51 / 55
49 モブ
しおりを挟む町に薬を取りに行ってから一週間がたった。
お屋敷から一歩も外に出なかったから平穏な日々を過ごしていた。
(サオマ様の襲来以外は💢)
昨日は皇子勇者御一行が帰還する日だったから、勇者全員が揃って出迎えるため、セプター様は、またまたあの凛々しい正装に身を包み、ハーマンさんを伴って魔法学園に向かわれた。
魔法学園に行って用事が済んだらすぐ戻ってくるはずだったセプター様が珍しくお泊りになってしまった。
そのため馬車も魔法学園に行ったままに………だからジョンさんの薬を俺が歩いて買いに行くことになった。
別に歩くのなんて平気、ちょっと遅くなっても怒られないしね。
だ・か・ら💗ドーナツの新作が出てないかチェックしに行っちゃおー💗
前回の事があるから慎重に薬局の周りをチェックして速攻で買って、ドーナツ屋さんに向かう。
2つのお店は、まるっきり反対方向だから少し距離がある。
でも美味しい物のために人は努力を惜しんじゃいけないのダ💗
何食べようかな💗楽しみ🎶
急いでドーナツ屋さんに着いたけど、徒歩だったからかなり時間がかかってしまって目の前は長蛇の列。
買えるか心配だよ。とほほ。
でもダメ元で列の最後尾女性二人組の後ろに並ぶ。もしかしたら買えるかもしれないじゃん?
「スネアのドーナツ美味しいわよね💗」
「美味しいけどあんた目的がドーナツだけじゃないでしょ。」
ドーナツだけじゃないってなんだろう?
聞くつもりはなかったけど目の前で大声で話していれば嫌でも聞こえてきてしまう。
「あんただってそうじゃないスネアは販売の時以外、ドーナツを作るのに忙しいって会えないんだもん。」
「顔が良くて、仕事熱心で、自分の店も持っている男なんて格好良いわよね💗」
「恋人いるのかしら、奥さんになりたいわ。」
「いても奪い取っちゃう💗」
などと、ずっとぺちゃくちゃスネアって人のことを話している。
多分ドーナツ屋のお兄さんのことだろう。
本当にドーナツを好きじゃない人に買って欲しくないな。
純粋に食べたい人がここにいるんですけどっっ!!
「すみませーん。全部売り切れましたー。」
スネアが列に並んでるお客さんに申し訳無さそうに声をかけた。
列が崩れてスネアの周りに女子が取り囲む。
「ええー、食べたかったなぁ💗」
「すみません。明日また宜しくおねがいします。」
「また明日ね。」
「沢山作っておいてね、また来るから。」
うおー、投げキスしてる。こんなにあからさまにアピールしてから帰るんだ。肉食系女子ってすげー。
そういえば俺、女子にアピられたことないな。
いやいやこんなにガツガツしている女性は嫌だよ。
一度くらいはモテてみたいな。モブ中のモブの俺には無理な話だけど。
しかしドーナツ屋さん、モブなのに成功者になるとこんなにモテるんだなぁ。羨ましい。
「はー⤵」
ため息ついて凹んでいる場合じゃない。早く帰らなくちゃ。
次、来るときはドーナツを先に買ってから薬局に行くことにしよう。
とぼとぼと下を向いて歩いていると前の方から大きな影が見える。
大きい人だな避けなくちゃ。
「………!!」
だんだん近づいてきた大男は以前ここで会った勇者の一人木こりのマーチだ。
ぎゃああっ!!またマーチかよっ!!
一度会っているんだからもう合わなくてもいいだろっっ!!
帰る方向とは逆に走って逃げて脇道の建物の陰に隠れた。
マーチの様子を見ながら移動しよう。
こっちに来て欲しくないなぁ。
あんまり大通りから離れると帰り道がわからなくなるから嫌なんだけど。
マーチの動向をそっと見てみるとスネアさんと話している。
わー、そんな所に止まらないで道草食わないで早く魔法学園に帰ってよぉぉぉ。
あんまり帰りが遅いとマリーさんに怒られちゃう。
あれ?マーチがドーナツ屋さんに入っていったぞ。どうしたんだろう?
まあいいや、今がチャンスだ。早くお屋敷に帰ろう。
大通りに一歩出た瞬間、俺は腕を掴まれて、元いた脇道に連れ込まれてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる