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決意の朝

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「ねえ。アリア。お願いだから一緒に居て」

 もやもやしながらも、自分の家に戻ろうとしたアリアをサリアが引き留める。まだ、不安が消し去ったわけではない。仕方がない。

「うん。分かった。一緒に居よ」

 てっきりアリア自身が儀式に行くものだと思っていたのに、拍子抜けしてしまっていた。私はここにいていいのだろうか。

「なあ。アリア。大丈夫か?」

 そんなアリアとサリアを引き留めたのはアロンだ。彼は村を見回りながら騎士団の帰りを待つと言っていたのに。

「うん。みんな助かるね。よかった」

 アロンが戸惑ったのが分かった。首筋を裏を右手で掻いている。それはアロンが困った時の癖だ。

「そうじゃなくてさ。儀式の話。アリアは自分でやりたいんだろ」
「なによ。私がいなくなった方がいいってこと?」

 そうでないことはアリアも分かっている。今置かれている状況についていけていないイライラをぶつけたに過ぎない。

「違うって。だって俺は……」

 アロンは黙ってしまった。

「私は先、帰ってるね。その方がいいみたいだし。でもアリア。ずっと一緒に居ようね」

 サリアが先ほどまで震えていたのに、走り始めた。強がってでもふたりにしたいらしい。

 サリアは儀式の事を詳しくは知らない。生まれてから儀式が執り行われたことがないからだ。でもきっと薄々気が付いてる。

「アリアってどうしたいんだ?」
「えっ。なに、急に」

 言われて少し考えてみたけれど、うまく言葉にできそうにない。

「私は村のみんなが平和に暮らせたらそれでいい」
「はぁ。それってアリアの想いって言うより村長やアリアの両親の影響だろ。じゃなくってさ。アリア自信がやりたいって思ってることだよ」

 言われて出てきたのはアウレールの顔だった。整っているのに、どこか不安定で、子どもっぽい印象もある。全部を背負ってしまっているような印象もほっとけない。でもそんな彼の事をアリアはまだ何も知らない。

 好きなため物も、嫌いな物も、女性の好みだって何も知らない。

「まさかと思ってたけど、アリアってそんな簡単に惚れるやつだったのか」
「ちょ、ちょっと何を言って」
「あーいい。いい。隠すな、隠すな。余計にこっちがみじめになる。で、そしたらやることは?」

 みんなの前に立ちはだかった娘を思い返す。彼女は偉い。あんな小さい身体で、怖かっただろうに勇気を振り絞ってあそこに立った。昨日も、今日もだ。自分の感情に素直に従った。

「私、彼を助けたい」

 そうしたら、代わりになるのはアリアだ。でも最初からそのつもりだったのだ。

「まっ。そうくるよな。方法も分からないし、どうなっても知らないけどさ。とりえあず連れて行ってやるよ」
「ね。アロンってどうして私にそこまでしてくれるの?」

 当然の質問をアリアはしたのだけれど、アロンからの返答はない。代わり与えられたのは小振りなナイフだ。

「それもってな。無いよりマシだろ」
「う、うん。ありがとう」
「村長は騎士団についていったし、残った騎士団も警戒のために散っているから、大樹に向かうのは比較的簡単そうだ。ほら、いくぜ」

 アロンに誘導されながら村を出る。サリアの事が気になったので、頭を下げてありがとうと、小さくつぶやいた。
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