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第6章
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縮れた白い髪、濁り淀んだ緑色の瞳。皺だらけで鱗も尾びれもボロボロ。あらゆる魔法が使え、どんな願いでも叶えてくれると言われている深海の魔女。しかし、それには代償が必要でシンジュは人間になる代わりに声を失った。
カイリに無理矢理連れて行かれ、人間になる薬を嫌々飲まされ、右も左も分からぬ地上に放り出され、王子を殺せと命令された。故に、シンジュにとって深海の魔女は恐怖の対象でしかなかった。それが分かっているのか、老いた人魚は何も言わず、檻の中に拘束されているシンジュにトライデントを向けた。
「え?」
老いた人魚が呪文を唱えた瞬間、シンジュを拘束していた首輪も、頑丈な鎖も、両手に嵌められた枷も、そしてシンジュを閉じ込めていた檻も、全て黄金の粒となって消えてしまった。何が起こったのか分からずシンジュが戸惑っていると、老いた人魚が静かに「お逃げ」と告げた。
「どうして……」
深海の魔女がシンジュを助ける理由など何もない。むしろ、この老いた人魚はシンジュを地上に放り出した存在でもある。言わば人魚族の味方だ。それなのに何故シンジュを逃がそうとしているのか。老いた人魚は疑問に思っているシンジュを見て力なく笑った。
「償いさ。自分の役目も忘れ、欲に溺れ、烙印を押された罪人の、ね」
申し訳無さそうに老いた人魚は告げた。細く皺だらけの手を伸ばしてシンジュに触れようとするが、その直前でその手を引っ込める。
「お行き、最愛の人が居るんだろう?」
「でも、シズクが……」
「これの事かい?」
「シズク!」
老いた人魚はシズクが閉じ込められている瓶を取り出してシンジュに渡した。複雑な術が施されていて瓶を壊せなかったと謝ると、シンジュは泣きながらお礼を言った。
「本物そっくりの瓶とすり替えておいたが、そう長くは持たない。奴らが気付いていない内に地上へお逃げ」
老いた人魚はシンジュに手鏡を渡した。それは光がないのに輝いており、一本の光の線が地上へと繋がっていた。この光を辿れば愛しい人の元へ辿り着けると説明されたシンジュは「あなたも」と言って手を伸ばしたが、老いた人魚は首を横に振った。
「私にはまだやるべき事がある。心配せずとも死にはしない。これはそう言う呪いだからね」
「呪い?」
「……奴らが気付き始めたね」
老いた人魚が険しい表情をして先を見詰めていると、武器を持った人魚が次々と現れた。人魚達はシンジュを見て口々に「捕らえろ!」と「絶対に逃がすな!」と叫び、シンジュに襲いかかろうとした。老いた人魚がトライデントを一振りすると、大きな渦ができ、人魚達は遠くへ飛ばされてしまった。
此処に残るべきか一瞬迷ったが、老いた人魚から「逃げろ!」と叫ばれ、シンジュは手鏡が導く光を辿って海の中を必死に泳いだ。老いた人魚一人では食い止められなかったのか、複数の人魚がシンジュを追ってくる。彼らの手がシンジュを掴もうとした時、突然大きな何かが人魚にぶつかり彼らは海底へ沈んで行った。
人魚達にぶつかった何かは巨大な鯨だった。鯨は優しい目をシンジュに向けた後、追ってきた人魚達を次々と薙ぎ払っていった。シンジュを守ろうとしているのは鯨だけではなく、イルカやサメなどの大きな生きものから、小魚やクラゲと言った小さな生きものまで集まり、一丸となって人魚族に立ち向かった。
『海の神子様を守るのが使命だから』
海の生きもの達からそう言われ、シンジュは泣きながら「ありがとう」と言った。海の生きもの達にとって、海の神子は何よりも大切な存在だった。命を与え、自然の恩恵を与える海の神子。命の神子とも呼ばれる海の神子は五人の神子の中で最も重要な役割を担っていた。
命が与えられなければ、自然の恩恵がなければ、全ての生きものに活力を与える太陽の神子の力も、生きとし生けるものに癒しと安らぎを与える月の神子の力も無意味になってしまう。故に、彼らは海の神子に敬意を払い、危機が迫った時は自分の命を犠牲にしてでも守りなさいと教えられてきた。
「お願いだから、自分の命を捨てるような事だけはしないで」
どの時代でも、海の神子となった者は心優しく、他者を思いやる事のできる慈愛に満ちた人ばかりだった。かつての海の神子を知っている者はシンジュを懐かしむように見て、初めて海の神子と会った者は嬉しそうに水中を泳いだ。
