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契約解除1
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この学園の生徒達は必ず召喚の儀を行いパートナーと信頼関係を築く。と言うのは建前。美談とも言われている。実際、召喚された者達の扱いはパートナーと言うより奴隷だ。ランクが高ければ扱いもいいのだが、ランクの低い者は召喚者達からパシられたり、いじめられたりしている。基本的に彼らは何も食べなくても生きられるが、美味しいものをたくさん食べたいという欲求はある。
「お前なんかもう要らねえ! とっとと消えろ! この役立たず!」
「テメエのせいで俺の未来は真っ暗だ! こんな醜い魔獣が俺のパートナーだと思うと虫酸が走る!」
ドゴッ! ガンッ! と嫌な音が暫く続いた後、怒鳴り散らしていた男子学生達の声が遠のいた。学園の裏庭を覗いてみると、真っ赤に染まった小さな物体が二つ。
「あんなの、日常茶飯事だ。いちいち気にしていたら……って、カオル!?」
「子馬?」
アルフィーの忠告も聞かず、俺は倒れている小さな物体に近付いた。芝生の上で息を荒げていたのは黒に近い灰色の小さな子馬達だった。酷い暴行を受けていたのは一目瞭然で、俺は苦しそうに啼いている子馬達の頭をそっと撫でた。
「カオル」
「酷いな。召喚に応じてくれた相手に、こんなことをするなんて」
「この学園じゃ、これが当たり前だよ。その馬達は魔獣の中でもかなりランクが低い。だから……」
「虐待してもいい、か?」
「…………」
そんな暴虐が許される筈がない。この子達だって生きているのに、感情だってあるのに、ランクが低いだけでこんな酷い仕打ちをするなんて許せない。それなのに、苦しんでいるこの子達に俺は何もしてあげられない。この子達の怪我を治せるのは、聖魔法の使い手だけ。腹が立つけど、あのピンク髪の少年にしか治せないんだ。聖魔法の使い手は非常に少なく、精霊達を唯一癒せる存在として重宝される。だから、レジーと呼ばれた少年は平民出身でもジョシュアと婚約できたのだ。彼が、特別な存在だから。
「ごめんな」
少しでも苦しみから解放させてあげたくて、小さな体をそっと撫でる。血で汚れるなんて気にならなかった。俺は元々動物が大好きで、少しでも楽にしてあげたかった。そんなの気休めでしかない。
「カオル! 馬達の怪我が……」
「え? あれ? 治って、る?」
何もできない自分に腹が立って涙が溢れた。それが子馬達に当たった瞬間、この子達を柔らかな光が包む。その光が消えた時には、子馬達の怪我が綺麗に治っていた。
「……最悪だ。面倒なことになった」
「め、面倒、って?」
「よく見ろ。その馬達を」
「ん? あれ!? 真っ白になってる!? なんで!? しかも翼!? こっちは角!?」
アルフィーに言われて気付いた。さっきまで黒に近い灰色の毛並みが、純白になっているではないか。それだけでなく、一頭は背中から翼が、もう一頭は頭から角が生えていた。
「ペガサスとユニコーン。彼奴らが召喚したのは、低ランクの魔獣じゃなくて穢れが蓄積された幻獣だったんだ」
「穢れ?」
「人間の欲や憎悪、嫉妬といった負の感情を穢れと言うんだ。幻獣は穢れに弱い。だから召喚に応じてくれないんだ。心の澄んだ者でなければ、直ぐに穢れて力を失ってしまうから」
「狂暴化はしないのか?」
「弱体化、と言った方が正しい。魔獣にも理性があるからな」
「穢れが蓄積されると、どうなるんだ?」
「種類にもよるが、どの種族も蓄積量を超えると死に至る」
「…………」
「そして厄介なことに、お前はその穢れを浄化できる唯一の存在らしい。この世界では癒し人と言い伝えられている」
「唯一、ってことは、聖魔法よりもランクは上?」
「当たり前だろ? 聖魔法で治せるのは怪我だけだ。穢れを祓い清めるのは癒し人にしかできない。その中には怪我の治療も含まれているんだから、お前の方が偉いに決まっている」
「ちなみに、このことがバレたら……」
「どの世界でも喉から手が出るほど欲しい存在だ。どうなるかなんて言わなくても分かるだろ?」
「ですよね!」
馬達が元気になったのはとっても良いことなのだが、俺の存在がかなりヤバいなんて聞いてませんよ! 神様! 面倒事に巻き込まれるのは絶対に嫌だから誰にもバレないようにしなきゃ!
