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第五話 ゲーミング会長

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「メイプルパンプキン…凄くファンシーな名前ですね」
「まぁな、店長の趣味じゃね?」
俺と八雲先輩はゲーセンへ行くため、近くにあるという駅前の「メイプルパンプキン」なる店へ向かっていた
「略してプルプキって呼んでんな」
「プルコギみたいですね」
「それ肉料理だろ。ところで、結貴っていつもゲーセンで何遊んでんだ?」
「俺ですか?うーん…ここ数年ゲーセンには行ってませんけど、やるならプッシャーとかクレーンゲームとかですかね」
「へぇ、そうか」
「上手くは無いですけどね」
「まぁそんなもんだろ」
「先輩は何やってるんすか?」
「俺はもっぱら音ゲーとかリズムゲーだな」
「へぇー、確かにやり込んでそうですね」
「ハハッ、まぁな」
ゲーセンに着くまでの間、先輩と他愛のない話を続けていた

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「おーし、着いたぜ」
「ここが…プルプキ」
目の前には「メイプルパンプキン」と書かれた看板がある、かぼちゃのオブジェが目立つ三階建てのビルだった。想像していたよりも大きな建物だったので少し驚いた
「中入ろうぜ」
「あ、はい」
中に入るとゲーム機から出る音やら何やらで一気に騒がしくなった。この騒がしさはthe・ゲーセンという感じである。周りには聖美学園の制服を着た女子生徒もちらほらいる
「じゃあ何しますか先輩?」
「そうだなぁ…んじゃ一緒にリズムゲーしようぜ?踊るタイプの」
「えっ、俺やった事ないっすよ」
「いいからいいから、体動かすだけでも結構楽しいもんだぜ?」
「…そうゆうことなら」
何事も挑戦は大事だよな、うん
「決まりな!んじゃ二階行こうぜ」
そう言うと、俺達は踊るタイプのリズムゲーが置いてある二階のフロアへ移動した

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「…あ、先客がいるな」
「ですね……凄い上手」
リズムゲーが置いてある所まで移動すると、そこにはキレっキレな無駄のない動きで踊っている先客がいた。ミスは無いようで、画面には「perfect」の文字が列になっていた。ん?この後ろ姿、流れる様なロングの茶髪、どこかで見た様な…それに聖美学園の制服を着ている
「相変わらずうめーなぁ会長サン」
「え、会長って…生徒会長の如月さん?」
「おう、他に誰がいるんだよ」
「……会長ってゲーセンで遊ぶんですね」
「あー。俺も最初は驚いたぜ?堅物会長さんがまさかこんな所にいるとはっ、てな」
「誰が堅物会長さん…なんでしょうか?」
ふと横を見ると、額にうっすらかいた汗をタオルで拭きながら会長がこちらに歩いてきた
「げ、聞こえてたのかよ。その猫耳は飾りじゃなかったみてーだな…」
「失礼な、ちゃんと自前の猫耳ですよ」
会長は猫耳はぴこぴこと動かした
「……そちらは新入生の方、でよろしいのでしょうか?」
「は、はい!1ーBの米俵結貴です」
「私は3ーAの如月メイよ」
会長さんの凛として落ち着いた態度に緊張して思わず硬くなってしまった
「そう…結貴君、よろしくね」
「よ、よろしく…お願いします」
「なーに硬くなってんだよユウキ」
バンと八雲先輩に背中を叩かれた、結構痛い
「俺達もそのリズムゲーやりに来たんだ。ちょっと変わってくれよ」
「ええ、良いですよ。結貴君もリズムゲーム好きなんですか?」
「えーと、実は初見なんすよ…」
「あら、そうなのね。最初は難しいと思うけれどやっていく内に体が覚えていくわ。がんばってね」
「が、がんばります!」
「そろそろ良いかー?ユウキは左側の方に行ってくれ。今日は俺の奢りな」
「お、先輩太っ腹」
「おうよ、曲は何が良い?」
うーん、特に知ってる曲も無さそうだしな…
「先輩におまかせします」
「オーケイ、じゃ難易度は自分で選べな」
難易度は下から二番目のnormalにした。八雲先輩は一番上のextra難易度だ
「私は後ろで見てるわね」

