恩人召喚国の救世主に

製作する黒猫

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 山本がケイレンスに渡されたお守りの腕輪は、転移の腕輪というもので装備している者が諦めた時、装備者を任意の場所に転移させる魔法が込められていた。



 護衛が死に、魔族に剣を向けられた山本は諦めて目を瞑った。その時に魔法が発動し、乗騎の手綱に引っかかって宙ぶらりん状態から、城のカーペットの上に落ちた山本は緊張の糸が解けて気絶した。



 気絶した山本は介抱され、用意された部屋に寝かせられていたが、それが目を覚ました。



「・・・パグラント王国の王子、ケイレンス様ですか?」

「あぁ、そうだよ。体は大丈夫?」

「特に異常はありません。助けていただいたようで、本当にありがとうございました。それで、ここはいったいどこですか?」

「ここは、パグラント城だよ。君は、転移の魔法でここにきて気を失った。目に見える怪我は手当てをさせてもらったよ。疲れただろうから、十分に休むといいよ。」

「ありがとうございます。それで、なぜ僕をここへ?ただの人助けというわけではないでしょう、何が目的ですか?」

「君のギフトだよ。」

「・・・直球なんですね。」

「隠す必要はないからね。君のギフトは、何も戦争に役立つだけじゃないし、何ならより効果的に使える場所は他にある。たとえば、この城・・・ここで的確に君のギフトを使えば、城を思うように支配できる。」

 ケイレンスは、懐から取り出したチェスの駒をベッドサイドのテーブルに置いた。白のポーンだ。



「君は、もう私の手の内にいる。君をどうしようか、どう扱うか、すべて私の意思次第なんだよ。そのうえで聞くけど、君はどうしたい?」

「もちろん、あなた様に協力させていただきます。」

 にっこりと、綺麗な笑顔を作って山本は最善を選んだ。ここで抵抗しても山本に勝ち目はなく、最悪抵抗すれば殺されることを考えれば素直に従うのが一番だ。



 同じように微笑んだケイレンス。それを見て、山本は内心苦虫をかみつぶしたような気持ちになる。別に、ケイレンスが悪事を働くなどとは思っていないし、山本を酷使することもないのではないかと思っている。だが、何となく気に食わないのだ。

 気持ちの問題なのでそれは仕方がないが、それを表に出すような馬鹿なことはしない。



「それではこれからよろしくね。まぁ、今は体をゆっくりと休めるといい。」

「ありがとうございます。」

 気にするなと手を振って、ケイレンスは部屋を後にした。







 その後、ケイレンスは山本の存在を隠し、山本に魔術師の格好をさせて常に顔を隠すよう命じ、宮廷魔術師として彼を迎えた。

 もちろん、山本に魔法など使うことはできず、すべてがマジックアイテムによるもので、それはケイレンスが自作した。



 悪女討伐によって、山本は命を落としたことになったが、実際はパグラントの宮廷魔術師をしているという生活を送ることになった。







 そうして時は流れ、遂にタングットは魔族の手に落ち、パグラントが最前線になることになった。山本や多くの騎士を失ったザキュベは、戦争の支援を資金援助のみとし、騎士を送ることをしなくなった。

 戦争に参加するのは、パグラント総勢力と他国から派遣されたお情け程度の戦力だったが、パグラントの士気は下がらず維持し続けた。それは、圧倒的な力を持つカンリの活躍と山本の陰ながらの活躍だけが理由ではない。



 全能のケイレンスに、魔法のヒックテインとそれに勝るとも劣らない、ランズ。この世界の人々の力も、士気を維持するのには十分強かった。







 魔物に似た魔族を相手に、若干少ない数で挑む人類側。ただでさえ、人間に勝る筋力と一つ以上の魔法を持つ魔族を相手に逃げ出さないのは、味方の中にそれを凌駕する力があるからだ。



 人類に襲い掛かる魔族の群れを次々と斬り伏せるカンリに、そんなカンリを乗せなおかつブレスで魔族を一網打尽にするトカゲ。

 そんな武勇を見せられて奮い立つ一般兵もいれば、逃げ腰になって実際逃げる兵士もいる。そんなとき、山本はギフトを使ってそのものを操り魔族に特攻させる。



 大規模な広範囲魔法を惜しげもなく放ち、何百単位で魔族を退けるケイレンス。自身に襲ってくる魔族は斬り捨てて確実に命を奪い、また多くの魔族に攻撃魔法を浴びせる。

 数は少ないが、広範囲に致死の魔法を放つヒックテイン。一日に2回程度の魔法ではあるが、それでも魔法の範囲にいれば死は免れないその魔法は、味方には希望を敵には絶望を与える。



 カンリの攻撃を補助し、カンリに襲い掛かる不埒物を次々と切り倒すランズ。



 格上の相手をしていることは理解していたが、それでも人類は負ける気がしなかった。







 だが、それは前半だけ。後半になって、やっと魔族が数を減らしたころに、空から降る光。それが、死に至っていなかった魔族の傷を癒し、魔族の士気を高めた。



 力のある魔族を護衛に引き連れて現れる、小沼花菜。

 どれだけ人類が抵抗し魔族を傷つけても、彼女が一瞬にしてそれを覆す。



 カンリ、山本、ケイレンス、ヒックテイン、ランズと人類側が奮闘しても、確実に命を奪ってなければ小沼花菜の登場ですべてがリセットされてしまう。

 無傷の魔族と死んだ少しの魔族に対して人類は、大小の傷を負った人間と死者。疲れがどっと押し寄せ士気がさがろうとするが、なんとか王族は士気を保とうと踏ん張って、一日が終わる。



 朝日が昇り、日が沈むまで。それが戦争の時間だった。



「・・・今日も、何とか終わったね。」

「きゃう・・・」

「ちょっと、疲れたね。」

 終わらない戦いに、人類は疲れていた。こんなことがいつまで続くのかと。



 それでも明日は、今日こそはと希望で自分を騙して戦うのだ。魔族が滅びるまで。







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