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girls and talk:アンデッドエンドで再会したスイート&サシャとピジョンたちの話

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「ピジョンちゃん!ピジョンちゃんだ!うわぁああああぁああああぁひさしぶりー何年ぶりかな、ひいふうみいよん……えーっとたくさん?会いたかったよーなにしてたの全然遊びにきてくれないんだもんスイートさびしかったああ、うわぁあすっごい背がのびたね!体付きもなんかたくましくなった!」
「どうどう落ち着いてスイート……ひっひっふー」
「ひっひっふー」
「吸って吐いて吐かずにゆっくり伸びを……」
「ぷはー」
「落ち着いた?」
「うん!」
「俺も会えて嬉しいよ、また君の顔が見れるなんて……夢みたいだ」
「道はわかった?」
「地図書いてもらった。ここにいるって知ってたらもっと早く来たのに……」
「スイートもまだ二か月ちょいだからだいじょーぶ、一歩お店の外でると迷子になるよ!」
「自信満々に言い切った……この地図あげるよ」
「わーい生ピジョンちゃんのプレゼント、大事に壁に貼っとくね!」
「いや、持ち歩いてほしいんだけど……俺のことすぐにわかった?」
「もちろん!……って言いたいとこだけど最初ちょっとだけ戸惑った!ピジョンちゃんすっごい大人っぽくなっててパッと見わかんなかった!」
「そ、そんなに変わったかな?自分じゃぴんとこないや」
「わっ、眼鏡デビューしたの?おもしろい!」
「お世辞でもかっこいいって言ってほしいかな?」
「ね、ね、スイートもかけていい?絶対壊さないすぐ返すから!」
「いいよ。はいどうぞ」
「やったー!どう、似合うピジョンちゃんとおそろいだよー眼鏡かけたら頭よく見えるかな、七の段のかけ算も余裕の貫禄?」
「可愛いよ……今のはお世辞じゃなくて本音」
「なんで眼鏡かけはじめたの、目悪くしちゃった?ピジョンちゃん本や漫画好きだったもんね、スイートにも面白いご本たくさん教えてくれたし。ピジョンちゃんに教わって読めるようになった単語いーっぱいあるよ、学校行ってないのに読み書きできてすごいなーって感動したっけ」
「大袈裟だよ、母さんの馴染みにちょくちょく教えてもらっただけさ」
「スワローちゃんのお勉強も見てあげたの?」
「アイツは堪え性ないからすぐほっぽりだして遊びにでかけたよ、単語の綴りも間違いだらけで赤入れるの大変。ちょっと本気出せば楽勝なのに……下品なスラングだけは妙に物覚えよかった。実戦かな」
「ピジョンちゃんはお兄さんで先生だ!」
「眼鏡に深い意味はない……単なるイメチェンと、あとは……」
「あ!鉄砲!それも長いヤツ!」
「スナイパーライフルだよ、賞金稼ぎの免許をとってから使い始めたんだ。狙撃手は目が命だから用心しなきゃね、大事な時にゴミが入って外したら目もあてられない……あ、いまの洒落で」
「スイートもさわっていい?さわっていい?」
「いいけど……くれぐれも引き金には手をふれずに、そーっとね」
「そーっと……わあ、黒くて太くて固い!冷たくてゴツゴツしてる!こんなおっきいので打ち込まれたら死んじゃうねきっと、どぴゅんと天国に行っちゃうよ」
「言い方がとんでもなく卑猥に聞こえるけど気のせいなのか天然なのか」
「なあに?」
「ただの邪推、心が汚れてると他愛ない発言が下ネタに自動置換されるんだ。スイートも変わったね、びっくりしたよ」
「え、うそうそどこ変わったなんで変わった?!」
「背が伸びて腰が括れて色々ボリューミーになったっていうか……セクシー?コケティッシュ?髪も伸びて前よりもっとその、キレイになった」
「スイートもお姉さんになったでしょ!立派な大人のオンナ!えへん」
「そうだね」
「いえーいセクシーポーズでウィンクばちこん!悩殺された?」
「なんてかっこしてるんだ……わかったスイートがエロかわいいのは十分わかったから小尻突き出すのはやめて目のやり場に困る」
「エッチな子は嫌い?」
「はしたないのはどうかと思う」
「……わかった、スイートがまたぱかーんしたらめっしてね」
「俺は石ころだって暗示をかけて全力で目を背ける」
「惚れ直した?」
「えぶっ……」
「えぶ?」
「エイブラハム・リンカーン……ごめんなんでもないこっちの話、舌噛んだだけ。それにしてもこんなに近くにいたなんて驚いた……偶然ってあるんだね」
「ちょっと前にサシャちゃんと一緒に異動になったんだー、こっちに支店を出すからふたり抱き合わせで行ってこーいされて。サシャちゃんもスイートもこー見えて売れっ子なんだよ、太い客筋掴んで新規開拓にはばっちこいでしょ?ピジョンちゃんも中央にいたんだね、ぱったり来なくなっちゃって寂しかった」
「言ったろ、トーレラーハウスで旅してるって。物心付いた頃から一箇所に落ち着いたためしがないんだ、アザレアタウンも三か月程度で去る予定だった……キミにも伝えたろ?」
