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On the roof
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ある晴れた日、アパートの屋上でスワローが言った。
「それ捨てろ」
「なんてこというんだ」
ロープには洗い立てでぽたぽた雫が滴るモッズコートが干してあった。隣に並んでるのはスワロー愛用のツバメのエンブレム入りスタジャン。
今日は絶好の洗濯日和だから、大量にためこんだ洗濯物を地下のランドリールームで洗ってきたのだった。
長い付き合いのコートを弁護する俺の傍らで、スワローが苦々しげに煙草をふかす。
「何年着てんだよ、いい加減卒業しろよ」
「今でも十分着れる」
「くさくてボロくてだせえじゃん」
「断じて臭くない、破けたら繕ってるしまだまだ現役でイケるって。ていうか洗濯物に匂いが伝染るから煙草喫うな」
煙草を没収すれば案の定むくれる。やれやれ、いい加減大人になってほしい。
靴裏で入念に踏み消したあと、吸い殻をズボンのポケットに回収して告げる。
「お前こそ、着てるもの全部ヤニ臭いぞ。女の子が嫌がるんじゃないか」
「俺が纏えばヤニも香水」
「ハイハイ。人のお気に入りのコートにケチ付ける前に、スタジャン買い換えたらどうだ」
「はあ?なんで」
「ツバメのエンブレムが子どもっぽい、いてっ!」
「訂正しな。スタジャンはクールだろ」
「やだね。モッズコートを貶すのが悪い」
「教会の救貧箱からかっぱらってきた垢まみれのお古じゃねえか」
「病める時も健やかなる時も共にあったコートをゴミに出せるか、コイツにはひとりぼっちで震えてる時あっためてもらったんだ。俺の歴史の生き証人、聖骸布だよ」
「人じゃねえだろ。しかも聖骸布って、さりげなくテメェを聖人と並べんな」
「リトル・ピジョン・バード亡きあとはマーダーオークションに掛けられてプレミア付くかも、今のうちにとくと拝んどけよ」
あらぬ妄想を膨らませてうっとりモッズコートを眺める。スワローはちょっと引いていた。
「ガキん頃はずるずる引きずって歩いてたよな。裾が汚れ放題」
「サイズが合ってなかったから。今はぴったり」
腰に手をあて威張る。スワローはあきれ顔だ。
「いっそハトのアップリケでも縫い付ければ?」
「そこまでおそろいにするのは恥ずかしい」
「あ゛ン?」
失言だった。へそを曲げたスワローが横目で睨んでくるのに咳払いし、話題を変える。
「小さい頃よく包んでやったの覚えてる?お前を膝の間に入れてすっぽり」
「やったな托卵ごっこ」
「せめて抱卵っていえ、誤解を招く。じゃあコートで洟を噛んでやったのは?」
「覚えてねえ」
「都合が悪いことはすーぐ忘れる。どこへ行くにもギュッと握って離さなかったろ、ライナスの毛布みたいに」
「誰?」
「知らないか、古い漫画の……孤児院に本があったんだ。賢い犬が主人公で」
「忘れちまったなあ。俺が覚えてるのはお前がモッズコート噛みながらオナってた事だけ」
「あー!あー!」
「涎まみれのドエロい顔でシコりまくって」
「あ゛ーーーー!」
屋上の方々に散り、洗濯物を干していた主婦たちが一斉に振り向く。
余計な注目を浴びたせいで顔が火照り、スワローの口を塞いだままぺこぺこ頭を下げる。
「虚言癖の弟の世迷言です気にしないでください」
「事実じゃん。このコートがかぴかぴなのはお前の涙と洟汁とその他色んな体液が染み付いたせい」
「ちゃんと洗ってるから清潔だ。お前のスタジャンこそヤニ臭くて丈が合ってない」
「駄バトにゃそうみえるのか。股下の長さの差だな」
「短足だって言いたいのかよ」
「テメェのコート踏ん付けてコケるのはウケ狙いのコメディアンと駄バト位のもん。ベタすぎて寒くね?」
「そんなにいうなら交換しようよ!」
しまった、うっかり勢いで言ってしまった。スワローが怪訝な顔で見返してくる。
「俺と?お前の?スタジャンとコートを?」
「チェンジ。トレード。実際着てみれば俺のコートがどんなに優れてるかよくわかるさ」
