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「フィルトが言うには、魔獣を狩るための魔道具じゃないかって話だ。筒みたいな形をしているんだが、その中央部分に魔石が埋め込まれているらしい。地面に突き刺して、近くを魔獣が通ればその穢れた魔力に反応して罠が発動するんじゃないかって推測していたが、それが攻撃なのか捕縛なのかは分からん。フィルトは自信満々に語っていたが、そもそも何のための魔道具なのか……本当のところはさっぱりだ」
「魔道具……初めて見るかもしれないです」
「まだそうと決まったわけじゃないからな?」
遠い目をしたダッドさんは「そもそもアイツはいつも適当なことばっかり言いやがる」など、悪態をついている。
いつも骨董品を持ってきては上手い口車に乗せられて買ってしまうこともあるダッドさんには不満が溜まっているのだろう。
だから、さっそく明日の朝に件の物をフィルトさんが持って来ると溜め息混じりに告げられた言葉には苦笑を返すしかなかった。
「で、これがその魔道具ですか」
「見たことない変わった形をしてるだろ。ただの道具とは思えねぇ」
早朝にやってきたフィルトさんに叩き起こされた俺は、眠気も相まって目の前の机の上に置かれた物を胡散臭そうに見てしまった。
そんな俺の様子など気にしていないのか気づいていないのか、フィルトさんは自慢気にこれは魔道具に違いないと胸を張っている。
「確かに変な形をしてますけど……俺は魔道具という物を見たことがないので何とも言えないです」
どうにも俺には、ただの古びた鉄の筒にしか見えない。
前世地球人の俺はこの世界でも田舎出身の為に魔道具にはこれまで縁が無かった。だから、魔道具とはこういう物だってことも分からない。
竹筒のようなそれは、おそらく鉄製。錆びなどは無いけれど古めかしい色と質感をしている。ずっと地面にあって劣化したというよりは古い時代の物って感じだけど、フィルトさんは最近の材質だって言ってるんだよなぁ。
一応骨董商として多くの物を見てきたフィルトさんが、これだけ自信満々に魔道具だと言っているのだ。普通の道具とは違うのだろう。
「ダッドさんはどう思いますか?」
「確かにただの道具とは思えないが、魔道具かと聞かれると微妙だ。魔道具ってのは貴重な物で、そこらへんの森の中に適当に置かれてるなんてことはありえない。魔力を感じないことはないが、今の森に溢れてる魔獣の魔力が付いただけの可能性もある」
「じゃあこの石はどう見るってんだよ。どう見ても魔石だろ」
「魔石に見える石なんていくらでもある。どっちにしろ、ユウヒに鑑定してもらえば分かるだろ」
鑑定じゃなくて真贋です……
でも、フィルトさんとダッドさんの話を聞いてなんとなく魔道具については分かったかもしれない。
魔道具は貴重で、魔石が付いていて魔力を感じる物。その用途や効力は様々。古い時代に作られた物が多いらしい。
「とりあえず、これが魔獣を捕獲する魔道具かってスキルに訊いてみますね」
まずはこれがそういう魔道具だって認識しないとな。これは魔獣を捕獲する魔道具……これは魔獣を捕獲する魔道具……
「前も思ったけど、スキルに訊くって変わってるよな」
「真贋スキルってのは少し使い勝手が悪いらしいな。邪魔しないようにしばらく黙っておけよ」
「はいはい」
うーん……よし。いけそう。
『真贋スキル発動。これは魔獣を捕獲する魔道具か否か見極めよ』
いくら心の中とはいえ、このセリフは言う度にちょっと恥ずかしい。口に出さなくてもいいのは助かったけど。
スキルの発動と共に、俺の思考の一部が機械になったような感覚を覚える。
この不思議な感覚もなかなか慣れない。こればかりは、スキルという特殊能力を使うことに違和感を持ってしまう前世の記憶の影響かもしれないな。
久しぶりのスキル発動時の違和感を振り払って、俺は対象の魔道具らしき物に視線を向けた。
俺のスキルレベルが低いせいで、スキルは情報を少しずつしか出してくれない。
だからまずは提示されている真偽の答えから確認する。
「えっと、まずこれは魔獣を捕獲する魔道具ではないらしいです」
俺の問いに対して「偽」と表示されており、これは俺のこの物体に対する認識が違うということが示されている。
そして正しい情報が視界に映し出されて…………え?