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「……ふぅ、なんとかAPオールパーフェクトは出来たな。結貴も悪く無かったぞ」
「…凄いっすね先輩」
俺がぎこちなくやってる横で先輩は残像見えるんじゃねぇかと思う程に激しく動いていた、同じ曲なのに難易度が変わるだけでここまで差がでるんだな
「結貴君、初めてには上手いと思うわ。貴方も凄いわよ」
「ほ、ほんとですか」
「ええ」
会長にそう言われるととても嬉しく感じる。…うん?なんだか横で八雲先輩が面白く無さそうな顔して俺を見ている
これは…あっ(察し)
「良かったら八雲先輩と会長の2人でやってみませんか?まだ回数残ってますし、俺が変わりますんで」
「あら、良いの?」
「はい!会長のダンスもう一回見てみたいです」
「ふふ、そう…八雲君は構わないかしら?」
「へ?あ、あぁ、い、良いぜ?」
分かりやすく動揺している八雲先輩。ハハーンそういうことネ
すると八雲先輩が俺の首に腕を回してヒソヒソと話し出した。
「おいどういうマネだ?」
「先輩、嫉妬してるのバレバレですよ?」
「…………マジ?」
「顔に出てます」
「マジかー…」
「八雲くーん、そろそろ制限時間なくなるわよー?」
「お、おう!……ったく覚えてろよこんにゃろー」
「いいから楽しんでくださいって」
「あ、あぁ…」
そう言って八雲先輩は戻っていった

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圧巻だった。二人とも息がぴったりで動きに無駄が無い。時たま会長が「ノってるー?」と八雲先輩に声をかけて「そっちもどうだー?」と指をして声掛けをしている。見ているだけでも楽しい
しばらくして、ゲームは終わったようで二人がこちらにやってきた
「二人共息ぴったりでしたよ!相性いいんじゃないですか?」
「ふふ、そうかしら?」
「さ、さぁな…」
八雲先輩はまんざらでも無さそうだった。
「あら、もう1時ね。私はそろそろ帰るわね」
「ん、そうか。気を付けて帰れよ」
「そっちも、明日も学校あるんだから早めに帰るのよ?結貴くんも」
「「はーい」」
なんだかお姉さんみたいだ。猫耳会長は荷物をまとめてそのまま帰っていった。俺と八雲先輩はコインを買ってプッシャーがある一階へ移動した

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「うい、約束のジュース」
「あ、どうもっす」
自販機で飲み物を買いに行っていた八雲先輩が戻ってきた
「……なぁユウキ」
「ん?何ですか?」
「俺ってそんなに分かりやすいか?」
「え?…あぁ、はい。がっつり顔に出てましたよ」
会長には気づかれてなかったようだけど
「会長の事、気になってるんすか?」
「……あぁ」
やはり。予想は当たったようだ
「俺が一年の時にこのゲーセンで会長と知りあってな、そん時はまだ会長じゃなかったんだけどよ。知り合った時はただのゲーム友達だったんだが、だんだん俺が意識し始めきちゃってな」
「そうだったんですか」
「まぁ会長サンは気付いてないみたいだけどよ」
ふむ、八雲先輩の片思いってことか
「はぁ…どうすりゃ良いと思うユウキ?」
「あ、ジャックポット」
「……聞いてる?」
「聞いてますよ」
そう言われてもなぁ、経験無いしな
「うーん…俺じゃ力になれないと思いますよ?」
「それもそうか…」
それからは話題を変えて、雑談しながらコインが尽きるまでやった

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「……あ、先輩、コイン尽きました」
「ん、そうか。そろそろ帰るか」
スマホで時間を確認すると、午後2時だった。そういえばまだ何も食べていない。お腹空きまくりである
「お、スマホ持ってんのか。Rainやってる?」
「やってますよ」
Rainレインとは無料で電話やチャットが出来るアプリである
「交換しようぜ」
「分かりました。QRコードでいいですか?」
「おう」
俺は自分のアカウントのQRコードを表示させて、先輩のスマホに読み取らせた。これで八雲先輩とスマホでやり取りができるようになった。そういえばルナとマイはRainをやってるのだろうか。明日聞いてみよう
「先輩のアイコン可愛いですね」
「だろ?うちの猫のリンだ」
「へぇ、猫好きなんですか?」
「ああ。可愛いからな」
(だからメイ会長の事気になってたりするのかな)
猫耳だし
「んじゃ俺帰るわ。また明日な」
「はい、また」
そのまま店を出ようとして、ふと思い出したようにこちらに振り向いた
「明日の見学、陸上部も見にこいよー!」
「はーい!分かりましたよー!」
「忘れんなよー!」
そう言うと八雲先輩は店から出て行った
(帰る前にスーパーによっていこう)
確かこのゲーセンの裏側にあったはず。俺は遅い昼食の為のお惣菜やらを買いにスーパーへ向かった
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