それは嘘じゃないが、内心スワローが颯爽と着こなすスタジャンに憧れてもいた。交換は良い口実だ。スワローが上を向いて考える素振りをする。黒いタンクトップから突き出た肩と二の腕はよく鍛えられ、均整とれた筋肉が主張していた。
ややあってもったいぶったため息を吐き、だるそうに首を回し始める。
「……はあ。駄バトご執心のクソださコートに袖通すのは気が進まねえが」
やった。合意をもらえて舞い上がり、洗濯物が乾くのを待って洗濯バサミを取り外す。スタジャンからは洗剤のいい香りがした。両手に持ったまま顔を埋めて嗅げば、スワローがすごく嫌そうな顔をする。
「きもっ」
「や、ヤニの匂いが残ってないか確かめてたんだよ!」
「匂いフェチかよドン引きだわ」
「違うって言ってんだろ」
「知ってるかピジョン、シーツを干した後のお天道様の匂いってダニの死骸の匂いなんだぜ」
「一生知りたくなかったよ」
口の減らない弟にぶすくれて、いそいそスタジャンに袖を通す。スワローの方もモッズコートを羽織っていた。
着心地は悪くないが、赤と白がベースカラーのスタジャンはカジュアルすぎてなんだか落ち着かない。もっさりしたモッズコートに慣れてるせいだろうか。
肩を抜いて着崩すスワローのスタイルをまねしてみたら、ずるりと肘までたれさがってきた。
「あわわ」
「汚すな馬鹿」
スワローに釘をさされて反省。いい年してはしゃいでしまった。
ふと右胸に縫われたツバメが目にとまり、そうっと人さし指でなぞってみる。
「こっちは懐っこくて可愛いな」
「はあ?」
「なんでもない」
赤いくちばしを突付いてにへらと笑い、右胸でツバメを飼うのも悪くないなと思い直す。コイツは大人しくて噛まないし。
スワローはモッズコートを羽織ってターンし、スニーカーのまま軽快なタップを踏みだす。
「尾羽バサバサする駄バトのまね。布面積が多い分嵩張んな」
「調子のってると滑って転ぶぞ」
「足の長さが違うから妬いてんの?みっともねー」
憎たらしく笑って裾を翻す。俊敏で軽捷な身ごなしに束の間見とれ、一緒に踊りたくて体がうずうずしだす。
「あんまり端っこいくな、落っこちるぞ」
「ンなヘマするか」
畜生、反則だ。どうしてコイツは何着ても似合うんだ?顔とスタイルに恵まれた弟を呪い、まねしてステップを踏んでみた。自分で自分の脚を蹴っ飛ばし撃沈。
「~~~~~~~ッ」
「ほらまたちょっと目ェ離すと自爆する」
「どうせ俺はドジでノロマでグズな駄バトさお前みたいにスタジャンをかっこよく着こなせないよ、右胸のツバメも泣いてるよ!」
涙目で脛を抱く兄を憐れみと蔑みを込めて見下ろし、スワローが無造作に片手をさしだす。
「Stand up」
「同情はいらない」
弟の手は借りず自分で立ち上がる。スワローが鼻を鳴らして屋上の縁を歩き出す。危ないって言ってるのに……風を受けてバタバタ鳴るコートに寿命が縮む。
「ホント危ないからおりろってスワロー、風を受ける面積が違うんだぞ」
「宙返り見る?」
「やめろって!」
スタジャンが肘までずり落ちるに任せて走り回り、どこまでも無謀で大胆な弟をあたふた制す。
俺に口うるさく言われてうんざりしたのか、あっけなく縁から降り立ってコートを脱ぐ。
「やっぱ重すぎ。足に纏わり付いて邪魔くせえ」
「お気に召さなかったか」
普通に受け取ろうとしたら頭にひっ被された。次いで胸元を掴んで引き寄せられる。
「兄貴の匂いがしねえからハグされてる感じが足りねえ」
スワローの顔が目の前に来た。不意打ちに胸が高鳴る。
「臭いのは嫌なんだろ」
「そっちこそ、ヤニの匂いがしなくちゃ物足りねえって顔してるぜ」
そうだ、このスタジャンからは嗅ぎなれたスワローの匂いがしない。コイツの汗の匂いが洗剤の香りに取って代わられたのが物足りず、本物を求めて心が騒ぐ。
再び上着を交換し、俺はモッズコート、スワローはスタジャンに袖を通す。
「なにやらせても鈍くせえ駄バトにゃクソださコートがお似合いだな」
「どこでも宙返りしたがる尻軽なツバメさんにはスタジャンがよく似合うよ」
