【完結】異世界に転生した悪役令嬢(役)の私が道端で助けたチートスキル持ちの病弱王子に婚約を求められてます

水仙麗

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26話 新しい生活と出会い

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「シャーリ、友達出来て良かったな」


シャーリが立ち止まった部屋の中からはカフェのマスターらしき服装をした30代程の男性が出てきた。細身で動きも礼儀正しいように見えるが、言葉はどこか乱暴な気もする。マスターの方に目を向けて言う。


「こんにちは。シャーリさんに誘ってもらってご一緒させてもらう事になったフライアです」


マスターは私の方を見て、丁寧に目線を合わせてくれた。


「こんにちは。俺はこのカフェでコーヒーを淹れてるグレイスだ。よろしくな」


診療所で会ったトレイターとはまた違った感じだが、軽くもなく、重くもないちょうど良い声の心地がした。その時、後ろでゴンと何がぶつかっていた大きな音がした。階段で天井にぶつけたようだ。確かに思い返せばそこまで高い天井ではなかったから気をつけなければ直ぐにぶつかるだろう。頭を擦り、低い天井に不満げに登場したリアムがマスターことグレイスの顔を見るなり背筋を良くして表情もパッと明るくして、お辞儀をしてから顔を上げて話し始めた。


「遅くなり申し訳ありません。私、ルイスと申します」


やっぱり偽名を使うか。私、この世界で使えって言われた名前を名乗ったから大丈夫だよね。やってしまったかもしれないがまあ、どうにかなるだろう。今までもその日暮らしでこの地で生きてきたから。


「へえー、ルイスさん。よろしくね」


グレイスは別に何も不快がらずに私たちを受け入れてくれた。横でちょこまか自分の出番を待っていたシャーリがグレイスに何やら耳打ちをしている。その間にリアムが私の方を向いてアイコンタクトを取ろうとしている。


(まさか、サエと名乗りましたか?)


そっちなら大丈夫だ。むしろずっとフライアとして何日間か過ごしたせいですぐに口から自分の名前として出てきたのは“フライア”だった。私はテレパシーの出し方は分からないので首を横に振って意思表示すると、リアムは目をこちらに向けて大丈夫だと言うかのようにして、その後シャーリの方に目を戻した。


シャーリは耳打ちをやめると、私たちの方に歩み寄ってきた。そして、またもや私の手を取った。


「二人の部屋、どこ使っていいか聞いてきたから、一緒に行こ、フライア」


シャーリはあまり同年代の友達と関わったことがないのだろう。異常に興奮して私の手を強く掴んでスタスタと歩き出した。リアムはゆっくりと歩いて後を追って来ている。所々にある窓から気持ちの良い風が吹いてきて、これからが楽しみになってくる。


「ここ!」


シャーリはあまり使われておらず古びた部屋の前で立ち止まった。扉を彼女が開くと、中は思ってたより広くて、二人暮しするには十分すぎる。見晴らしのいい大きな窓がついていて、悪くない。


「あんま使ってなくて、古いけど気に入った?」


シャーリの不安げな問いかけに私は笑顔で返す。


「とっても気に入ったよ。ありがとね」


シャーリは途端に笑顔になって、私とリアムに顔を見た。一緒になって部屋の中を探索していたら、


「ねー!そろそろ手伝ってー!」


と、呼ぶグレイスの声が聞こえた。窓から外の混みようを見ていると、今日もカフェは営業するのだろう。


「分かったー!」


シャーリは元気に返して、私の手を離した。


「それじゃ、どうぞごゆっくりー!」


私とリアムは久しぶりに二人きりになった。リアムは私よりも先に古びたベットにうなだれていた。窓を開ければ、リゾート地特有の熱い風が吹いた。


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