新創生戦記「休学ニートのチートでハーレムな異世界ファンタジー」

川嶋マサヒロ

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第一話「再びの、夢の異世界」

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 深い森、それは現実世界の人間が見れば違和感を覚えるおかしな森だった。針葉樹の真っ直ぐな木がそびえ立ち、その中に混ざり、何本かの広葉樹が曲がりくねり生い茂る。足元は手入れされたような綺麗な芝生で、所々に鮮やかな花が咲き乱れていた。

「ふーん、今回は森の中なんだ……」

 この夢の世界にまたしても転移者が現れた。その少年は辺りを見回して、この奇妙な森を創造したのはどんな人間かと考えた。とりあえず高台で見晴らしの良い場所を目指して歩き始める。

「ああ、あそこに街が有る。小さいね、まあ、あそこを目指すか、たいして遠くはないね」

 だいたいの方向に見当をつけて歩き始めると小さな道を見つけた。しばらく歩くとガラの悪そうな三人の男が突然目の前に現れる。少年は強盗や野盗の類とあたりを付けた。
 どこの世界にもこんな輩はいる。金が存在しないこの夢の世界にも、弱者を襲って自己満足するだけの人間が大勢居るだけの話だ。

「なんだ、ただのガキが一人か」

「女じゃないなら楽しみも半減だな」

「ガキなら男でも奴隷で売れるぜ」

 少年はため息をついて木の枝に手を伸ばし、それを折って片手で構える。

「かかってきな、屑で雑魚の三人組さん」

 野盗の三人は顔を見合わせる。

「こいつ、馬鹿か?」

「状況が分かってんのかね」

 少年はまた、ため息をついた。

「いいから、さっさとかかってこいよ、俺は忙しいんだ!」

 三人は一瞬間を置いて笑い始めた。

「ああ、お望み通り切り刻んでやるよ」

「奴隷で売るのは止めだ……」

 両手で剣を握りしめて切りかかった男は、少年の小枝一振りに切り裂かれて絶命した。続いてもう一人も瞬時に首を切り飛ばされる。

「ひっ、ひい……」

 残りの一人は小さな悲鳴を上げて立ちすくむ、目の前の現実を信じられないと言った表情で見つめ足をガクガクと震わせている。
 少年はその男の前に歩み寄り小枝を交差させて軽く振った。男の体は賽の目状に切り裂かれ、肉塊が吐き気を催すような音をたてて地面に崩れ落ちる。

「ふーーん、先が少し枝分かれしているから、切っ先が幾つもになったのか……」

 少年は原型を留めていない死体を見降ろし呟いた。

「こりゃあ三人とも、現実の世界でも死んだね」

 少年は持っていた小枝をバラバラ死体の上に投げ捨てまた歩き始める。森が終わり農地になり、遠くに小さな建物が幾つか見えた。
 石造りと木造の建物が混在し、石畳の道が続く中世、と言うよりヨーロッパの何処かの片田舎を思わせる雰囲気、少年にとっては三年ぶりの懐かしい風景だった。
 小さな街の中心部に着くと日は暮れかかっていて、少年は目に着いた宿に予約を入れてから近くの酒場に入った。

「懐かしいね、この雰囲気」

 街の人らしき客が数人テーブル席に座っていた。少年はカウンターに座る。

「ミルク……、いやビールを下さい」

「お客さんはこの世界に来たばかりだね」

「ああ、やっぱり分かるかなあ、さっき森の中にね、三年ぶりだよ」

「二回目とは珍しいな……」

 中年のマスターは少年にビールグラスを差し出した。

「この街に戦士は居るの?」

「いや、居ないね、近隣の街に戦士が居るし、魔人はあらかた退治されたし、それにここは街じゃなくて村だしな」

「ふーん、魔人も戦士も居ないのか、平和な村だなあ」

「それがそうでもないんだ、魔人より厄介な連中が近くにいて皆困っている」

 マスターが苦々しい表情をしていたので、少年は森の中で遭遇した三人組を思い出した。

「森の中で三人組の野盗みたいなのに会ったけど、そいつらの事?」

「ああ、もう一カ月以上になるか、あの連中が森の奥の廃山荘に居着いてしまってな、ならず者の集団よ、ところであんた、よく無事だったな」

「まあね、そんなに悪い奴らなの?」

「人さらい、暴行、殺人、強盗、何でもやる連中さ、他の街での締め付けが厳しくなったんでこの辺に流れて来たんだ。三十人以上は居るか……、さらって来た人間も何人か山荘に居るらしい、獣みたいな連中よ」