「スイートばかじゃないもん、耳ダンボにしてちゃんと聞いてたもん!でも寂しいものは寂しかったの、ピジョンちゃんがいなくなっちゃうなんてやだったもん!せっかくお別れの挨拶きてくれたのに、スイートなんも言えなくて……なんか言おうとすると涙がでちゃって、ちゃんとさよならできなかった……」
「気持ちだけで十分。俺もちょっぴり泣いちゃったからおあいこさ」
「でも、」
「車が遠ざかって見えなくなるまでずっと手を振ってたろ?わざわざ通りに出てきて……ちゃんと振り返したの、見えた?」
「うん……ピジョンちゃんずっとバイバイしてくれたね。顔を見てさよなら言えなかったの、ずっと心残りだったんだあ」
「宛先も聞かずじまいで手紙を出せなかった。でも忘れたことなんて一度もない、スイートは俺の大事な友達だよ」
「一緒にピンボールしたりいろんなことして遊んだもん!」
「火も煙も立たない健全な遊びをね」
「ピジョンちゃんオセロ強かった」
「モノポリーはスイートの方が」
「サシャちゃんカタン最強」
「ポーカーはスワローの一人勝ち。絶対イカサマだ」
「スワローちゃんは幸運の女神さまの若いツバメさんだもん」
「賭け事の勘所は冴えてるんだ、ここ一番の度胸がいい。目先のことに熱くなりがちな悪癖は直してほしいけど」
「ピジョンちゃんものめりこんでたじゃん、カードを見詰めるぎらぎらした顔そっくりだったよ」
「みんなで撮った写真、今も大事にとってある」
「お店の前に並んでハイチーズしたの覚えてるよ、ピジョンちゃんのストロボカメラでパシャリって。スイートにもくれたね、大事に持ってる」
「スワローはそっぽ向いてたけど」
「ピジョンちゃんは目ぇ瞑ってた」
「ひとのこと言えないね、はは」
「毎日おはようとおやすみのキスしてるんだ」
「本体もされてないのに」
「ピジョンちゃんはスイートのはじめてできた男の子の友達」
「俺も……スイートがはじめて、じゃない、二番目の女の子の友達だよ」
「いちばんめは?」
「カクタスタウンのジェニーって子、雑貨屋で店番してる赤毛で可愛くて弟がふたり……いや、この話はいいか」
「やだー面白そうもっと聞かせて!」
「おいおいね。今日はスイートとサシャにお礼を言いに来たんだ」
「お礼?」
「この店の総支配人に推薦してくれたろ?信用できる腕利きだって……おかげでいい収入が入った」
「あー……あー、思い出した!そうだよスイートとサシャちゃんがピジョンちゃんとスワローちゃんをおススメしたんだよ、総支配人さん信用できる人に頼みたいって悩んでたから、スワローちゃんはともかくピジョンちゃんならはなまるだって教えたげたの!」
「俺達が賞金稼ぎになったの知ってたんだ……」
「だってピジョンちゃんいつも話してたじゃん、絶対賞金稼ぎになるんだーって。お店に来る人もしょっちゅう噂してる」
「え?」
「また野良ツバメにしてやられたーとか、懸賞金山分けしようって言ってたのに持ち逃げされたーとか。あんちくしょう舐めたまねしくさりやがってヤキ入れてやるーとか。最初はなんのことだかさっぱりだったけど、お客さんが読んでた雑誌にスワローちゃんがでっかく載ってたの!」
「バウチ?」
「そ、そ、バウチ。もーすっごい有名人なんだね、これスイートのお友達だよーって自慢したら微妙な顔してたっけ」
「え、え、初耳。何の記事?」
「えーとね、今年注目のルーキーランキングベストテン……ちがうや、抱かれたい賞金稼ぎランキング?賞金首よりたちが悪い、敵に回したくない賞金稼ぎワーストテンだったかも……ピジョンちゃんとスワローちゃんも仲良くがんばってるんだあってニコニコだった!」
「それ、俺いた……?」
「ピジョンちゃんは……覚えてない。でもスワローちゃんがいるならピジョンちゃんも絶対一緒でしょ、スイートの勘は当たるの!あ、もちろんスワローちゃんも昔と変わってたけどこっちは一発でスワローちゃんだってわかったよ!」
「離れて暮らしてるとは思わなかった?」
「ピジョンちゃんがスワローちゃんほっとくわけないもん!むかしっから最高のコンビだったし」
「そっか」
「兄貴とおそろいだって見せてくれたドッグタグしてたし、キレイな顔は変わってないもん。てゆかもっともっとかっこよくなってた!」
「ふーん……スイートもスワローがいいんだね」
「どしたのピジョンちゃん元気ないない?笑った方がかわいいよ!」
「母さんとおなじこと言うんだね」
「えへへーほらスイートの言うとおり、ピジョンちゃんホントはハンサムさんなんだからもっと笑って!」
「こ、こう……?」
「引き攣ってるよ!」
「アイツ、スイートにドッグタグ見せたんだ。なにか言ってた?」
「ケチくさいプレゼントだって」
「……だよね。タダ同然で安上がりだし、プレゼントとも言えないチンケな代物だ」
「肌身離さず身に付けてるよ?」
「外すのが面倒かそこにあるのが当たり前すぎて存在を忘れてるんだろ」
「ピジョンちゃんがいないとこじゃピジョンちゃんの話ばっかりだったよ?スワローちゃんピジョンちゃん大好きなんだ」
「はは……冗談キツい」
