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ピーチ・ボーイズを捕獲しろ!
しおりを挟むお菊さんは小角に業務委託契約書の内容について確認する。
「この第1条と第2条の但書なんだけど、器物破損せずにピーチ・ボーイズを捕獲しろということかしら?」
「そういうことだ。通常、テロリストと交戦すると銃撃戦や爆破が起こる。そうすると建物や設備に損害が発生する。警察官や民間人の人的な被害も出るかもしれない。そうすると、被害額が数億円になる場合もある」
テロリストと交戦する時の被害額をゼロにすれば二人に計2億円払うということらしい。被害が出れば報酬の2億円から差引かれる。
お菊さんは小角が簡単に2億円も払うわけではないことを理解した。
――こんな契約、反則じゃないか?
そう思ったお菊さんは小角にクレームを入れる。
「ピーチ・ボーイズは攻撃してくるわよね。応戦せずに倒せるわけないでしょ?」
小角はお菊さんのクレームを気にせずに半笑いで言った。
「破壊しなくてもテロリストを捕獲する方法があるではないか。さっき、その少年が我々2人を気絶させた時のように・・・。あの方法だったら損害はゼロだ」
小角は武の一酸化炭素攻撃のことを言っているらしい。
「でも、あの方法は密閉された空間でしか有効じゃない・・・」お菊さんは攻撃の有効性を懸念している。
「それでは、密閉したら良いではないか?」小角はヒントを出した。
武は小角が言っていることを理解した。
「お菊さん。お菊さんが水蒸気で空間を密閉してくれればいいんだよ。僕がその中に一酸化炭素を放出するから」と武はお菊さんに言った。
「あ、そうか」
お菊さんはこの作戦を理解した。
「でも、長時間、一酸化炭素中毒の状態になるとテロリストが死んじゃうよね。いいのかな?」と武は小角に聞いた。
「問題ない。拘束したテロリストに酸素を供給できるように、前鬼に酸素ボンベを持たせておくから大丈夫だ」
急に名前を呼ばれた前鬼は困惑している。
「俺もピーチ・ボーイズのアジトに行くんですか?」
「もちろんだ。損害が発生していないか確認する必要があるだろう?」
「はあ・・・」
前鬼は上司の命令に逆らえない。覚悟を決めた。
武とお菊さんは業務委託契約書に署名した後、小角からピーチ・ボーイズの捕獲についてレクチャーを受けた。
警察官や民間人への被害を出さないこと、テロリストを制圧する際に建物や設備を破壊しないことなどだ。
人命と物的被害を出さなければ2億円は安いと小角は考えている。
逆に、武とお菊さんにとっては、高い報酬に見合った難易度の業務遂行能力が求められることになる。
小角のレクチャーを聞いた後、武、お菊さん、前鬼の3人はピーチ・ボーイズのアジトに向かった。
***
武とお菊さんは前鬼の運転する車でピーチ・ボーイズのアジトに到着した。
アジトは郊外の建設途中に工事が中断した廃ビルだった。
ビルが完成する前の状態だから柱と壁だけの構造物。窓ガラスや内装は無い。
武が「夜とか寒くないのかな?」と前鬼に聞いたら「この季節は暖かいから、夜でも寒くない」と説明された。テロリストの心配をする必要はないらしい。
武たちはアジトから少し離れた場所で、中の様子を窺っている。
小角から聞いた事前情報では、このアジトにいるピーチ・ボーイズのメンバーは5人だ。
2人がビルの入り口で警備しているのが見えるから、廃ビルのどこかに3人が潜んでいる。
武とお菊さんは、まず入り口の2人を捕獲することにした。
業務委託契約によって過激な攻撃は禁止されているから、一酸化炭素攻撃が基本になる。
お菊さんが球状の水蒸気の塊を作り、武はその中に一酸化炭素を充満させた。
お菊さんは球体を操作して入口に立つ2人のテロリストの上に飛ばした後、ゆっくり下降して2人を包んだ。球体は透明だからテロリストには見えない。
テロリストの2人は一酸化炭素が充満した球体に囲まれていることに気付いた様子もなく、10秒くらいで気絶した。
「やったー!」
ハイタッチする武とお菊さん。
今のところ被害はない。
あと3人確保できれば2億円ゲットだ。
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