 マスターは吐き捨てるように説明し、他の客もこの話を聞きながら頷き合い、ならず者の集団について話し合っていた。

「……じゃあその野党の集団をぶち殺そう、人を三人殺すも、三十人殺すも同じだしね」

 酒場の中は静まり返った。

「無理だよ……」

「武器もないのに」

「たった一人でか?」

「ちょっと待て、三人殺したって?」

 マスターが驚いた顔で確認する。

「ええ、ところでこの村には武器屋は有るの?」

「こんな小さな村だし、道具屋が少し武器を置いているくらいだな、すぐ先にあるよ」

 マスターは宿の反対方向を親指で指す。

「じゃあ明日は朝一でその道具屋に行って、それからならず者退治だ」

 軽口をたたく少年を、店主と客たちは半信半疑で見つめる。

「あんた明日死ぬかもしれないしな……、一応、名前を聞いておこうか?」

「シンジ、……元最強戦士のシンジだ」


 翌朝、宿を出たシンジが道具屋の前に行くと酒場のマスターが待っていた。

「なんだか焚きつけたみたいで寝ざめが悪くてなあ、付き合うよ」

マスターは道具屋の扉を開けて主人を呼ぶ。

「おい、親父さん、客だぞ」

「なんだよ、朝っぱらから、俺はいま来たばかりなんだぞ」

 奥から初老の店主が現れた。シンジは小さな店内を眺めているが、目に着くのは道具屋と言うだけあって農機具や鉈などの道具ばかりだった。若干短めの剣が何本か無造作に棚に置かれている。シンジはその中の一本を手に取った。

「この戦士が野盗退治をしてくれるんだ。何か武器はないか」

「戦士? この子供がか?」

 道具屋の親父は剣を手に取っているシンジを見ながら呟いた。

「ただの剣か……、これもだな、人間退治には充分だけど普通以上の魔人相手にはちょっときついね、ここには戦士が使う武器は置いていないのかな? 聖剣とか魔法が封印されているとか、贅沢は言わないよ」

「聖剣に魔法封印か、若いのによく知っているな、使った事はあるのか?」

「聖剣は無い、魔法は雷撃だけ……」

「ホラ吹きが……、ちょっと待ってな」

 主人は奥に行き、布で包まれた剣を持ってきた。

「見てみろ」

 シンジは差し出された剣の包みを解く。

「百年近くも前の話だ。俺の爺さんの道具屋にある戦士と三人の聖母がやってきてこの剣を置いて行った。もう戦わないので、この剣を次の戦士に託して欲しいってな、四人はどこかに行ってしまったそうだ……」

「ああ、前に店に来てそんな話をしていたな……、で、どうなんだシンジ、使えそうか?」

 マスターが心配そうに横で見ながら声をかける。シンジは剣を抜いて眺める。片面に一人、もう片面に二人、女性のレリーフが飾られていた。

「結局、爺さんの元に次の戦士は現れず、親父の時代にも、俺の代になっても戦士はやって来なかった。当然だ、ここは田舎の道具屋だしこの辺りに転移してくる戦士も居ないんだからな」

「充分使えると思う、俺でいいのかな? 次の戦士とやらは」

「ああ、俺の子供には転移者がいない、この道具屋も俺の代で終わりだ。その戦士はけっこう有名だったらしいぞ、お前も活躍出来るよ」

「ありがたい、聖剣か魔法が封印されているかどうかは分からないが、これで戦えるよ、それにしても三人もの聖母を従えた戦士の剣か、本当ならすごい話だね」

 二人で道具屋を出て酒場への道を歩く、元から付けていたベルトには剣と太腿を守る革製のプロテクターが取り付けられ、同じくもらった皮製の上着を羽織る。酒場に着くと昨夜の客が店の前に集まっていた。

「皆集まってどうしたんだ、見ろよ、道具屋の親父さんが、とっておきの剣を出してくれたぞ」

「いや、本当に行くのかと思ってよ、剣が手に入ったのか」

「腰に剣を下げていると本物の戦士見えるなあ」

 シンジは苦笑した。戦士にとって人間など、たとえ三十人が相手でも、初めてのお使い以下の簡単な仕事だ。
 その山荘のだいたいの場所を聞く、昨日歩いてきた道の途中から分岐した先に有るらしい、大した距離ではなさそうだ。

「じゃあ、ちょっと行ってくる。助け出した人の世話はよろしく頼むよ」


 シンジは森の中を歩き目的の場所を目指す。小道の分岐からより険しい道に入り、しばらく歩くと森が開けてきてそれらしき建物が見えた。

「ここか」

 石造りの一階に木造の二階が乗っている。薄汚れているのはこの山荘が廃棄されているからだ。創造主がいなくなってもうずいぶん経つのだろう、間口は二十メートル程ある。一階の面積だけで充分三十人を収容出来そうだった。

「さてと……」

 シンジは特に作戦も考えず、玄関の前に立ち、迷わず扉を蹴破った。
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