「総支配人さんの大事なものは取り返してあげれた?」
「ああ……上手くいったよ、感謝してた。スイートはこの何年かどうしてた?その……俺と別れてからさ」
「ピジョンちゃんがアザレアタウンにバイバイしてからいろんなことがあったよ。スイートね、早く一人前になりたくて頑張ったんだ。サシャちゃんにもいっぱい助けてもらった。辛い時や大変な時はぐぬぬ~したけど、今頃ピジョンちゃんたちも頑張ってるんだーっておもったらネバーギブアップやりぬけたよ!はじめての時も思ったよりか痛くなかったし……」
「はじめての時……」
「もうヴァージンじゃないの!えっへん」
「やさしいひとだった?」
「とっても!終わったらいい子だねって飴ちゃんくれたよ」
「よかった……」
「スイートもあっちこっちとばされたんだー、なんだっけ、研修期間?どこのお店がいいか相性をためしてたの。ミルクタンクヘブンの総支配人さん……ピジョンちゃんも会ったでしょ?もともとお店で働いてから、女の子の気持ちがよくわかるんだ。接客業ならドサ回りでケンブン広めるの大事だよね!」
「ドサ回りっていうと一気に泥臭いイメージに……いや、むずかしい言葉知ってるね」
「地方ごとに特色あって客層や好まれるプレイちがうんだよ、牧場が近くにあると牧童さんが常連で乳しぼりが上手。でもみんな母乳より牛乳派だって主張で、わざわざ哺乳瓶に入れてあっためた牛乳飲ませてほしいって」
「知りたくなかった……」
「カルーアミルクをリクエストされたこともあるよ。配分むずかしいんだ、シャカシャカ振るのは楽しいけど振りすぎてもあわあわになっちゃうから加減が大事。女の子が作ったカクテル哺乳瓶でちゅぱちゅぱするのも乙なもんだって」
「哺乳瓶はシェイカーじゃない」
「極めると秒速30回いけるんだって、プロの技だよ」
「腱鞘炎にならない?」
「理想の配合はカルーア7ミルク3」
「性癖の世界が奥深すぎてめまいがする」
「ピジョンちゃんは?熟れ頃チェリー?」
「滅相もない、さすがに捨てた!」
「ホント!!?いいなぁ、うらやましい」
「え?」
「ピジョンちゃん言ってたじゃん、本当に好きな子としかやりたくないって。セックスは心がなきゃだめだって。ピジョンちゃんが童貞捧げたのは本当に好きになった子なんでしょ、その子になら自分の大事なモノ全部あげられるって運命感じちゃったんだよね?いいなあ、そこまで愛してもらえるなんて。ね、ね、どこのだれさん?かわいい?美人さん?3サイズは?今度紹介してよ、ピジョンちゃんのこと絶対幸せにしてねってお願いしなきゃ!」
「えっと……えっと……」
「ケッコンを前提にお突き合いしたんでしょ?」
「違うよいやアレは事故みたいなもので不可抗力、申し訳ないけどけっしてスイートが想像してるようなアレじゃないというか、酒を飲んだ勢いで俺もろくに覚えてなくて!こういっちゃ相手に失礼だけど、寝てるあいだに終わってたっていうか」
「酔った勢いなの……?」
「誤解しないでくれ、酔っ払ってたのは認めるけど無理矢理とか力ずくとかそれはそれだけは誓ってない、断じてない!劉って友達に引っ張っていかれたバーでかわいい女の子に声かけられて……しばらく話してるうちにくらっときて、目が覚めたらベッドで全裸だった」
「ピジョンちゃんお尻の羽根まで毟られたの?」
「財布は無事だったから泥棒でも美人局でもない」
「その人とはどうなったの」
「身支度整えてるあいだに消えてた」
「…………」
「沈黙が痛い。可哀想な目もやめてくれ。ってどこ行くのスイート」
「元気がでるおまじない」
「なッ……!?」
「さ、飲んで!」
「胸を寄せて上げて真ん中にずぼっと哺乳瓶さした笑顔で言われても……!」
「母乳は健康にいいんだよ?」
「粉ミルクじゃなくて!?」
「ミルクタンクヘヴンの女の子は未婚で処女でも全員母乳がでるんだよ!そう言えってオーナーさんが言ってた!でもでもすんごいがんばっても出ない時は赤ちゃんの粉ミルクやスーパーで売ってる液体ミルクで代用も可なの、太っ腹でしょ。他にも針で穴開けたコンドーム胸に仕込んでミルク滲ませる裏ワザあるよ」
「リアリティー追求してる!?」
「お店の倉庫にはいざって時に備えてミルクの在庫がどっさり……あ、これ部外秘の企業機密だからね!しーっだよ!」
「期せずして店の裏側覗いちゃったな……ていうか飲まないし。目に毒だから下げて、ただでさえ防御力の儚い透け透けベビードールの谷間を強調しなくていいから」
「うちにくる男の人はみんな喜ぶよ?」
「ミルクタンクヘヴンなんて名前の風俗に来るムッツリどもはそうだろうさ」
「甘くておいしいのに」
「知ってる」
「なんで?」
「前に飲んだから……あ」
「やっぱり好きなんじゃん。遠慮せずぐいっと一気に」
「若気の至りだ忘れてくれ」
「スイートのことママだと思って、おもいっきり甘えていいんだよ?」
「母さんはそこまで巨乳じゃない。いいとこFだ」
「スイートのおっぱい……成長したんだけどな……ピジョンちゃんとお別れしてから毎日牛乳飲んでお風呂で揉み揉みしたんだよ?お風呂上がりにすぐ鏡の前で寄せて上げて回して胸を大きくする体操もして、次にピジョンちゃんと会った時いっぱいギューしてあげよって」
「想像しちゃうから具体例上げないで……!」
「ピジョンちゃんは母乳の味にうるさいからニセモノじゃだめなの?至高の母乳を求めてちゃぶ台返し改め哺乳瓶ポーイしちゃうの?」
「そんなキャッチ&リリース精神はない。俺はスイートとしゃべってるだけで満足だよ」
「ホント!?」
「哺乳瓶はチェンジ」
「ちぇー」
「舌打ちを対訳しない」
「ピジョンちゃんはスイートとバイバイしてからどうしてたの?お話聞かせてちょうだい」
「あのあと……いろいろあって、俺とスワローはトレーラーハウスをでた。スワローが14、俺が16。ふたりで稼いだ虎の子の貯金をもって、一路中央をめざしたんだ。幸い中央には知り合いがいた。キマイライーターって知ってる?」
「聞いたことある、一万人の悪者を倒したすっごい強いヤギさんだよね!奥さんとラブラブなんだよ!雑誌に書いてあった」
「そう、その愛妻家の伝説的賞金稼ぎとある事件がきっかけで出会って……一度関わりを持ったよしみだって、アンデッドエンドにきたばかりで右も左もわからない俺達を世話してくれたんだ。彼を介して良い師とも出会えた」
「先生?」
「賞金稼ぎとしてやってく上でエモノを見定める必要があった。自分に相性ぴったりの武器をさがして、ある程度使いものになるまで鍛え上げるんだ。キマイライーターが引き合わせてくれた師はとても人格者で、俺にはもったいない出来た先生だよ。普段は教会で神父として働いてるんだけど、どんな武器を扱わせても一流なんだ。もともとは第一線で活躍する賞金稼ぎだって噂だけど……引退の理由は聞きそびれたな……」
「すっごい強くてかっこいい神父さんなんだ!スイートも会いたい!」
「スイートもきっと好きになるよ、すごいいい人なんだ。俺の……憧れ」
「ママは許してくれた?」
「うん、最後には笑って送り出してくれた。俺達のこと応援してるって……」
「イケてるママさん!」
「うん。自慢の母さんだ」
「ピジョンちゃんのママさんのパンケーキ懐かしいなあ……前におみやげにくれたよね」
「自炊で多少は料理の腕上がったから俺でよければ焼くよ」
「やったーピジョンちゃんの手作りパンケーキゲットだぜ!」
「ご期待に添えればいいけど……」
「ママさん元気?ひとりぽっちで寂しがってない?」
「たまに連絡とるけど元気そうだ、今は西の方をながしてるって。決まった人はいないみたいで独身生活エンジョイしてる。男を手玉にとるのが生き甲斐だから……母さんに惚れた人には同情する」
「アンデッドエンドにきてからは?住むとことかどうしたの?」
「賞金稼ぎになるには免許が必要なんだ、まずそれを取るのに苦労したよ。試験に合格しなきゃ認められない。晴れて免許ゲットしてデビューを飾ったけど、物事そうとんとん拍子にいかない。スワローは相変わらず無茶苦茶だし、俺はアイツの尻拭いにかかりきりだし……どうにかこうにかメシを食べれるようになったのはここ一年。その前は皿洗いとか掃除人とかバイトを掛け持ちして稼いだよ」
「大変だぁ……」
「今住んでるアパートは手狭だけど居心地がいい。物騒な界隈にあるせいか家賃が破格で……まあ決まるまでは紆余曲折あったんだけど、大家が持ち込む仕事は格安で優先的に受けるって条件で審査をパスしたんだ。迷子の犬猫さがしに浮気調査、ぼったくりバーから金を取り返すとか地味なのだけどね」
「スワローちゃんと住んでるの?仲良しさんだねえ」
「喧嘩するほど仲がいいってね。痣と生傷が絶えないドメスティックでバイオレンスな毎日さ」
「いじめられてるの?可哀想……」
「いい加減慣れたよ、むかしからずっとだ。アイツに虐げられるのは運命だって諦めてる……スイート?」
「ギューッ!ピジョンちゃんもギュー返し!」
「え、え、え?」
「ギュー―――!」
「ぎゅ、ぎゅう?どうしたの、いきなり抱き付いてきて……しかもあたっ、当たってるから尖ってるの、全体的に当たって潰れてるよ、ぐうのねもでないマシュマロ……!」
「ピジョンちゃんは変わってない、前とおんなじ弟思いの頑張り屋さん。スイートの大好きな優しいピジョンちゃんのまんまで、スイート安心しちゃったあ……」
「……優しくなんか、ない」
「うそ」
「ただ怖がりなだけだ。なにやらせても中途半端で踏ん切り付かなくて……引き金にかけた指の震えをおさえこむまで、随分時間がかかったよ。情けない話。むかしは賞金稼ぎに憧れてたけど、実際なってみるとそんな華やかなだけの世界じゃないって思い知った。スワローはへっちゃらだけど……俺はだめだ、アイツと比べててんでイケてない。いまだに頭や胸を狙えない、手や肩がせいぜいだ。ひとひとり殺して一人前って言われる業界で、殺しを渋って逃げ続けてるんだ……往生際悪く。挙句俺が煮え切らないせいでスワローの足まで引っ張る始末」
「ピジョンちゃん……」
「本当の所スナイパーライフルを武器に選んだのだって、自分が傷付ける相手と距離をおけるのが最大の理由かもしれない。スコープ越しに向き合うなら目を背けずにいられる……アレは俺の心の距離だ。どうしても埋めることができない彼我の距離。それだけ離れてやっとターゲットに引き金を引ける……安全圏からしかとどめをさせない卑怯者さ。ビーの時だって」
「ビーちゃんてピジョンちゃんに酷いことした賞金首の?」
「炭坑の街で出会った女王蜂。彼女には色々酷い目に遭わされたけど、本当の所やりきれない。過去を知ると憎みきれないんだ」
「可哀想な不幸な女の子に同情しちゃった……?」
「キマイライーターに教えてもらった。クインビーは匂いや体液を介したフェロモンで生き物を操る、けれど怪我で脳内物質の分泌量が変化したり極度の混乱や消耗に陥ると、体内のフェロモンバランスが崩れて権能を維持できなくなる。今も夢に見る位ひきずってるけれど、彼女をそうしたのは別の人間だ。クインビーだってなりたくてああなったわけじゃない……レイヴンだって」
「ピジョンちゃんはやさしいよ」
「何年も離れてたのに君にわかるの」
「人を殺すのが偉いなんておかしいでしょ」
「世間の理屈ではね」
「ピジョンちゃんは人を殺せるようになりたいの?」
「……ッ、」
「殺した数でスワローちゃんに勝って褒められたいの?オセロで何枚裏返したー、みたいに?」
「ちが……」
「スイートはいまのままのピジョンちゃんがいいな。弱くて怖がりではにかみ屋さんで、スイートやみんなに優しいピジョンちゃんが好き」
「…………」
「ピジョンちゃんがいてくれるからスワローちゃんは安心して暴れられるんじゃないかな?お尻を守ってくれないと前へ行けないもんね」
「スイート」
「あ、忘れてた!お客さんからもらったチェリーパイがあるんだ、一緒に食べよ。ワンホールまるごととはいかないけど、ふたりで半分こしたら二倍おいしくなるよね?スイートとピジョンちゃんの友情復活記念日だよ」
「再会を祝って?」
「スイートの一人前記念日でもピジョンちゃんのチェリー卒業記念日でもいいよ、みーんなまとめて祝っちゃお!」
「おねがいだからチェリーはやめて記念日認定で祝われたら赤っ恥で死にたい」
「おごりだから気にしないで、お客さんとしてお代払ってきてるんだもん、おもてなしさせてちょうだい。ピジョンちゃんならただでもいいのに……」
「そういうわけにはいかないよ、けじめは付けなきゃ」
「お店でおしゃべりだけで満足?外で会うなら無料だよ、プライベートは自由だもん」
「気持ちは有り難いけど……そういうのは失礼だ、君に」
「スイートに?なんで?」
「君を指名するひとは相応のカネをだして君の大事な時間を買ってる。俺も立場は同じ、彼らより上でも下でもない。ましてや偉くなんてあるはずがない。君の特別になれるのは嬉しいけど、特別扱いはしないでくれ。贔屓してほしいわけじゃない」
「うぅ~ん……むずかしくてよくわかんない……」
「友達だから無料でいいよとか、内緒で外で会うとか……君の好意に甘えるのは、利用してるみたいでいやだ。なんていうか……君の優しさを貶めるみたいで。俺はちゃんと筋を通して堂々と会いにきたいんだ」
「ピジョンちゃんはホントのお客さんじゃないんだから、そこまで気を遣わなくても」
「することをしないだけで楽しませてもらってるのは一緒だろ」
「スイートも楽しませてもらってるからおあいこだよ?」
「頑固だね」
「お互い様。あ~ん」
「え……やるの?」
「照れてるの?か~わいい~」
「いいよ自分で食べる、フォーク貸して……」
「ピジョンちゃんはスイートの時間を買い上げたお客様なんだから、ちゃんとサービス受けてくれないとだめだよ?」
「ぐっ」
「ご奉仕を雑にしてめっされるのはスイートなんだよ?エッチはしない代わりに、ね?」
「ぐぐ……でもスイートがもらったんだからスイートが食べなきゃその人に悪い」
「チェリーパイ嫌い?」
「好き」
「よかったあ!あ~ん」
「わかった、わかったからねじこまないで」
「おいしい?」
「……おいしいよ。甘酸っぱい」
「よかったあ、スイートもチェリーパイ大好きなの!」

「スワロー様……?」
「おう、俺だ。久しぶりだな、そっちは相変わらず?」
「いやいやいやかれこれ四年ぶりの感動の再会なんですからもう少し時候の挨拶とか段取りにそって進めましょうよ!?とはいえすっかりご立派になられて見違えました、背もぐーんと伸びて」
「6フィートこえたぜ。男前が上がったろ?」
「ピアス穴も増えました?」
「おーさすが目の付け所がいいな」
「お褒めに預かり光栄です、観察眼には優れた自負がありますので。はあ……しかしこんな偶然ってあるんですねえ。総支配人からお話は伺ってましたが、本当に賞金稼ぎデビュー果たされてるとは有言実行の徒ですね。バリバリ成り上がり中ですか?」
「てめえ俺が口先だけのヘタレだとおもってたのかよ、なるって言ったらぜってーなるに決まってんだろ」
「その無駄な態度のでかさ、ふてぶてしい踏ん反りかえりっぷり、間違いなくスワロー様です!」
「その妙ちきりんにへりくだった言葉遣い変わんねーな。胸でかくなった?」
