32 / 45
第28話 迫られた選択
しおりを挟む
選べない。それが少女の最初に抱いた感想だ。望んだ状態に戻せるなんて聞いていない。そして、どちらの探偵さんかなんて選べっこない。選んでしまえばそれはどちらかを殺すと言うことに他ならない。
どちらかが探偵さんでどちらかが探偵さんじゃないなんてことはない。どちらも探偵さんで。どちらかが先でどちらかが後だからなんて理由でどちらかを選ぶなんてこともできない。
「選べないだろう?」
お医者さんはそれを分かっていて質問してきているのだ。
「そうね。そのお通り選べない。だからこそ、リセットなんて止めるべき」
それはそもそもリセットなんてことをするから起きていること。リセットなんてしなければ探偵さんは探偵さんのままでいられたはずなのだ。それはほかのアンドロイドたちも一緒。
「リセットを行わなかった世界がどうなるか分かるか?」
「どういうこと? どうにもならないでしょう。時間の経過とともに発展し、生活が続くだけ。そしていずれ終わりを迎える。それのなにがダメなの?」
「そうだな。アンドロイドたちは時間とともに老化をしない。それが人間との一番の違いだ。それが何を起こすか考えれば分かるだろ? 街のアンドロイドたちは自分たちがアンドロイドだと知らないで生活している。知らないからこそ成り立っている社会でもある。その身体が動けなくなる前におかしいと気が付く。自分たちが人間じゃないとね。そうなれば悲惨な光景が繰り広げられる寸前だ」
お医者さんは少し興奮しているようにも見える。まるで少女を歓迎するかのように話が続く。
「自分たちがアンドロイドだと気が付いたやつらはなぜか自傷行為ののちに自己の破壊にまで及ぶんだよ。そうなると手が付けられない。それを見た連中も同じように自己破壊へと向かう。そこに待っているのは地獄だ。人間として設定されたアンドロイドたちは自分がアンドロイドだと知ることを耐えられないんだよ」
「それは過去にあった出来事なの?」
まるで見てきたような言い方。であれば、それはきっと起こってしまった出来事なのだろう。それが原因でリセットと言う機能が生まれた。だから、リセットを許容しろと言うのか。
「ああ。そして地獄はそこからだよ。自己破壊に至った個体にリセットは通用しない。理由は分からないがリセットが行われずすぐさま自己破壊へと至る。それこそ無限に続くループだよ」
「なにそれ。そんなこと信じられない」
「だが事実だ。なんなら映像を見せてあげてもいい。それにキミが耐えられるとは思えないからおすすめはしないよ。素直に信じるのがキミのためだ」
「それじゃあ、今。街にいるアンドロイドたちはどうしたの? そんなことが起こったのなら絶滅していてもおかしくない」
連鎖すると言うのであればそれは爆発的に広がっていったはずだ。管理者たちですら成す術もなかったはずだ。
「ああ。だから本来、存在しうるはずだったアンドロイドの九割が消滅している。守れたのはこの街の連中だけ。そう言うことさ」
世界中にこの街にみたいな場所が存在しないのはそれが理由なのか。すべて滅んでしまったと。でも、戦争は行われている。確かにアンドロイドも生活していた彼らは何だと言うのだ?
「じゃあ、街の外にいるのは……」
「この街の外にいる連中はコピーを繰り返してようやく作り出した個体だ。そして人間としてではなく初めからアンドロイドとしての設定を行っている。人間だと言う思い込みさえなければ問題はない」
「探偵さんは? 探偵さんは自分がアンドロイドだと知ってもそんなことにはならなかった」
「あれはこちらからそう仕向けたから問題がないのだ。言っただろ? 自分で考え、疑問を持ち始め、自分でその答えにたどり着いた連中がそうなっていんだ。連鎖するのはきっかけでしかない。そこまで成熟した個体があふれている状態と言うこと。だからリセットをしない、なんてことはできないんだよ。分かっただろ?」
お医者さんはすべてを吐き出したのか大きく息を吸い込んでいる。理解はした。でも、だからと言って、こんな風に繰り返されるリセットで身勝手になかったことにされてしまうアンドロイドたちがいることを許容はできない。
「その上でもう一度問おう。今ここにいる探偵の人格を選びたまえ。約束だ。元通りにもできる」
「それは……」
少女と過ごした探偵さんは三つ。セントラルへと連れてきてくれた探偵さん。街でドタバタしながらもわいわいと楽しく過ごした探偵さん。もう一度セントラルへ来るために利用した探偵さん。少女からすればすべてが探偵さんで選ぶようなものじゃない。
「分からない。探偵さんは探偵さんで。どの探偵さんを選ぶかなんてそんなこと」
「そうだろうな。それと同じだよ。僕たちは選ぶことなんてできない。すべての事に対して無力だ。人間と同じようには出来ない。だからリセットは必要だし、そこから抜け出すために成長するアンドロイドが必要だ。その協力をキミにお願いしているだけ。それがおかしなこととは思えないだろう?」
その通りだ。お医者さんも今の状況がいいことだとは言っていない。この状況を打破するために仕方なくリセットを繰り返しているだけだと。そう言っているのだ。であれば少女が協力しない理由なんてやっぱりないのではないか。
見ないふりをすればいい。それは街で過ごしたリセットの中でも経験したではないか。探偵さんと出会わないようにして、過ごした。それと同じことをこの塔の中でし続けるだけ。そのうちに成長するアンドロイドが生まれたら、それでめでたしめでたしだ。自分がアンドロイドだと気が付かない人間の振りをした完璧なアンドロイドが生まれる。それが理想じゃないか。