「契約も切れてる。その子達、お前を新しい主に決めたらしいぞ?」
「え?」
「幻獣や精霊達にとって、癒し人の側はとても居心地がいいらしい」
「……退学処分?」
「になった方が楽かもしれないな」
召喚したパートナーの契約を解除することも、強奪することもこの学園では固く禁じられている。どんな理由であれ、それを破った者は問答無用で退学処分となる。本当なら悲しむべきことだと思うが、アルフィーが言うようにこれはチャンスかもしれない。この学園は色んな意味で終わっている。そんな奴らの為に俺が利用されるなんて絶対に嫌だし、利用価値があるからと言ってアルフィーに媚を売る奴らを見るのも腹が立つ。
「アルフィー。一緒に逃げようぜ!」
「お前は本当に能天気だな」
アルフィーは呆れつつも俺が差し出した手を握ってくれた。ペガサスとユニコーンも嬉しそうに俺達の周囲を走り回っている。うん。元気になってくれてよかった。
「お前なんかもう要らねえ! とっとと消えろ! この役立たず!」
「テメエのせいで俺の未来は真っ暗だ! こんな醜い魔獣が俺のパートナーだと思うと虫酸が走る!」
ドゴッ! ガンッ! と嫌な音が暫く続いた後、怒鳴り散らしていた男子学生達の声が遠のいた。学園の裏庭を覗いてみると、真っ赤に染まった小さな物体が二つ。
「あんなの、日常茶飯事だ。いちいち気にしていたら……って、カオル!?」
「子馬?」
アルフィーの忠告も聞かず、俺は倒れている小さな物体に近付いた。芝生の上で息を荒げていたのは黒に近い灰色の小さな子馬達だった。酷い暴行を受けていたのは一目瞭然で、俺は苦しそうに啼いている子馬達の頭をそっと撫でた。
「カオル」
「酷いな。召喚に応じてくれた相手に、こんなことをするなんて」
「この学園じゃ、これが当たり前だよ。その馬達は魔獣の中でもかなりランクが低い。だから……」
「虐待してもいい、か?」
「…………」
そんな暴虐が許される筈がない。この子達だって生きているのに、感情だってあるのに、ランクが低いだけでこんな酷い仕打ちをするなんて許せない。それなのに、苦しんでいるこの子達に俺は何もしてあげられない。この子達の怪我を治せるのは、聖魔法の使い手だけ。腹が立つけど、あのピンク髪の少年にしか治せないんだ。聖魔法の使い手は非常に少なく、精霊達を唯一癒せる存在として重宝される。だから、レジーと呼ばれた少年は平民出身でもジョシュアと婚約できたのだ。彼が、特別な存在だから。
「ごめんな」
少しでも苦しみから解放させてあげたくて、小さな体をそっと撫でる。血で汚れるなんて気にならなかった。俺は元々動物が大好きで、少しでも楽にしてあげたかった。そんなの気休めでしかない。
「カオル! 馬達の怪我が……」
「え? あれ? 治って、る?」
何もできない自分に腹が立って涙が溢れた。それが子馬達に当たった瞬間、この子達を柔らかな光が包む。その光が消えた時には、子馬達の怪我が綺麗に治っていた。
「……最悪だ。面倒なことになった」
「め、面倒、って?」
「よく見ろ。その馬達を」
「ん? あれ!? 真っ白になってる!? なんで!? しかも翼!? こっちは角!?」
アルフィーに言われて気付いた。さっきまで黒に近い灰色の毛並みが、純白になっているではないか。それだけでなく、一頭は背中から翼が、もう一頭は頭から角が生えていた。
「ペガサスとユニコーン。彼奴らが召喚したのは、低ランクの魔獣じゃなくて穢れが蓄積された幻獣だったんだ」
「穢れ?」
「人間の欲や憎悪、嫉妬といった負の感情を穢れと言うんだ。幻獣は穢れに弱い。だから召喚に応じてくれないんだ。心の澄んだ者でなければ、直ぐに穢れて力を失ってしまうから」
「狂暴化はしないのか?」
「弱体化、と言った方が正しい。魔獣にも理性があるからな」
「穢れが蓄積されると、どうなるんだ?」
「種類にもよるが、どの種族も蓄積量を超えると死に至る」
「…………」
「そして厄介なことに、お前はその穢れを浄化できる唯一の存在らしい。この世界では癒し人と言い伝えられている」
「唯一、ってことは、聖魔法よりもランクは上?」
「当たり前だろ? 聖魔法で治せるのは怪我だけだ。穢れを祓い清めるのは癒し人にしかできない。その中には怪我の治療も含まれているんだから、お前の方が偉いに決まっている」
「ちなみに、このことがバレたら……」
「どの世界でも喉から手が出るほど欲しい存在だ。どうなるかなんて言わなくても分かるだろ?」
「ですよね!」
馬達が元気になったのはとっても良いことなのだが、俺の存在がかなりヤバいなんて聞いてませんよ! 神様! 面倒事に巻き込まれるのは絶対に嫌だから誰にもバレないようにしなきゃ!
「契約も切れてる。その子達、お前を新しい主に決めたらしいぞ?」
「え?」
「幻獣や精霊達にとって、癒し人の側はとても居心地がいいらしい」
「……退学処分?」
「になった方が楽かもしれないな」
召喚したパートナーの契約を解除することも、強奪することもこの学園では固く禁じられている。どんな理由であれ、それを破った者は問答無用で退学処分となる。本当なら悲しむべきことだと思うが、アルフィーが言うようにこれはチャンスかもしれない。この学園は色んな意味で終わっている。そんな奴らの為に俺が利用されるなんて絶対に嫌だし、利用価値があるからと言ってアルフィーに媚を売る奴らを見るのも腹が立つ。
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