恩人召喚国の救世主に

製作する黒猫

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28 山本のギフト

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 馬鹿な男だと、山本は自分自身を笑う。

 山本に好意を抱く女性などいくらでもいるだろうに、全くなびかない女性を山本の心は選んだ。より苦難な道を選ぶことがいかに愚かなことか、山本自身がそのようなものを笑っていたはずなのに、いつの間にか当事者になっていた。



 護衛の騎士と共に、グリフォンに乗る。いくら運動神経がいいからと言って、山本はカンリのように乗騎に乗ることも、剣を振こともできない。

 カンリは、特別なんだと、自分はいかに思い上がっていたのかを、再度山本は認識した。



 それでも、カンリにはできなくて山本にできることはある。それは、山本自身が持つギフトが、特別だからだ。



「グラール様、このまま戦場に向かいます。どうやら、魔族側の客が戦場に現れたようです。」

「へぇ、今日は早いんだね。それにしても困ったものだよ、全く。人類の敵の味方をして聖女気取り、本当にクラスメイトとして恥ずかしい限りだよ。」

 魔族側に召喚された、小沼花菜。彼女は、傷ついた魔族の傷を癒し、あがめられることに喜びを感じているようだ。他にも、魔族の容姿が整った者を側において、得意げな表情をしているのは見ていて痛々しい。



「今まで何も力を持たず、クラスの中で埋没しているような子だったから、おぼれてしまったのだろうね。根はいい子なんだけど・・・でも、許されない範囲っていうのはある。」

「ご理解いただき、ありがとうございます。」

「・・・最後は、この世界の人に任せるよ。流石に、人間を殺すことは僕にはできない。」

 人間を殺すなど、狂気の沙汰だ。笑いながら「落ちてみなよ」などと、屋上の柵の外にいる同級生に言うことまでなら、山本はできる。だが、人殺しなどできるとも思えない。

 たとえ、凡人が力を持つと本当に面倒で、うざったくなる・・・と思っている凡人だとしても、殺そうとまでは思わない。そのような選択肢が出ることもない。



 戦場が山本の前に現れた。もちろん、魔族の死体だけでなく人間の死体も転がるような場所を注視する勇気は山本にはなく、ただ広がる青い空を見る。

 この世界の人間はすごいと、山本は思っている。このような場所で、よく吐かないものだと。山本なら軽く8回は吐く自信があった。



 そんな凄惨な場所に不釣り合いな、暖かな光が降り注ぐ。

 聖女気取りだと、山本は冷たく見据えた。



「すぐにけりをつけよう。」

「お願いします。女性の動きを止めて、できれば護衛の邪魔もしていただければ最高です。」

「できる限りやってみるよ。」

 今日、山本が乗っているグリフォンは、パグラントから借りたものだ。ザキュベが使うオオトリよりも早く動き、頭もいい。今回小沼花菜に近づくという危険を冒す山本には、万全の準備が施されていた。

 護衛は、騎士団長ではないが、騎士団長推薦の騎士で、人を守ることに関しては右に出るものはいない騎士だ。



 万全の準備・・・だが、山本には不安がよぎった。それは、もうすぐ戦いが始まることを知っているゆえに、ナイーブになっているだけか・・・いや、この作戦を決行すると決めた時からある不安だった。

 そんな不安があるせいか、作戦前に話すつもりがなかったカンリにまで声をかけた。その自分の行動が、何かを悟っているようで、不安が膨らむ。



 他にも、ケイレンスがお守りなどと言って、山本に腕輪を渡してきたことが頭によぎって、自分がいかに無謀なことをしているのか、苦笑する。



 絶対に、前の世界にいた時だったら、こんな危険は冒さない。おそらく、自分は変わったのだろうと、山本は確信してそのことに喜びを感じた。



 君に変えられたんだと思うと、嬉しいな。



 愚かで、無謀になってしまった自分を、前の自分は鼻で笑うだろうが、それは今の自分も同じだと、山本は鼻で笑う。

 お前はまだ知らないのだと、優越感に浸りながら語るだろう。語ったとしても、前の自分の心には全く響かないと知っていたとしても。

 聞くだけじゃわからない、実際に体験して初めてわかるんだ。



 小沼花菜の姿が、はっきりと見える。周囲に肌の色が違うイケメンたちを侍らせて・・・グリフォンが5匹。うち1匹に、小沼花菜と護衛の騎士が乗っている。護衛の騎士は、口から鋭い剣士が出ている、犬のような顔をした男だ。



 山本の姿に気づいたのだろう、小沼花菜の顔が驚愕に固まった。そんな彼女を無機質に眺めて、山本はギフトを解放した。



 彼女をいじめたのは、カンリに山本という男を認識させたかったからだ。山本という男に、強い感情を持って欲しかったからだ。そして、小沼花菜が愚かだったからだ。

 いじめられているのに、山本に対して強い悪感情を持たず、周囲に露見する心配もない。カンリの親友という立場もあって、山本は小沼花菜をターゲットに定めた。



 顔だけ、ブランドだけ最高級の男なら、関りもてるだけでラッキーとでも思っていたのか?全く抵抗しない小沼花菜に、取り巻きたちの要求は大きくなっていった。

 それを調整するのが少しだけ面倒だったが、あとは山本の望む通りに利用されていてくれた小沼花菜。



「この世界でも、君は僕の操り人形だよ、小沼さん・・・」

 山本のギフトが発動し、小沼花菜のギフトによる光が収まった。



「護衛の目をふさいで。」

「・・・」

 山本がそう命じれば、表情の消えた小沼花菜は、自分の護衛の頭を背後から抱きしめた。

 ギフト「操り師」。それが、山本に与えられたギフトの名前だった。







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