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第3話
しおりを挟む入学式が終わり教室に移動する時、列がなかなか進まない。頭を横に出してみると前には不自然な間が空いている。
みんな考えていることは一緒で不良に目を付けられるのは怖いため、近くにいる生徒は一定の距離を作っていた。
仕方なく歩幅を合わせてゆっくりと教室に到着すると、みんなは慌てて席に着いた。
だが、不良だけは中に入らず外をうろうろしている。
先生が声をかけているけど二人の様子が何かおかしい。
学校あるあるで初めのうちは名前順に座るから当然俺は一番後ろの席。しかも廊下側のドアの前なので見たくなくても廊下のやり取りが良く見えてしまう。
不良の顔を見ると美しく整った顔立ち、深く澄んだ青い瞳にうっすらと涙が浮かんでいる。
ああ、不良じゃなくて外国人なのか。
先生は自分の知っている英単語を使ってなんとか話そうとしているが、どうもトンチンカンで上手くいかず彼はどんどん萎縮していく。
本当に英語でいいのか?母国語違ったら通じないんじゃないのか?
「先生、英語で通じるんですか?」
見るに見かねて俺は廊下に出て声をかけると先生の顔も泣きそうだった。
「彼はカナダの生まれだから、英語で大丈夫なはずなのよ。」
俺は英検四級を持っているから英語圏であれば何とか会話くらいは出来るはず……
「How do you do?」(初めまして)
「!」
「I`m Ryu. May I ask your name?」
(俺の名前は琉。あなたの名前を教えていただけますか?)
「Waaaaaaan!!!」
大泣きしながら突進して来た彼に抱きつかれた!
「わっ!わっ!ちょっと待てっ!」
「I`m Rei…………東條 麗矢」
嘘!まさかの日本語名っ!
すると先生はホッとして
「良かった。貴方 英語話せるのね!助かったわ。それじゃあ彼のことお願いね。」
「えっ!ちょっと、ちょっと先生っ!」
「先生、英語話せないのに担任になっちゃって凄く困ってたのよ。日本の事、学校の事、色々説明してあげてね。この子は貴方にお願いするから!ね!彼に早く教室に入ってって言ってね。」
先生は自分の勝手な事情をぺらぺらと早口で喋ると、俺達を置いてさっさと教室に入って行った。
はぁぁぁぁ?何、考えてんだこの学校。
英語話せない教師と日本語話せない生徒を、なんで一緒のクラスにしたんだ?
しかも俺に押し付けて放置するなんて酷くないか?
麗矢は俺のブレザーの裾をちょこんとつまんで傍から離れない。
コイツこんなに不安がっているじゃないか。
「Can you speak Japanese?」(日本語話せる?)
「No.」
麗矢は綺麗な金髪を左右に揺らしながら小さく答える。
俺は天を仰いだ。
少しも解らないのか。良くあるよな~。習うより慣れろで放り込むの…。日本の良くない風習だ。
「はあ、俺だってそんなにペラペラ喋れるわけじゃないのに……Let’s go inside.」(一緒に入ろう)
親指を立てて教室に入るように促すと大人しく中に入ってくれた。
それから毎日、英語と日本語を交えて、分からないところは身振り手振りで伝えて面倒を見てやった。
担任は俺が世話しているから大丈夫だと校長先生に話したようで、とうとう学校公認で麗矢のお世話係になっていた。
細くて可愛い女の子のような麗矢に頼られたら悪い気はしない。
どこに行くにも子犬のように俺の跡をついてきた。
それが五年も経つと………
カナダ人と日本のハーフの麗矢はあっという間に大きくなって俺よりも十センチも背が高い。
綺麗だった金髪は中一の遠足の後から黒く染めてしまい、まるで別人だ。
あの頃と唯一変わらないのは深く澄んだスカイブルーの瞳だけ。
本人は黒いコンタクトレンズをするつもりだったらしい。
だが元々視力がいいのにつける必要が無いと親と喧嘩になって俺の所に家出してきた。ひと晩かけて俺が説得すると、家出もコンタクトレンズも諦めてくれた。この事件で俺は麗矢のご両親にも絶大な信頼を得ることになる。
最初の頃は内気だった麗矢も日本語が話せるようになると次第に社交的になり、誰とでも話せるようになった。
ここまではいい。
中三の時に俺とクラスが分かれたら麗矢の奴、友達(俺)がいないというのと言葉が通じない事を理由に不登校という形で抗議した。学校側は仕方なく俺のいるクラスに麗矢を入れ直しになった。だが高一の生活態度を見て、日本語を十分理解できていると判断されたんだろう。
そして今年の春、再び俺達はクラスが分かれることとなったんだ。
「オー! ワタシ ニホンゴ ワカリマセーン」
「そんなの通用しないぞ。」
「うう、俺、なんで日本語上手くなっちゃったんだろ。」
「上手くなんなきゃ困る。俺はいつまでもお前の傍にいるわけにはいかないからな。」
「やだやだ~~!一緒にいたい~~!ずっと一生傍にいるぅ~~!」
幼い駄々っ子みたいに言っているが189センチのでかい男が言ってるんだから可愛く見えるわけがない。
「とにかく自分の教室に帰れ。お前が来ると教室が狭い。」
そう、麗矢が来ると取り巻き連中がもれなく十人前後付いてくる。
大人数で俺達の周りをぎっちりと取り囲む人の壁が出来るんだ。
「ほら~、怒られたじゃん。みんなついて来ちゃダメだよ~。」
彼女達は麗矢の恋人の座を狙って、みんなで抜け駆けをしないように監視及び牽制しあっているから、そんな言い方で引き下がるわけがない。
元々優しい性格と言うのもあるが、日本に来た時、言葉が話せなくて寂しい思いをした事があるから、友達になってくれる子を邪険に出来ないんだろう。
「そう言えば麗矢、急になんでアクセサリージャラジャラのチャラ男になったんだよ。」
「似合うでしょ?これがね、今一番モテるんだって❤カッコ良いでしょ?」
モテるため?似合わないとは言わないが……アクセサリージャラジャラのチャラ男になっているから悪目立ちする。一緒にいると周囲の視線を集めてしまうから俺は落ち着かない。
全く一体誰がそんなこと教えたんだ。
「ふう、もうすぐ次の授業だぞ。」
「あっ!本当だ!また後で。」
ばたばたと自分の教室に戻っていくのを見送ると どこからか小さく毒を吐かれる。
「ふんぞり返って何様よ!」
誰が言ったのかは分からないが、俺に対しての言葉だという事は分かった。
多分、中等部時代を知らない高校からの入学者だろう。
俺だっていい加減、麗矢には独り立ちしてもらいたいよ。
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