もう一つの物語 ー王様の命令は絶対っ!! 番外編ー

yao

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第4話

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 俺たちのことをよく知りもしないくせに好き勝手言いやがって。

 吐き捨てられた言葉にイライラする。

 くそっ!授業の内容が頭に入ってこない。
 次の休み時間も麗矢は必ず来る。
 取り巻きが目に入ってきたらきっと麗矢に八つ当たりを………するな、確実に。
 冷静になれ!
 次の休み時間は麗矢に合わないように逃げるか。
 そうだ!トイレの個室に籠もれば誰にも合わない。(麗矢も入ってこれない)
 そこで気分を落ち着かせることにしよう。

 終了のチャイムが鳴ってすぐ教室を出たが麗矢に見つかってしまった。

「リュー、どこ行くの?」

「……Lavatory……」

「俺も行く!」

って何かしら?」

 取り巻き達は口々にそう言いながらトイレについてくる。

 勘弁してくれ。

 取り巻きたちに分かるように日本語で言い直す。

「トイレに行くだけだからついて来るな!」

「わかってるよ。俺も行きたいの!」

 トイレと聞いても彼女達は怯まず大名行列を組んでついてくる。

 ああ、もう恥ずかしいなっ!

 大名行列と言えば、我が校にはもう一つ大名行列がある。
 それは今ちょうど正面から向かって来る、前回のクラウンゲームの女王様の行列だ。
 多分、理科の実験室に移動する途中なんだろう。
 その列の長さは四、五メートルはあるだろうか?最後尾にいる奴なんか女王に顔を覚えてもらえるか分からないくらい遠い。

「凄く長い行列だなぁ。」

「それをお前が言うか? って、もう俺のあと付いて来るなよ!ぞろぞろと恥ずかしい。」

「みんなついて来ちゃ駄目だよ~~。」

「俺はお前に言っているんだ。お前が来なければ、みんなついて来ないだろ。」

「えーっ!俺におしっこ漏らせっていうのかよぉ?」

 女王はクスクスと笑ってすれ違った。
 今回の王冠の隠し場所を知りたいという輩が、女王の腰巾着となって…と言うより金魚のフンようにくっついている。彼女に色々貢物をしている生徒もいるらしい。見返りに隠し場所を教えているとかいないとか、毎回クラウンゲームの勝利者の周りには良い噂は流れない。

「リュー、顔怖いよ。可愛い顔が台無しだよん。」

「! だっ!誰が可愛い顔なんだっ!」

「もー、クラウンゲームのこと考えてただろ?そんなに眉間にしわを寄せてると早くお爺ちゃんになっちゃぜ?」

「余計なお世話だ。」

「リューは、ズルとか不公平なのとか嫌いだもんな~~。」

「別に権利は平等に与えられるべきだと思っているだけだ。俺だったらみんなに平等にチャンスを与えることが出来る。だが今のこのシステムじゃほとんどの者、特に女子にはチャンスがない。お前もそう思うだろ。」

「ふふ。」

「なんだよ。」

「リューのそう言う真面目な所 好きだなぁって思ったんだよ。」

 女王の列が急に止まったから驚いて振り向くと俺達の会話が聞こえたらしく女王がギロリと俺達を見ていた。
 睨まれてもどうということはない。俺は真実を話しているだけだ。どうせ私利私欲のため、彼女の中では自分の時と同じように出来レースになっているはずだ。
 たとえ王冠を見つけることが出来なくても、ゴール前で王冠を奪ってゴールすれば王様になることは可能なんだ。
 女王が去年やったように金をばら撒いてチームを作りゴール前で王冠を見つけてきた生徒から、金で雇った男たちに強奪してもらい、その王冠を受け取ってゴールすれば女子でも王になれるということ証明した。
 だが、ばら撒いた金と三つの命令の対価が釣り合うのかが問題だが……。
 まあ価値は人それぞれだと思うが彼女はそうやってのし上がった。
 女王の下した命令は誰も知らない。
 まだ使っていないという噂もある。
 王様の命令の有効期間は在学中、効力は校内に限られているから使わなければ意味がない。

「なあなあ、リュー。王様になったら何の命令する?」

「俺は王にはならない。」

「もー、夢がないなぁ。そうじゃなくてもしもの話だよ。何でも三つ叶うんだぞ。」

「……そうだな、もし叶うなら、まず卒業までにかかる全ての学費経費無料、学食無料、生徒会長になるの三つかな。でもそんなの俺は興味ない。生徒会長は実力でなるし、それに……」

「それに?」

「…元から王様になれそうにないからな。」

「あははははっ、リューは美術と体育は全然駄目だからなぁ。」

「うるさい、自分こそ王様になったら何を叶えるんだよ。」

「俺?俺の望みは何もないよ。そうだな~。好きな人に全部あげちゃうかも。」

 麗矢の意外な言葉にショックで一瞬息が止まった。

 好きな人に全部あげちゃうだと?

 信じられなくて確認する。

「お……お前、好きな人がいるのか?」

「いるよん♪」

 今度は胸の奥の方がズキンと痛んだ。
 嬉しそうに笑って答えた麗矢の顔は幸せそうで、俺の頭の中は真っ白、雑踏は聞こえなくなり、空気が凍っていく。
 それは静かに降る雪の中にただ一人取り残されたような寂しい静けさだった。
 すると突然、キイーンと鳴り響く高音と共に俺は思いきり突き飛ばされた。

「麗矢っ!誰なの その女っ!」

「嘘でしょっ!嘘よねっ?」

「ねえっ!誰なのよっ!麗矢!」

 あっという間に女子の怒号の渦に麗矢は巻き込まれる。

「なんでみんな怒ってんの?好きな人くらいいるでしょ普通。」

「その女に告白したのっ!」

「まさか付き合ってないわよねっ!」

 取り巻きが噛みつきそうな勢いで麗矢を質問攻めしてる。
 女子達を宥めている麗矢を見ながら、アイツの好きな人って俺の知っている女子か?新しいクラスにいるのか?それともこの取り巻きの中にいるのか?

 なんだろう?胸に湧き上がってくる不安と言うか、苛立つような不思議な気持ちは…なんだかムカムカする。

 チャイムが鳴り、授業が始まっているのにも関わらず、騒ぎは一向に収まる気配はない。とうとう各クラスの先生がやって来て追い払われるまで騒ぎは続いた。

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