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あの建物、何だったっけ?
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“ドンッ!!”
僕は下から突き上げるような衝撃で目が覚めた。
棚に積み上げてあった本は全て下に落ちている。ステレオやパソコンのモニターも。何もかもが床に散らばっていた。
これだけ物が落ちてきたのだから、相当大きな地震だったのだろう。
僕は自分の身体を確認したがケガはしていない。
床に落ちていたステレオやパソコンのモニターを確認したが壊れていない。
――壊れてなくてよかった……
バイトしたお金で買ったばかりだったから。
そう思っていたら今度は横揺れを感じた。僕はベッドから起き上がって、机の下に滑り込んだ。
もう棚から落ちてくるものもないだろうけど、天井が崩れないとは限らない。
なんせ、ここはボロい学生寮だ。
揺れが収まったから、僕はいつものようにノックもせずに隣の部屋に入った。
「シゲ、いる?」
「ホセ? いつも言ってるけど……それ、部屋に入る前に聞けや!」
「ごめんごめん。いまの地震大きかったなー」
「そうやな。俺も今起きたとこやから、ようわからん。ホセの部屋は大丈夫やったんか?」
「うん。僕の部屋は大丈夫。物は全部落ちてきたけど、ケガしてない。パソコンのモニターも無事」
シゲの部屋を見回したけど、僕の部屋と同じような感じだった。全ての物が床にぶちまけられている。
バイクのマフラーやヘッドライトなどが床に落ちているから、僕の部屋の方が安全そうだ。
「テレビでも付けてみよか?」
シゲはそういうとリモコンの電源ボタンを押した。
「あれ? 付かへんな。そっか、停電か……」
外が明るかったから、部屋の電気を付けるのも忘れていた。
あれだけの揺れだ。停電していても不思議ではない。
「ラジオ持ってる?」とシゲは僕に言った。
「持ってない」
「そっかー。他の部屋行ってみよか」
シゲはそういうと、部屋を出て廊下を歩きだした。
説明が遅くなったが、ここは〇〇大学の学生寮。大勢の学生が住んでいる。
僕はブラジルからの留学生のホセ・シルバ。24歳の大学院生だ。
僕がシゲと呼んでいたのが同じ研究室の備(そなえ) 重宏(しげひろ)。僕の隣の部屋に住んでいる。同級生だが年齢は僕よりも1歳下の23歳。
シゲは帰国子女で英語が話せたから、僕たちはすぐに仲良くなった。シゲは大学に入学する前までアメリカに住んでいて、アメリカでは「ジョージ」と呼ばれていたらしい。日本人の名前は発音しにくいからニックネームを使うことが多いのだ。
大学入学時に「ジョージと呼んでくれ」と自己紹介したら、「どこにもジョージが入ってないやん。シゲでいいんちゃう?」と同級生に言われ、それ以来、シゲと呼ばれている。
「誰かいるー?」
シゲは大声をあげて廊下を歩いていく。
学生が何人か部屋から出てきたから、シゲは「みんな大丈夫か?」と寮生に確認した。
「大丈夫です」
「シゲさん、大丈夫でしたか?」
「地震、大きかったですね」
口々にいろんなことを言っているが、要領を得ない。みんな地震で興奮しているようだ。
シゲはしかたなく要件だけ尋ねた。
「誰かラジオ持ってない?」
「無いっスね」
「たしか、2回生の奴が持ってたような気が……」
そういうと学生の一人は上の階に走って行った。
この学生寮の寮長は学部生なのだが、ちょっと頼りない。
だから、僕はシゲに提案した。
「みんなが無事か、確認した方がいいよね。みんな集会室に集まってもらったらどうかな?」
「そうだなー」
シゲはそういうと館内放送で寮生に「安全確認のため、集会室に集まってください」とアナウンスした。
アナウンスから数分、ほとんどの寮生が集会室に集まった。
「来てないヤツいる?」
シゲはみんなに聞こえるように言った。
「1回生は高橋と山本がいません」
「2回生は全員います」
「3回生は石川がいません」
「4回生は松井がいません」
「院生は全員いるでー」
いないのは高橋、山本、石井、松井の4人。
シゲは「その4人が部屋にいないか、念のために確認してきて」と後輩に指示した。
戻ってきた後輩たちは「いません!」と言った。4人は不在のようだ。
朝一からジョギングしにいく奴はこの学生寮にはいない。
バイトから返ってきていないか、彼女のところに泊まったか……そんなところだろう。
僕がそんなことを考えていたら、向こうから声が聞こえた。
「マジで!?」
「どうした?」とシゲが尋ねる。
「ラジオ放送が……えらいことなってる……」
「地震?」
「そうです。阪神高速の高架が倒れたって……」
僕は学生寮の玄関へ走って行った。この学生寮の周りに木が植えてあって中から周辺が見渡せないのだ。
学生寮は高台に建っているから、外に出れば神戸の街並みが眺められる。
僕は学生寮に接する道に出て、海の方を見た。
正面に見えるはずの阪神高速が部分的に崩れていた。
電信柱が斜めになっている。
道路の一部が盛り上がっている。
昨日まで家だったところが土砂で埋まっている。
想像していたよりも地震の規模は大きかったようだ。
僕は何をするでもなく、ボーっと街並みを見ていた。
後から出てきたシゲが「ゴジラがやってきたみたいやな」と呟いた。
ほとんどの建物は崩壊を免れたように見えたが、その中に崩壊した建物がまばらにあった。
その建物の中には、瓦礫の下に埋もれた人がいるのだろう。
崩壊した中には頑丈な建物もある。
一方で、崩れていないボロ屋もたくさんあった。
何が明暗を分けたのかは分からない。
――あの建物、何だったっけ?