海の神子は誰のものでもない。それなのに、何時からか人魚族が海の神子を独占するような掟を作り、他の海の生きものから海の神子を遠ざけた。当然、彼らは面白くないし海の神子を所有物扱いするのも許せなかった。にも関わらず彼らが大人しくしていたのは、ヒスイと深海の魔女から「今はまだ我慢して」とお願いされていたからだ。
海の生きもの達は皆、シンジュが海の神子だと知っていた。ヒスイも深海の魔女もその事に気付いていたが、ヒスイは自分が海の神子だと宣言した。シンジュを人魚族から守る為だ。シンジュが本物の海の神子だと知ったら、彼らはまた海の神子を独占しようとするだろう。今まで散々虐げて、地上へ放り出して、悲しませて苦しめて、挙句自ら命を絶つ程追い詰めた人魚族に対して、彼らは凄まじい怒りと憎悪を抱いていた。
それでも我慢したのは、シンジュが蘇って地上で幸せに暮らしていたからだ。それなのに、彼らはまた海の神子を苦しめて悲しませた。怒りが爆発するのも当然である。更に、今回は深海の魔女から「存分に暴れていい」と許可されている。
今までの怒りや憎悪をぶつけるかのように、海の生きもの達は次々と人魚族を深海へ沈めていった。深海の魔女だけでなく、海の生きものまで敵に回した人魚族は一瞬で不利な状況に立たされた。自分の為に戦ってくれる海の生きもの達にもう一度お礼を言って、シンジュは急いで地上へと向かった。
必死に泳いで地上へ戻ったシンジュは、かなり体力を消耗して息も絶え絶えだった。シンジュが砂浜まで辿り着くと、手鏡は役目を終えたのか光の粒子となって消えてしまった。地上まで導いてくれた手鏡にもお礼を言って、シンジュはふらつく足を動かしてリベルテを探そうとした。
「リベルさ……」
後ろから誰かの足音が聞こえて振り返った瞬間、シンジュは恐怖のあまり固まってしまった。其処に居たのはリベルテではなく、恐ろしい表情をしたカイリだった。シンジュは急いで逃げようとするが、思うように足が動かず頭を鷲掴みにされてしまう。
「い!」
凄まじい力で掴まれ、髪を引っ張られる痛みにシンジュは小さな悲鳴を上げる。そのままズルズルと引き摺った後、シンジュからシズクを閉じ込めている瓶を奪うと、彼を乱暴に投げ捨てた。砂浜に投げ捨てられたシンジュは体に激痛が走り、咳き込んでしまう。
「なんで、お前なんだよ。ヒスイが、神子になる筈だったのに」
そう告げたカイリは、またシンジュの髪を掴んで力強く引っ張った。弱々しく抵抗すると、カイリは更に苛立ちシンジュの頭を砂浜に勢いよく押し付けた。
「俺は、ヒスイさえ居れば良かったのに……なんで、ヒスイを殺したんだよ。なんで、お前が死ななかったんだよ。愚図で、平凡で、何の取り柄も無い役立たずのお前が、何で海の神子になるんだよ!」
掴んでいた頭を離すと、カイリは倒れているシンジュを何度も蹴った。あまりの痛さに、シンジュは声を出す事も出来ず、痛みに耐え続けた。何時終わるかも分からぬ理不尽な暴力に、シンジュは恐怖に支配されそうになる。
「本当は邪魔だったんだろ? 醜いお前とは違うヒスイが。綺麗で優しくて誰からも愛されるヒスイが、本当は憎くて憎くて仕方なかったんだろ! ヒスイが羨ましくて妬ましくて、だからヒスイを地上へ行かせたんだろ!」
ヒスイは自分の意思で人間になって地上へ行ったのだ。シンジュはヒスイの事を心配して「地上に行くのはやめておいた方がいいよ」と告げていた。しかし、ヒスイは「地上でやらなきゃいけない事があるから」と言って、ユリウスの元へ行ってしまった。彼女がユリウスに一目惚れしたからと言う理由で。しかし、本当の理由は違っていた。彼女が人間になって迄ユリウスの元へ行ったのは、シンジュを守る為だった。
「返せよ。王子を殺せば、ヒスイが戻って来るんだ。殺せ。彼奴を殺して、ヒスイを生き返らせろ。それが出来たら、お前を仲間として認めてやるよ。愚図で何の取り柄も無い役立たずでも、人一人殺す事くらい簡単だろ?」
冷酷に告げてカイリはシンジュにナイフを握らせた。シンジュは握らされたナイフを咄嗟に海へ投げ捨てて首を横に振った。カイリが言っている王子がユリウスの事なのか、リベルテの事なのか、或いは両方なのか。どれが正解だとしても、カイリの命令は残虐非道極まりない内容だった。
