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9、丸め込まれる父親
フレアが婚約者ではなくなったことは、エンリケの派手な婚約破棄で方々に情報が飛んでいる。
あとで王や王太后が情報を収束させようにも、既に不可能だ。
動きが速いところは、既に祖国や実家に早文を出しているだろう。良い伝書魔鳥を使用し、近い場所であればとっくに届いている。
ジョージはエンリケの女好きなところは知っていたが、そこまで悪い素行なのは知らなかったようだ。フレアの情報に真っ青になる。
フレアは毎回報告していたのだが、適当に聞き流していたと改めて実感する。
ジョージはしっかり者であるからと言い訳して、フレアのことは気にかけていなかった。
どっちかというと、甘えたでそそっかしい(とジョージは思っている)ユリアばかりに気に留めてしまっていたが、思った以上に王族の立場が危ういとようやく気付いた。
「分かった。では王家から打診があっても断っておこう。だが、ユリアは……」
どこまでも妹に夢見ている父親に、フレアは内心げんなりしつつも顔には出さない。
ジョージは自分が王族に憧れるように、ユリアも憧れていると思い込んでいる。確かに幼い頃はそんな時期もあったかもしれないが、かなり前の話だ。
可愛がっているつもりの方の娘への理解もこの程度だ。ジョージはもともと人の機微に疎いし、思い込みが激しい。
はっきり言って、貴族というか人の上に立つのには向いていない。
フレアは逆だ。もともと、冷淡な美貌は表情が薄く、思考が読まれにくい。
「わたくしから伝えます。あの子ももう十六歳です。少々厳しい話であっても、身を守るために知るべきでしょう」
フレアの申し出に、ジョージは頷いた。
きっと、先ずは愛人に会いに行くだろう――ジョージがフレアとエンリケの婚約を、母クレアの反対を無視して強行したので、それ以来夫婦仲は没交渉だ。
クレアは実家に帰り、アシュトン公爵家の女主人の役は幼いフレアがやっていた。
その後、それほど時を待たずして第二夫人を迎え入れているから、クレアは勿論クレアの実家から激しい顰蹙を買っている。おかげで、それ以降愛人は作っても夫人にはしていない。
母方の実家を辿れば亡国とはいえ非常に高貴な王家筋だ。由緒ある貴族には憧れの的であり、そういったところから総スカンを食らったのが堪えたのだろう。
ユリアの母である第二夫人や、愛人たちは公爵邸に来た最初、自分こそが女主人になろうとしていた。
フレアはちゃんと管理してくれれば、構わなかったのでそのためにと知識を叩きこもうとしたところで逃げた。
仕込んだ後で逃げない様に、どれだけジョージが頼りない日和見野郎か教え、釣った魚に餌はやらないタイプで、権力に弱く、公爵当主だけど無能であるとしっかり教えたあたりで大抵根を上げる。
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ジョージが連れてくるのは根性がない女ばかりだったのだ。きっと、ジョージを愛しているのではなく、ジョージの身分とお金を愛しているだけで面倒は嫌っているのだろう。
それでもフレアは礼儀作法や知識や技術を教え、職業婦人として生計を立てられるようにフォローしている。公爵家の事業や商会で働けるように紹介状を出したのは片手じゃ足りない。
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