【R18】桃源郷で聖獣と霊獣に溺愛されています

蒼琉璃

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【龍月編】

結婚の条件②

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 璃嵐リーランの感の鋭さに、鳴麗ミンリィ龍月ロンユエは思わず同時に体を震わせてしまった。
 二人は、お互いの顔を見合わせる。
 ここは義妹のためにも、龍月は兄として慎重に言葉を選びながら、義母に話し始めた。

「義母さんにはかなわないな……。鳴麗が『月の印』を迎え、成獣おとなになりました。私は幼獣こどもの頃から、鳴麗を一人の雌として好きでした。他の誰でもなく、この私が彼女を永遠に幸せにしたいと思っていた。鳴麗も、私を雄として好いてくれています。ですから……」
「お母さん! 私、龍月兄さんと番たい!!」

 丁寧に義母に説明をする龍月の最後の言葉が待ち切れず、鳴麗が前のめりになって璃嵐に宣言した。
 その勢いに驚いて、母は娘を見て目を丸くする。思わず自分の額を指で押し、溜息をつく龍月に、璃嵐はクスクスと笑った。

「鳴麗は、幼獣こどもの頃から龍月の後ろばっかりついて行ってたものねぇ。お母さん、龍月のことは血の繋がりなんて関係なく、本当の息子だと思っているのよ。でもね、心のどこかで、龍月が鳴麗の番だったら、一番この子を幸せにしてくれるんじゃないかって、思っていたの。だってこの子お転婆すぎるし……」

 璃嵐はにっこりと微笑み二人を見つめた。
 鳴麗は嬉しさのあまり、耳をピクピク動かし目から大粒の涙を溢れさせ、机を飛び越え母に抱きつきたい気持ちでいっぱいだった。

「まぁまぁ、鳴麗ったらそんなに泣いちゃって。あんたたち、本当に仲が良かったし、いつかそうなるんじゃないかって思ってたのよ。ねぇ、浩然ハオランくん」
「あぁ、そうだなぁ……璃嵐ちゃん。まぁ、龍月ならば、鳴麗のことを一番幸せにできる雄だろう」

 いつの間に帰ってきたのか、父は画材道具と巻物を片手に立っていた。親子の会話にいつ入っていくか悩んでいたようで、璃嵐に声を掛けられると、咳払いをして部屋の中に入ってきた。 
 ちなみに、お付き合いしている時から今現在まで変わらずこう呼び合っている。
 この歳になっても、子供たちが恥ずかしくなるくらいの、熱々アツアツっぷりである。
 両親は、龍月と鳴麗が結婚して番になりたいと申し出をした事に、特別驚いている様子はなかった。

「そ、それじゃあ……私、今すぐ龍月兄さんと結婚してもいいの?」
「ちょっと落ち着きなさい、鳴麗。母さんも私もお前たちが結婚する事に反対はしていないよ。だが、義兄妹から夫婦になるのだから、なおさらきちんと、番になる条件を満たさなければならないよ」

 椅子から立ち上がる鳴麗をなだめると、浩然ハオランは璃嵐の隣に座った。
 異種間で婚姻する場合、黒龍族の雄も雌も、結婚相手の種族のしきたりに従うが、同族同士だと古くから伝わる黒龍族の儀式をする必要がある。
 きちんと、番になる雌へ『永遠に幸せにする』という、揺るぎない誓いを証明するために、花婿が試されるのだ。
 
「それは……両家が取り決めて、雄が行う儀式か……。それぞれ、家柄によって内容は違うと聞いたが、この家のしきたりは知らない。義父さん、先祖代々からの儀式をして、必ず鳴麗を幸せにできると証明する」

 龍月の言葉に、父は深く頷いた。
 鳴麗は、目を輝かせ頬を染め鼻をすすっている。どうして今の言葉を、墨と筆で一文一句記しておかなかったのだろうと後悔した。

「龍月お兄ちゃん……うううっ、今の言葉もう一回、もう一回言ってーー! 巻物に書いて家宝にしてお家に飾りたい!!」
「鳴麗、それは私が無事に帰ってからにしてくれ。それから飾るのはやめなさい」

 あれほど、『お兄ちゃん』呼びはやめろと言ったのに、と龍月は溜息をつくと頬を染めた。そして今の言葉を、屋敷に飾られるのはあまりにも恥ずかしすぎる。

✤✤✤

 鳴麗の一族、ソン家では、番となる雌ができると、天帝が住まわれる霊峰れいほう中腹ちゅうふくまで行き、そこに実る、龍の実を持ち帰るのだという。
 霊峰は、桃源郷の中心にあり、天高くそびえ立っている。
 頂上も雲の上の遥か彼方で険しく、霊獣たちは決して辿り着けず、天帝に謁見する事ができるのは、聖獣である四神のみ。
 なにより道中は危険で、何人もの霊獣たちが命を落とした。
 雷雲の中に入って、雷に打たれて死ぬ者、あるいは竜巻のような風の渦に飲み込まれ、そのまま行方不明になる者もいた。
 空を飛ぶ黒龍族さえ、霊峰は危険をともなう場所で、鳴麗は不安そうに義兄を見た。

「龍月兄さん、本当に大丈夫なの? 霊峰なんて、白虎帝様や玄天上帝様しかいけないようなところでしょ? 危ないと思ったらすぐに帰ってきて! 龍の実より龍月兄さんが大事なんだから」
「そう言うな……。龍の実を持ち帰らなければ、黒龍族のしきたりに反する。いくつか文献を読んで頭の中で学んだ。私なら無事に戻れる」

 霊峰の下で、鳴麗は不安そうに義兄を見上げた。彼女の背後には両親が見守っている。鳴麗を心配させないように、龍月は自信を持って言うと頷いた。
 龍月は幼い頃から、鳴麗にとってたった一人の英雄ヒーローだった。
 他の種族の幼獣こどもたちに意地悪されて泣いた時も、鬼の形相ですぐに鳴麗を助けに来てくれた。
 物知りで賢く、鳴麗の知らないことはなんでも教えてくれた。
 今は、大好きな義兄のことを信じて待つのが、婚約者の務めだと鳴麗は頷く。

「うんっ……! 私、龍月兄さんを信じるっ」

 龍月は、優しく微笑むと義妹の頭を撫でた。
 そしてその姿を、黒龍へと变化させていく。有事の時や、軍に所属している者以外は、黒龍族が霊獣の姿になることはほとんど無い。
 鳴麗も、両親が幼い頃に龍の姿になったのを見たという記憶がおぼろげにあるくらいだ。
 龍月が黒龍になった姿は美しく、月の光に黒い鱗がキラキラと輝いていて、鳴麗はぶんぶんと尻尾を嬉しそうに振った。

「ふぁぁぁ、綺麗っ……めっっっっちゃ、かっっくいい!! お兄ちゃんっっ!! いい子でお留守番してるからねーー!!」

 地上で鳴麗はそう叫ぶと、ブンブンと手を振って兄を見送った。

 
 
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