「でき、ません。ユリウス、さまも、リベルさま、も……僕は、殺さない。そんな事をしても、お姉ちゃんは、喜ばない!」
「知ったような口を聞くな! お前は俺が言った通り王子を殺せば良いんだよ! 言う事を聞け!」
シンジュを押さえ付け、憎しみの篭った声で怒鳴るカイリに、シンジュは何度も首を横に振って拒絶した。殴られても、蹴られても、シンジュはカイリの命令を聞かなかった。必死に抵抗しシンジュは残った力を振り絞ってカイリを突き飛ばし、その場から走って逃げようとした。
「もう良い。折角チャンスを与えてやったって言うのに。言う事を聞かねえなら、テメエに用はねえよ」
怒りが頂点に達したカイリはゆっくり立ち上がり、身に付けていた剣を引き抜いた。ふらつきながらも必死に逃げるシンジュの腕を強引に掴み、カイリはその場に転がした。仰向けになったシンジュの肩を思いっきり踏み付け、彼の心臓目掛けて勢い良く剣を振り下ろした。
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「え?」
老いた人魚が呪文を唱えた瞬間、シンジュを拘束していた首輪も、頑丈な鎖も、両手に嵌められた枷も、そしてシンジュを閉じ込めていた檻も、全て黄金の粒となって消えてしまった。何が起こったのか分からずシンジュが戸惑っていると、老いた人魚が静かに「お逃げ」と告げた。
「どうして……」
深海の魔女がシンジュを助ける理由など何もない。むしろ、この老いた人魚はシンジュを地上に放り出した存在でもある。言わば人魚族の味方だ。それなのに何故シンジュを逃がそうとしているのか。老いた人魚は疑問に思っているシンジュを見て力なく笑った。
「償いさ。自分の役目も忘れ、欲に溺れ、烙印を押された罪人の、ね」
申し訳無さそうに老いた人魚は告げた。細く皺だらけの手を伸ばしてシンジュに触れようとするが、その直前でその手を引っ込める。
「お行き、最愛の人が居るんだろう?」
「でも、シズクが……」
「これの事かい?」
「シズク!」
老いた人魚はシズクが閉じ込められている瓶を取り出してシンジュに渡した。複雑な術が施されていて瓶を壊せなかったと謝ると、シンジュは泣きながらお礼を言った。
「本物そっくりの瓶とすり替えておいたが、そう長くは持たない。奴らが気付いていない内に地上へお逃げ」
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「私にはまだやるべき事がある。心配せずとも死にはしない。これはそう言う呪いだからね」
「呪い?」
「……奴らが気付き始めたね」
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人魚達にぶつかった何かは巨大な鯨だった。鯨は優しい目をシンジュに向けた後、追ってきた人魚達を次々と薙ぎ払っていった。シンジュを守ろうとしているのは鯨だけではなく、イルカやサメなどの大きな生きものから、小魚やクラゲと言った小さな生きものまで集まり、一丸となって人魚族に立ち向かった。
『海の神子様を守るのが使命だから』
海の生きもの達からそう言われ、シンジュは泣きながら「ありがとう」と言った。海の生きもの達にとって、海の神子は何よりも大切な存在だった。命を与え、自然の恩恵を与える海の神子。命の神子とも呼ばれる海の神子は五人の神子の中で最も重要な役割を担っていた。
命が与えられなければ、自然の恩恵がなければ、全ての生きものに活力を与える太陽の神子の力も、生きとし生けるものに癒しと安らぎを与える月の神子の力も無意味になってしまう。故に、彼らは海の神子に敬意を払い、危機が迫った時は自分の命を犠牲にしてでも守りなさいと教えられてきた。
「お願いだから、自分の命を捨てるような事だけはしないで」
どの時代でも、海の神子となった者は心優しく、他者を思いやる事のできる慈愛に満ちた人ばかりだった。かつての海の神子を知っている者はシンジュを懐かしむように見て、初めて海の神子と会った者は嬉しそうに水中を泳いだ。
海の神子は誰のものでもない。それなのに、何時からか人魚族が海の神子を独占するような掟を作り、他の海の生きものから海の神子を遠ざけた。当然、彼らは面白くないし海の神子を所有物扱いするのも許せなかった。にも関わらず彼らが大人しくしていたのは、ヒスイと深海の魔女から「今はまだ我慢して」とお願いされていたからだ。
