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第一部
反省しない人3
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俺が「うん。大丈夫だから」と言ってリゼットちゃんを落ち着かせた。何故かジョエルちゃんも「わ、私も協力させてください! ジャノ様の為ならお父さんと一緒にその悪い貴族をやっつけます!」と言って俺は頭が痛くなった。目の前にその犯人が居なければ「うん。ありがとう。その時はよろしくね」と言って終わらせるのだが。勿論二人にそんなことはさせない。これは、狙ってるのか? 確信犯なのか? 文也は完全に確信犯だから分かるのだが、リゼットちゃんはどっちだ? 伯爵夫人を気にかけるようなことを言っているし、旦那様のことも褒めていたけど……それも全部嘘?
「えっと、婚約パーティー! ごめんね! 俺もフェルナンも参加しなくて!」
「いえ! ジャノさんの立場を考えれば仕方ないと思います。まだあの噂が消えていませんから」
「うん。俺が出席すると折角の婚約パーティーが台無しになる可能性が高いから。本当にごめんね」
「いいんですよ! その代わり、身内だけのパーティーには来てくれるんですよね!?」
「そっちには参加するよ! ユベール様と一緒に! あ、婚約のお祝いに何か贈り物をしたいんだけど、二人とも欲しいものってある?」
「え!? い、いいですよ! ジャノさんには今まで助けてもらっているのに、これ以上は貰えません!」
「わ、私もジャノ様に助けていただいたので、それだけで十分です! あ、あの、でも……もし、嫌じゃなければ、しょ、小説を、読んでみたいな、と」
「小説?」
「ラ、ラナ様から聞いたんです。ジャノ様が、リゼット様と私をモデルにした小説を書いている、と。とても優しくて、切なくて、感動するお話だったって、ラナ様が絶賛していたので、ずっと、気になっていて」
「あー、うん」
読者が、増えている。ラナ様、何時の間に読んだの!? というか誰から勧められたの!? ステラさん!? レイモンさん!? ユベール様!? それとも他の誰か!? 誰!? こんな形で本人達にバレるなんて思っていなかった! そもそも、こんなに俺の小説が話題になるなんて予想すらしていなかったんだけど!
「あの、ダメ、ですか?」
「それがお祝いの品になるなら。ユベール様に頼んでちょっとお洒落な表紙にしてもらう? その前に内容を確認してから本にしてもらった方がいい? 元々紙に書いていたものだから、原稿を複製して直してほしいところがあれば教えて。可能な限り修正するから」
「いいんですか!? じゃあ、私もその本が欲しいです!」
「分かった。ユベール様に相談してみるね。複製はどうしよう」
「ベルトラン公爵邸を訪れてもいいですか!? 勿論、ラナ様達に予定はきちんと確認して、お邪魔する日時も予めお伝えします! 実際に読んで直接ジャノさんに直してほしいところを伝えた方が効率がいいと思うんです!」
「そうだね。じゃあ、また今度」
「はい! ジョエルさんも一緒に行きましょう!」
「え? いいんですか!?」
「うん。ジョエルちゃんにも見てもらいたいから。直してほしいところがあったら遠慮なく言ってね」
「あ、ありがとうございます!」
俺の書いた小説で盛り上がっているとリゼットちゃんを誰かが呼んだ。とても落ち着いた声だった。そちらの方へ目を向けると、其処にはリゼットちゃんの婚約者、ジルベール・モラン様がゆっくり彼女に近付いていた。白に近い薄緑色の髪に、ライムグリーンの瞳をした彼も当然イケメンだった。薄緑色の貴族の衣装に身を包んだ彼はリゼットちゃんの手を取って手の甲にキスを落とす。自然な動作でリゼットちゃんを立たせて腰に手を回していて流石だなあと俺は感心した。
「ジ、ジル! 外ではこんなことしないでって言ったじゃない!」
「ごめん。リゼットが可愛すぎて、つい」
「か、可愛いって。折角ジャノさんとお話ししてたのに」
「俺のことが嫌いなの?」
「そ、そんなこと言ってないわよ! ちゃ、ちゃんと好きだから」
