『おっさんの元勇者』~Sランクの冒険者はギルドから戦力外通告を言い渡される~

川嶋マサヒロ

文字の大きさ
75 / 116
第三章「街を守る男」

第七十五話「デフロットの見せ場」

しおりを挟む
「ギャラリーが多いな。手出し無用、横取り無用だぜ。分かってるな?」
「苦戦しなければな」
「ふん……、見てろよ!」

 ベルナールたちはラ・ロッシュ開口入り口に集結した。

 本日の主役であるデフロットはいつもと同じで気合いが入っている。自分を鼓舞するようにベルナールにいつもの悪態をついた。

 他にバスティのパーティー、ギルドマスターのエルワン、レディスとアルマが見学に加わる。ゴースト三体を退けた豪華戦力であり、応援なら十分すぎるくらいだ。

「さあ、行きましょうか」

 エルワンの先導で一気に第六階層まで降りて、一行は最奥の巨大ホールへと向かった。


 封鎖バリケードの前では警備隊員たちが警戒している。隊長のマークスが手を上げた。

「おおっ、やっと来たか」
「どうだ、様子は?」
「今は静かだがな。さっさと倒しちまってくれ!」

 バリケードが外され、デフロットを先頭にパーティーがホール入り口へと向かう。

「なんだ、デフロットのパーティーだけでやるのか?」
「何だって何だよ! 悪いか?」
「いや、倒せるならばそれで良い。頼むぞっ!」
「ああ、任せてくれっ!」

 最初は不審がったマークスも慣れたもので、挑戦者の気分を上手に盛り上げる。

 続けてベルナールたちも中に入り、再びバリケードは閉じられた。マニュアル通りの仕事ぶりでベルナールは苦笑する。この戦力で敗退などはあり得ない。


 ホールの最奥に膝を抱えるように座る黒い巨人がいた。立派な巻き角はA級の証である。

 そのミタウロスはこちら脅威を感じてゆっくりと立ち上がった。眠りを妨げられ不機嫌そうに首を振ってから咆哮する。ビリビリと空気の振動が伝わって来る程だ。

 レディスが右手を差し出すとキラキラと輝く透明な障壁膜が展開する。

「私が皆様を完璧に御守りしますわ」
「凄い……」

 セシールはその強さを感じて溜息をつく。レディスがそう言うならば完璧なのだろう。


「よーし、行くぜっ!」

 デフロットは剣を抜いて一人で突っ込んだ。愚直にもいつもの戦法を崩さないようだ。そして雄叫びを上げる。

「おおおっ――! 来やがれっ!」

 飛び上がってお決まりの最初の一撃を加えるが、ミノタウロスは片手でそれを軽く防ぐ。魔力がぶつかり合う光の中、デフロットは体を捻って回転し腕を切り飛ばしにかかるが、その剣は防御機能を持つ毛皮にくい込みもしない。

