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第2回活動報告:カルテルを潰せ
北風と太陽(その1)
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(8)北風と太陽
俺たちが『カルテル潰し作戦』を開始してから2カ月が経過した。
サンマーティン国からの輸入によって銅の国内供給量が増加したため、一時、銅の国内現物価格は1,400JD/kgまで下がった。しかし、その後、銅の国内現物価格は1,500JD/kg付近に戻している。
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。
【図表2-9-2:銅価格の推移】
銅価格が高い水準のままだと、現物販売で利益が出るものの、ヘッジ手段として利用した先物に損失が出かねない。ここから銅の国内価格を下げるためには、銅先物を追加売却するか、現物の輸入を増やすかのどちらか、または両方が必要となるだろう。
これまで俺たちは、銅価格を少しずつ下げようと輸入量を調整してきた。しかし、銅価格が下がらないとなると、さらに銅の輸入量を増やして、銅先物の売りも追加しないといけないだろう。
どうやら、『カルテル潰し作戦』は変更を余儀なくされたようだ。
今後の方針を決めるために、俺は内部調査部のメンバーとミーティングを開いた。
「銅の輸入販売を始めて2カ月が経過したけど、銅価格が下がる気配がない。ここから銅価格を下げるためには、銅の輸入量と銅先物の売りを増やさないといけないかもしれない。」と俺はメンバーに伝えた。
すると、「ちょっといいですか?」とミゲルが発言した。
こういう場でミゲルが発言するのは珍しい。ふざけた内容の可能性もあるが・・・。
「もちろん。どうしたの?」と俺はミゲルに言う。
「証券会社から銅先物の市場動向を聞いたのですが、気になることがありました。」
「どういう内容?」と俺はミゲルに聞いた。ふざけた内容ではなさそうだ。
「i2で輸入を始めた当初2カ月は、銅先物の価格が下がったようです。その後、先物の売建てが4カ月までしか大きいものが無いため、その後の期日(5カ月後)からの銅先物が買われています。」とミゲルは言った。
2カ月経過時点での期日5カ月(作戦開始時点の7カ月後)ということは、俺たちが先物を売っていない期間だ。
「じゃあ、銅価格が下がらないのは先物が原因?誰が銅先物を買っているか分かった?」とルイーズがミゲルに聞いた。
「誰が買っているかは分かりません。多分、国内商社ではないかと思いますが、取引所や証券会社は『守秘義務があるので・・・』と言って教えてくれません。」とミゲルは答えた。
「ふーん。難しいのね。強制的に開示請求するのはまずいしね。」とルイーズは言った。
「分からないことを議論してもしかたないから、話を戻そう。そうすると、敵は我々があと4カ月だけ銅を輸入・販売するのを知っている可能性があるということか。」と俺は言った。
「商社は世界中にネットワークがあるので、我々がサンマーティン国から銅を輸入しているのを知っていてもおかしくありません。商社の現地駐在員の仕事は、そういう情報を仕入れてくることですから。」とミゲルが答える。
「そうか。そうだよね。敵は『あと4カ月の我慢だ』と思っているわけだ。」と俺は言った。
「私も、ちょっといいですか?」とロイが言った。
「もちろん。」と俺はロイに発言を促す。
「銅の販売をしていて、気付いたことが一つあります。」とロイは言った。
「どういうこと?」
「取引開始前は、我々が輸入を始めたら、銅の国内取引量が増えると思っていました。」
「価格が下がらないだけじゃなくて、取引量も増えてないの?」
「そうなんです。i2の輸入開始前は、銅の取引量は月1,000tでした。それが、i2が販売を開始した月の取引量は1,100t、翌月は1,000tです。つまり、我々が月200t輸入しているにも関わらず、国内の取引量は増えていないんです。」とロイは言った。
<続く>
俺たちが『カルテル潰し作戦』を開始してから2カ月が経過した。
サンマーティン国からの輸入によって銅の国内供給量が増加したため、一時、銅の国内現物価格は1,400JD/kgまで下がった。しかし、その後、銅の国内現物価格は1,500JD/kg付近に戻している。
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。
【図表2-9-2:銅価格の推移】
銅価格が高い水準のままだと、現物販売で利益が出るものの、ヘッジ手段として利用した先物に損失が出かねない。ここから銅の国内価格を下げるためには、銅先物を追加売却するか、現物の輸入を増やすかのどちらか、または両方が必要となるだろう。
これまで俺たちは、銅価格を少しずつ下げようと輸入量を調整してきた。しかし、銅価格が下がらないとなると、さらに銅の輸入量を増やして、銅先物の売りも追加しないといけないだろう。
どうやら、『カルテル潰し作戦』は変更を余儀なくされたようだ。
今後の方針を決めるために、俺は内部調査部のメンバーとミーティングを開いた。
「銅の輸入販売を始めて2カ月が経過したけど、銅価格が下がる気配がない。ここから銅価格を下げるためには、銅の輸入量と銅先物の売りを増やさないといけないかもしれない。」と俺はメンバーに伝えた。
すると、「ちょっといいですか?」とミゲルが発言した。
こういう場でミゲルが発言するのは珍しい。ふざけた内容の可能性もあるが・・・。
「もちろん。どうしたの?」と俺はミゲルに言う。
「証券会社から銅先物の市場動向を聞いたのですが、気になることがありました。」
「どういう内容?」と俺はミゲルに聞いた。ふざけた内容ではなさそうだ。
「i2で輸入を始めた当初2カ月は、銅先物の価格が下がったようです。その後、先物の売建てが4カ月までしか大きいものが無いため、その後の期日(5カ月後)からの銅先物が買われています。」とミゲルは言った。
2カ月経過時点での期日5カ月(作戦開始時点の7カ月後)ということは、俺たちが先物を売っていない期間だ。
「じゃあ、銅価格が下がらないのは先物が原因?誰が銅先物を買っているか分かった?」とルイーズがミゲルに聞いた。
「誰が買っているかは分かりません。多分、国内商社ではないかと思いますが、取引所や証券会社は『守秘義務があるので・・・』と言って教えてくれません。」とミゲルは答えた。
「ふーん。難しいのね。強制的に開示請求するのはまずいしね。」とルイーズは言った。
「分からないことを議論してもしかたないから、話を戻そう。そうすると、敵は我々があと4カ月だけ銅を輸入・販売するのを知っている可能性があるということか。」と俺は言った。
「商社は世界中にネットワークがあるので、我々がサンマーティン国から銅を輸入しているのを知っていてもおかしくありません。商社の現地駐在員の仕事は、そういう情報を仕入れてくることですから。」とミゲルが答える。
「そうか。そうだよね。敵は『あと4カ月の我慢だ』と思っているわけだ。」と俺は言った。
「私も、ちょっといいですか?」とロイが言った。
「もちろん。」と俺はロイに発言を促す。
「銅の販売をしていて、気付いたことが一つあります。」とロイは言った。
「どういうこと?」
「取引開始前は、我々が輸入を始めたら、銅の国内取引量が増えると思っていました。」
「価格が下がらないだけじゃなくて、取引量も増えてないの?」
「そうなんです。i2の輸入開始前は、銅の取引量は月1,000tでした。それが、i2が販売を開始した月の取引量は1,100t、翌月は1,000tです。つまり、我々が月200t輸入しているにも関わらず、国内の取引量は増えていないんです。」とロイは言った。
<続く>
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