「俺も、同じ気持ちだよ」
ごちそうさまです。やっぱり相思相愛の純愛はいいなあ。リゼットちゃん、ジルベール様、末永くお幸せに。リゼットちゃんは顔を真っ赤にして照れていて、ジルベール様はそんなリゼットちゃんに優しい目を向けて全身で愛おしいと表現している。
「ジョエル」
「ニコラ? どうして此処に!? 今日は騎士団に用事があるって」
「早めに終わったんだ。そしたら偶然ジルと会って、迎えに来た」
「そ、そう」
「…………」
「えっと、ニコラ?」
「……あ、いや。そのドレスと宝飾品、お前に似合ってるなと思って。本当は、俺が全部買いたかったのに」
こっちもこっちで青春だあ。いいね、いいね。心が浄化されるー。ちょっと恋に慣れていないのも初々しくて可愛い。ニコラくんが恐る恐るジョエルちゃんに手を差し出して、その手にそっと自分の手を置いてぎゅっと握りしめる。ジョエルちゃんも立ち上がって、ニコラくんの隣に並ぶ。四人とも少しデートを楽しんでからモラン侯爵邸へ帰るそうだ。
「ジャノさん。ありがとうございます」
「ジルベール様。リゼットちゃんとお幸せに」
「はい。次はジャノさんですね」
「ん?」
「ジャノ」
迎えに来たよ。
耳元で囁かれて俺は咄嗟に耳を手で覆った。慌てて声のした方に顔を向けると、優しく微笑むユベール様の麗しいお顔。え? え? ど、どうしてユベール様が此処に!? お仕事だったんじゃ……
「俺も偶然ジルベールと会ったんです。リゼット嬢を迎えに行くと聞いて、俺も一緒に来たんです。ジャノが心配だったので」
「そ、そう、ですか」
「まだお昼過ぎですね。ジャノ、俺達も少しだけ外を見て回ってから帰りませんか? ジャノと二人だけの時間を楽しみたいんです」
「は、はい」
俺もリゼットちゃんみたいに手を取られ、優しく抱き寄せられて腰に手を回される。ぅう。思っていた以上に恥ずかしいぞ? これ。リゼットちゃん達は「それじゃあ私達はこれで」と言って、四人で仲良くお話ししながら去って行った。俺もユベール様と歩き出そうとしたのだが……
「転んでは大変です。ジャノは俺の大切な人ですから」
「え!? ちょ、ちょっと、ユベール様!? これは恥ずかしいです! 公共の場でこんな!」
「見せ付けてやりましょう! 俺がどれだけ、ジャノを愛しているのかを!」
「声! 声が大きいです! 聞こえる! 聞こえちゃう! あと目立つからお姫様抱っこはやめてー!」
なんでお姫様抱っこ!? リゼットちゃんやジョエルちゃんみたいに可愛くて綺麗な女の子なら絵になるけど、俺は平凡な男! イケメンさんにお姫様抱っこされる二十七の男……ダメだ、地獄絵図にしかならない。ユベール様! 普通に歩かせてくださいー!
「えっと、婚約パーティー! ごめんね! 俺もフェルナンも参加しなくて!」
「いえ! ジャノさんの立場を考えれば仕方ないと思います。まだあの噂が消えていませんから」
「うん。俺が出席すると折角の婚約パーティーが台無しになる可能性が高いから。本当にごめんね」
「いいんですよ! その代わり、身内だけのパーティーには来てくれるんですよね!?」
「そっちには参加するよ! ユベール様と一緒に! あ、婚約のお祝いに何か贈り物をしたいんだけど、二人とも欲しいものってある?」
「え!? い、いいですよ! ジャノさんには今まで助けてもらっているのに、これ以上は貰えません!」
「わ、私もジャノ様に助けていただいたので、それだけで十分です! あ、あの、でも……もし、嫌じゃなければ、しょ、小説を、読んでみたいな、と」
「小説?」
「ラ、ラナ様から聞いたんです。ジャノ様が、リゼット様と私をモデルにした小説を書いている、と。とても優しくて、切なくて、感動するお話だったって、ラナ様が絶賛していたので、ずっと、気になっていて」
「あー、うん」
読者が、増えている。ラナ様、何時の間に読んだの!? というか誰から勧められたの!? ステラさん!? レイモンさん!? ユベール様!? それとも他の誰か!? 誰!? こんな形で本人達にバレるなんて思っていなかった! そもそも、こんなに俺の小説が話題になるなんて予想すらしていなかったんだけど!
