死神令嬢と悪役令嬢は破滅フラグを叩き折りたい

紗吽猫

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45、悪役令嬢の悪行2


  学院から少し離れた場所にあるのは犯罪者達が詰め込まれる場所。正確には聖女信仰の象徴である教会なのだが、そこの地下は牢獄と呼ばれる場所である。

 表の教会部分とは違い牢獄部分はある誰でも出入りできる場所ではなく、可能なのは限られた人間のみだ。
  王族と薔薇の六家、そして教会の幹部達。

  それでも、貴族令嬢が足を向けるような場所では無いので、カルミア・フローライト公爵令嬢が現れた時は教会の人間も驚いた。


「単刀直入にお聞きしますわ。一体誰の差し金でネリネさんを襲おうとしたんですの?」

  地下の牢屋に囚われていた件の男達にカルミアは問いかけた。彼女の傍にはジニア王太子殿下の従者でもあるローダンセが控えている。彼はこの会話を黙って聞いている。
  
  漆黒の縦ロールにひらひらのドレスという場違いな洋装の貴族令嬢を檻の中から見上げた男達は手足を魔道具で拘束され、身動きが取れない状態になっていた。だから、彼らにカルミアを襲うことは出来ない。

  場違いな貴族令嬢をじろじろと舐め回すように観察した男達は、ニヤッと笑って口角を歪めるとねっとりした声で口を開いた。

「……誰の差し金だったかだって?ははっ!おかしなことをおっしゃいますなぁ」

  四人ほどいた件の男達のひとりがニヤニヤしながらそう口にすれば、もうひとりは「一人だけ逃れようったってそうはいかねぇぞ」と付け加える。

 この時点でカルミアは嫌な予感がした。

  薄気味悪い笑みを浮かべながら、檻の中の男達は全員がじろじろとカルミアを観察している。
  そして、

「依頼してきたのはあんたでしょうよ。……カルミア・フローライト様?」

  と、言葉の爆弾を投げてきた。

  その言葉に、カルミアの思考が一瞬だけ止まった。

  まさか、そんなはずはない。だってわたくしは何もしていない。ネリネを襲えなんて言ってない。そんな感じのことを言ったこともない。それなのに、何故?どうして?

  そんな思考が頭の中を駆け巡った。

  この会話を、ローダンセが聞いている。それはすなわち、いずれジニアの耳にも入るとういうこと。
  断罪の未来へと一歩進んでしまったということ。

「あ、ありえませんわ……!!」

  悲痛な叫びにも似た声を絞り上げてカルミアが反論した。
  男達が相変わらずニヤニヤしていて、ローダンセはただ静かに話を聞いていた。それがあまりにも不快だった。

「何故、そのような嘘をおっしゃいますの!?わたくしは貴方達のような者は知らないし、頼んだりしませんわ!」

  取り乱すようにカルミアが反論すると、その姿をただじーっとローダンセが凝視した。

「貴方達、一体誰にそんなことを言われたんですの!?あからさまな嘘を言ってはさらに罪は重くなりますのよ!?」
「ははっ!これだからお貴族様は……。しらばっくれるんじゃねぇよ!!!」

  ガンッ!!!!と、男のひとりが檻の鉄の棒を掴んでガタガタと揺らして大きな声で叫んだ。
  驚いてカルミアが後ろに下がると、他の男達も鉄の棒にしがみついてガタガタと音を立てて揺らす。まるでそのまま檻を壊してこちらを襲ってきそうな勢いで。

「あんただろ!!!!ネリネ・シトリンが邪魔だから犯せって言ったのはよぉ!!!」
「まさか、間者を立ててたからって自分だけしっぽ巻いて逃げようってのか!?」
「前金まで用意しておいてまで依頼してきたのはそっちじゃねぇか!信頼出来るやつかと思えばこのザマだァ!?ふざけんじゃねぇぞ!!!!」

  男達は交互にまくし立てた。

「わ、わたくしはそんなこと……」
「ああ、そうだったな!!本当は、銀髪の女、あの死神令嬢を犯人に仕立て上げる予定だったからなァ!!あんたは高みの見物だったもんな!!!」

  カルミアがロベリアをネリネ襲撃事件の犯人に仕立てあげようとした。

  それが男達の主張だった。
  
  カルミアは頭の中が真っ白になって、反論出来なかった。
  傍から見ればそれは図星をさされたからぐうの音も出なくなったようにも見えただろう。

  そんな場面に、最悪な形でその場に姿を表したのは、最も出会いたくない人だった。

「ーー……今のは……、どういうことなんだい?カルミア」

  薄暗く、蝋燭の明かりで照らされている牢獄の廊下に不釣り合いな金糸の髪が薄く照らし出される。

「カルミア…、これは一体…何の話をしているのです?」

  続くようにそう超えが問いかけると、唯一の銀髪が明かりに反射してキラリと輝いた。
  その者達の姿を視認したカルミアは膝から崩れ落ちるような精神的ダメージを食らう。

  不安げに瞳を揺らすジニアと、ゼフィランサスに手を借りながら立つロベリアだ。

  なんて最悪なタイミングだ、とカルミアは力なくその場に座り込んでしまったのだった。

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