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30話 二人の思惑《others side story》

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人混みに紛れてラフな格好のトレイターが自身の夕餉を探して大衆向けの弁当屋を漁る。もうビトレの元から離れて15分くらい経つだろう。お腹も空いたし汽車とすれ違うのも嫌なのでさっさと決めて暑苦しいこの場から離れたい。そう考えたトレイターはさっきまであんなに悩んでいたはずなのに一瞬で一番オーソドックスなものを二つ選びレジに直行した。ビトレが人の食べ物を食べるか忘れたがアイツならなんでも食べそうだと心配を振り切った。


「ありがとうございましたー」


レジの列は思いのほか早く進みトレイターは買った弁当をぶら下げて軽い足取りでビトレのいる待合室へ歩き始めた。


「はぁ…アイツ何考えてんだろ」


待合室ではぐったりと荷物の上に寝っ転がるビトレがいた。彼もお腹が空き始めてイライラしていた。


出会った時は何でも言う事を聞いたトレイターも最近は口出ししてきたり、勝手な行動をとる日も増えた。軽率な発言やだらしなさは昔からだがあんなのただのお芝居だとは気づいている。


一体どこにあのバカ王子は逃げたんだが。どうせ王城に帰れば自分の責任として頭ごなしに叱られてその次にボクがトレイターに当たるだけだろう。今回のトレイターのバカンスには大賛成だった。何か後でグチグチ言われたらあの二人を探してたんだと言い訳をしようとビトレは考え始めた。


王子様と何処ぞの馬の骨かも分からないあの女は自分たちの元からいきなり逃げたので追いかけて探したらなんとあのアリシアに居てバカンスしてたんです。驚きますよね。逃げるところが人の多いリゾート地とは。


こうと報告が出来ればそれは最高だろう。二人を捕えて王の前に差し出しながら優雅に話す自分の姿を考えてはビトレは妄想に心を奪われていた。


ガラガラ…


待合室の扉が開くと手に弁当をぶら下げたトレイターが帰ってきた。


「ねぇ、遅くない?」


ビトレがストレスから適当にあしらうとトレイターも余裕が無いのか普段の明るい顔とは取って代わって完全にビトレを睨みつけてから隣に少し間を開けて座った。


ビトレも何も言えずにただ機関車を待った。何も言えないと言うより言うことがだるくてめんどくさかったのかもしれない。


「アリシア行の機関車が三番線ホームに到着致しました…」


機関車の到着を告げるアナウンスを聞いたビトレとトレイターはただ目を見合わせるだけで立ち上がった。荷物は全てトレイターが持った。ビトレは手ぶらで機関車へと走っていった。

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