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6 罠
しおりを挟む都市に来て3日経ち、キリトはユキノに田舎へ行かないかと誘った。特に都市に行きたいところがなかったユキノは、喜んで了承した。都市は面白いところがたくさんあるが、人が多いのがどうもユキノは苦手だった。
都市を出る前に、準備があると言って、キリトはユキノを連れてデパートに来た。
「移動中読む本でも探してて。」
「わかった。キリト君は?」
デパートの本屋前にユキノを置いて、キリトはいろいろ見てくると言って去った。
「・・・たまには一人になりたいのかな・・・」
ちょっと寂しくなったが、わがままを言えるわけもなく、ユキノは本を探すことにした。
キリトは、ざっと歩き回って、アウトドア用品が売っている区画を見つけて足を止めた。そして、目的のものを探しだして、それを手に取った。
「それでやるのか?」
「・・・」
背後から唐突に聞こえた悪魔の言葉に、無言で答えた。
手にしたのは、空のパッケージ。これをレジに持っていけば、ナイフが購入できる。
「そんな小さな刃で、殺せるのか?」
「大きなものだと、気づかれるからな。」
そう答えて、次にフライパンやランタンなど適当なものを手にして、最後に大きなリュックを選んだ。
「何に使うんだ、そんなもの?」
「カモフラージュだ。ナイフだけ買うなんて怪しすぎるだろ。」
「へー・・・馬鹿なりに考えているわけか。」
「・・・あぁ。俺は本当に馬鹿だよ。」
遠い昔を思い出して、後悔に襲われるキリトだが、それを振り払った。
「もう、遅い・・・か。あの時・・・なんて、言っても仕方がない。」
「ケタケタケタ。後悔しているのか。そうだなもう遅いから、教えてやろう、お前の最善の行動を。お前はな、何もしない方がよかったんだ。何もな。」
「・・・俺は、何もしないよりは、俺の行動が正しいと思っている。何にしても、もう終わった話だ。」
「もっと葛藤しろよ、面白くないだろうが。」
「もう、俺の意志は決まっている。迷いはない。ただ、後悔があるだけだ。」
「そうか。・・・ならもう一つ、意地悪をするとしよう。お前は何もしない方が最善の行動だったと言ったな。なぜだと思う?」
「興味がない。」
「ケタケタケタ!興味がなくたってな、聞かせてやるよ。ただし・・・ユキノがお前に殺された後にな!」
その言葉に、キリトは拳を悪魔に振り上げた。だが、悪魔は霧のように消えて、キリトの拳は空を切るだけ。
「・・・誰にも渡さない・・・たとえ、悪魔にも。」
仄暗い目で、悪魔がいた場所を見て、踵を返す。
もう、必要なものはそろった。あとは、実行に移すだけ。
ここまで順調。
ユキノの両親もキリトの両親も、学校も2人を探している様子はない。町内では探しているのかもしれないが、全国を探している様子はない。警察は動いていないか、小規模にしか動いていないのだろう。
それでも、キリトはかつらをかぶって、マスクをした。ユキノにはイメチェンとごまかして・・・
「新幹線に乗るのも、これで最後か。」
「そうだね。旅館は同じところを取ったんだよね?」
「うん、移動する時間がもったいないと思ってね。温泉もあるし星もきれいだって有名なところだよ。あとは、洞窟もあったかな。」
「今日はとりあえず旅館でくつろごうよ。買ったボードゲーム、一緒にやりたいな。」
「そうだね。なら、俺は寝ようかな。ボードゲームって言ったら、夜中までやるもんだし。」
「え、なら私も寝よう。眠くて負けたりしたら嫌だからね!」
そして、寝入っている間に、目的地に着いた。
新幹線を降りて、電車に乗り、バスに乗って、最後の時を過ごす旅館に到着した。
若女将に連れられて、施設の案内をされ部屋に通された。
スリッパを脱ぐスペースと小さな廊下。真正面には広々とした畳の部屋が2部屋。横には、洗面がある。
「ごゆっくり。」
お茶を入れた若女将が退出して、外の景色を眺めていたユキノは、はっとしたように気づいた。
「あれ、部屋って・・・」
「あぁ、2部屋あるからいいかなって思って・・・ごめん。」
「いや・・・うん、そうだね。別にそこのふすま閉めれば、うん。」
駄目だろうと、ユキノは声を大にして言いたかったが、ここまで任せきりの手前になにも言えない。宿をとってもらっておいて、気に入らないとか文句は言ってはダメだろう。それに、キリトが何かをするという不安もなかった。
「お茶飲もうか。あったかいほうがおいしいし。あ、お菓子もある!」
「ユキノさんにあげるよ。俺はお腹いっぱいだから、お茶だけでいいや。」
「なら、遠慮なく。」
ユキノはキリトが甘いものを好まないことを、ここ数日で知った。だが、本人は隠したがっている様子なので、特に突っ込まず、あげると言われたものはもらうことにしている。
お風呂に入って、食事を部屋でとった。どれもおいしいものばかりだったが、半分くらい食べたことがない料理で少し困惑した2人だったが、楽しく食事を終えた。
「そういえば、お布団敷いてくれるって言ってたね。その間またお風呂に行ってこようかな。さっきは人がいて気後れしては入れなかったところもあるし。」
「そう。なら俺は下のゲーセンに行くことにするよ。出たら来てくれる?」
「わかった。」
「なら行こうか。」
楽しく出て行った2人に、これから気まずい空気が流れるとは、誰も思わなかった。
ユキノが風呂を出て、キリトが卓球台を見つけたので2人で卓球をして、また軽く風呂に入って、最後に牛乳を飲んだ2人は、笑いあって部屋に戻ってきた。
「え?」
最初にそれに気づいて固まったのは、ユキノだった。施錠を確認するキリトは、固まるユキノに呑気にどうしたのかを聞いて、部屋を見て同様に固まった。
そこには、布団が敷いてあった。
机を隅にやって、2つの布団が敷いてある。ここまではいい。
「・・・これって・・・」
「・・・」
「ゆ、ユキノさん・・・とりあえず後ろ向いて。」
「え?うん。」
意味が分からず、それでもキリトの言葉に従って、ユキノは玄関方へ体を向けた。それを確認したキリトは、部屋に入りまるで一つの布団のようにつながった2つの布団を引き離した。ついでに、ふすまの仕切りを越えて布団を持っていき、一つの部屋に一つの布団という状態にした。
「いいよ、こっち向いて。さ、ボードゲームやろうか。」
「・・・あ、うん、そうだね。」
お互いの顔を見て、顔赤いなと思いながらそこには触れず、2人は黙々とボードゲームの準備をした。
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