頭では分かっているのに。何かが少女のその考えを否定していた。
どちらかが探偵さんでどちらかが探偵さんじゃないなんてことはない。どちらも探偵さんで。どちらかが先でどちらかが後だからなんて理由でどちらかを選ぶなんてこともできない。
「選べないだろう?」
お医者さんはそれを分かっていて質問してきているのだ。
「そうね。そのお通り選べない。だからこそ、リセットなんて止めるべき」
それはそもそもリセットなんてことをするから起きていること。リセットなんてしなければ探偵さんは探偵さんのままでいられたはずなのだ。それはほかのアンドロイドたちも一緒。
「リセットを行わなかった世界がどうなるか分かるか?」
「どういうこと? どうにもならないでしょう。時間の経過とともに発展し、生活が続くだけ。そしていずれ終わりを迎える。それのなにがダメなの?」
「そうだな。アンドロイドたちは時間とともに老化をしない。それが人間との一番の違いだ。それが何を起こすか考えれば分かるだろ? 街のアンドロイドたちは自分たちがアンドロイドだと知らないで生活している。知らないからこそ成り立っている社会でもある。その身体が動けなくなる前におかしいと気が付く。自分たちが人間じゃないとね。そうなれば悲惨な光景が繰り広げられる寸前だ」
お医者さんは少し興奮しているようにも見える。まるで少女を歓迎するかのように話が続く。
「自分たちがアンドロイドだと気が付いたやつらはなぜか自傷行為ののちに自己の破壊にまで及ぶんだよ。そうなると手が付けられない。それを見た連中も同じように自己破壊へと向かう。そこに待っているのは地獄だ。人間として設定されたアンドロイドたちは自分がアンドロイドだと知ることを耐えられないんだよ」
「それは過去にあった出来事なの?」
まるで見てきたような言い方。であれば、それはきっと起こってしまった出来事なのだろう。それが原因でリセットと言う機能が生まれた。だから、リセットを許容しろと言うのか。
「ああ。そして地獄はそこからだよ。自己破壊に至った個体にリセットは通用しない。理由は分からないがリセットが行われずすぐさま自己破壊へと至る。それこそ無限に続くループだよ」
「なにそれ。そんなこと信じられない」
「だが事実だ。なんなら映像を見せてあげてもいい。それにキミが耐えられるとは思えないからおすすめはしないよ。素直に信じるのがキミのためだ」
「それじゃあ、今。街にいるアンドロイドたちはどうしたの? そんなことが起こったのなら絶滅していてもおかしくない」
連鎖すると言うのであればそれは爆発的に広がっていったはずだ。管理者たちですら成す術もなかったはずだ。
「ああ。だから本来、存在しうるはずだったアンドロイドの九割が消滅している。守れたのはこの街の連中だけ。そう言うことさ」
世界中にこの街にみたいな場所が存在しないのはそれが理由なのか。すべて滅んでしまったと。でも、戦争は行われている。確かにアンドロイドも生活していた彼らは何だと言うのだ?
「じゃあ、街の外にいるのは……」
「この街の外にいる連中はコピーを繰り返してようやく作り出した個体だ。そして人間としてではなく初めからアンドロイドとしての設定を行っている。人間だと言う思い込みさえなければ問題はない」
「探偵さんは? 探偵さんは自分がアンドロイドだと知ってもそんなことにはならなかった」
「あれはこちらからそう仕向けたから問題がないのだ。言っただろ? 自分で考え、疑問を持ち始め、自分でその答えにたどり着いた連中がそうなっていんだ。連鎖するのはきっかけでしかない。そこまで成熟した個体があふれている状態と言うこと。だからリセットをしない、なんてことはできないんだよ。分かっただろ?」
お医者さんはすべてを吐き出したのか大きく息を吸い込んでいる。理解はした。でも、だからと言って、こんな風に繰り返されるリセットで身勝手になかったことにされてしまうアンドロイドたちがいることを許容はできない。
「その上でもう一度問おう。今ここにいる探偵の人格を選びたまえ。約束だ。元通りにもできる」
「それは……」
少女と過ごした探偵さんは三つ。セントラルへと連れてきてくれた探偵さん。街でドタバタしながらもわいわいと楽しく過ごした探偵さん。もう一度セントラルへ来るために利用した探偵さん。少女からすればすべてが探偵さんで選ぶようなものじゃない。
「分からない。探偵さんは探偵さんで。どの探偵さんを選ぶかなんてそんなこと」
「そうだろうな。それと同じだよ。僕たちは選ぶことなんてできない。すべての事に対して無力だ。人間と同じようには出来ない。だからリセットは必要だし、そこから抜け出すために成長するアンドロイドが必要だ。その協力をキミにお願いしているだけ。それがおかしなこととは思えないだろう?」
その通りだ。お医者さんも今の状況がいいことだとは言っていない。この状況を打破するために仕方なくリセットを繰り返しているだけだと。そう言っているのだ。であれば少女が協力しない理由なんてやっぱりないのではないか。
見ないふりをすればいい。それは街で過ごしたリセットの中でも経験したではないか。探偵さんと出会わないようにして、過ごした。それと同じことをこの塔の中でし続けるだけ。そのうちに成長するアンドロイドが生まれたら、それでめでたしめでたしだ。自分がアンドロイドだと気が付かない人間の振りをした完璧なアンドロイドが生まれる。それが理想じゃないか。
頭では分かっているのに。何かが少女のその考えを否定していた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる