【完結】悪役令嬢ですが、国が滅びそうなので、そんなことにかまってはいられません

製作する黒猫

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26 火刑

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 バシッ!
 玉が弾き飛ばされ、道が空きます。

 王子は剣を振って、次々とこちらに来る玉を弾き飛ばしていきます。王子が作った道を、私はディーと共に進みます。

 バシバシバシ!

「数が多いですね。」
「君の母君が次から次へと出しているからね。でも、生気を吸って動かなくなった玉もあるね、これとか。」
 そう言って、転がっていた玉を剣で弾き飛ばします。
 ある程度の魔力や生気を吸った玉は、一時的に機能を停止します。次に動くときは、より多くの魔力や生気を吸えるようになるのです。

「レナ、そろそろいいんじゃないか?」
「そうですね・・・」
 視線の先には、弾き飛ばされた玉が数多く転がっています。動かないものから、元気にこちらに向かおうとする玉は、一か所に集められています。

「とりあえず、ファイヤーボール!」
 火の魔法の中でも、初級の攻撃魔法を放ちます。ですが、ただのファイヤーボールでは玉に吸収されてしまうので、少し工夫をいたしました。

 パァンパァンパァンパァンパァン―――――

 破裂音が連続的に響き、思わず耳をふさぎました。
 かなりの魔力を注ぎ込んだファイヤーボールを玉が吸い、破裂したのです。

「レナっ!」
 ディーが私の前に出て、玉をはじきました。
 集まっていた玉の中で、残った玉が私に向かってきたのです。一度ですべてを倒しきることはできませんでしたか・・・

「しかし、この方法は有効ですね。このままある程度数を減らします。ハインリヒ様!どんどん弾き飛ばしてください!」
「わかった!それにしても、こんな方法を取るとはな!俺は、夫人のところまで突っ切るのかと思っていた!」
 王子は話しながらも玉を弾き飛ばして一か所に集めてくれます。

「玉が邪魔でしたので。私はともかく、2人を連れてとなると・・・少し不安なのです。」
「かえって足手まといだったかな?ごめんね、ハインリヒがわがままで。」
「俺だけのせいにするなっ!」
「いいえ、嬉しかったので・・・足手まといなどとは思っていませんよ。さて、次はウォーターボールにしましょうか。火は、屋内で使うべき魔法ではありませんでしたね。」
 玉が吸収してくれるので問題はありませんが、引火しては大変なので水魔法に切り替えることにしました。

 パァンパァンパァンパァンパァン―――――

 今回はあらかじめ耳をふさぎましたので、ダメージは一切ありません。
 それから何度か魔法を放ち、だいぶ玉の数を減らすことができました。王子は、ひたすら剣を振っていたので、汗を流し肩で息をしています。
お母様のもとに行くのに、これで不安はなくなりました。
 お母様も、騎士が王の命令で退いてからは、新たに玉を出してはいません。まっすぐこちらを見ているお母様は、私を呼んでいるような気がします。

 王子は、先行していましたが、身近に玉がないのを確認すると、私の横に来ました。ディーも私の横を歩いているので、2人に挟まれる形でお母様に近づきます。

 そして、再びお母様と対面しました。今日一日でいろいろなことが起こり、色々な記憶がおぼろげながら思い出せました。それも、もう終わりです。

「お母様、禁書をお渡しください。」
「嫌よ。」
 即答でした。あっさり頂けると踏んでいたのですが、そうはいかないようです。

「レナ・・・わからない?私は、運命を受け入れたいの。そして、私はあなた以外は、愛せないの。愛したあなたに、あなたにも運命を受け入れて欲しいと思って・・・回りくどいわね。私のためにも、あなたのためにも、ここは私から禁書を受け取るだけでは駄目なのよ。わかるでしょ?」
「はい。・・・そうですか、ここでお別れなのですね。」
 お母様は、私に殺されることをお望みのようです。とても嫌です。でも、思っていたほど抵抗は感じませんでした。

「えぇ。本当に、これで最後よ、レナ。」
「・・・何か、望みはありますか?」
「私の目を見て、私の目は何色に染まっているかしら?」
 私は、お母様に歩み寄ります。それをディーが止めようとしましたが、ハインリヒ様がディーの腕をつかんで止めます。私の邪魔をしないという約束を守ってくださるようです。

 手を伸ばせばお母様に触れられる距離。至近距離で、お母様の瞳を見つめました。私と同じ銀の髪からのぞく青い瞳。それは、いつしか鏡で見た私の瞳と同じです。

「私と同じ青色ですわ。」
「いいえ、あなたと違う青色よ。今のあなたは、私とは違うわ。だから・・・生きて、愛を手に入れなさい。」
「・・・っ!?」
 辛くなって俯いた私の胸ぐらを、お母様は掴みます。
 顔をあげれば、至近距離でお母様の美しいお顔が、皮肉げに笑っていました。

「火刑を望むわ。あのクソ男がしたのと同じように、私に火を放って。あなたは、あのクソ男とは違うけれど、最後まであのクソ男のように、私の意のままにいて頂戴?」
「・・・わかりました。私も、お母様の首がさらされるような事態になるのは嫌ですから。死後、辱められることのないように・・・骨すら残さず・・・」
 魔力を練り上げます。
 私では、上級の魔法、人を消し炭にできるような魔法を扱えません。しかし、初級の魔法でも、玉がはじけるくらいの魔力を込めれば、それは可能です。

 膨大な魔力が必要となりますので、普通にできることではありません。しかし、私は禁血ですから。禁術は扱えないものの、魔力だけは膨大にあるのです。

「ごめんなさい、レナ・・・私は、あなたとの幸せより、復讐を取ってしまったわ。母親失格ね。」
「・・・そんなことはありません。お母様は、立派に母としての務めを果たしてくださいました。私は、もうお母様を頼らずとも生きていけます。十分すぎるほど、お母様とは一緒に過ごしてきましたから。」
 そう、何度も繰り返す人生の中で、お母様とは長い時を共に過ごし、甘えさせていただきました。十分すぎるほどの幸せを頂いたのです。

「今まで、ありがとうございました。・・・ファイヤーボール!」
「ありがとう、レナ。ヒール。」
 手のひらに出現させた火の玉を、お母様に押し付けます。火は、一気にお母様を覆いつくし、私の手もやけどを負いますが、お母様が治してくださいました。

「フフフッ。これで、やっと・・・」
 炎の中、嬉しそうにお母様は笑って、次の瞬間には灰となりました。

 私の魔法だけでなく、おそらくお母様も魔法を使ったのでしょう。苦しむさまなど、誰にも見られたくありませんものね。

 意識が遠のきます。
 遠くで、王子とディーが慌てる声が聞こえますが、応えることはできません。
 魔力の使い過ぎ・・・ですね。

 私は、そのまま意識を失いました。最後に、誰かに抱き留められた気がしますが、王子かディーかはわかりませんね。2人のどちらかだとは思いますが。


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