恩人召喚国の救世主に

製作する黒猫

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35 遭遇

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 日常と化した戦いに、カンリは今日もトカゲに乗って向かう。だが、今日は少しだけ違っていて、いつもいるランズがカンリの傍を離れている。



「ねぇ、ヒックテイン。あの作戦、成功すると思う?」

「・・・あ、なんか言ったか?」

「・・・」

 ランズと共にいつもそばにいるようになったヒックテイン。ランズがいないせいかわからないが、いつもと様子が違う彼に眉をしかめる。どこか上の空の彼は、何か別のことに施行を奪われているようだった。



「ランズが参加する作戦、大丈夫かなって・・・だって、前だってうまくいかなかったし、今回は山本君のような特殊なギフト持ちはいないから意表を突くこともできないでしょ?」

「あぁ、悪女討伐の話か・・・あれはまぁ、成功すればラッキー程度だろう。以前より守りも堅くなっているし、あれを倒すのは難しいだろう。」

 悪女討伐。それは、山本君が参加し行方不明となった作戦の再挑戦だ。つまり、カンリの親友の討伐を目標とする作戦なのだが、勝算は限りなく低い。



 前の作戦時は、ザキュベの騎士団長と稀なギフトを持つ山本が参加をして、失敗。多くの損害を出すだけの結果となった。

 今回はザキュベの騎士団長の代わりにランズが参加するが、山本のようなギフト持ちがいるわけではないので、完全に真っ向勝負となる。ランズは強いが、相手の魔族も強くランズと同等かそれ以上の強さを持っているだろう。そんなものが少なくても3人は相手にしなければいけないというのに、ランズ一人でどうにかできるわけがない。

 もちろん、ランズ一人でやるわけではないが、王国で5本の指に入るランズと対等な戦力は今回参加しないという。成功するわけがないと感じ、ランズの無事を祈るカンリだった。



「なんでケイレンスは、こんな作戦を・・・」

「・・・人類は奮闘しているが、徐々に押されている。人類が勝つためには、魔族の切り札を減らす必要があるからな・・・仕方がないことだ。」

「・・・」

 何かを隠されているような気がして、カンリはヒックテインの方を見たが、ヒックテインはカンリの方を見ておらず、何かに頭を悩ませる様子で前を見ている。



「ヒックテイン・・・」

「・・・なんだ?」

「気を付けてね。今日はランズもいないし、もしもヒックテインに何かあったとしても、私は対処できないかもしれない。」

「ツキガミ・・・はっ。俺がどうかなったら・・・お前は逃げればいいだけだ。助けなんていらない。お前を守ることが、俺の仕事だからな・・・お前は守られて、逃げればいい。」

「・・・その通りにできるかはわからないけど、頭に入れておくよ。」

「そうしてくれ。・・・俺は、守ってもらう資格なんてない・・・」

「?」

「ツキガミ、今日はあの木の下で待機しろってさ。」

「待機?」

 最近のカンリといえば、魔族を一匹でも多く倒すように言われていた。それなのに待機とは不思議だと感じながらも、いわれた木の下へと降り立つ。



 ランズのいないせいか、今日はいつもと違うことが多いなと、ふと気づいた。待機命令もそうだが、武器もいつもならカンリの自由だが、今日は指定された。

 指定された武器は、槍。カンリは槍が得意ではないのだが、それを言ってもこの武器を使うよう指定されたことはおかしいと思った。

 おかしいといえば、ヒックテインの様子だっておかしい。ヒックテインは何か隠し事をしているようだし、そう考えれば他の者も隠し事をしているのかもしれない。例えば、待機と武器指定をしてきたケイレンス。



 最初、ケイレンスのことを山本と同じで何か裏の顔がありそうだと感じ苦手意識を持っていたカンリだが、今は普通に接していて彼をそういう目で見ていなかった。

 そういう目で見ていなければ、簡単にこちらを騙してくるのが彼らだというのに。



 木陰へと進むカンリに並んで、ヒックテインは黙って同じように進む。何かを知っているかもしれない。ヒックテインを問い詰めようとしたカンリだったが、そのヒックテインが唐突に背後から放たれた光・・・雷によって前方へと飛ばされた。



「ぐあっ!」

「ヒックテイン!」

 ヒックテインを目で追うカンリだったが、背後に背筋が凍るような殺気を感じて臨戦態勢をとって、殺気が向けられる方へと目を向けた。



「ひさしぶりですね、お客さん。」

「あなたは・・・」

 そこに立っていたのは、額から角を生やした人間に近い魔族だった。どこか見た覚えがある魔族を凝視して、カンリはどこで会ったのかを思い出す。



 それは、親友を説得に行ったとき。親友と相乗りをしていた魔族だ。



「まさか、本当にあなたがいらっしゃるとは・・・それも、護衛1人・・・これは、天があなたを殺せと僕に言っているのだろうね。」

「・・・」

 カンリは構えている槍を見て内心舌打ちをした。

 前述したとおり、カンリは槍が苦手だ。それなのに、四足歩行ではなく人間に近い方の魔族に当たってしまった。

 人間に武器を向けられないカンリは、人間に近い魔族も同じで戦いにくい相手である。



「・・・かなちゃんはいないの?」

「もちろん。安心してくれていいよ、僕一人だけだ。お前ひとり相手をするのに、お姫様も他の仲間もいらない、僕一人で十分だ。」

「そう。それはありがたいよ、本当に。」

 いまだにカンリのもとまで返ってこないヒックテインは、戦闘不能と判断する。なら、今戦えるのはカンリ一人か?いや、違う。



「ぎゃーう!」

 頼もしい乗騎の鳴き声が聞こえる。



「頼んだよ、トカゲ。」

「ぎゃう!」

 カンリを守るように、トカゲが魔族に立ちふさがった。







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