憎まれ口とのろけ話の区別も付かないなんて、俺たちらしいといえば俺たちらしいオチかな。
「それ捨てろ」
「なんてこというんだ」
ロープには洗い立てでぽたぽた雫が滴るモッズコートが干してあった。隣に並んでるのはスワロー愛用のツバメのエンブレム入りスタジャン。
今日は絶好の洗濯日和だから、大量にためこんだ洗濯物を地下のランドリールームで洗ってきたのだった。
長い付き合いのコートを弁護する俺の傍らで、スワローが苦々しげに煙草をふかす。
「何年着てんだよ、いい加減卒業しろよ」
「今でも十分着れる」
「くさくてボロくてだせえじゃん」
「断じて臭くない、破けたら繕ってるしまだまだ現役でイケるって。ていうか洗濯物に匂いが伝染るから煙草喫うな」
煙草を没収すれば案の定むくれる。やれやれ、いい加減大人になってほしい。
靴裏で入念に踏み消したあと、吸い殻をズボンのポケットに回収して告げる。
「お前こそ、着てるもの全部ヤニ臭いぞ。女の子が嫌がるんじゃないか」
「俺が纏えばヤニも香水」
「ハイハイ。人のお気に入りのコートにケチ付ける前に、スタジャン買い換えたらどうだ」
「はあ?なんで」
「ツバメのエンブレムが子どもっぽい、いてっ!」
「訂正しな。スタジャンはクールだろ」
「やだね。モッズコートを貶すのが悪い」
「教会の救貧箱からかっぱらってきた垢まみれのお古じゃねえか」
「病める時も健やかなる時も共にあったコートをゴミに出せるか、コイツにはひとりぼっちで震えてる時あっためてもらったんだ。俺の歴史の生き証人、聖骸布だよ」
「人じゃねえだろ。しかも聖骸布って、さりげなくテメェを聖人と並べんな」
「リトル・ピジョン・バード亡きあとはマーダーオークションに掛けられてプレミア付くかも、今のうちにとくと拝んどけよ」
あらぬ妄想を膨らませてうっとりモッズコートを眺める。スワローはちょっと引いていた。
「ガキん頃はずるずる引きずって歩いてたよな。裾が汚れ放題」
「サイズが合ってなかったから。今はぴったり」
腰に手をあて威張る。スワローはあきれ顔だ。
「いっそハトのアップリケでも縫い付ければ?」
「そこまでおそろいにするのは恥ずかしい」
「あ゛ン?」
失言だった。へそを曲げたスワローが横目で睨んでくるのに咳払いし、話題を変える。
「小さい頃よく包んでやったの覚えてる?お前を膝の間に入れてすっぽり」
「やったな托卵ごっこ」
「せめて抱卵っていえ、誤解を招く。じゃあコートで洟を噛んでやったのは?」
「覚えてねえ」
「都合が悪いことはすーぐ忘れる。どこへ行くにもギュッと握って離さなかったろ、ライナスの毛布みたいに」
「誰?」
「知らないか、古い漫画の……孤児院に本があったんだ。賢い犬が主人公で」
「忘れちまったなあ。俺が覚えてるのはお前がモッズコート噛みながらオナってた事だけ」
「あー!あー!」
「涎まみれのドエロい顔でシコりまくって」
「あ゛ーーーー!」
屋上の方々に散り、洗濯物を干していた主婦たちが一斉に振り向く。
余計な注目を浴びたせいで顔が火照り、スワローの口を塞いだままぺこぺこ頭を下げる。
「虚言癖の弟の世迷言です気にしないでください」
「事実じゃん。このコートがかぴかぴなのはお前の涙と洟汁とその他色んな体液が染み付いたせい」
「ちゃんと洗ってるから清潔だ。お前のスタジャンこそヤニ臭くて丈が合ってない」
「駄バトにゃそうみえるのか。股下の長さの差だな」
「短足だって言いたいのかよ」
「テメェのコート踏ん付けてコケるのはウケ狙いのコメディアンと駄バト位のもん。ベタすぎて寒くね?」
「そんなにいうなら交換しようよ!」
しまった、うっかり勢いで言ってしまった。スワローが怪訝な顔で見返してくる。
「俺と?お前の?スタジャンとコートを?」
「チェンジ。トレード。実際着てみれば俺のコートがどんなに優れてるかよくわかるさ」
それは嘘じゃないが、内心スワローが颯爽と着こなすスタジャンに憧れてもいた。交換は良い口実だ。スワローが上を向いて考える素振りをする。黒いタンクトップから突き出た肩と二の腕はよく鍛えられ、均整とれた筋肉が主張していた。
