タンブルウィード

まさみ

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十二話

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「さてっと」
勢い喧嘩を売ってから頭を働かせるのがスワローの習性だ。
愚連隊の総数は7・8人、各々鉄パイプや口の尖った空き瓶など自前の武器をひっさげている。否、ピジョンの持論を採用するなら凶器か。武器は自分を守る為のものであって無闇やたらと殺傷するのが目的ではないとアイツは言っていた。
めでたいオツム。
平和を愛する心優しい小鳩ちゃんベイビーピジョンが囀りそうなこった。
それでいくと愚連隊の連中が手に持っているのは、人を威嚇し制圧するための暴力に特化した凶器に違いない。
鉄パイプには錆びた血が付着し、度重なる殴打の痕跡を物語るかのように所々歪んでいる。
空き瓶の割れ口は危なく尖り、斜に路地にさしこむ日光を鋭角に照り返す。刺されたら痛そうだ。
素早く流し見て現状を把握、優劣を計算する。
相手は複数、多勢に無勢、おまけにこちらは手ぶらときた。
よくぞここまで悪条件を揃えたものだ。普通に考えたら勝算は限りなく低い。
仲間の面前で大いに恥をかかされたボディピアスが大儀そうに起き上がる。
ガキの蹴りなど全然平気だとアピールし、余裕ぶって服の埃を払いスワローと相対する。
「テメェの兄貴?ああ、あのなよっちいカマ野郎か。似てねーが種違いか」
「どうだっていいだろンなこたァ。俺が聞いてンのはテメェらがアイツをボコった理由だ」
訊くだけ無駄な気がしたが、様式美として一応訊く。
案の定ボディピアスは顎をのけぞらせ、強面のピアスを揺らし大笑する。
「テメェ馬鹿か?学がねーのは兄弟でおそろいか。最初に言ったろうが、人の街に淫売の匂いつけんなって。それが理由さ」
リーダーに媚び諂って愚連隊の連中も爆笑、路地裏がドッと湧く。
侮蔑と嘲弄、優越感に充ちた笑いの渦の中で孤立するスワローは、蚤の交尾でも見るようなしらけきった顔で続ける。
「女を所有格で語るヤツにろくなのはいねー、街を所有格で語るとなると輪をかけて痛々しい。ボス猿気取りでマウント争いか?じゃあなんだ、この街入るのにテメェ様の許可いんのかよ初耳だな。駐車違反のきっぷ切りにきたら使用済みパンツで漉した泥水くれェ淹れてやったのに」
「俺ァ寛大だからな、お願いですから入れてくださいって這い蹲って足なめりゃあ見逃してやったぜ?テメェが右足、兄貴が左足でどうだ?ついでにお袋が股間のブツしゃぶってくれりゃ万々歳だ」
「悪ィがこちとらグルメなんだ、テメェの水虫患った足なめる位なら発情した犬のペニスおしゃぶりするほうがまだマシだ」
「チッ、よく回る口だぜ」
「で?なんで兄貴に手ェ出したの」
スワローの声が一段低まる。
いまだ声変わり前の澄んだソプラノ、唄うように愉快な節回し、躁的な饒舌に情緒の不安定さが透ける。
口元に薄く笑みを刷いているが目は笑っていない。完全に据わっている。
粗暴な少女か白皙の少年か、どちらともつかぬ秀麗な面差しに一点墨を落とすように毒の滲んだ笑みを広げて、右手を自らのタンクトップに潜らせる。
「アレをいたぶるのそんなに悦かった?殴る蹴るべそかかせて絶頂した?服に隠れて見えねートコばかり、チクられンのびびったのかよ」

