36 / 197
第2回活動報告:カルテルを潰せ
北風と太陽(その1)
しおりを挟む
(8)北風と太陽
俺たちが『カルテル潰し作戦』を開始してから2カ月が経過した。
サンマーティン国からの輸入によって銅の国内供給量が増加したため、一時、銅の国内現物価格は1,400JD/kgまで下がった。しかし、その後、銅の国内現物価格は1,500JD/kg付近に戻している。
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。
【図表2-9-2:銅価格の推移】
銅価格が高い水準のままだと、現物販売で利益が出るものの、ヘッジ手段として利用した先物に損失が出かねない。ここから銅の国内価格を下げるためには、銅先物を追加売却するか、現物の輸入を増やすかのどちらか、または両方が必要となるだろう。
これまで俺たちは、銅価格を少しずつ下げようと輸入量を調整してきた。しかし、銅価格が下がらないとなると、さらに銅の輸入量を増やして、銅先物の売りも追加しないといけないだろう。
どうやら、『カルテル潰し作戦』は変更を余儀なくされたようだ。
今後の方針を決めるために、俺は内部調査部のメンバーとミーティングを開いた。
「銅の輸入販売を始めて2カ月が経過したけど、銅価格が下がる気配がない。ここから銅価格を下げるためには、銅の輸入量と銅先物の売りを増やさないといけないかもしれない。」と俺はメンバーに伝えた。
すると、「ちょっといいですか?」とミゲルが発言した。
こういう場でミゲルが発言するのは珍しい。ふざけた内容の可能性もあるが・・・。
「もちろん。どうしたの?」と俺はミゲルに言う。
「証券会社から銅先物の市場動向を聞いたのですが、気になることがありました。」
「どういう内容?」と俺はミゲルに聞いた。ふざけた内容ではなさそうだ。
「i2で輸入を始めた当初2カ月は、銅先物の価格が下がったようです。その後、先物の売建てが4カ月までしか大きいものが無いため、その後の期日(5カ月後)からの銅先物が買われています。」とミゲルは言った。
2カ月経過時点での期日5カ月(作戦開始時点の7カ月後)ということは、俺たちが先物を売っていない期間だ。
「じゃあ、銅価格が下がらないのは先物が原因?誰が銅先物を買っているか分かった?」とルイーズがミゲルに聞いた。
「誰が買っているかは分かりません。多分、国内商社ではないかと思いますが、取引所や証券会社は『守秘義務があるので・・・』と言って教えてくれません。」とミゲルは答えた。
「ふーん。難しいのね。強制的に開示請求するのはまずいしね。」とルイーズは言った。
「分からないことを議論してもしかたないから、話を戻そう。そうすると、敵は我々があと4カ月だけ銅を輸入・販売するのを知っている可能性があるということか。」と俺は言った。
「商社は世界中にネットワークがあるので、我々がサンマーティン国から銅を輸入しているのを知っていてもおかしくありません。商社の現地駐在員の仕事は、そういう情報を仕入れてくることですから。」とミゲルが答える。
「そうか。そうだよね。敵は『あと4カ月の我慢だ』と思っているわけだ。」と俺は言った。
「私も、ちょっといいですか?」とロイが言った。
「もちろん。」と俺はロイに発言を促す。
「銅の販売をしていて、気付いたことが一つあります。」とロイは言った。
「どういうこと?」
「取引開始前は、我々が輸入を始めたら、銅の国内取引量が増えると思っていました。」
「価格が下がらないだけじゃなくて、取引量も増えてないの?」
「そうなんです。i2の輸入開始前は、銅の取引量は月1,000tでした。それが、i2が販売を開始した月の取引量は1,100t、翌月は1,000tです。つまり、我々が月200t輸入しているにも関わらず、国内の取引量は増えていないんです。」とロイは言った。
<続く>
俺たちが『カルテル潰し作戦』を開始してから2カ月が経過した。
サンマーティン国からの輸入によって銅の国内供給量が増加したため、一時、銅の国内現物価格は1,400JD/kgまで下がった。しかし、その後、銅の国内現物価格は1,500JD/kg付近に戻している。
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。
【図表2-9-2:銅価格の推移】
銅価格が高い水準のままだと、現物販売で利益が出るものの、ヘッジ手段として利用した先物に損失が出かねない。ここから銅の国内価格を下げるためには、銅先物を追加売却するか、現物の輸入を増やすかのどちらか、または両方が必要となるだろう。
これまで俺たちは、銅価格を少しずつ下げようと輸入量を調整してきた。しかし、銅価格が下がらないとなると、さらに銅の輸入量を増やして、銅先物の売りも追加しないといけないだろう。
どうやら、『カルテル潰し作戦』は変更を余儀なくされたようだ。
今後の方針を決めるために、俺は内部調査部のメンバーとミーティングを開いた。
「銅の輸入販売を始めて2カ月が経過したけど、銅価格が下がる気配がない。ここから銅価格を下げるためには、銅の輸入量と銅先物の売りを増やさないといけないかもしれない。」と俺はメンバーに伝えた。
すると、「ちょっといいですか?」とミゲルが発言した。
こういう場でミゲルが発言するのは珍しい。ふざけた内容の可能性もあるが・・・。
「もちろん。どうしたの?」と俺はミゲルに言う。
「証券会社から銅先物の市場動向を聞いたのですが、気になることがありました。」
「どういう内容?」と俺はミゲルに聞いた。ふざけた内容ではなさそうだ。