「ふふ、気付いちゃいました?わたくしも成長したんです、ぼんきゅっぼーん!と。出っ張るところはしっかり出っ張り引っ込むところはしっかり引っ込んだ若さ溌剌わがままボディ、リボーンサシャとお呼びくださいまし」
「前から気になってたんだが……なんでメイドなの?」
「ご希望ならウェイトレスもスチュワーデスもキラークイーンもカウガールも対応可ですが。バニーガールはコンセプトと喧嘩しちゃうからどうかなー応相談で」
「いやそうじゃなくて、なんで風俗嬢がメイド服着てんの?コスプレもウリなのこの店」
「よくぞ聞いてくださいました!当店ミルクタンクヘヴンは様々なお客様の幅広い需要におこたえして大きくなりました、ひとたびお客様がお望みとあらばコスプレ七変化でそのコスチュームに合ったプレイもできるのです!なおわたくしの喋り方はコスチュームに影響された結果、いわばプロフェッショナルに徹する忠実なロールプレイですのでメイド服を脱げば普通の喋り方にもどります」
「へー……」
「自分から振っといてミルクとお湯が2:8並にうっすい反応ですね!?」
「どうでもいいこと聞いて初っ端時間無駄にした」
「遠い目しないでください恥ずかしいじゃないですか……いやまあ、ご活躍のほどはかねがね伺ってたので個人的にはあんま久しぶりって感じしないんですけど」
「マジ?」
「バウチにも載ってましたよーこの賞金稼ぎがヤバい!特集でしたっけ。抱かれたい賞金稼ぎランキングだったかな?けっこー無茶やって嫌われてるみたいですね」
「やっかみだろやっかみ、自慢じゃねーが俺が目立ってんのが気に入らなくて隙あらば足引っ張ろうってアホどもがうじゃうじゃいやがる」
「はあ……そっちの業界も大変なんですねえ。じゃあアレです、賞金首から没収した盗品さばいて荒稼ぎしてるとかは根も葉もない悪い噂で?」
「いやマジ」
「………あ、そうですか。ふーんそうなんですか。自業自得のきわみじゃないですか……」
「小遣い稼ぎに欲出したっていいだろ?そん位の旨みがねーとやってけねー」
「素行の悪さは変わりませんね……お兄さんの心痛お察しします」
「兄貴はスイートとよろしくやってんだろ。あのメンタル童貞のこった、いちゃこらおしゃべりだけで満足だろうが。今頃ケーキ半分こであーんとかしてんじゃね?ガキのままごとかよ、けっ」
「お兄さんに塩対応なのも変わりませんね……どうして優しくしてあげないんです?いい人じゃないですか」
「お前アイツと寝てえ?」
「いえ?寝たいかどうかと言われたらうーん……謹んでご遠慮しますけど……」
「だろ?誠実すぎて退屈なセックスにきまってる」
「正常位しかできなそうですよね」
「アナルセックスはするけど」
「は???????」
「いいヤツすぎて都合いいヤツになりさがってんだ」
「間違っても恋愛対象や性的対象にはなりませんけど客観的にはいい人じゃないですか?もう少し優しくしてあげたってばち当たりませんよ」
「甘やかすと付け上がる」
「なんでしょう間違った教育論を聞かされた気がしますが。スワロー様ひょっとして躾と虐待を勘違いしてるド外道野郎ですか?」
「アイツはアレでいいんだよ、本人もまんざらじゃねーんだし。ムッツリドМだからな。兄貴のことはどうでもいいや、ここ何年かのこと聞かせろよ。どうしてたんだ?」
「どうもこうもスイートちゃんと一緒にあちこちのお店回ってましたよ、風俗の武者修行です。うちの方針で、新人はドサ回り……いえ、地方研修にとばされるんです。スワロー様たちが出発したあとわたくし達にも辞令がでて、もっと南の支店に異動になったんです。それからは西へ東へそのまた西へ……まあ……いろいろありましたね」
「違いがわかる女の顔で遠く見てんじゃねーよ」
「おかげ様でわたくしもすっかり一人前の風俗嬢に仕上がりました、乙女の純情すれっからしラプソディーです」
「パワーワードだな」
「競合店が多くて風俗業界も厳しいんですよ……ですから即戦力の研修に力を入れてるわけでして。うちの近くも最近ライバル店がオープンしたんです」
「へえ、どんな」
「貧乳専門風俗『バンビーナ』」
「頭沸いたネーミングだな。いや、沸いてンのは下半身か」
「このお店が他と違ってすごいのは女の子がみんな18歳以上ってところです。ちゃっかり未成年をおくのも珍しくない風俗業界においてコレは画期的で逆に新しいって大絶賛、なんでも18歳以下の貧乳は貧乳に非ず成長期の伸びしろが見込める、故に18歳以上しか真の貧乳とは認めないオーナーの強いこだわりがあるそうで」
「死ぬほどどうでもいい」
「スワロー様は小さいのと大きいのどっちがお好きですか?」
「突っ込めりゃなんでも」
「わあ最低だあ……すがすがしく言い切りましたね」
「どっちかってーと大きいほうがいじくり甲斐あるが、小さくてもやりようはいくらでも……案外感度はいいし。待てよ、貧乳と巨乳なら客層被らねーんじゃねーの」
「ところがどっこい、スワロー様のようにガッツリサービスさえしてもらえば大にも小にもこだわらない無節操派が結構な割合動きまして……現在火花を散らしてます。卑怯なんですよ、地味にいやーな嫌がらせしてくるし!」