海の生きもの達は皆、シンジュが海の神子だと知っていた。ヒスイも深海の魔女もその事に気付いていたが、ヒスイは自分が海の神子だと宣言した。シンジュを人魚族から守る為だ。シンジュが本物の海の神子だと知ったら、彼らはまた海の神子を独占しようとするだろう。今まで散々虐げて、地上へ放り出して、悲しませて苦しめて、挙句自ら命を絶つ程追い詰めた人魚族に対して、彼らは凄まじい怒りと憎悪を抱いていた。
それでも我慢したのは、シンジュが蘇って地上で幸せに暮らしていたからだ。それなのに、彼らはまた海の神子を苦しめて悲しませた。怒りが爆発するのも当然である。更に、今回は深海の魔女から「存分に暴れていい」と許可されている。
今までの怒りや憎悪をぶつけるかのように、海の生きもの達は次々と人魚族を深海へ沈めていった。深海の魔女だけでなく、海の生きものまで敵に回した人魚族は一瞬で不利な状況に立たされた。自分の為に戦ってくれる海の生きもの達にもう一度お礼を言って、シンジュは急いで地上へと向かった。
必死に泳いで地上へ戻ったシンジュは、かなり体力を消耗して息も絶え絶えだった。シンジュが砂浜まで辿り着くと、手鏡は役目を終えたのか光の粒子となって消えてしまった。地上まで導いてくれた手鏡にもお礼を言って、シンジュはふらつく足を動かしてリベルテを探そうとした。
「リベルさ……」
後ろから誰かの足音が聞こえて振り返った瞬間、シンジュは恐怖のあまり固まってしまった。其処に居たのはリベルテではなく、恐ろしい表情をしたカイリだった。シンジュは急いで逃げようとするが、思うように足が動かず頭を鷲掴みにされてしまう。
「い!」
凄まじい力で掴まれ、髪を引っ張られる痛みにシンジュは小さな悲鳴を上げる。そのままズルズルと引き摺った後、シンジュからシズクを閉じ込めている瓶を奪うと、彼を乱暴に投げ捨てた。砂浜に投げ捨てられたシンジュは体に激痛が走り、咳き込んでしまう。
「なんで、お前なんだよ。ヒスイが、神子になる筈だったのに」
そう告げたカイリは、またシンジュの髪を掴んで力強く引っ張った。弱々しく抵抗すると、カイリは更に苛立ちシンジュの頭を砂浜に勢いよく押し付けた。
「俺は、ヒスイさえ居れば良かったのに……なんで、ヒスイを殺したんだよ。なんで、お前が死ななかったんだよ。愚図で、平凡で、何の取り柄も無い役立たずのお前が、何で海の神子になるんだよ!」
掴んでいた頭を離すと、カイリは倒れているシンジュを何度も蹴った。あまりの痛さに、シンジュは声を出す事も出来ず、痛みに耐え続けた。何時終わるかも分からぬ理不尽な暴力に、シンジュは恐怖に支配されそうになる。
「本当は邪魔だったんだろ? 醜いお前とは違うヒスイが。綺麗で優しくて誰からも愛されるヒスイが、本当は憎くて憎くて仕方なかったんだろ! ヒスイが羨ましくて妬ましくて、だからヒスイを地上へ行かせたんだろ!」
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冷酷に告げてカイリはシンジュにナイフを握らせた。シンジュは握らされたナイフを咄嗟に海へ投げ捨てて首を横に振った。カイリが言っている王子がユリウスの事なのか、リベルテの事なのか、或いは両方なのか。どれが正解だとしても、カイリの命令は残虐非道極まりない内容だった。
「でき、ません。ユリウス、さまも、リベルさま、も……僕は、殺さない。そんな事をしても、お姉ちゃんは、喜ばない!」
「知ったような口を聞くな! お前は俺が言った通り王子を殺せば良いんだよ! 言う事を聞け!」
シンジュを押さえ付け、憎しみの篭った声で怒鳴るカイリに、シンジュは何度も首を横に振って拒絶した。殴られても、蹴られても、シンジュはカイリの命令を聞かなかった。必死に抵抗しシンジュは残った力を振り絞ってカイリを突き飛ばし、その場から走って逃げようとした。
「もう良い。折角チャンスを与えてやったって言うのに。言う事を聞かねえなら、テメエに用はねえよ」
怒りが頂点に達したカイリはゆっくり立ち上がり、身に付けていた剣を引き抜いた。ふらつきながらも必死に逃げるシンジュの腕を強引に掴み、カイリはその場に転がした。仰向けになったシンジュの肩を思いっきり踏み付け、彼の心臓目掛けて勢い良く剣を振り下ろした。
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