コイツらが余計な気を回さなくてもあのアホは絶対言わない。
街の不良に絡まれて虐げられたなんて自分からは絶対言いださない。

ちっぽけなプライドにしがみついて。
家族に心配かけまいとして。

そういうやつなのだ、アイツは。
だからかわりに怒ってやるしかない。

「泣かれて勃った?一発でイッた?わかってんだよテメェらのド腐れ本性は、ドSのド変態野郎ども。どうせ穴がありゃ野郎でも女でもいいんだろ、そのくせ殴らなきゃちっともイけねー変態ときた。ボコりながらズボンの下びんびんにおっ勃ててたんだろーが、ツラと同じ位節操ねェ下半身だな」
スワローがうっそりと眸を細め、淫蕩な笑みに唇を蕩かせる。
タンクトップの下で右手が淫猥に蠢くつど匂いたつ嗜虐誘う色気に、リーダーとの対峙を見守る愚連隊が知らず生唾を呑む。
殺気に乗じた威圧と誘惑に似せた愛撫に、無意識に半歩あとじさりかけるのを虚勢で制し、ボディピアスが大胆に両手を広げる。
「それもこれも俺の街に踏み入るのが悪ィ。ありゃ何日前か、テメェの兄貴が紙袋抱えてトロトロ歩いてやがったから、ちょいとばかし暇潰しさせてもらったのさ。なんでもおつかい引き受けて小遣い稼ぎしてるみてーじゃねえか?」
そう、あの時別行動を申し出たのはピジョンだ。
偶然知り合っていつも親切にしてくれる街の人におつかいを頼まれたからお前は先に帰っていいよと、スワローと別れて反対の方角へ向かったのだ。
結果はごらんのとおり、アイツが善行を働くと必ず裏目にでる。
さすが貧乏くじを引くために生まれてきた男。ツキのなさに感心すらしてしまう。
ボディピアスが痙攣する喉の奥で馬鹿にしきった笑いをたてる。
「よそ者がしっぽふって何が楽しい?媚びンのが上手いのはお袋譲りか。紙袋にりんごが一個覗いてたからおねだりしたら断られちまった。頼まれものだからだめだと。生意気な口叩くもんでカチンときて、お仕置きしてやったのさ」
「あーはいそうねなるほどねそーゆーことね。大体わかった、丁寧なご解説サンキュ」
自分に遅れること数時間、あの日帰ってきたピジョンの様子は明らかにおかしかった。
下腹を抱えてのろくさぎくしゃくと動きにくそうにしていた。スワローはそれを知りながら放置した。

うっかり聞きそびれて?
違う。
ピジョンを気遣って?
それも違う。
生まれてこのかた11年、スワローがピジョンを気遣った事など一度もない。
ならば何故何も聞かず何もせず、服を汚して泥と埃に塗れた兄をほったらかしていたのかというと……

