僕と猫と明珍火箸 ー 勝手に他人の半生を書いてみた

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お菊さんの正体

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(10)お菊さんの正体

お菊さんは死んでいない・・・。

お菊さんを成仏させるために仮説を立て、その仮説に対する除霊方法を検討してきた武の努力は無駄に終わった。

武は念のためにアオヤマに聞いた。

「アオヤマは、お菊さんが幽霊じゃないって知ってたの?」

「知ってるわけない。この中で一番驚いてるのは俺だ。」とアオヤマは言った。

「そうか。アオヤマも知らなかったんだ・・・。」

「幽霊じゃなかったら除霊できないよな?青山家はこれからどうしたらいいんだ?」

「だよなー。」

お菊さんは武と猫が話しているのを興味深く見ている。

「ねえ、武くん・・・。」とお菊さんは言った。

「なに?」

「さっきから気になってたんだけど・・・、ひょっとして猫と話してる?」

「そうだよ。僕、猫語が分かるから。」と武は答えた。

「武くん凄いなー。改造人間のクローン人間で、さらに猫とも話せるのかー。」

お菊さんは武に興味を持ったようだ。

「そうだね。猫と話せるのは遺伝らしい。僕の父親が話せて、僕はその父親のクローンだから。」

「それで、猫と何を話してたの?」お菊さんは武に質問した。

「ああ、この猫はアオヤマって言って、青山家の猫なんだけど・・・。アオヤマもお菊さんが幽霊じゃないって知らなかったんだ。」

「そうね。私のことを知っている人は・・・、もういないでしょうね。」とお菊さんは悲しそうに言った。

「どうしたの?」と武は心配して聞いた。

「青山家の人間は私の子孫なのよ。」

「え?お菊さんは青山家の人間なの?」

「説明が難しいな・・・。私は青山鉄山(てつざん)の妾(めかけ)だったの。」

武の記憶では、お菊さんを殺したのが青山鉄山だ。

「青山鉄山はお菊さんを殺した張本人だよね?」

「だから、殺してないって・・・。私、死んでないから。」

「そうだった。お菊さんは死んでなかった・・・。」

武は混乱してきた。

・お菊さんは青山鉄山の妾。
・青山家の人間は鉄山と妾(お菊さん)の子孫。

お菊さんは何者なんだろう?

考えても分からないから、武はお菊さんに聞くことにした。

「お菊さんは何者なの?」

「私?私はアヤカシ (妖怪)の一種ね。武くんが知ってそうな言い方をすれば、雪女かな。」

「雪女?お菊さんが?」

「そうよ。伝承されている雪女とは違うけどね。」

「伝承とは違う雪女・・・。雪が無くても平気なの?」

「雪は必要ないわね。何なら私は寒いところが苦手。」

「変な雪女だなー。」

「武くん、小泉八雲は知ってる?」

※小泉八雲(Patrick Lafcadio Hearn)はギリシャ生まれの新聞記者(探訪記者)、紀行文作家、随筆家、小説家、日本研究家、英文学者。

「知ってるよ。雪女は普通の人間と結婚して、子供を10人も産んだ。」

「そうそう。雪女は人間にはない能力が少しあるけど、それ以外は普通の人間と変わらないの。」

「へー。さっき水蒸気の膜を作ったのは雪女の特殊能力?」

「そう。空気中の水分を操作できる。あと、人間と決定的に違うのは寿命かな・・・。」お菊さんは悲しそうに言った。

「寿命かー。女性に歳を聞くのは失礼だと思うけど、お菊さんは何歳なの?」

「ほんと失礼ね。まあ、いいわ。700歳くらい。」

「長生きだねー。西洋のエルフみたい。」

「そうね。エルフも寿命は長いって聞くわね。私は会ったことないけど。」

「じゃあ、青山鉄山に会ったのはお菊さんが300歳くらいかな?」

「そうね。確か、325歳だったと思う・・・。」

そう言うと、お菊さんは400年前の出来事を話し始めた。
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