第4王子は中途半端だから探偵することにした

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第5回活動報告:仮想通貨の詐欺集団を捕まえろ

家族会議(その2)

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(4) 家族会議 <続き>

別の切り口で、論破できるか試してみよう。

「もし、発行した暗号資産が値下がりして、購入した国民が損したら、どうするのですか?」と俺はチャールズに言った。
これは、我ながらいい質問だ。国王が国民のことを気にして、没にできそうだ。

「そんなこと知らないよ。だって、投資は自己責任だろ。国債を保有している国民は、金利が上がったら、既発債は値下がりして損するだろ。投資なんて、そんなものだよ。」とチャールズは言った。

コイツは、なんて自分勝手な奴だ。こういうことを言うから、みんなから嫌われるんだ。
俺もコイツのことは嫌いだ。

期待通りにはいかず、国王は口を挟んでこない。別の話題で切り崩しが必要だ。

「他国で暗号資産を発行しているところは現状ありません。もう少し様子を見てからでもいいじゃないでしょうか?」と俺は言う。

「ジャービス王国で暗号資産を発行するわけじゃない。ジャービス王国が100%保有する会社が暗号資産を発行するだけだ。大丈夫じゃないかな。」

なんていう理屈だ。今度は、『国で暗号資産は発行しない』と言ってきた。
誤解を与える可能性があるので、訂正させなければ。

「国が発行していなくても、ジャービス王国が100%保有していたら、国民は国が発行していると思いますよ。」と俺は言う。

「そうかな?アンドリューは他の国のこと聞いている?」とチャールズはアンドリューに話を振った。

話を振られたアンドリューもいい迷惑だ。
自分には関係ないと思って話を聞いていなかったアンドリューは、俺に『何のこと?』と聞いてきた。
俺が説明すると、アンドリューはしばらく考えた後、チャールズに説明した。

「先進国の幾つかは暗号資産ではなく、デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)の発行準備をしています。他国の発行目的は通貨管理なので、あくまで、貨幣という位置付けです。あと、暗号資産を通貨として採用する国もあります。他国の状況からすると、ジャービス王国が暗号資産を発行しても、文句を言ってくる国は無いでしょう。」

コイツはどちらの味方でもなさそうだ。俺が阻止するしかない。
もう一度、反対意見を出しておこう。

「暗号資産を通貨として採用しているのは、自国の暗号資産ではなく、全世界で広く流通しているものです。もしジャービス王国が暗号資産を作っても、有名な暗号資産に比べると見劣りします。流通量は限られると思いますけど。」と俺は言った。

「そうだけどさ。発行してすぐに暗号資産で多額の資金調達ができるとは思っていないけど、上手く流通させることができたら、ジャービス王国の財政的には非常に助かる話だ。」

チャールズはそこまで言った段階で、国王の方を向いて発言した。

「国王。ジャービス王国で暗号資産を発行するために、割安の暗号資産交換業者を買収するのはどうでしょう?」

チャールズは強引に国王の同意を得ようとしている。でも、実際に動くのは俺だ。余計な仕事を増やさないでほしい。

「ジャービス王国で暗号資産を発行するメリットは分かった。ただ、一から暗号資産交換業者を設立したら、いいだけのような気がするが。わざわざM&Aする必要はあるのか?」と国王は言った。

いいぞ。珍しく、いいことを言った。
と俺が思った瞬間、チャールズは返答した。

「いえ、一から設立するには、時間とコストが掛かります。政府主導で設立するとしても、民間業者と同じ基準で許認可を取得する必要があるでしょう。そうでなければ、不満がでます。
新会社を設立して許認可を取得するには、暗号資産交換業者として十分な実務経験を有するものを採用し、また、暗号資産の取引を行うためのシステムを導入する必要があります。いざ開始しようとしても、準備に数年かかります。」

「そうか。それなら、手頃な会社が見つかれば進める、ということで良いかな?」と国王は答える。

当たり障りのない回答のようだが、国王自身は別に乗り気でもなさそうだ。
ここから反対に持っていくのは至難の業だから、この辺が落とし所だろう。

「分かりました。それでは、調査の中で手頃な会社が見つかれば、チャールズ兄さんに連絡します。それでいいですか?」と俺はチャールズに確認した。

「よろしく頼む。」とチャールズは言った。

助かった。とりあえず、積極的に探さなくても良さそうだ。

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