「……だからやだったんだよな」
ぼそりと呟く。
その声はまた一段階落ち込んで、平板な抑揚が胸の内で荒れ狂う殺意を均す。
赤錆びた瞳が自らの奥へ向かうよう透徹し、路地に詰めかけた一人一人に無感動に照準を絞る。
うっかり覗き込んだ人間の魂まで吸い込み、虚無にひきずりこむ銃口の瞳。
ニトログリセリンの危なっかしさとダイヤモンドの儚さが奇跡的な均衡で釣り合う、限りなく酷薄で剣呑な悪魔の笑顔。
「ホントのこと知ったらさ。皆殺したくなっちまうだろ?」
スワローは我慢が苦手だ。
大の苦手だ。
小さい頃から我が強く暴れれば大抵のわがままは罷り通った。
故に忍耐力とか自制心とかいった常識的な理性が殆ど育たたず、激情の赴くまま無軌道に突っ走る癖が治らない。
真実を知ったらろくに準備も整えず全員を殺しに行く確信があった。
スリングショットの練習に励むピジョンをドラム缶に跨って観察していたのは、ほかにやることがなかったからじゃない。
服から覗く手足や素肌を注視し、そこに暴行の痕跡をさがしていたのだ。
それでもわからなかった。見分けるのは至難だった。ピジョンは慎重で用心深い性格だ。
街の不良に暴行された事実が同居する家族にバレてはなるまいと、この乾燥した砂漠のど真ん中の立地で、ぶかぶかのモッズコートを羽織り極力露出を抑えていた。
確かめるには脱がすのがてっとりばやい。
直接脱げと命じても拒まれる、ならば度を越した悪ふざけを装って脱がせばいい。ピジョンは押しに弱いからスワローに迫られたら断れない。
ピジョンに悪戯を仕掛けたのは、彼の身に起きた出来事がスワローの憶測にとどまらず、妄想でもないと裏付ける口実だった。
飄々と軽薄な口調であっさり言ってのけるスワローに愚連隊が色めきだつ。
「テメェ正気か」
「正気だけど」
「本気で俺達全員を殺るってぬかしたのか?自信過剰も病気だな」
ボディピアスの顔が引き攣り、憎悪を滾らせた頬が不規則に戦慄く。
愚連隊にもどよめきの波紋が広がる。見た目は十代に入りたて、年端もいかない愛らしい少年にしか見えない獲物が、視界に入る全員の殲滅を宣言したのだ。正気の持ち主なら悪い冗談にしか聞こえないだろう。
この場でただ一人スワローだけが本気だった。
「チャンスをくれてやる」
ボディピアスがせせら笑い、忠実に傅く手下から先端を攻撃的に尖らせた酒瓶を借り受ける。
刃物と鈍器を兼ねる凶器と化した酒瓶を振り上げて、スワローへとつきつける。
「お袋と兄貴のぶんまで、ここにいる全員をしゃぶるってんなら見逃してやってもいいぜ」
「へぇ?」
スワローが挑発的に片眉をはねあげる。面白いジョークを聞いた、とでもいう風な反応。
調子に乗ったボディピアスは大上段に芝居がかった身振りで、風切る唸りを上げ酒瓶をぶん回す。
「淫売の血は争えねェ。テメェにも糞ビッチの血が流れてンならしゃぶるくれぇどうってことねーよな、どうせもう使用済みなんだろ?後ろも使用済みか?そのツラでヴァージンなんてぬかすなよ、さんざん愉しんできたんだろ」
「口マンコでかわいがってくれよ」
「ケツにぶちこんでやる」
「どうしたんだ[[rb:子猫ちゃん > ロリータ]]、お袋仕込みのテクで昇天させてくれ」
「お高く取り澄ましたそのツラに俺のをぶっかけてぐっちゃぐちゃにしてやンぜ、したらちったァ可愛げがでるだろーさ」
耳汚い罵倒と嘲笑、リーダーの提案に劣情を催したヤりたい盛りの少年たちがスワローの全身に舐めるような視線を這わす。頭のてっぺんから整った目鼻立ちに柔い頬、まだ喉仏も膨らまず容易にへし折れそうな細首、少女のように華奢な手足と薄い胸板、ズボンの股間……
全身をくまなく絡めとり穢していく粘っこい視線を平然と受け止めて、スワローは正面にスッと片手をさしのべる。
その手をさし招くよう波打たせ、小指から順に折り曲げていく。
「お行儀よく列になれよ早漏ども。順番でな」
予想外の発言に虚を衝かれ、一瞬絶句したリーダー含む愚連隊に向き合い、そばのゴミ箱に泰然自若と片足をのっける。
路地に屯う敵を睥睨する眼光は爛々とぎらついて、生気を増した幼い美貌が研ぎ澄まされる。
「ヤりたいんだろ?俺様の超絶テクでドロドロのぐっちゃぐちゃにされたいんだろ。望み通りテメェの身から出た汁に塗れさせてやっからかかってこい、一人三秒でイかせてやる」
薬指と中指と人さし指、三本指を立てて突き出す。
「「ぶっ殺してやる!!」」
それを皮切りに太い怒号を発して襲いかかる愚連隊、スワローの挑発が見事ハマったのだ。単純な連中は扱いやすい。
奇声を放って攻めこむ少年たちの多くはスワローより年嵩で体格に恵まれている、おまけに打ち所が悪ければ即死の凶器を持参している。鉄パイプが宙を薙ぎ軌道が狂って壁に激突、火花を散らす。割れた酒瓶が髪の毛を掠め頬の薄皮を切り裂く。
「腱を断って上と下の口に同時にぶちこんでやる!」
何人かが懐から折り畳み式ナイフを取り出す。スワローは頭を低め、軽快に跳びすさって斬撃と刺突を躱す。所詮素人だ、ナイフ捌きを見極めるのは造作ない。
以前、母の客の賞金稼ぎにナイフの扱いを実践してもらったことがある。それと比べたらお話にならない、大振りで隙だらけのお粗末な攻撃だ。ただ突っこんでくるだけじゃ芸がない。刺されたら死ぬ、なら刺されなければいい。刺される前に避ければいい。