「あの、ダメ、ですか?」
「それがお祝いの品になるなら。ユベール様に頼んでちょっとお洒落な表紙にしてもらう? その前に内容を確認してから本にしてもらった方がいい? 元々紙に書いていたものだから、原稿を複製して直してほしいところがあれば教えて。可能な限り修正するから」
「いいんですか!? じゃあ、私もその本が欲しいです!」
「分かった。ユベール様に相談してみるね。複製はどうしよう」
「ベルトラン公爵邸を訪れてもいいですか!? 勿論、ラナ様達に予定はきちんと確認して、お邪魔する日時も予めお伝えします! 実際に読んで直接ジャノさんに直してほしいところを伝えた方が効率がいいと思うんです!」
「そうだね。じゃあ、また今度」
「はい! ジョエルさんも一緒に行きましょう!」
「え? いいんですか!?」
「うん。ジョエルちゃんにも見てもらいたいから。直してほしいところがあったら遠慮なく言ってね」
「あ、ありがとうございます!」
俺の書いた小説で盛り上がっているとリゼットちゃんを誰かが呼んだ。とても落ち着いた声だった。そちらの方へ目を向けると、其処にはリゼットちゃんの婚約者、ジルベール・モラン様がゆっくり彼女に近付いていた。白に近い薄緑色の髪に、ライムグリーンの瞳をした彼も当然イケメンだった。薄緑色の貴族の衣装に身を包んだ彼はリゼットちゃんの手を取って手の甲にキスを落とす。自然な動作でリゼットちゃんを立たせて腰に手を回していて流石だなあと俺は感心した。
「ジ、ジル! 外ではこんなことしないでって言ったじゃない!」
「ごめん。リゼットが可愛すぎて、つい」
「か、可愛いって。折角ジャノさんとお話ししてたのに」
「俺のことが嫌いなの?」
「そ、そんなこと言ってないわよ! ちゃ、ちゃんと好きだから」
「俺も、同じ気持ちだよ」
ごちそうさまです。やっぱり相思相愛の純愛はいいなあ。リゼットちゃん、ジルベール様、末永くお幸せに。リゼットちゃんは顔を真っ赤にして照れていて、ジルベール様はそんなリゼットちゃんに優しい目を向けて全身で愛おしいと表現している。
「ジョエル」
「ニコラ? どうして此処に!? 今日は騎士団に用事があるって」
「早めに終わったんだ。そしたら偶然ジルと会って、迎えに来た」
「そ、そう」
「…………」
「えっと、ニコラ?」
「……あ、いや。そのドレスと宝飾品、お前に似合ってるなと思って。本当は、俺が全部買いたかったのに」
こっちもこっちで青春だあ。いいね、いいね。心が浄化されるー。ちょっと恋に慣れていないのも初々しくて可愛い。ニコラくんが恐る恐るジョエルちゃんに手を差し出して、その手にそっと自分の手を置いてぎゅっと握りしめる。ジョエルちゃんも立ち上がって、ニコラくんの隣に並ぶ。四人とも少しデートを楽しんでからモラン侯爵邸へ帰るそうだ。
「ジャノさん。ありがとうございます」
「ジルベール様。リゼットちゃんとお幸せに」
「はい。次はジャノさんですね」
「ん?」
「ジャノ」
迎えに来たよ。
耳元で囁かれて俺は咄嗟に耳を手で覆った。慌てて声のした方に顔を向けると、優しく微笑むユベール様の麗しいお顔。え? え? ど、どうしてユベール様が此処に!? お仕事だったんじゃ……
「俺も偶然ジルベールと会ったんです。リゼット嬢を迎えに行くと聞いて、俺も一緒に来たんです。ジャノが心配だったので」
「そ、そう、ですか」
「まだお昼過ぎですね。ジャノ、俺達も少しだけ外を見て回ってから帰りませんか? ジャノと二人だけの時間を楽しみたいんです」
「は、はい」
俺もリゼットちゃんみたいに手を取られ、優しく抱き寄せられて腰に手を回される。ぅう。思っていた以上に恥ずかしいぞ? これ。リゼットちゃん達は「それじゃあ私達はこれで」と言って、四人で仲良くお話ししながら去って行った。俺もユベール様と歩き出そうとしたのだが……
「転んでは大変です。ジャノは俺の大切な人ですから」
「え!? ちょ、ちょっと、ユベール様!? これは恥ずかしいです! 公共の場でこんな!」
「見せ付けてやりましょう! 俺がどれだけ、ジャノを愛しているのかを!」
「声! 声が大きいです! 聞こえる! 聞こえちゃう! あと目立つからお姫様抱っこはやめてー!」
なんでお姫様抱っこ!? リゼットちゃんやジョエルちゃんみたいに可愛くて綺麗な女の子なら絵になるけど、俺は平凡な男! イケメンさんにお姫様抱っこされる二十七の男……ダメだ、地獄絵図にしかならない。ユベール様! 普通に歩かせてくださいー!
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