聖女の首輪

製作する黒猫

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7 終わり

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 にこにこと笑い、盛大な拍手を受け入れる。

 最後まで見届けたいとは思うが、引き留められては面倒だろう。



 だから、ワーゼルマンの求婚を受け入れた。

 久しぶりに見たワーゼルマンの顔をまじまじと見て、にこにこと笑う。全く、胡散臭い笑みだ。鏡を見ているようで嫌だな。



 本当にこれと暮らしていくのかと思うと気が滅入るが、ケントとの生活に比べればましだろう。私の、大っ嫌いな男との、嘘だらけの生活に比べれば。



「迎えに来たよ、俺の聖女。」

「待っていましたよ、私の鏡さん。」

「そこは、王子ではないのかい?」

「王子?いったいどこに王子が?王女ならそこにいますが。」

「そうかい。なら、この鏡と一曲いかがかな?」

「あいにく、今日はダンスパーティーではないので。」

 さらりと流して、私は王女の元へと向かう。



「あら、もうよろしいの?」

「えぇ。少し勇者様とお話ししてもよろしいでしょうか?」

「もちろんよ。今日で最後、ですものね。」

 王女の許しを得て、私は難しい顔をした勇者に向き直った。少しは面白い顔でもしてくれると思ったが、特に変わりのない顔だ。



「勇者様、今までありがとうございました。私には嫁ぎ先も見つかったことですし、あなた様のお望み通り、離宮から出て行きます。これで、あなたと私の関係は終わりです。」

「そう、か。」

「最後に一つだけ、ずっとあなた様に伝えたいことがありました。」

 ケントは面倒そうな顔をした。もしかしたら、私が告白でもすると思ったのかもしれない。まさか、今この場でそんなことをするわけなんてないのに。



 今日で、ケントと会うのは最後になるだろう。だから、嘘の笑顔をやめて、今までのことを思い出して真顔になった。



「これで、嫌いな人に言い寄られる者の迷惑が、少しはわかりましたか?」

「嫌い?」

「えぇ、私のこと、もう嫌いなんだよねケントは。私もね、あなたのこと大嫌いだから、ずっと迷惑していたの。もう、わかってくれたよね?」

「は・・・?俺のことが嫌い?」

 私がケントのことが嫌いというのが意外だったのだろう、ケントは驚いた様子で私の言ったことをオウムのように繰り返す。

 意外過ぎて理解が追い付いていないようだが、もうこれ以上話すことはないと、王女に礼を言って立ち去った。



 これで、この国ともお別れだ。

 私とケントを強い魔物の前に放り出した王族たち。ケントの求愛に困っている私を助けず、嫉妬や嘲笑を向けてきた令嬢たち。私とケントを無責任に祭り上げる民衆。

 それらを頑張って味方につけて、私はただ一人への復讐のためにすべてを飲み込んで、今まで聖女を演じた。



 それも今日で終わりだ。







 勇者がドラゴン討伐へ出立する日、私もこの国を発った。もちろん、ワーゼルマンの国へと彼と共に向かうためだ。



 ケントに贈られた物はすべて売り払い、お金に換えた。私の荷物はお金と、王女からもらった耳飾りだけだ。

 生活に必要なものはすべてワーゼルマンが用意してくれるということなので、私は着の身着のまま国を出た。



 煌びやかな馬車に乗って、ワーゼルマンと2人きりになる。すると、ワーゼルマンから笑顔が消えた。



「ひさしぶりだな、チカ。」

「うん。誘拐されて以来だから・・・1年くらい?それにしても、まさか本当に待ってくれるとは思っていなかったよ。」

「迎えに来るというのは、疑っていなかったんだね。」

「うん。だって・・・私の力を知っていれば、誰だって欲しがるでしょ?すでに手に入れている人は気づかなかったみたいだけどね。どれだけ私の力に助けられていたか。」

 ケントは、気づいていない。いや、忘れてしまったのだろう。私が力を貸していたことを、だからこそ自分が強いという事実を。



 それにしても、我ながらすごいな。自分を誘拐しに来た人に、少しだけ待って欲しいと言って、力を貸すことを約束するなんて。結婚の約束までして。

 本当に、ケントには人生を狂わされたんだな、私。



 1年ほど前、私はワーゼルマン率いるバーシャス王国に誘拐されかけた。その理由は私の力にあったが、無理に誘拐しても私自身に力を使うつもりがなければ恩恵を受けられない。だから、ワーゼルマンは望むものは何でも与えると言った。

 だから私は、時間が欲しいと言ったのだ。ケントを貶める時間が、復讐するための時間が私は欲しかった。



 そして、時は来て、ケントが取り返しのつかない過ちを犯して、私の復讐は終わった。その過ちは、王女と結婚したことではない。最後のドラゴンを討伐することを決めたことだ。



「勇者は、チカにいったい何をしたの?確かに、好きでもない男に言い寄られて監禁されれば、嫌悪感があるだろうけど・・・監禁もチカの自作自演だよね?だとしたら、殺したいと思うまでにはならないと思うけど。」

「私がケントからの求婚を退けることができたのは、私に少しだけ力があったから。聖女という立場と、回復魔法がなければ・・・私は無理に結婚させられていた。それがものすごく嫌だった。それに、ケントは私がいじめられる原因を作ったから。」

 実際は、ケントの求婚をはねのけられたけど、少しでも立場や力が違えば、私は大嫌いなケントと結婚させられる羽目になった。好きだから何をしてもいいという考えはない。



 どんなに愛をささやかれても、守られても、私は許さない。

 だから、力を手に入れた時に私はケントに復讐することを考えた。前の世界ではできないことが、この世界ではできるような気がして、実際にやってみれば5年かかったができたのだ。



 ケントに愛想を尽かせ、新たな好きな人ができるように仕向け、最後にドラゴンを討伐するように仕向け、後は私が国を出れば完了だ。そう、復讐はもう終わった。あとは結果を見るだけだ。



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