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第2回活動報告:カルテルを潰せ
先物でヘッジしよう(その2)
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(7) 先物でヘッジしよう <続き>
内部調査部のメンバーは理解しているようなので、俺は説明を続けた。
「まず、最低保証額(単価)50JD/kgをベースに説明すると、取引の全体像はこうなる。」そう言って俺は、銅の仕入単価の発生要因をまとめた資料(図表2-7)を指した。
【図表2-7:銅の仕入単価】
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。
「現在の銅の国際価格は800JD/kgだ。外務省のダミー会社がサンマーティン国の鉱山会社から850JD/kgで仕入れ、i2が外務省のダミー会社から900JD/kgで購入する。これは、サンマーティン国の会社と外務省に対して、50JD/kgずつ手数料を落とすためだ。」
「サンマーティン国にも50JD/kgの手数料を払うのですか?」とポールが俺に聞いた。
「i2が800JD/kgで買うと言っても、サンマーティン国は面倒な手続きをして俺たちに売る必要がない。サンマーティン国の50JD/kgは手数料ではないけど、850JD/kgで買うと言った方が銅を優先的に売ってくれるでしょ。」と俺は言った。
ポールは「なるほど。」と言っている。他のメンバーも理解しているようだ。
「次に、仕入れた銅は、民間船に偽装した軍本部の船で輸送し、軍港に運ぶ。輸送と軍港利用のコストは50JD/kgだ。」と図を指して説明した。
「また、銅のジャービス国内での販売は、銅の産出会社のジャービス鉱業にしてもらうことにした。ジャービス鉱業は既に国内販売ルートを有しているし、銅の輸入を国内商社に知られないようにするためだ。ジャービス鉱業の販売コストは50JD/kg。」と俺は言った。
「900JD/kgで仕入れた銅に対して、輸送コスト50JD/kg、販売コスト50JD/kgが掛かるため、売上原価(仕入単価)は1,000JD/kg。それよりも高い金額でi2が販売できないと赤字ということですね?」スミスが言った。
「そうだね。少なくとも1,000JD/kgを超える単価で販売できないと、i2は赤字になる。」と俺は答えた。
「まず、販売単価1,500JD/kgで銅を国内販売すると、売上高は月3億JD、利益は月1億JD出る。ただ、銅の国内供給量が増えているわけだから、販売単価は下がってくるはずだ。」
「そうだね。」とルイーズが言った。
「i2(仕入会社)が仕入れる銅は需要全てを賄えるだけの量ではないものの、他の商社が輸入量を増加させれば直ぐに供給量は需要量に均衡するはずだ。
仮に販売単価が毎月200JD/kg下落すると、800JD/kgまで下がるのに3.5カ月。
i2の仕入単価は1,000JD/kgなので、2.5カ月後から赤字が発生することになる。」
「今回は銅の国内価格を下げることが目的だけど、銅価格が下がるとi2に損失が発生する。悩ましいですね・・・。」とミゲルが言った。
「そうだよ。実に悩ましい。そう言えば、ルイーズに頼んでいた販売価格の予想はできた?」と俺はルイーズに聞いた。
「一応、作ってみた。この資料がそれ。販売単価を3パターンに分けて、i2の損益を計算している。」とルイーズはメンバーに配った資料(図表2-8)を指して言った。
【図表2-8:販売単価の予想と想定される利益(単位:JD/kg)】
「まず、ケース1は、銅の国内現物価格が1,500JD/kgから国際価格800JD/kgまで毎月200JD/kgずつ減少する場合の、仕入単価と利益単価を示している。1カ月目は販売単価が1,300JD/kg、仕入単価が1,120JD/kgになる。これは、外務省、国軍、内務省の手数料支払前にi2に発生する利益が450JD/kg(1,300 JD/kg-850 JD/kg)だから、利益の20%が90JD/kg。外務省、国軍、内務省に支払う手数料の最低保証単価50JD/kgを超えているから、仕入単価は1,120JD/kg (850 JD/kg+450 JD/kg×20%×3)となる。」
「最低保証付き利益連動手数料ですか。だから、仕入単価が1,000JD/kgのところと、そうでないところがあるんですね。」とミゲルが言った。
ルイーズはミゲルを無視して話を続ける。
「ケース2は、開始から2カ月で銅の国際価格800JD/kgまで下がった場合の、仕入単価と利益単価を計算したもの。ケース3は、銅の国内現物価格が1,500JD/kgから毎月100JD/kgずつ減少した場合の仕入単価と利益単価。」とルイーズは言った。
<続く>
内部調査部のメンバーは理解しているようなので、俺は説明を続けた。
「まず、最低保証額(単価)50JD/kgをベースに説明すると、取引の全体像はこうなる。」そう言って俺は、銅の仕入単価の発生要因をまとめた資料(図表2-7)を指した。
【図表2-7:銅の仕入単価】
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。
「現在の銅の国際価格は800JD/kgだ。外務省のダミー会社がサンマーティン国の鉱山会社から850JD/kgで仕入れ、i2が外務省のダミー会社から900JD/kgで購入する。これは、サンマーティン国の会社と外務省に対して、50JD/kgずつ手数料を落とすためだ。」
「サンマーティン国にも50JD/kgの手数料を払うのですか?」とポールが俺に聞いた。
「i2が800JD/kgで買うと言っても、サンマーティン国は面倒な手続きをして俺たちに売る必要がない。サンマーティン国の50JD/kgは手数料ではないけど、850JD/kgで買うと言った方が銅を優先的に売ってくれるでしょ。」と俺は言った。
ポールは「なるほど。」と言っている。他のメンバーも理解しているようだ。
「次に、仕入れた銅は、民間船に偽装した軍本部の船で輸送し、軍港に運ぶ。輸送と軍港利用のコストは50JD/kgだ。」と図を指して説明した。
「また、銅のジャービス国内での販売は、銅の産出会社のジャービス鉱業にしてもらうことにした。ジャービス鉱業は既に国内販売ルートを有しているし、銅の輸入を国内商社に知られないようにするためだ。ジャービス鉱業の販売コストは50JD/kg。」と俺は言った。
「900JD/kgで仕入れた銅に対して、輸送コスト50JD/kg、販売コスト50JD/kgが掛かるため、売上原価(仕入単価)は1,000JD/kg。それよりも高い金額でi2が販売できないと赤字ということですね?」スミスが言った。
「そうだね。少なくとも1,000JD/kgを超える単価で販売できないと、i2は赤字になる。」と俺は答えた。
「まず、販売単価1,500JD/kgで銅を国内販売すると、売上高は月3億JD、利益は月1億JD出る。ただ、銅の国内供給量が増えているわけだから、販売単価は下がってくるはずだ。」
「そうだね。」とルイーズが言った。
「i2(仕入会社)が仕入れる銅は需要全てを賄えるだけの量ではないものの、他の商社が輸入量を増加させれば直ぐに供給量は需要量に均衡するはずだ。
仮に販売単価が毎月200JD/kg下落すると、800JD/kgまで下がるのに3.5カ月。
i2の仕入単価は1,000JD/kgなので、2.5カ月後から赤字が発生することになる。」
「今回は銅の国内価格を下げることが目的だけど、銅価格が下がるとi2に損失が発生する。悩ましいですね・・・。」とミゲルが言った。
「そうだよ。実に悩ましい。そう言えば、ルイーズに頼んでいた販売価格の予想はできた?」と俺はルイーズに聞いた。
「一応、作ってみた。この資料がそれ。販売単価を3パターンに分けて、i2の損益を計算している。」とルイーズはメンバーに配った資料(図表2-8)を指して言った。
【図表2-8:販売単価の予想と想定される利益(単位:JD/kg)】
「まず、ケース1は、銅の国内現物価格が1,500JD/kgから国際価格800JD/kgまで毎月200JD/kgずつ減少する場合の、仕入単価と利益単価を示している。1カ月目は販売単価が1,300JD/kg、仕入単価が1,120JD/kgになる。これは、外務省、国軍、内務省の手数料支払前にi2に発生する利益が450JD/kg(1,300 JD/kg-850 JD/kg)だから、利益の20%が90JD/kg。外務省、国軍、内務省に支払う手数料の最低保証単価50JD/kgを超えているから、仕入単価は1,120JD/kg (850 JD/kg+450 JD/kg×20%×3)となる。」
「最低保証付き利益連動手数料ですか。だから、仕入単価が1,000JD/kgのところと、そうでないところがあるんですね。」とミゲルが言った。
ルイーズはミゲルを無視して話を続ける。
「ケース2は、開始から2カ月で銅の国際価格800JD/kgまで下がった場合の、仕入単価と利益単価を計算したもの。ケース3は、銅の国内現物価格が1,500JD/kgから毎月100JD/kgずつ減少した場合の仕入単価と利益単価。」とルイーズは言った。
<続く>
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