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相棒の危機
しおりを挟む「うわぁぁぁあああああ!!」
早朝、俺の絶叫が響き渡った。
「お、俺のソーセージがっ!!!」
「うっさいわね!朝っぱらから何なのよ!?」
ぼふんっと枕が俺の顔面に直撃した。どう考えてもポメラだろう。弱り切った俺にとどめを刺すとは、悪魔の所業だ。
「俺のソーセージが・・・腐ってた。」
「・・・くんくん。あら、ほんと臭いわね。でも、まだ食べられるんじゃない?あんたの鉄の胃袋ならいけるわよ。」
「まぁ、確かに俺の胃袋ならいけるが。」
貧乏な俺は、腐ったものや多少のカビが生えたものなら、問題なく食べることができる。ブルーソーセージはさすがの俺でも無理だがな。あと、貧乏だからって、俺の真似はするなよ。責任は取らない。
「そういう問題ではなくてな、俺の相棒をどうするかってことだ。このままじゃ、魔王討伐なんていけない。丸腰でかなう相手とも思えないし。」
「ソーセージ持ってても、丸腰と変わらないと思うけど。武器なら、私が持っているこの剣使えばいいじゃない!この剣持ってる方が勇者っぽいし、魔王に勝てる確率がグンッと上がるわよ!?」
ポメラはベッド横に立てかけてあった、白い布を巻かれた剣を俺に渡そうとする。でも、俺は拒絶した。
「俺にとって、相棒はソーセージだけだっ!」
「あんた、馬鹿なの?」
「あのな、剣士にとって剣がかけがえのない相棒であるのと同じように、俺にとってはソーセージが掛け替えのない存在なんだ。」
「あんたがソーセージ好きなのも知ってるし、剣の代わりにソーセージを持っていくことにも目をつぶったけど・・・ここは妥協してくれないかしら。だって、どうしようもないことでしょ?」
「無理。」
「無理だっていうならどうするのよ?時間巻き戻す魔法でも使うの?」
「いや、そんな魔法使えねーよ!お前、まさか使えるのか!?」
「使えるわけないでしょ。なら、もうそのソーセージはあきらめて、朝食にしましょう。あんたは、その相棒に今までの感謝をささげて完食しなさいよ。」
「当たり前だ。」
「あら、食べるのね。ソーセージを持っていくのはあきらめたわけ?」
「このままこいつを旅に連れ回しても、無残な姿をさらすだけだ。今ならまだ間に合う。俺が食えるからな。だがっ!ソーセージは持っていく!」
「?」
「ポメラ、お前は忘れたのか?俺は、ソーセージ屋の息子だぞ?」
俺はどや顔をしたが、ポメラは背中を向けて部屋を出ていくところだった。
「はいはい。じゃ、ご飯食べに行きましょう。」
朝食を終えて、俺たちは村を出発した。
もちろん、俺の朝食は相棒のソーセージだ。短い旅だったが回想を交えながら食したソーセージの味を、俺は一生忘れないだろう。
来た道を戻り始める俺にポメラが声を掛けた。
「あんた、まさか家に帰ってソーセージを作り直す気?」
「その方が早い。材料もあるしな。」
「いい加減にしなさいよ!それじゃ、いつまでたっても先に進めないじゃない!ただでさえ、夏休み中に魔王倒さなきゃいけないってのに。」
「それもそうだな。なら、先に進もう。」
「だからっ!・・・へ?先に進むの?」
「そういってるだろ。それともなんだ、町に忘れ物でもあるのか?」
「ないわ。・・・ソーセージはあきらめるの?」
「お前が諦めろって言ったんだろ。それに、家に戻っても材料はないだろうし・・・金がないからな。」
「ハム・・・」
でも、諦めるとは言っていない。
俺たちは、近くの竜が出ると噂の山に来た。もちろん、魔王城への道のりにある山なので、ポメラは何も言わなかったが、さすがに言っておかないのもかわいそうなので言った。
「竜を倒すぞ。」
「・・・何か言った?」
「竜を倒すといったんだ。竜でソーセージを作ろうかと思ってな。」
「やっぱり、諦めてなかったのね。」
呆れながらも、少しほっとした様子のポメラに、俺は笑顔を向けた。
「魔王を倒す練習にもなるしな。心の準備は良いか?」
「とっくの昔にできてるわよ。」
「お前ならそう言ってくれると思ってた。いつも、ありがとうな。」
「何よ急に・・・」
俺はサブ武器として腰に下げていた短剣に手をやった。これで竜をやるのは骨が折れそうだ。物理的にもな。
「それで戦う気?剣ぐらい貸すわよ。」
「いや、それはお前が持っていてくれ。万が一があった時、お前が逃げるために必要だろ。」
「・・・万が一なんて、あるわけないでしょ。いいわ、これは私が持っておく。あんた、ひん死になったら、私がこの剣で竜の首を落とすわ。」
「ひん死になってからなのか・・・ま、それでいいよ。よし、行くか!」
竜の住処まできた俺たちは、眠っている竜を遠くから観察した。ちなみに、ここまでくる間に魔物を3体倒して、ポメラの魔力は半分くらいしか残っていないらしい。俺の魔力はゼロだけどな。
「本当に大丈夫?」
「あぁ。ポメラはここで援護してくれ。俺は接近戦をする。竜の眠りは深いって聞いたことがあるから、たぶん問題なく近づけると思う。最初の一撃で、急所を突こうと思う。」
「その短剣で?」
「もしこれでだめなら諦める。竜も、傷つけられなかったら起きないだろうし、そのまま帰ってくるよ。だから、俺が戦い始めるまで魔法は使うなよ?」
「わかったわ。気を付けてね。」
俺はうなづいて、一応忍び足で竜に近づいた。どこを攻撃すればいいのか考える。目とかの方がやりやすいが、それで死ぬ可能性は低い。ないな。頭は、頭蓋骨があって俺の腕力でそれを砕けるとは思えないし、ここは首だろうか。首なら切り落とせば確実だな。
俺の体より太い首は、切り落とせそうにない。でも、ここくらいしか狙えそうな場所は思いつかない。
狙いは決まった。俺は、竜のすぐそばで短剣を構え、上から下へと斬りつけた。スゥと、チーズを切るように、抵抗なく斬れた。チーズって、ソーセージに合うよな。大好きだ。
その時、すぐそばから体が揺さぶられるような咆哮がして、次の瞬間に竜の鋭い爪が、俺の心臓を狙って向かってきた。それを避けることもできず、俺は胸に強い衝撃を受けて、吹き飛ばされた。
「ハムっ!?」
遠くで、ポメラの声が聞こえたが、俺は答えることができなかった。
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