ジムくんも、テオジール家の皆様も、スカーレットのためによくやってくれたわ。私が何も出来ないばかりに……」

 エリオットは家の中に踏み込み、二人の前に立った。

「スカーレット嬢に、何があったのだ?」

 嫌な予感に、エリオットの胸がじくじくと痛んだ。
 ジムと男爵夫人は目を見合わせ、逡巡するように俯いた。
 だが、しばしの後、ジムは何かを決意したように顔を上げ、エリオット達に向き合った。

「無礼を承知で、お願い申しあげます。―――スカーレットを、助けてください」




しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します

凛 伊緒
恋愛
伯爵令嬢へレア・セルティラス、15歳の彼女には1つ下の妹が出来た。その妹は義妹であり、伯爵家現当主たる父が養子にした元平民だったのだ。 自分は『ヒロイン』だと言い出し、王族や有力者などに近付く義妹。さらにはへレアが尊敬している公爵令嬢メリーア・シェルラートを『悪役令嬢』と呼ぶ始末。 このままではメリーアが義妹に陥れられると知ったへレアは、計画の全てを阻止していく── ─義妹が異なる世界からの転生者だと知った、元から『乙女ゲーム』の世界にいる人物側の物語─

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

【完結】前提が間違っています

蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった 【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた 【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた 彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語 ※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。 ご注意ください 読んでくださって誠に有難うございます。

悪役令嬢発溺愛幼女着

みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」  わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。  響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。  わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。  冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。  どうして。  誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

何も決めなかった王国は、静かに席を失う』

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、 表には立たず、裏で国を支えてきた公爵令嬢ネフェリア。 だが―― 彼女が追い出されたのは、嫉妬でも陰謀でもなかった。 ただ一つ、「決める役割」を、国が彼女一人に押しつけていたからだ。 婚約破棄の後、ネフェリアを失った王国は変わろうとする。 制度を整え、会議を重ね、慎重に、正しく―― けれどその“正しさ”は、何一つ決断を生まなかった。 一方、帝国は違った。 完璧ではなくとも、期限内に返事をする。 責任を分け、判断を止めない。 その差は、やがて「呼ばれない会議」「残らない席」「知らされない決定」となって現れる。 王国は滅びない。 だが、何も決めない国は、静かに舞台の外へ追いやられていく。 ――そして迎える、最後の選択。 これは、 剣も魔法も振るわない“静かなざまぁ”。 何も決めなかった過去に、国そのものが向き合う物語。

処理中です...