【R18】桃源郷で聖獣と霊獣に溺愛されています

蒼琉璃

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【水狼編】

あの時のことは本気だから

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★これまでのあらすじ★
物語は共通ルート、武陵桃源の集いで白虎様に迫られ、玄天上帝に助けられた直後から、スタートします。

✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤

「やばいやばいっ、どうして私ってばあんなに飲みすぎちゃったのーー!? 白虎帝様と、あんな、あんなっ……もう、次出逢ったらどんな顔したらいいのか、分からないよぉぉ、私の馬鹿ァァァ!」

 鳴麗ミンリィはまさか酒に酔って、白虎帝と口付けした瞬間、『月の印』の発情状態に陥るとは思わなかった。
 そしてあろうことか、尻尾の裏を刺激されるという破廉恥はれんちな行為までされ、誰もいない廊下を思わず、絶叫しながら小走りに走る。
 そのお陰なのか、まだ制御できない厄介やっかいな疼きは治まったものの、酒の酔いは完全に醒めていないようで、鳴麗の足元はふらついていた。
 別室から抜け出しこっそり『武陵桃源の集い』の会場に戻ったはいいものの、そこは霊獣たちでごった返していて、鳴麗は目眩を感じた。

「ふぁぁ……走ったら……また、酔いが回ってきちゃった」

 つい最近まで幼獣こどもだった鳴麗にとって、まだ強い酒への耐性はもちろん無い。
 距離は短いとはいえ突然、走ってしまったことで、急激に酔いが周って気分が悪くなってきた。
 耳をしならせ、尻尾を丸めると壁に手をついてとうとう座り込んでしまった。
 誰かが鳴麗の様子に気付いたのか、霊獣たちを掻き分けて、慌ててこちらに向かってくる足音がする。
 気分が悪くてうつむいていた鳴麗が、うっすらと目を開けると、安堵した。

鳴麗ミンリィ……! 大丈夫か? すげぇ顔色悪いぞ。ずっと探してたんだ」
水狼スイラァン

 鳴麗に駆け寄り、心配そうにしゃがみ込んで声をかけてくれたのは、幼馴染おさななじみの水狼だった。
 なにかと彼に絡んで、好意を寄せている美杏《メイアン》から、どうやら上手に逃げ切って、姿を消した鳴麗をずっと探していたようだ。

「うん……ちょ、ちょっと美味しいお酒、飲みすぎたみたい。気持ち悪くなっちゃったぁ」 
「もう、家に帰ったほうがいいよ、鳴麗。龍月ロンユエさんは、四國の有力者への対応で忙しそうだし、俺が送るから」

 青ざめる鳴麗を、水狼は軽々と抱き上げた。自分より先に成獣おとなになった彼は、つい最近まで、どっちが背が高くなったかとか、どっちが走るのが早いかなんて競い合っていたのに、ぐんぐんとラァン族の雄らしく体格も大きくなり、強くなっていた。
 幼獣こどもの頃に、今のように抱き上げられて、一瞬にして巨木の枝に登った時は楽しかった。
 でも『月の印』が現れてから、彼が『雄』であることを意識してしまって頬が熱くなる。
 性格は昔のままで、幼獣こどもっぽいと思っていたが、もう立派な成獣だ。

「わ、わぁ! 水狼っ、ちょ、ちょっとお姫さま抱っこ恥ずかしいっっ。け、結婚式の時じゃないんだから、歩けるってばっ」
「ふーん。鳴麗ってそういう結婚式に憧れてんだ。でも、今は他の霊獣たちの目なんて気にしてる場合じゃないだろ。帰ろう」

 水狼の言うとおり、足元はフラフラで霊獣たちが集まる広場を突っ切るなんて、さらに気分が悪くなりそうだ。
 鳴麗は大人しく観念すると水狼の首元に抱きつき、耳まで赤くなる。
 水狼も、鳴麗に配慮はいりょしているようで、目立たないように会場の壁伝いに歩き、外に出た。

✤✤✤

 武陵桃源の集いを楽しみにしていた鳴麗にとって、まさかお酒で失態をおかしてしまうとは夢にも思わず、ショックを隠せなかった。
 水狼に自室まで連れて行ってもらい、天蓋付きの床几しょうぎの上に寝かせてもらうと靴を脱がせ、水まで持ってきてくれた優しい水狼を見上げる。

「ありがとう、水狼。あぁ~~~成獣おとなの階段踏み外したぁ。せっかくみんなと逢えたからもっとお話しするつもりだったのに」

 体を起こして水を飲むと、鳴麗は耳をしならせてため息をつく。自宅に帰った直後、嘔吐してしまったのも軽いトラウマだ。
 そのお陰で、気分は少し楽になったが、幼馴染にひどいありさまを見せ、介抱までさせてしまった。
 隣に座った水狼が、クスリと笑う。

「この経験をいかして、次は飲みすぎないようにすればいいんだよ。あんなに酔っ払うなんて、俺と別れた後に……何があったんだ?」
「ひさしぶりに美杏メイアンちゃんに会ったから構えちゃった。 だってあの子、昔から私にだけ意地悪だから苦手なんだもん。だけど、白虎帝様に出逢って」
「白虎様が……?」

 鳴麗はプンプン怒りながら、布団の中で尻尾をパタパタと動かした。
 思わず白虎帝のことを口に出してしまい、鳴麗は赤面する。
 そう言えば、玄天上帝を訪ねた白虎帝が、鳴麗に対して声を掛けていたのは、水狼も遠くから確認していた。
 あの時は、茶菓子のことで話をしていたと勝手に思っていたが、廊下で偶然ぶつかった時から、白虎帝は鳴麗を気に掛けているのか。
 彼にはすでに二人の寵姫がいるが、鳴麗が白虎帝のお眼鏡に叶えば、雌好きな彼のことだ、西の國で新たな寵姫にされるだろう。
 自分の上司に好きな雌が手を出されると考えるだけで、嫉妬する。
 
「うん、その、休ませて貰ったから! 間違っても尻尾とか触られてないよっ」
「…………」

 鳴麗は嘘を付くのが致命的に下手くそだ。それは幼獣こどもの時から一緒にいる水狼が一番よく分かっている。
 鳴麗はまだよく理解していない。
 黒龍ヘイロン族の尻尾の裏は、雄雌ともに特別な意味があって触れるような場所だということを、水狼は雄の知識として持っている。
 一瞬、考え込むようにして水狼はうなだれた。

「どうしたの?」

 その様子を心配して顔を覗き込む鳴麗の手首を、やんわりと掴んだ。 

「――――鳴麗。この間はことは本当に悪かったと思ってる。突然、断りもなく口付けてごめんな。だけど俺はあの時のこと、冗談じゃなくて本気だから。本気で口付けた」
「えっ、す、水狼? ほ、ほほほほ本気って?」

 鳴麗は自分でも驚くほど噛んでいた。
 恋仲になった霊獣たちや、番の両親がするような特別な好意を、水狼が話の流れからからかうためにしたわけでは無いと言うのだ。

「俺は、本気で鳴麗と番たい。俺も鳴麗も幼獣こどもの時からそう言ってただろ」
「えっえっ」
「――――とりあえず、今日はゆっくり寝たほうがいい。また俺との事はちゃんと考えてくれよ」

 水狼はふと笑うと、鳴麗の額に口付けて立ち上がる。
 そして、いつものようにヤンチャな笑みを浮かべて手を振り、階段を降りていった。

「くぁwせdrftgyふじこlp !!」 

 鳴麗は言葉にならない声をあげると、ガバッと布団を頭まで被って横になった。
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