恩人召喚国の救世主に

製作する黒猫

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 唐突な小沼花菜の行動に、小沼の周囲にいた魔族の騎士は慌て始める。そんな隙を見て、戦場に隠れ潜んでいた騎士団長ガンセルが乗騎にまたがって空に舞い上がり、動揺した魔族の騎士を斬り捨てた。



「俺のことはいい!あの黒髪の少年を倒せ!おそらくあの者のギフトが、カナをおかしくしている!」

「「「はっ!」」」

 2人の魔族の騎士が団長の相手をし、残りの一人が山本の方に迫る。山本は、小沼花菜を視界にとどめて、彼女の護衛が彼女に何かをしても即対応できるようにしている。

 当然、こちらに来る魔族の騎士を相手にするのは、山本の護衛だ。



 小沼花菜から離れないように逃げながら、敵の攻撃を剣で受け、魔法ではじく。

 山本のギフトは、自分より格下の相手を操ることができるというギフト「操り師」なのだが、このギフトはその操る対象との間が離れている分だけ難易度が上がり、近い分だけより操りやすくなるというものだ。

 なので、なるべく小沼花菜から離れないことが重要で、危険だからと言って山本を逃がしてやることはできない。



 ただでさえ、人間より格上の魔族を相手にするというのに、小沼花菜がいてはすぐに傷を回復されてしまい、騎士団長が不利になってしまうので、山本はその場にとどまって彼女を操り続けるしかないのだ。



 騎士団長が倒されれば、こちらの戦力は一気に落ちる。そうなれば、山本は護衛と共に倒されるだろう。

 山本が倒されれば小沼花菜の動きを邪魔する者がいなくなり、今まで戦っていたことがすべて無駄になる。護衛が倒されれば、守る者がいなくなった山本はあっさり倒される。

 誰か一人が欠けても、山本たちは負ける。だからこそ、彼らは全力で挑んだ。



 騎士団長は魔族の騎士2人を相手取っていて、負ける心配もなさそうだが決定打を討てないように感じられる。小沼花菜の周りには手練れが用意されているはずなので、ただでさえ強い魔族の中のエリート2人を相手取っている騎士団長は、人間最強かもしれない。

 山本と共にいる護衛は、相手の攻撃をかわしながら時々小沼花菜の方へと遠距離魔法を飛ばす。それに気づいて相手がその魔法を打ち消している間に、相手との距離を取って次に備えるということを繰り返している。



 小沼花菜の護衛の魔族は、彼女の拘束をほどこうとしているが、あまり手荒にしたくないようでいまだに拘束をほどけていない。



「まだ拮抗状態だから無理に離してこないようだけど、もうすぐ増援が来る。それが来たら無理にでも小沼さんを引きはがすだろうし、何か考えないと。」

「増援はありがたいところですが、相手はそれだけ本気になってしまいますからね。一気に決着をつけることができればいいのですが・・・っ!」

 護衛に斬りかかる騎士の魔族、護衛は回避し魔法を放つ。それを容易く打ち消した相手は、お返しとばかりに火の玉を投げる。それを魔法で防いで、相手との距離を取る。



「コヌマさんでしたっけ、あの人。どうにか護衛の魔族を落っことしたりとかできませんかね?動揺させてくれるだけでもいいですけど。」

「・・・物理的に落とすのは無理だろうね。彼女腕力もないし。・・・ツキガミさんだったらよかったけど、彼女だったら僕は操れないだろうしな。」

「同じ女性でも、だいぶ能力に差がありますね。コヌマさんはサポート型のようですし、アタッカーのツキガミ様と比べるのは酷かもしれませんが。」

「僕も同じサポート型だけど、あれに負けるような生き方はしていないよ。頭だって、力だって・・・」

「ずいぶんあの女性を嫌っているようですね?」

「・・・そうだね、僕はあの子が嫌いなんだ・・・」

 勉強も運動能力も、凡人。いや、それよりも下だ。容易く山本に操られるし、それがひどく山本に苛立ちを覚えさせた。

 特別な存在であるカンリに好かれながら、なぜこうも頭が悪く山本などに操られるのか。自分のいいように動く小沼花菜を見て満足する一方、怒りを感じていたのだ。



「友達の趣味だけは疑うよ、本当に。」

「グラール様、そろそろ増援が到着します。おそらく婿の魔族も動き出すでしょう。」

「わかったよ。できるかわからないけど、あの魔族の動きを止めるよ。」

「お願いします。もしもギフトが解けた場合はご報告ください。すぐに離脱しますので。」

「わかったよ。・・・いや、逆に小沼さんと相乗りしている魔族の動きを封じることってできないかな?」

「え、それは・・・難しいでしょうね。」

「もしもできたなら、小沼さんを永遠に無力化できるよ。」

「え、それは・・・?」

 山本は、無意識に避けていたであろう方法に気づいて、それをする方向でものを考えている。その前は、「護衛の魔族を誘惑して」と命令するつもりだったが、それよりももっといい方法があった。うまくいけば、小沼花菜を無力化でき、他の魔族たちの動揺を誘うことができる。



「覚悟を決めたという顔ですね。なら、全力で応えるべきですね・・・」

 山本の護衛の目つきが変わった。守る側から攻撃する側にと変わった彼は、空気だけで敵を斬りつけることができそうな鋭い気配を放つ。



「・・・必ず、隙を作ってみせましょう。」

「頼むよ・・・僕も、全力を尽くす!」

 剣のぶつかり合う音が連続して響き、前方は火花が散っているように見えた。先ほどは守ることと逃げることに重点を置いていた護衛の剣が、相手を斬り殺そうと殺意が乗った剣となる。

 負ける気がしない、だが勝てる気もしない。騎士団長と同じような状況に、これでは小沼花菜の方に手を回すのは無理かと思われたその時、増援が到着した。



 小沼花菜の護衛が動き出す。

 間に合わない、このままでは小沼花菜が護衛の魔族に行っていた拘束は解かれ、敵が増えてしまう。



 そして、焦ったのだろう。山本の護衛の剣が鈍り、相手はその隙を見逃さず護衛の脇腹を剣で突き刺した。



「なっ!」

「ぐぅっ・・・」

 低いうめき声が前方の護衛から聞こえ、山本は諦めた。次は自分の番なのだろうと。だが、ただで死ぬわけにはいかないと、山本が命令を下そうと口を開いたとき、目の前の護衛が動いた。



 突き刺さった剣を掴んで、空いている方の手で攻撃魔法を放つ。その先は、小沼花菜の乗ったグリフォンが・・・



 相手はとっさに護衛の放った攻撃魔法を打ち消す魔法を放つが、間に合わない。

 攻撃魔法が迫る中、小沼花菜の護衛に魔族が拘束を解き、攻撃魔法の対処をする。



 ここだ!



「飛び降りて、小沼さん・・・」

 山本は、最後の命令を下した。それは、奇しくも前の世界で下した命令と同じもので、結果も同じだった。



 護衛の魔族が異常に気付くが、もう遅い。

 魔法を防ぐのをやめて、彼女に手を伸ばす護衛の魔族だが、彼女はその手を見向きもせず、落ちた。







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