「チッ!」

 ミノタウロスは丸太のような腕を振り回し、デフロットは剣と体裁きでそれを交わす。魔力を溜めつつ制御する時間を稼いだ。

「制御、制御だ……」

 そう呟きながら防御と次なる攻撃に集中した。いつもならば安易に魔力を放出する自分を戒める。

 引いた剣がいきなり炎を吹き出し、そして今回は一瞬で収束する。デフロットはその光の剣をミノタウロスの眉間に突き立てた。

「こなくそっ!」

 そのまま胴体まで切り下ろそうとするが、ミノタウロスは両手でデフロットをつかみにかかる。支援の障壁が張られるが、それごと動きを封じられた。

 障壁にヒビが入り、続いてミノタウロスは横殴りに拳で殴りつける。

「うおっ!」

 デフロットはそのまま空中を飛ばされホールの壁に激突した。猛然と突っ込むミノタウロスを寸前で交わし、仲間の魔法で引き戻されて脱出を果たしす。

 戦いは仕切り直しとなった。


「はあ……」

 緊迫のぶつかり合いは小休止となり、アルマは吐息をついて一呼吸する。

「なあ、ベル。冒険者は良いな?」
「そうか?」
「騎士団では、このように戦わせてもらえん!」
「なるほどね」

 人間同士の一騎打ちはしても、魔物には団として対処するのが騎士だ。冒険者もパーティー単位で戦うが、攻撃をデフロット一人に任せるこの戦法は独特である。

 睨み合いが終り再び戦が始まった。ミノタウロスが両拳を逆落としに放ち、デフロットは地上で器用に避ける。時には剣で受け、魔力が火花となって散った。

 ぶつかり合いは膠着に陥り、互いに次の手の内を探る時間が過ぎる。

 デフロットたちの魔力は徐々に消耗するが、ミノタウロスには巨大ホールの壁に張り付いている魔核が力を供給していた。長引けば長引くほど冒険者は不利なのだ。

 圧力をかけ続けるミノタウロス角が怪しく光り、再びの咆哮と共に口から魔力の噴流が吐き出された。それは空中に避けるデフロットを追って角度を変える。

 魔力の咆哮がベルナールたちを襲う。しかしレディスが新たに作り出した障壁が難なく防ぐ。

「もう一度やるぞっ!」

 今度は仲間たちの魔撃援護が加わる。それぞれが得意とする攻撃が連続してミノタウロスを襲い、一瞬の隙が出来た。デフロットはそれを見逃さない。

 再び光の剣の攻撃が、防御にまわったミノタウロスの腕に突き刺さり破裂させる。更にもう一撃が残った片方の腕を打ち砕いた。

「こいつで最後だっ!」

 防御力を消失したA級の魔物は深々と胸から腹にかけて切り裂かれた。デフロットは地上に降り立ち、ふらつきながら後退する。

 ミノタウロスの腹から魔核がこぼれ落ち巨体が崩れ落ちた。

「くわっ、やったぜ! どうだ、倒したぞ!」

 ギリギリで魔力切れを起こしたデフロットは、尻もちをついてから後ろを向いた。少々無様ではあるが見事な勝利である。

「やるなあ、あの剣一本に全ての力を集めるなんて……」
「その一人に意識を集中させておいて、仲間が攻撃してから最後の一撃なのね」

 バスティとアレクの場合は二人一対でこの仕事をこなしているのだ。


「私たちはそろそろ行きましょうか」
「うむ、良い戦が見れた」

 レディスとアルマはそう話してからベルナールに向き直る。

「では私たちは駐屯地に帰還いたします」
「ああ、もう一人の副団長によろしく言っといてくれ」

 ベルナールとしては、シャングリラ開拓地の安全を徹底して欲しいとのよろしく・・・・である。

「心得ておりますわ。色々とお世話になりました」
「デフロット、また共に戦おうぞ」
「おう、ダンジョンが恋しくなったら遊びに来な!」

 デフロットは立ち上がりながら右手を挙げ、パーティーの仲間が駆け寄る。

 ギルドマスターのエルワンに挨拶してレディスとアルマは地上に向かった。


 それからベルナールたちは個別のパーティーに分かれてクエストに勤しんだ。

 アレットは戦の余韻を引きずっているのか、少し攻撃に力が入りすぎている。ベルナールはその動きを目で追った。

「ふむ……」

 夕刻も近くなり、クエストを終えたパーティーが続々と地上を目指す。その中にベルナールたちもいた。外界に出て森の道を歩く。

「アレット、そろそろ剣を変えようか?」
「良いんですか?」
「もう物足りんだろう。もう少し重くて――長さは……」

 この娘の剣は重さよりも一撃の早さだと思うが、それにしても前に出たがるのは剣に負担を感じていないからであろう。どうすべきかベルナールは考えがまとまらない。

「ちょっと考えようか。色々選んで振ってみると良い。それから決めよう」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

チャビューヘ
ファンタジー
いいね、ブックマークで応援いつもありがとうございます! ある日突然、クラス全員が異世界に召喚された。 この世界では「職業ガチャ」で与えられた職業がすべてを決める。勇者、魔法使い、騎士――次々と強職を引き当てるクラスメイトたち。だが俺、蒼井拓海が引いたのは「情報分析官」。幼馴染の白石美咲は「清掃員」。 戦闘力ゼロ。 「お前らは足手まといだ」「誰もお荷物を抱えたくない」 親友にすら見捨てられ、パーティ編成から弾かれた俺たちは、たった二人で最低難易度ダンジョンに挑むしかなかった。案の定、モンスターに追われ、逃げ惑い――挙句、偶然遭遇したクラスメイトには囮として利用された。 「感謝するぜ、囮として」 嘲笑と共に去っていく彼ら。絶望の中、俺たちは偶然ダンジョンの最深部へ転落する。 そこで出会ったのは、銀髪の美少女ダンジョン主・リリア。 「あなたたち……私のダンジョンで働かない?」 情報分析でダンジョン構造を最適化し、清掃で魔力循環を改善する。気づけば生産効率は30%向上し、俺たちは魔王軍の特別顧問にまで成り上がっていた。 かつて俺たちを見下したクラスメイトたちは、ダンジョン攻略で消耗し、苦しんでいる。 見ろ、これが「外れ職」の本当の力だ――逆転と成り上がり、そして痛快なざまぁ劇が、今始まる。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

処理中です...