「i2で輸入を始めた当初2カ月は、銅先物の価格が下がったようです。その後、先物の売建てが4カ月までしか大きいものが無いため、その後の期日(5カ月後)からの銅先物が買われています。」とミゲルは言った。
2カ月経過時点での期日5カ月(作戦開始時点の7カ月後)ということは、俺たちが先物を売っていない期間だ。
「じゃあ、銅価格が下がらないのは先物が原因?誰が銅先物を買っているか分かった?」とルイーズがミゲルに聞いた。
「誰が買っているかは分かりません。多分、国内商社ではないかと思いますが、取引所や証券会社は『守秘義務があるので・・・』と言って教えてくれません。」とミゲルは答えた。
「ふーん。難しいのね。強制的に開示請求するのはまずいしね。」とルイーズは言った。
「分からないことを議論してもしかたないから、話を戻そう。そうすると、敵は我々があと4カ月だけ銅を輸入・販売するのを知っている可能性があるということか。」と俺は言った。
「商社は世界中にネットワークがあるので、我々がサンマーティン国から銅を輸入しているのを知っていてもおかしくありません。商社の現地駐在員の仕事は、そういう情報を仕入れてくることですから。」とミゲルが答える。
「そうか。そうだよね。敵は『あと4カ月の我慢だ』と思っているわけだ。」と俺は言った。
「私も、ちょっといいですか?」とロイが言った。
「もちろん。」と俺はロイに発言を促す。
「銅の販売をしていて、気付いたことが一つあります。」とロイは言った。
「どういうこと?」
「取引開始前は、我々が輸入を始めたら、銅の国内取引量が増えると思っていました。」
「価格が下がらないだけじゃなくて、取引量も増えてないの?」
「そうなんです。i2の輸入開始前は、銅の取引量は月1,000tでした。それが、i2が販売を開始した月の取引量は1,100t、翌月は1,000tです。つまり、我々が月200t輸入しているにも関わらず、国内の取引量は増えていないんです。」とロイは言った。
<続く>
0
あなたにおすすめの小説
捨てた騎士と拾った魔術師
吉野屋
恋愛
貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。
「役立たず」と追放されたが、俺のスキルは【経験値委託】だ。解除した瞬間、勇者パーティーはレベル1に戻り、俺だけレベル9999になった
たまごころ
ファンタジー
「悪いがクビだ、アレン。お前のような戦闘スキルのない寄生虫は、魔王討伐の旅には連れていけない」
幼馴染の勇者と、恋人だった聖女からそう告げられ、俺は極寒の雪山に捨てられた。
だが、彼らは勘違いしている。
俺のスキルは、単なる【魔力譲渡】じゃない。
パーティメンバーが得た経験値を管理・分配し、底上げする【経験値委託(キックバック)】という神スキルだったのだ。
俺をパーティから外すということは、契約解除を意味する。
つまり――今まで彼らが俺のおかげで得ていた「かさ増しステータス」が消え、俺が預けていた膨大な「累積経験値」が全て俺に返還されるということだ。
「スキル解除。……さて、長年の利子も含めて、たっぷり返してもらおうか」
その瞬間、俺のレベルは15から9999へ。
一方、勇者たちはレベル70から初期レベルの1へと転落した。
これは、最強の力を取り戻した俺が、雪山の守り神である銀狼(美少女)や、封印されし魔神(美少女)を従えて無双し、新たな国を作る物語。
そして、レベル1に戻ってゴブリンにも勝てなくなった元勇者たちが、絶望のどん底へ落ちていく「ざまぁ」の記録である。
婚約破棄された悪役令嬢、手切れ金でもらった不毛の領地を【神の恵み(現代農業知識)】で満たしたら、塩対応だった氷の騎士様が離してくれません
夏見ナイ
恋愛
公爵令嬢アリシアは、王太子から婚約破棄された瞬間、歓喜に打ち震えた。これで退屈な悪役令嬢の役目から解放される!
前世が日本の農学徒だった彼女は、慰謝料として誰もが嫌がる不毛の辺境領地を要求し、念願の農業スローライフをスタートさせる。
土壌改良、品種改良、魔法と知識を融合させた革新的な農法で、荒れ地は次々と黄金の穀倉地帯へ。
当初アリシアを厄介者扱いしていた「氷の騎士」カイ辺境伯も、彼女の作る絶品料理に胃袋を掴まれ、不器用ながらも彼女に惹かれていく。
一方、彼女を追放した王都は深刻な食糧危機に陥り……。
これは、捨てられた令嬢が農業チートで幸せを掴む、甘くて美味しい逆転ざまぁ&領地経営ラブストーリー!
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。
敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。
結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。
だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。
「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」
謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。
少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。
これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。
【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
