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27 戯言
しおりを挟むカンリが拠点にしている場所に、ザキュベの援軍が合流した。ザキュベは、山本を召喚した国で、山本と共にいたガンセルが増援を率いている。山本は戦力外として国に帰ったのかと思いきや、今回は対小沼花菜として参戦するらしい。
そんな山本が、カンリの元に一人で来た。カンリの側にはランズがいるが、山本はカンリだけに目を向ける。
愛想のいい彼なら、一言位かけるところなのに珍しい。
「ツキガミさん。」
「山本君・・・」
「グラールだって・・・ツキガミさん頭いいのに覚えれないわけないよね、わざと?」
困ったように笑う山本を冷たく見返して、話はそれだけかとカンリは聞く。
「・・・僕たち、これから戦争に行くんだよ?ねぇ、少しくらいお話ししようよ。・・・僕たち、クラスメイトでしょ?」
「クラスメイトってだけで、別に友達だったわけでもないし・・・何を話すの?」
「そうだね・・・なら、君が僕に憎しみを抱くようになった、始まりの話なんてどう?」
「・・・悪趣味ね。良い顔は、もうやめたの?山本君?」
「君も吹っ切れたようだし、君側の人間にいい顔をする必要もないからね。どうせ、僕のことは彼らに話したんでしょ?」
「あなたと話すことはない。私は・・・もう、あなたのことはどうでもいいの。」
カンリにとって、山本は警戒すべき相手だがそれだけだ。以前感じていた憎しみも、時々発作となって襲うだけで、通常は全く何も感じない。
終わったことだと、脳が認識しているのだ。
「僕は、そうじゃない。」
山本がスッとカンリに近づいて、耳元でささやく。
「言ってもいいの?僕がこの世界に召喚された理由を。」
「・・・話をすれば、言わないの?」
「ふふっ・・・」
「・・・」
「君がそれを望むなら、言わないよ。」
「・・・わかった。ランズ、ここで待っていてくれる?少し話をしてくるから。」
「かしこまりました。」
ランズに命令するカンリを見て、山本は笑みを深めた。
カンリと山本は、近くにある丘の上に登った。そこからは、タングットの砦も見ることができ、見張りのための簡易的な小屋もある。その小屋から離れた場所、声が届かないところで、山本は立ち止まる。
「君と僕が初めて話した時のこと、覚えてる?」
「・・・あの、肝試しの時の話?」
オリエンテーションで行った肝試しで、ペアで夜道を歩くというものがあった。くじ引きで決まったペアで周るのだが、そのペアとなったのが山本だったと、カンリは思い出す。
しかし、山本は苦笑して否定する。2人が初めて話したのはもっと前、日直のカンリが黒板を消している時に、山本が手伝ったときだった。
「まぁ、でも・・・あの肝試しで、僕は君に興味を持ったから、特別な思い出ではあるね。」
「興味?」
「そうだよ。」
「特に何もなかったと思うけど、あなたが興味を持つようなことなんてあった?」
「・・・君が、あの思い出を特別と思っていないことが、僕の興味をそそったんだよ。僕とペアになって肝試しなんて、他のクラスメイトなら一生の思い出とするところなのに。」
確かにそれはそうだろうと、カンリ自身はそうではないがそのことには納得する。山本は、文武両道のイケメン。性格も表向きはイケメンなのだから、特別な思い出になるだろう。
カンリは違ったが。
カンリは、人気の山本とペアを組むことを嫌がった。しかし、それを表に出すとそれはそれで周囲の悪意が増してしまうので、何も言わずそのまま肝試しに参加したのだ。
人気の者と組むと嫉妬がひどそうで、本当に嫌だったのだが。
だが、カンリの心配をよそに、嫌がらせなどはなく、無事に肝試しは終わった。その後も何もない。
考えすぎだったのかと思ったカンリだが、それは違った。
「僕は、なんで君の友人をいじめていたと思う?」
「それは、あなたが人をいじめることに喜びを見出す、変態だからでしょう?」
「ふっ・・・そんな風に思われていたなんて、いや、そうだよね。ははっ!」
「・・・」
「僕はただ、君の視線が欲しかった。君に、何かを思われたかったんだ。僕に何の興味も持たない君から、何かしらの感情を向けてもらいたかった。好意でなくたっていい・・・そう、もっと簡単な、憎しみだって・・・」
当時を思い出す様に目を細める山本から、距離を取るカンリ。先ほどまでなんとも思っていなかった山本のことを、今はものすごく気持ち悪いと思ったのだ。
「僕は、君に・・・」
「何やってんだ、ツキガミ?」
重要なことを言いそうだった山本を遮って、ヒックテインがカンリに声をかける。カンリは、そんなヒックテインを壁にして山本から隠れた。
「いいところに、ヒックテイン。」
「ん、なんだよ?えーと、グラールだったか、こいつに何かしたのか?」
「話をしていただけだよ。全く、この世界の人は空気を読めないのかな?」
「読んだからこそ声をかけたんだよ。カンリを見ろ、いや見るな。お前は見るな。カンリは、変質者にでもあったような目でお前のことを見ているからな、見るな。」
「興味なさそうな目よりずっといい・・・」
「こいつ・・・変態か?」
「・・・うん。」
カンリが頷くと、ヒックテインはランズを呼ぶ。すぐさま来たランズにカンリを預け、山本に向き合った。
「お前、ここに何をしに来た?前の戦いでは、役に立たなかったお前が、ここに何をしに来たんだ?」
「決まっているでしょ?・・・魔族側についたクラスメイトを・・・どうするかは、君たちに任せるけど、彼女の動きは僕が封じる。だから、君たちが捕獲するなり殺すなりすればいいよ。」
「できるのか?」
「まぁ、そういうギフトだから。」
「違う。お前は、自分の同級生を見殺しにできるのかと聞いている。」
「・・・僕ができるかどうかは重要じゃないよ。やるのは君たちなんだから。」
ひらひらと手を振って、山本は立ち去った。
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