僕は倒壊した建物をしばらく見ていた。
僕は下から突き上げるような衝撃で目が覚めた。
棚に積み上げてあった本は全て下に落ちている。ステレオやパソコンのモニターも。何もかもが床に散らばっていた。
これだけ物が落ちてきたのだから、相当大きな地震だったのだろう。
僕は自分の身体を確認したがケガはしていない。
床に落ちていたステレオやパソコンのモニターを確認したが壊れていない。
――壊れてなくてよかった……
バイトしたお金で買ったばかりだったから。
そう思っていたら今度は横揺れを感じた。僕はベッドから起き上がって、机の下に滑り込んだ。
もう棚から落ちてくるものもないだろうけど、天井が崩れないとは限らない。
なんせ、ここはボロい学生寮だ。
揺れが収まったから、僕はいつものようにノックもせずに隣の部屋に入った。
「シゲ、いる?」
「ホセ? いつも言ってるけど……それ、部屋に入る前に聞けや!」
「ごめんごめん。いまの地震大きかったなー」
「そうやな。俺も今起きたとこやから、ようわからん。ホセの部屋は大丈夫やったんか?」
「うん。僕の部屋は大丈夫。物は全部落ちてきたけど、ケガしてない。パソコンのモニターも無事」
シゲの部屋を見回したけど、僕の部屋と同じような感じだった。全ての物が床にぶちまけられている。
バイクのマフラーやヘッドライトなどが床に落ちているから、僕の部屋の方が安全そうだ。
「テレビでも付けてみよか?」
シゲはそういうとリモコンの電源ボタンを押した。
「あれ? 付かへんな。そっか、停電か……」
外が明るかったから、部屋の電気を付けるのも忘れていた。
あれだけの揺れだ。停電していても不思議ではない。
「ラジオ持ってる?」とシゲは僕に言った。
「持ってない」
「そっかー。他の部屋行ってみよか」
シゲはそういうと、部屋を出て廊下を歩きだした。
説明が遅くなったが、ここは〇〇大学の学生寮。大勢の学生が住んでいる。
僕はブラジルからの留学生のホセ・シルバ。24歳の大学院生だ。
僕がシゲと呼んでいたのが同じ研究室の備(そなえ) 重宏(しげひろ)。僕の隣の部屋に住んでいる。同級生だが年齢は僕よりも1歳下の23歳。
シゲは帰国子女で英語が話せたから、僕たちはすぐに仲良くなった。シゲは大学に入学する前までアメリカに住んでいて、アメリカでは「ジョージ」と呼ばれていたらしい。日本人の名前は発音しにくいからニックネームを使うことが多いのだ。
大学入学時に「ジョージと呼んでくれ」と自己紹介したら、「どこにもジョージが入ってないやん。シゲでいいんちゃう?」と同級生に言われ、それ以来、シゲと呼ばれている。
「誰かいるー?」
シゲは大声をあげて廊下を歩いていく。
学生が何人か部屋から出てきたから、シゲは「みんな大丈夫か?」と寮生に確認した。
「大丈夫です」
「シゲさん、大丈夫でしたか?」
「地震、大きかったですね」
口々にいろんなことを言っているが、要領を得ない。みんな地震で興奮しているようだ。
シゲはしかたなく要件だけ尋ねた。
「誰かラジオ持ってない?」
「無いっスね」
「たしか、2回生の奴が持ってたような気が……」
そういうと学生の一人は上の階に走って行った。
この学生寮の寮長は学部生なのだが、ちょっと頼りない。
だから、僕はシゲに提案した。
「みんなが無事か、確認した方がいいよね。みんな集会室に集まってもらったらどうかな?」
「そうだなー」
シゲはそういうと館内放送で寮生に「安全確認のため、集会室に集まってください」とアナウンスした。
アナウンスから数分、ほとんどの寮生が集会室に集まった。
「来てないヤツいる?」
シゲはみんなに聞こえるように言った。
「1回生は高橋と山本がいません」
「2回生は全員います」
「3回生は石川がいません」
「4回生は松井がいません」
「院生は全員いるでー」
いないのは高橋、山本、石井、松井の4人。
シゲは「その4人が部屋にいないか、念のために確認してきて」と後輩に指示した。
戻ってきた後輩たちは「いません!」と言った。4人は不在のようだ。
朝一からジョギングしにいく奴はこの学生寮にはいない。
バイトから返ってきていないか、彼女のところに泊まったか……そんなところだろう。
僕がそんなことを考えていたら、向こうから声が聞こえた。
「マジで!?」
「どうした?」とシゲが尋ねる。
「ラジオ放送が……えらいことなってる……」
「地震?」
「そうです。阪神高速の高架が倒れたって……」
僕は学生寮の玄関へ走って行った。この学生寮の周りに木が植えてあって中から周辺が見渡せないのだ。
学生寮は高台に建っているから、外に出れば神戸の街並みが眺められる。
僕は学生寮に接する道に出て、海の方を見た。
正面に見えるはずの阪神高速が部分的に崩れていた。
電信柱が斜めになっている。
道路の一部が盛り上がっている。
昨日まで家だったところが土砂で埋まっている。
想像していたよりも地震の規模は大きかったようだ。
僕は何をするでもなく、ボーっと街並みを見ていた。
後から出てきたシゲが「ゴジラがやってきたみたいやな」と呟いた。
ほとんどの建物は崩壊を免れたように見えたが、その中に崩壊した建物がまばらにあった。
その建物の中には、瓦礫の下に埋もれた人がいるのだろう。
崩壊した中には頑丈な建物もある。
一方で、崩れていないボロ屋もたくさんあった。
何が明暗を分けたのかは分からない。
――あの建物、何だったっけ?
僕は倒壊した建物をしばらく見ていた。
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