「どんな?」
「ミルクタンクヘヴンの看板にいたずらがきしてMilk Dunk heavenにしたり!」
「イケてんじゃん」
「デフォルメされた牛さんがバスケのゴールにダンクされて目を回す落書き付きです……」
「微笑ましい鹿牛戦争バンビーフウォーだな」
「まだまだあります、勝手に電話してうちの店にピザ十人前とか送り付けるしお店を開けると玄関先に分厚いステーキがおかれてたこともあるんですよフォークとナイフがそえられて!あとでスタッフがおいしくいただきましたけど……」
「焼き加減は?」
「こんがりウェルダンです。ごちそうさまです」
「近所付き合いの挨拶回りかねた差し入れなんじゃねーの……」
「宣戦布告以外のなんなんですか」
「鹿肉ステーキで復讐しろよ」
「いけません何の罪もない鹿さんを巻きこんじゃ可哀想です!」
「ヨダレたらしながら言っても説得力ねえ」
「じゅるり……これは失敬しました。個人的には胃袋ガッツリ掴む提案ですが、人間の生存競争に動物を引っ張り込むわけにまいりません」
「わかったよ俺が悪かったよ……」
「最近じゃ顔を合わせるたび揉めまくるし」
「風俗も大変だな」
「もしもの時は力を貸してくださいましねスワロー様」
「用心棒やれってか?店のオンナ全員とただでやらしてくれんなら考えとく」
「しまったピジョン様に頼めばよかった……ええと、スワロー様はずっと旅暮らしですか」
「14で家出た。母さんは……元気でやってんじゃねーの?最近連絡とってねーけど。新しい男ができたらなんか言ってよこすたァ思うがそれもねーし、厄介なコブがとれて独身生活エンジョイしてんだろうな。ねっから男好きだからよ」
「すんなり賞金稼ぎになれたんですか?」
「聞くも涙語るも涙だ。虎の子の貯金をはたいて兄貴と中央にきたはいいものの、試験を通らなきゃ免許ゲットできねえ。ナイフの扱いならだれにも負けねーが、座学と射撃でちょっと躓いちまってな……クソめんどくせえ、なんで賞金稼ぎは免許制なんだ?いちいちお上のお許し仰がなきゃいけねーとかくそだりぃ」
「犯罪者と紙一重の社会不適合者を弾くためじゃないですかね……わかりやすい例がくだ巻いてるし」
「あ゛ぁ゛ん?」
「でもでもこうして立派に独り立ちできたんだからすごいじゃないですか、遅ればせながらおめでとうございます!わたくしもスイートちゃんもお二人のこと心から応援してましたよ!」
「世辞は痒くなるぜ」
「とんでもない、誠心誠意本音ですよ!昔馴染みの活躍は嬉しいものです」
「でもまあ妙な縁もあるもんだぜ。テメエらとまた会うたァな……」
「スワロー様のお顔と名前が売れたおかげです。雑誌でお姿拝見して、おもわず変な声でちゃいました。ぜひ今後ともご贔屓のほどを……なにしてらっしゃるんですか?」
「いや、隣でおっぱじめたんじゃねーかと」
「コップ立てて壁に……なんか今デジャヴュが……デバガメはいけません当店はお客様のプライバシー厳守です、離れてくださいまし!」
「ヘイヘイ」
「ふう……ほんのちょっぴり意外でした、まだお兄さんとコンビを組んでるんですね。スワロー様しょっちゅうピジョン様のこと馬鹿にして暴言吐いてたし、てっきりソロで賞金稼ぎやるのかなって妄想逞しくしてたんですが……腐っても血の繋がった兄弟、切っても切れない縁や離れようにも離れられない絆がおありなんですね」
「別に。アイツひとりじゃすぐおっ死ぬのがオチだから面倒見てやってるだけだ、俺は心底どうでもいいが母さんが泣くかんな」
「またまたご冗談を。誕生日プレゼントのドッグタグを肌身離さず身に付けてるじゃないですか、前に見せてくれましたよね、お兄さんからの贈り物だって。あ~なんか妬けちゃいますね、わたくしもあんな優しくて笑顔が癒し系のお兄さんほしかった!」
「やらねえよ」
「今なにか?」
「なんでも。コレは……いちいち外すのが面倒だから付けっぱなだけで、それ以外の理由やそれ以上の情はねェ。てかさ、兄貴はムリでも妹ならいるじゃん」
「ほえ?」
「スイートが妹みてえなもんだろ」
「ああ……なるほど~スワロー様にはそう見えるんですね。言われてみればハイ、たしかに。長いことずっと一緒にいる、スイートちゃんはわたくしのカワイイ妹みたいなものです。サシャちゃんサシャちゃん懐いてくれますしね」
「ずっと一緒?」
「お店に拾われた時から……かな。子供の頃まで遡ります」
「天涯孤独の身の上?」
「似たようなものです。ご覧のとおり、わたくしはジプシーの血が入ってます。今の世の中ミュータント含めて人種がごっちゃで、差別とかいちいちする側も面倒くさいとおもうんですけど、割と迫害受けちゃったりしたんですよねー」
「軽いなオイ」
「母も早くに死んでみなしごになりましたから……その意味ではお二人が羨ましいです、ママさんのパンケーキ懐かしい」
「てめえがしてる変なペンダントはお袋の形見だったりするわけ?」
「ずけずけ聞きますね……いえ、そこは『まずいこと聞いちまったな』って目を伏せるとこじゃないですか??」