見切って、跳んで。
翻り、躱す。
なんでこんな簡単な事ができないんだ?
目ェ閉じていても楽勝だろ常套。

「ほらよ」
スワローには恐怖心が欠落している。生まれてこのかた恐怖は彼にとってもっとも縁遠い感情だった。ナイフの切っ先が眼球を抉らんと迫っても、足を垂直に蹴り上げてそれを弾く冷静さと類稀なる豪胆さが備わっている。

お前の心臓はダイヤモンドでできてるんだね、とピジョンは呆れ顔で言った。
世界で一番固い石、光り輝く金剛石。
アイツもたまにはいいこと言うじゃねえか。

「さあ、固くて太いの突っこんでぐちゃぐちゃにかきまわしてくれよ」
人数では完全に利がある、それが裏目にでた。数人が殺到すれば満杯になる狭い路地に、体格のいい青少年が十人近くいれば、身動きのたび衝突し不可抗力で相討ちが発生する。
対してスワローは小回りが利く、度胸が据わっている。
路地には物が多く立て込んでいる。
空き瓶を詰めた木箱に鉄製のダストボックス、壁を複雑に這い回る配管や雨樋。
その全てが跳躍の足がかり、発止と掴み、振り子の法則で蹴りの威力を増幅する手がかりになる。
ゴミ箱を蹴倒して中身の悪臭芬々たる腐敗物をぶちまける、顔面からゴミを浴びせかけられた連中がたまらずえずいて転倒する、ドミノ倒しにひっくり返った少年らを飛び越えナイフをふるう新手を雨樋をひっ掴み上に逃れることで敏捷にいなす。
壁の窪みや歪みを足場にしたアクロバティックな身ごなしで翻弄し、死角をとられてがら空きの鳩尾や脇腹、無防備に曝された喉首に拳と蹴りを入れていく。威力の乏しさはそれを上回るスピード及び急所への一点狙いでカバーし、尾すら掴ませず滑空する燕の瞬発力を発揮する。
「何だコイツ、化け物かよ」
「めちゃくちゃ強ぇ……」
馬鹿が、見た目だけで侮るからだ。ああ、めちゃくちゃ気持ちがいい。今にも絶頂しちまいそう、少し勃っちまってる。柔らかく固い肉をぶつ感触はやみつきになる。
泡を吹いて慌てふためく負け犬どもに痛快さが吹き抜け、留飲をさげる。
「そんなに兄貴のケツ横取りされたのが悔しいか。ヤツのヴァージンはいただいたぜ」
「!―ッ、」
うなじの産毛が逆立つほどの激烈な怒りが総身を支配する。つい振り向いて、その瞬間に失策を悟る。いつのまにか背後に接近していたボディピアスが、力任せに腕を振り抜き、逆光に塗り潰された酒瓶を高々かざす。
凄まじい衝撃に次ぐ激痛が襲う。
「!?っあがぁっ、」
目が眩み視界がブレる。前頭部を酒瓶が殴打、鋭利にきらめくガラス片が砕け散る。眼前の敵と戦うのに夢中になって背後への注意が疎かになっていた。続いて、兄に言及されて完全に冷静さが消し飛んだ。視界が一気に灼熱するような強烈な憎悪に壮絶な激痛がとってかわり、生温かくぬるつく血が額から鼻梁へ、顎先へと伝い落ちる。
額が切れて大量の血があふれだす。体が傾ぎ、倒れていく。
ゴミ箱を巻き添えにひっくり返し、大の字に寝転がる。
マジかよ。かっこ悪ィ。ちくしょう最悪。こんなクソ雑魚にまんまと背後をとられるなんて人生最大の汚点だ。
「ぐふっ……」
「い~い眺めだなロリータ。さんざ手こずらせやがって、ジェニーといいはねっかえりにゃまいっちまう」
