異世界召喚されたら悪役令息に溺愛されました

トキ

文字の大きさ
3 / 9

異世界召喚3

しおりを挟む
 この世界は漫画やゲームによくあるファンタジー世界だ。幻獣、精霊、妖精、魔獣など、架空の生きものも普通に存在し、人間達は特殊な契約によって彼らを召喚することができる。この世界の人間は生まれた時から魔力があり、その魔力量によって召喚できる存在も変わる。魔力量が多ければ多いほど力の強い者を召喚でき、逆に魔力量が少ないと力の弱い者しか召喚できない。

 この世界で最強だと謳われているのは幻獣と精霊だ。幻獣とはペガサスやドラゴンといったこの世界でも幻と言われている存在で、彼らは魔力量だけでなく魂の質も良くなければ契約などできないとされている。精霊は自然の力を自在に操れる存在で、一度も召喚に応じたことはないと言う。彼らは人間の手を借りずとも困らない。最も多く召喚されているのは妖精や魔獣だ。彼らのランクは低級から中級で、稀に上級がいるくらい。

「俺って何処に当て嵌まるんだ?」
「……僕に聞かれても」
「だよなあ」

 同じ人間が召喚されたのは初めてだったのだろう。授業が終わった後、俺とアルフィーは教師に呼び出されて色々と質問を受けた。俺は言葉が分からない、話せないフリをしているからアルフィーに説明は任せたけど。魔力はない。特殊能力もない。教師達も首を傾げていた。しかし、召喚してしまったからにはこの学園から追い出すことはできない。と、言う訳で滞在は許された訳なんだけど……

「なんだ? アレ」
「どう見ても人間じゃない」
「あんな最低なヤツの召喚に応じるなんて、アレもバカだよなあ」
「無能同士お似合いじゃねえか」
「……何時ものことだ」
「…………」

 アルフィーから話は聞いていたけど、かなり最悪な環境だな。召喚された時から感じていた嘲笑や侮蔑。アルフィーを見下す奴らの顔はどんなに美しく整っていても醜い。アルフィーは「慣れた」と言っているが、こんなものに慣れる筈がない。

「アルフィー様。召喚の儀、成功したんですね。魔力が少ないアルフィー様でも召喚できるなんて、僕、すっごく驚きました」
「レジー! こんな奴に近付いてはいけない! 召喚されたあの男だって、可愛い君に何をするか分からないんだよ?」
「そうですよ。レジー。もう貴族でなくなる者に情けなど必要ありません」
「レジー! ジョシュア殿下から離れないでください。貴方は聖魔法の使い手なのですから」

 廊下を歩いていただけなのに、何故か髪と目がピンク色の美少年がアルフィーに絡んできた。流石はファンタジー。今は若くて可愛らしい顔立ちだけど、おじいちゃんになってもピンクって……いや、考えないでおこう。しかし、此奴らの目は節穴か? アルフィーが彼に近付いたのではなく、彼がアルフィーに無理矢理近付いてきたように見えるんだが。

 彼を守るように金髪碧眼のイケメンが抱きしめ、二人を背に隠してアルフィーを睨み付ける銀髪緑眼のイケメンと赤髪金目のガタイのいいイケメン。全員アルフィーを敵視しているようだ。まあ、アルフィーがやったことも悪かったとは思うが、こんな公共の場で断罪しなくてもよくないか?

「ジョシュア、ルーベン、ライアン。ありがとう。でも、僕はアルフィー様とも仲良くしたいんです。だって、アルフィー様は僕のせいでライリーからも見放されて、公爵家から貧乏な平民になってしまうから。せめて、学園にいる間だけでも、アルフィー様とお友達に……」
「レジー。君は本当に優しいね。自分をいじめていた相手と仲良くなりたい、なんて」
「流石は聖魔法の使い手ですね。レジー様」
「お人好しすぎて心配になりますよ。こんなクズ相手にも手を差し伸べるなんて」

 え? どこが? 悪意ダダ漏れだったけど? レジーと呼ばれた少年の言葉にはアルフィーを気遣う気持ちなんてこれっぽっちもない。孤立して公爵家から平民に転落するアルフィーを嘲笑っているようにしか聞こえない。

「恋愛ごっこなら他所でしてくれませんか? 何度も何度もくだらない茶番劇を見せられるこっちの身にもなってください。ロバーツ王太子殿下」
「な!」
「僕が彼に嫉妬して嫌がらせをしてしまったのは事実です。その事に関しては謝罪します。申し訳ありませんでした。レジー・ウッド。これからはロバーツ王太子殿下と幸せに暮らしてください。それに、平民も悪くないですよ。罪人の僕には貴方達は眩しすぎて直視できないので、とてもありがたいことです」

 皮肉を皮肉で返しやがった。あのー、アルフィーさん? 大丈夫なの? そんなことを言って後々面倒な事にならない? それに、お前少し前までは「ジョシュア様が相手してくれない、うえーん」って言って泣きじゃくってたじゃねえか。今はもう好きじゃないってこと? あんなに好き好き大好き! って言ってたのに?

「僕に声をかける時間が勿体ないでしょう? これからはその貴重な時間を勉強に使ってください。では」

 呆然と立ち尽くすレジー達の横を颯爽と横切るアルフィー。俺も慌てて彼の後を追う。

「良かったのか? あんな喧嘩を売るようなことを言って」
「どうせ平民に落ちるんだ。この世界で、僕が失うものなんて何もない。お前を除いては」
「吹っ切れたのか? あんなに好きだったのに……」
「目が覚めたんだ。どうしてあんな見る目のない馬鹿を好きになったのか自分でも疑問に思うくらいだ」
「それ、不敬罪にならないのか?」
「いっそ退学になるようなことでもしようか」
「例えば?」
「他者の契約を解除する、とか」
「…………」

 ガチでやりそうなんですけど、この子。一体何が彼を変えたんだ? 前向きに考えられるようになったことは良いけど、性格の悪さは変わっていないよな。まあ、レジー達の態度は見ていて腹が立っていたからアルフィーが反論した時はスカッとしたけど。

「なんだよ? その目」
「いやあ、弟の成長をこの目で見れて嬉しいなあ、って」
「はあ!? 誰が弟だ! 子ども扱いするな! お前は僕のおよ……」
「ん?」
「お、お……お世話係のくせに!」
「まさかのお母さん!?」
「ち、違う! 気付けよ! このバカ! 鈍感!」
「え?」

 何故かアルフィーの顔が真っ赤だ。その表情は年相応で、微笑ましくて、俺は嬉しさのあまりアルフィーの髪がぐしゃぐしゃになるのも気にせず頭を撫で続けた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました

ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。 タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。

【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!

天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。 なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____ 過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定 要所要所シリアスが入ります。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

異世界オークションで売られた俺、落札したのは昔助けた狼でした

うんとこどっこいしょ
BL
異世界の闇オークションで商品として目覚めた青年・アキラ。 獣人族たちに値踏みされ、競りにかけられる恐怖の中、彼を千枚の金貨で落札したのは、銀灰色の髪を持つ狼の獣人・ロウだった。 怯えるアキラに、ロウは思いがけない言葉を告げる。 「やっと会えた。お前は俺の命の恩人だ」 戸惑うアキラの脳裏に蘇るのは、かつて雨の日に助けた一匹の子狼との記憶。 獣人世界を舞台に、命の恩人であるアキラと、一途に想い続けた狼獣人が紡ぐ、執着と溺愛の異世界BLロマンス。 第一章 完結 第二章 完結 第三章 完結

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

処理中です...