「で、『大丈夫です、気にしないでくださいまし』って気丈に微笑む殊勝な女を演出して好感度上げようって魂胆か?見え見えなんだよ」
「スワロー様の好感度上げても意味ないですし。話を戻しますけど、ええそうです。このペンダントは母さんが死ぬ前にくれたんです……ジプシーのお守りだとか言って。母さんが捨てられたとき、一緒にもってたんですって」
「捨てられた?」
「母さんは捨て子だったんです。赤ん坊のころに置き去りにされて……激しい嵐のあと、なんか声がするって納屋を見に来たひとに発見されたんです。とにかく凄い嵐で……周囲の屋根も軒並み吹き飛んだのにちっちゃい赤ん坊がぴんしゃんしてる奇跡に驚いたその人は、凄まじい幸運に恵まれてると感じ入って、母さんを引き取って育てることにしたんです。それがまあ……わたくしの血の繋がらないおじいちゃん的なひとになりますかね。もう死んじゃいましたけど。その後娘盛りにさしかかった母さんは悪い男にコロッとだまされてわたくしを身ごもり、おじいちゃんと喧嘩して家を追い出され……今に至ります」
「波乱万丈だな」
「期せずしてドン引きの身の上話をしちゃいました……てへ。このペンダントは母が唯一遺してくれた形見であると同時に、唯一の肉親の手がかりなんです。まあ……生まれたての母を人んちの納屋においてくような人ですから、本当のおばあちゃんおじいちゃんはろくなヤツじゃないとは思いますけど。スワロー様もタグには特別な思い入れがあるんですよね?」
「だからそーゆーんじゃねえって、きしょいことゆーな」
「じゃなきゃ肌身離さず身に付けませんて、超大事にしてるじゃないですか。なんですか、ツンが行き過ぎたツンデレですか?」
「ハッ、口達者なのは変わんねーな」
「このやりとりも久々ですね……スワロー様とは歯に衣着せぬ会話ができてストレス発散できます。お別れした時はさびしかったですよ?スイートちゃんなんて一日中めそめそしてたし、なぐさめるの大変でした」
「てめえは?泣かなかったのかよ」
「わたくしはお姉さんですから!」
「兄貴や姉貴のが泣き虫なパターンはうちのを引くまでもなくゴロゴロしてる」
「……まあ、ぶっちゃけほんのちょっとめそりましたよ?お店でフツーに働いてきて、お客さんの相手もして……わたくしが知ってる閉じた関係性の中で、お二人はイレギュラーでしたから」
「やることはするけどな」
「ですよね」
「話がわかるぜあのオンナ、依頼をこなした礼に店の永久特待券ゆすったらポイと投げてよこした。コレでタマ重いとき気軽に通える」
「女性には困ってないんじゃ……」
「風俗は別腹」
「スワロー様ってほんと……絶倫?性的に無軌道で奔放ですよね」
「兄貴はまたぐちゃぐちゃずるはよくないだのぬかしてやがったけど知るかってんだ、こっちはねだって当然の報酬もらっただけ、仕事こなした役得だ。真面目すぎんだよ人生損してるぜ。今頃壁の向こうで女々しくくどくどやってる、貴重な時間を買った建前上ちゃんと料金払わなきゃキミに失礼だーとか」
「ピジョン様のことならなんでもご存知なんですねえ」
「生まれたときから一緒ならいやでもわかる」
「そうだ。いっこ聞いていいですか」
「ンだよ」
「スワロー様は……ひと、殺しました?」
「どーゆー意味」
「いえ……うちにくる賞金稼ぎの方が、皆さん口をそろえておっしゃるものですから。賞金稼ぎはひとり殺して一人前、ギリギリ生かして捕まえるなんて回りくどい、かえって酷だ……って。運よく命を拾ったって残り一生劣悪なムショ暮らしですし、おっしゃることはわからないでもないんですが。スワロー様もその……もうしちゃったのかなー、なんて」
「で?」
「で、とは」
「殺ってたら態度変わんの?」
「いえ、そんなことは……滅相もない!」
「まだ殺しちゃねえ。そのうちうっかり殺っちまうかもしんねーけど」
「そっか……よかった。そうですよね、ピジョン様が付いてますもんね」
「アイツは関係ねえよ、いちいち名前だすなよ」
「出してるのはスワロー様ですって」
「俺はどうでもいいけどアイツがうるせーかんな。……人殺したってなにが変わるでもねェのに、考えすぎなんだよ」
「スワロー様はやっぱりピジョン様が好きなんですねえ」
「なんでそうなんだよ……」
「不平不満たらたらでもちゃんと言われたこと守ってるじゃないですか。それ、ピジョン様に嫌われたくないからですよね?怒られるのはなれっこだけど嫌われるのはカンベンだから、ギリギリの一線をこえずに我慢してるんですよね」
「おしゃべりは興ざめ」
「あッ……ちょっ、やっ、いきなり……」
「俺は兄貴と違うかんな、オンナと仲良くおしゃべりだけで済ますなんて冗談キツイ。金払ったぶんヤるこたあヤッて帰る、てめえも気持ち入れて感じろ」
「あッあッそんなッ、スワローさまテク上がりましたねひゃんッ!?」
「壁の向こうに可愛い声聞かせてやろうぜ」
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