来世で独身貴族ライフ楽しんでたら突然子持ちになりました〜息子は主人公と悪役令息〜

こざかな

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後編

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「えーっと、門で学園側から渡されたカードをこちらにお願いします」
「ここに翳せばいいのか?」
「はい! そして、その横の丸が描かれているところに手を置いて魔力を流してください。そうしたらカードに登録されている魔力と照合して、機械に保護者の情報が出るようになっています。カードには事前に保護者の魔力を登録しているため、不審者はここで防ぐことができるのです! そして保護者の方は出る際にも同じ手続きが必要になりますので、カードは無くさないようにお願いします!」

手に持っていた書類はマニュアルだったらしい。明らかに説明用ではないそれを声に出して読んでいるミエルは得意げな顔をしていて、ジェイスが横でため息をついている。手のかかる後輩だな?

「えーっと……え」

マニュアルを見ながら機械を操作していたミエルが、ピシッと音をたてて固まったように動かなくなってしまった。何か不備があったのか?

「どうかしたかい? ミエルくん」
「あ、貴方がレイラ・パトリック様だったのですか!?」

驚愕という感情を顔に貼り付けたミエルが勢いよく顔を上げた。思ってもいなかった言葉に驚いて茫然としている俺を上から下まで視線を巡らせている彼の頭を、ジェイスが勢いよく叩いた。

「いたっ!!」
「見過ぎだバカ野郎。あとパトリックじゃなくてパトリーな。今は分家のご当主だよ」
「え、そうなのですか?」
「ただし分家は分家でも、侯爵な」
「こっ!? 失礼いたしました!!」

侯爵と聞いて勢いよく頭を下げたミエルに、思わず苦笑する。
未だに俺のことをパトリックと呼ぶのは、過去の俺のことは知っていて今の俺のことを知らない奴だけだ。
それこそアカデミーに在学中は入学してから退学するまでの間に俺を知らない奴はいなかっただろう。けれどアカデミーを卒業して久しい今、上位貴族以外はほとんど現在の俺のことを知るものはいない。だから時々こんな反応をされることはある。そして侯爵と知るとみんな頭を下げへりくだった態度を取る。公爵令息だったときの方が地位は高いんだけどな。

「君は王国騎士だろう? そんなに頭を下げなくてもいいよ。ジェイスの部下でもあるんだし」
「レ、レイラ様……!」
「調子に乗るな!」
「いたっ!」

本当に素直な性格だな。
上げかけていた頭をジェイスにはたき落とされて、ミエルは哀れな悲鳴を上げてしゃがみ込んだ。

「ううっ……酷いですよ団長……。そもそも、今日は団長のいい人の付き添いだと仰られていたじゃないですか!」
「だから、コイツが俺のいい人」
「レイラ様だって聞いてないですよー!」

本当にショックを受けましたというようにジェイスを見上げるミエルは子犬の眼差しだ。
ジェイスにおちょくられている彼に年下の可愛さを見出し始めていた。うん。やっぱり可愛いよなぁ。

「なぁ、ジェイス。彼、うちに貰ってもいいか?」
「……は?」
「え?」
「欲しいなぁって思って。ダメか?」

魔法研究会に在籍していたくらいだ。魔法よりも剣術の方が重要視される傾向にある騎士団で腐れさせるよりは、パトリー家に来てユリウスの専属になってもらった方がいいのではないだろうか。

「……ミエル」
「は、はい!」
「決闘だ! 剣を持て!」
「嫌です! 死んじゃいます!」

やっぱり清々しいほど素直だなぁ。
ジェイスは落ち着け。お前は剣を今持ってないだろ。

「俺だってまだレイラに『欲しい』って言われたことないのに……!」

ジェイスの言う『欲しい』は俺と意味合いが違う気がするのは俺だけだろうか。

「なんでミエルなんだ……」
「お、俺は魔法しか能がないのでお役には立てないと思います……!」
「うーん、そんなことはないと思うけど」

ユリウスにもカーディアスのように専属執事を付けようと思って、引き取ってすぐに何人かと顔合わせやお試しをしたことがあった。けれど、相性が悪いとまではいかないが良くもないという結果に終わることがほとんどで、上手く嚙み合わないとユリウスと使用人の両方にも言われてしまい、その後も適任が見つからずにとうとう学園に入学となってしまったのだ。

「素直だし魔法の才能あるし、ユリウスの専属に適任だと思うんだけど」
「……ユリウスの?」
「俺にはデリスがいるし、カーディアスにはザラドがいるだろ? 専属が付いていないのはユリウスだけだろ」
「……なんだ、ユリウスの専属ってことかぁ」

心底安心したという表情で俺の腕に抱き着いてくるジェイス。
変なところで気が早いところがあるんだよなぁ、こいつ。
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