ややあってもったいぶったため息を吐き、だるそうに首を回し始める。
「……はあ。駄バトご執心のクソださコートに袖通すのは気が進まねえが」
やった。合意をもらえて舞い上がり、洗濯物が乾くのを待って洗濯バサミを取り外す。スタジャンからは洗剤のいい香りがした。両手に持ったまま顔を埋めて嗅げば、スワローがすごく嫌そうな顔をする。
「きもっ」
「や、ヤニの匂いが残ってないか確かめてたんだよ!」
「匂いフェチかよドン引きだわ」
「違うって言ってんだろ」
「知ってるかピジョン、シーツを干した後のお天道様の匂いってダニの死骸の匂いなんだぜ」
「一生知りたくなかったよ」
口の減らない弟にぶすくれて、いそいそスタジャンに袖を通す。スワローの方もモッズコートを羽織っていた。
着心地は悪くないが、赤と白がベースカラーのスタジャンはカジュアルすぎてなんだか落ち着かない。もっさりしたモッズコートに慣れてるせいだろうか。
肩を抜いて着崩すスワローのスタイルをまねしてみたら、ずるりと肘までたれさがってきた。
「あわわ」
「汚すな馬鹿」
スワローに釘をさされて反省。いい年してはしゃいでしまった。
ふと右胸に縫われたツバメが目にとまり、そうっと人さし指でなぞってみる。
「こっちは懐っこくて可愛いな」
「はあ?」
「なんでもない」
赤いくちばしを突付いてにへらと笑い、右胸でツバメを飼うのも悪くないなと思い直す。コイツは大人しくて噛まないし。
スワローはモッズコートを羽織ってターンし、スニーカーのまま軽快なタップを踏みだす。
「尾羽バサバサする駄バトのまね。布面積が多い分嵩張んな」
「調子のってると滑って転ぶぞ」
「足の長さが違うから妬いてんの?みっともねー」
憎たらしく笑って裾を翻す。俊敏で軽捷な身ごなしに束の間見とれ、一緒に踊りたくて体がうずうずしだす。
「あんまり端っこいくな、落っこちるぞ」
「ンなヘマするか」
畜生、反則だ。どうしてコイツは何着ても似合うんだ?顔とスタイルに恵まれた弟を呪い、まねしてステップを踏んでみた。自分で自分の脚を蹴っ飛ばし撃沈。
「~~~~~~~ッ」
「ほらまたちょっと目ェ離すと自爆する」
「どうせ俺はドジでノロマでグズな駄バトさお前みたいにスタジャンをかっこよく着こなせないよ、右胸のツバメも泣いてるよ!」
涙目で脛を抱く兄を憐れみと蔑みを込めて見下ろし、スワローが無造作に片手をさしだす。
「Stand up」
「同情はいらない」
弟の手は借りず自分で立ち上がる。スワローが鼻を鳴らして屋上の縁を歩き出す。危ないって言ってるのに……風を受けてバタバタ鳴るコートに寿命が縮む。
「ホント危ないからおりろってスワロー、風を受ける面積が違うんだぞ」
「宙返り見る?」
「やめろって!」
スタジャンが肘までずり落ちるに任せて走り回り、どこまでも無謀で大胆な弟をあたふた制す。
俺に口うるさく言われてうんざりしたのか、あっけなく縁から降り立ってコートを脱ぐ。
「やっぱ重すぎ。足に纏わり付いて邪魔くせえ」
「お気に召さなかったか」
普通に受け取ろうとしたら頭にひっ被された。次いで胸元を掴んで引き寄せられる。
「兄貴の匂いがしねえからハグされてる感じが足りねえ」
スワローの顔が目の前に来た。不意打ちに胸が高鳴る。
「臭いのは嫌なんだろ」
「そっちこそ、ヤニの匂いがしなくちゃ物足りねえって顔してるぜ」
そうだ、このスタジャンからは嗅ぎなれたスワローの匂いがしない。コイツの汗の匂いが洗剤の香りに取って代わられたのが物足りず、本物を求めて心が騒ぐ。
再び上着を交換し、俺はモッズコート、スワローはスタジャンに袖を通す。
「なにやらせても鈍くせえ駄バトにゃクソださコートがお似合いだな」
「どこでも宙返りしたがる尻軽なツバメさんにはスタジャンがよく似合うよ」
憎まれ口とのろけ話の区別も付かないなんて、俺たちらしいといえば俺たちらしいオチかな。
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