咄嗟に起き上がろうとして、力強く腹を踏まれる。靴裏で胃袋の上を圧迫、嘔吐の衝動がこみ上げて激しくえずく。ボディピアスが顎をしゃくり、息を荒げた子分どもが両側からスワローをおさえこむ。
右腕と左腕をキツく掴んで地べたに縫いとめられ、巨漢に腹を踏まれて。さすがのスワローも三人がかりで拘束されちゃ手も足も出ない。おまけに出血は続いてる、頭の血が止まらず意識が朦朧とする。ああ、いいの入っちまった。久しぶりにまともにもらっちまった。これはちょっと、結構やべー展開じゃねえか?
「……太くて、固ェの……ハッ、……テメェのに自信ねーから、代わりに酒瓶ぶんまわして……可哀想なヤツ。短小の悲哀だな」
「減らず口は健在だな。目から頭にブチこんで脳味噌ぐちゃぐちゃにかきまぜてやろうか」
「あっ、が、あぐぅ」
ボディピアスが低く脅し、スワローの前髪を掴んで乱暴に揺すり立てる。手掴みの振動が傷に響き、新鮮な痛みがこじ開けられ思わず苦鳴がもれる。
唾液と胃液を垂れ流し悶絶するスワローの二の腕に尖った爪が食い込み、地べたに張り倒されたはずみに、残飯が頬に押し潰されて腐汁をまく。
ゴミに埋もれて仰ぐ空は遠く、安っぽいソープオペラの書割のように色褪せている。
汚い靴の先端が、路地裏に寝転ぶスワローのタンクトップの裾をじれったく捲り上げていく。
腹に靴跡を付け、へその窪みをつつき、さらに裾を巻き上げて薄い胸板をさらし、ギャラリーと本人双方に見せつけて煽るよう暴き立てた乳首を容赦なく踏みにじる。
「―ッ、あっ!!」
固い靴裏をゴリッと敏感な先端に抉りこまれ、スワローの体が意志とは関係なく跳ねる。
「いい反応だな、汁まみれでびくついてら」
「靴で乳首シコられてよがるなんざどっちが変態だよ、痛くされンのが好きってか、ガキのくせにド淫乱が」
「物足りなさそうだな、股ぐらも踏んでやれ」
少年たちが口笛を吹き卑猥な野次をとばす。極限まで目を剥き、背筋を突っ張って悶えるスワローの反応をたっぷりと視姦し、ボディピアスは優越感に酔ってほくそえむ。
「ビッチは敏感だな、乳首踏まれただけで絶頂しちまうなんて。膜破れた処女みてーにカワイイ悲鳴上げて……汁気たっぷりのエロエロのイキ顔、マゾっけあるんじゃねーか」
「……と、……」
「あァん?」
「アイツと、一緒に、すんな……」
スワローの乳首は上品な色をしていた。生娘のような薄ピンクで、形も小さく殆ど目立たない。正直、コイツに暴かれるまで存在を忘れていた部位だった。ピジョンを一方的に責め抜く時とは違い、自分で触った経験など皆無。付いている意味が全くわからない。それをぐりぐり踏みにじられ、淫らな嘲弄を投げかけられる恥辱で頭が沸騰してしまいそうだ。
数人がかりで押さえこまれ、地べたに這い蹲らされてなお衰えを知らぬばかりか危険なぎらつきを増す眼光に、おもむろに靴をずらし今度は頬を踏みつける。
「さっき言ったよなァ、全員を相手してくれるって」
体重が移動しつつある靴裏で容赦なく顔を踏まれ、残飯にまみれ、悪臭放つ腐汁が滲み広がる地面にめりこまされる。ボディピアスがひりつく唇を舐め、剥かれた裸のあちらこちらに痛々しい靴跡をこびりつかせたスワローを見下す。
「三秒でイかせてやるぜ」
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