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3話 宝石みたいに赤い頬

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未だに目の前の事実を受け入れられていなかった。山のように積み上げられた便箋。


リアム、別にそんな事しなくてもね…


あまり会ってから長い時間を過ごしたわけではないが、まさかこんなタイプだとは思わなかった。自分の城の前で倒れてるような病弱王子が。これではまるで、私が住んでた世界で流行っていた婚約破棄をする側ではないか。あまりしっかり読んだことはないので分からないが、多分そうだろう。


もし、リアムが私の予想通りの性格なら、色々周りに言われて何も言い返さずにおどおどして仕方なく王の命令に従って、最後には来た俗に言う悪役令嬢に立場を奪われて、追い出されているような感じがする。


まあ、実際そうでは無かったのだが。


思っているより大胆な彼の行動は、驚くどころか本当に大丈夫なのかとも思えてくる。絶対に、彼は一人で外出することにさえ危険が付きまとうだろう。それは彼が王子だから、ということとあの病弱さを見させられれば嫌でもわかる。あの倒れていた時にどこかの国の刺客に見つかっていたらと思うと他人のことのはずなのに冷や汗が出てくる。


コツコツ…


足音が近づいてきたことに気づいて、私は便箋をバレないように全て元の位置に戻す。やっぱり、ここはお城なんだし、メイドでもいるのかな?私は体を強ばらせる。


「コンコン…入りますよ?」


リアムの落ち着いた声色が聞こえてたったの刹那で緊張が溶ける。出会った時から思っていたが、リアムの声はどこか落ち着ける。体格の割には低くて、優しい声だ。


ドアが開くとリアムが何かを両手に抱えて入ってきた。


「サエさん、これを着ていただけませんか?これらのアクセサリーもお願いします。」


そう言うと、彼の持っていたドレスセット一式を渡された。


「そこのクローゼットで着替えてきてくださいね。私は少し執務をしておりますので。着方が分からなければ呼んでくださいね?」


彼はあの大きなクローゼットを指さして最後にイタズラげに笑った。渡されたドレスはとても綺麗で私が着るには取るに足らないような気もする。ドレスの中には光り輝くピンクの宝石のネックレスがあった。サファイアと似ている気がするがどう見ても少し赤みがかったピンクだし、サファイアは青だった気がするので違うものなのだろう。そんな事を考えて立ち止まっているとリアムが振り返った。


「それは、パパラチアサファイアという珍しい物なんです。サエさんに似合うと思って持ってきました。さあ、早く着替えてきてくださいね?」


心做しかリアムの頬が赤くなって、いつもなら落ち着いているはずの声色が少し焦っているように感じた。


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