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7.呪い
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リサとクリスは夫婦になった。
日照りが続くとリサが雨を降らせたから、領内の農作物の収穫量が飛躍的に増えた。コーエン子爵領で暮らせば食べ物に困らない、と移住してくる者が増えた。
領地が豊かになり、生活が充実するにつれて、リサの不安は大きくなった。フェルディアの予言「クリスの死」が呪いのようにリサを苦しめた。
ミルズ伯爵がコーエン子爵領に侵略してくる、と噂が立った。
かつてのミルズ伯爵領は豊かな土地だった。次第に農作物の収穫量が減り、住民が減った。干ばつによる不作が深刻で、飢饉に見舞われることもあった。リサがミルズ伯爵領に雨を降らせなかったことが原因だった。
領民に同情したクリスは、ミルズ伯爵領に食料を届け、領民が餓死しないように努めた。
「雨を降らせたらどうか」とクリスに何度も言われた。しかし、ミルズ伯爵領での生活を思い出すと、助ける気にはならなかった。
ミルズ伯爵は食料を得るために豊かな農地が欲しかった。こともあろうか、食料を援助するコーエン子爵領に攻め込もうとした。
クリスは父の指示に従って、領地の内外から兵を集め、領地の境界に堀を作った。守りを固め、領内に侵入させないことが目的だった。
「話し合いで何とかならないだろうか?」
戦が迫っているのに、クリスは楽観的だった。侵略者との話し合いほど無駄なものはない。
この戦でクリスが死ぬ。それがフェルディアの予言に違いない。
クリスを守りたい。領民を守りたい。リサは山へ向かった。
**
フェルディア、話があります――リサは念じた。
これで本当に呼べるのか? 不安にかられた瞬間、強い風が吹いた。風がリサの体を揺さぶり、木の葉が体にまとわりついた。風が止むと、白い衣を身に纏った女がいた。
「やっと決心したのか?」フェルディアが笑った。
「まだです。先に確認したいことがあります。あなたの力を使ってクリスを救う。具体的にどうやって救うのですか?」
「お前が守ればよい。そうだな……たとえば」
フェルディアは木を拳で突いた。木は吹き飛び、音を立てて崩れた。
「こういうのはどうだ?」
フェルディアが手のひらを横に振った。木は風の刃に切り刻まれ、ちりぢりになった。この力があればクリスを守れる。
「力を得る代わりに、わたしはあなたの手伝いをする。それはいつまでですか?」
フェルディアは「いつまで? ああ、そういうことか」と一人で納得した。
「神に寿命はない。老いないし、死なない。私の力を得れば、お前は神になる。期限はない」
「クリスが死んでも?」
「当然だ」
「一人で……生きていく」
いつかクリスは死ぬ。クリスが死んだ後もリサは生き続ける。
「心配せんでもいい。夫が死んでも、また会える。生まれ変わった夫にまた会える」
「いつですか?」
「それはわからん。私は豊作の神。担当が違う」
クリスを救いたい。けれど、次に会えるのは十年後? 百年後? 千年後? いつ会えるか分からないクリスを待ち続ける、その苦痛に耐えることができるのか?
「残念だが、猶予はない。敵兵が迫っておる。早くしないと、お前の夫は死ぬ」
いつかクリスに会える。なら待とう。リサは拳を握りしめた。
「やります!」
日照りが続くとリサが雨を降らせたから、領内の農作物の収穫量が飛躍的に増えた。コーエン子爵領で暮らせば食べ物に困らない、と移住してくる者が増えた。
領地が豊かになり、生活が充実するにつれて、リサの不安は大きくなった。フェルディアの予言「クリスの死」が呪いのようにリサを苦しめた。
ミルズ伯爵がコーエン子爵領に侵略してくる、と噂が立った。
かつてのミルズ伯爵領は豊かな土地だった。次第に農作物の収穫量が減り、住民が減った。干ばつによる不作が深刻で、飢饉に見舞われることもあった。リサがミルズ伯爵領に雨を降らせなかったことが原因だった。
領民に同情したクリスは、ミルズ伯爵領に食料を届け、領民が餓死しないように努めた。
「雨を降らせたらどうか」とクリスに何度も言われた。しかし、ミルズ伯爵領での生活を思い出すと、助ける気にはならなかった。
ミルズ伯爵は食料を得るために豊かな農地が欲しかった。こともあろうか、食料を援助するコーエン子爵領に攻め込もうとした。
クリスは父の指示に従って、領地の内外から兵を集め、領地の境界に堀を作った。守りを固め、領内に侵入させないことが目的だった。
「話し合いで何とかならないだろうか?」
戦が迫っているのに、クリスは楽観的だった。侵略者との話し合いほど無駄なものはない。
この戦でクリスが死ぬ。それがフェルディアの予言に違いない。
クリスを守りたい。領民を守りたい。リサは山へ向かった。
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フェルディア、話があります――リサは念じた。
これで本当に呼べるのか? 不安にかられた瞬間、強い風が吹いた。風がリサの体を揺さぶり、木の葉が体にまとわりついた。風が止むと、白い衣を身に纏った女がいた。
「やっと決心したのか?」フェルディアが笑った。
「まだです。先に確認したいことがあります。あなたの力を使ってクリスを救う。具体的にどうやって救うのですか?」
「お前が守ればよい。そうだな……たとえば」
フェルディアは木を拳で突いた。木は吹き飛び、音を立てて崩れた。
「こういうのはどうだ?」
フェルディアが手のひらを横に振った。木は風の刃に切り刻まれ、ちりぢりになった。この力があればクリスを守れる。
「力を得る代わりに、わたしはあなたの手伝いをする。それはいつまでですか?」
フェルディアは「いつまで? ああ、そういうことか」と一人で納得した。
「神に寿命はない。老いないし、死なない。私の力を得れば、お前は神になる。期限はない」
「クリスが死んでも?」
「当然だ」
「一人で……生きていく」
いつかクリスは死ぬ。クリスが死んだ後もリサは生き続ける。
「心配せんでもいい。夫が死んでも、また会える。生まれ変わった夫にまた会える」
「いつですか?」
「それはわからん。私は豊作の神。担当が違う」
クリスを救いたい。けれど、次に会えるのは十年後? 百年後? 千年後? いつ会えるか分からないクリスを待ち続ける、その苦痛に耐えることができるのか?
「残念だが、猶予はない。敵兵が迫っておる。早くしないと、お前の夫は死ぬ」
いつかクリスに会える。なら待とう。リサは拳を握りしめた。
「やります!」
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