「おい、どうした?」
フィルトさんの訝しむ声が聞こえるが、それに応えることができない。
俺の視界にはスキルによって確定された情報が次々に映し出されてくる。その内容があまりにも……これが危険な物だと示しているから。
「ユウヒ。何が見えた」
ダッドさんが俺の肩に手を置いて軽く揺すった。そのお陰で俺の視線が乱れて視界に映る情報が乱れ、スキルへの集中が切れた。視界が通常に戻り、もう情報は見えない。
「……ダッドさん。これ、クレディア様達に伝えなきゃいけないやつです」
せっかくの休日に申し訳ないが、これはフィルトさんの手には負えない。すぐに対応してもらわないと。
「お、おい。そんなにヤバい物だったのか?」
俺の真剣な顔と声から、ただの珍しい物ではないということはフィルトさんにも分かったらしい。その表情は不安げだ。
「フィルトさんが罪に問われることは無いでしょうけど、このまま持って帰ったら大変なことになりますね」
「嘘だろ……」
「フィルト、ユウヒはこういう冗談を言うヤツじゃないって知っているだろう」
「じゃあ、これはいったい何なんだ!?」
フィルトさんに勢いよく指を突き付けられているソレに目を向ける。さっきまでは何とも感じなかったのに、今では禍々しい気配を纏っているように思えるのだから、情報というのは大切なのだ。
「これは……魔獣を呼び寄せる魔道具です」
クレディア様達が原因解明に苦慮している、この街周辺の森での魔獣大量発生。
その原因が、これだった。
「魔道具……初めて見るかもしれないです」
「まだそうと決まったわけじゃないからな?」
遠い目をしたダッドさんは「そもそもアイツはいつも適当なことばっかり言いやがる」など、悪態をついている。
いつも骨董品を持ってきては上手い口車に乗せられて買ってしまうこともあるダッドさんには不満が溜まっているのだろう。
だから、さっそく明日の朝に件の物をフィルトさんが持って来ると溜め息混じりに告げられた言葉には苦笑を返すしかなかった。
「で、これがその魔道具ですか」
「見たことない変わった形をしてるだろ。ただの道具とは思えねぇ」
早朝にやってきたフィルトさんに叩き起こされた俺は、眠気も相まって目の前の机の上に置かれた物を胡散臭そうに見てしまった。
そんな俺の様子など気にしていないのか気づいていないのか、フィルトさんは自慢気にこれは魔道具に違いないと胸を張っている。
「確かに変な形をしてますけど……俺は魔道具という物を見たことがないので何とも言えないです」
どうにも俺には、ただの古びた鉄の筒にしか見えない。
前世地球人の俺はこの世界でも田舎出身の為に魔道具にはこれまで縁が無かった。だから、魔道具とはこういう物だってことも分からない。
竹筒のようなそれは、おそらく鉄製。錆びなどは無いけれど古めかしい色と質感をしている。ずっと地面にあって劣化したというよりは古い時代の物って感じだけど、フィルトさんは最近の材質だって言ってるんだよなぁ。
一応骨董商として多くの物を見てきたフィルトさんが、これだけ自信満々に魔道具だと言っているのだ。普通の道具とは違うのだろう。
「ダッドさんはどう思いますか?」
「確かにただの道具とは思えないが、魔道具かと聞かれると微妙だ。魔道具ってのは貴重な物で、そこらへんの森の中に適当に置かれてるなんてことはありえない。魔力を感じないことはないが、今の森に溢れてる魔獣の魔力が付いただけの可能性もある」
「じゃあこの石はどう見るってんだよ。どう見ても魔石だろ」
「魔石に見える石なんていくらでもある。どっちにしろ、ユウヒに鑑定してもらえば分かるだろ」
鑑定じゃなくて真贋です……
でも、フィルトさんとダッドさんの話を聞いてなんとなく魔道具については分かったかもしれない。
魔道具は貴重で、魔石が付いていて魔力を感じる物。その用途や効力は様々。古い時代に作られた物が多いらしい。
「とりあえず、これが魔獣を捕獲する魔道具かってスキルに訊いてみますね」
まずはこれがそういう魔道具だって認識しないとな。これは魔獣を捕獲する魔道具……これは魔獣を捕獲する魔道具……
「前も思ったけど、スキルに訊くって変わってるよな」
「真贋スキルってのは少し使い勝手が悪いらしいな。邪魔しないようにしばらく黙っておけよ」
「はいはい」
うーん……よし。いけそう。
『真贋スキル発動。これは魔獣を捕獲する魔道具か否か見極めよ』
いくら心の中とはいえ、このセリフは言う度にちょっと恥ずかしい。口に出さなくてもいいのは助かったけど。
スキルの発動と共に、俺の思考の一部が機械になったような感覚を覚える。
この不思議な感覚もなかなか慣れない。こればかりは、スキルという特殊能力を使うことに違和感を持ってしまう前世の記憶の影響かもしれないな。
久しぶりのスキル発動時の違和感を振り払って、俺は対象の魔道具らしき物に視線を向けた。
俺のスキルレベルが低いせいで、スキルは情報を少しずつしか出してくれない。
だからまずは提示されている真偽の答えから確認する。
「えっと、まずこれは魔獣を捕獲する魔道具ではないらしいです」
俺の問いに対して「偽」と表示されており、これは俺のこの物体に対する認識が違うということが示されている。
そして正しい情報が視界に映し出されて…………え?
「おい、どうした?」
フィルトさんの訝しむ声が聞こえるが、それに応えることができない。
俺の視界にはスキルによって確定された情報が次々に映し出されてくる。その内容があまりにも……これが危険な物だと示しているから。
「ユウヒ。何が見えた」
ダッドさんが俺の肩に手を置いて軽く揺すった。そのお陰で俺の視線が乱れて視界に映る情報が乱れ、スキルへの集中が切れた。視界が通常に戻り、もう情報は見えない。
「……ダッドさん。これ、クレディア様達に伝えなきゃいけないやつです」
せっかくの休日に申し訳ないが、これはフィルトさんの手には負えない。すぐに対応してもらわないと。
「お、おい。そんなにヤバい物だったのか?」
俺の真剣な顔と声から、ただの珍しい物ではないということはフィルトさんにも分かったらしい。その表情は不安げだ。
「フィルトさんが罪に問われることは無いでしょうけど、このまま持って帰ったら大変なことになりますね」
「嘘だろ……」
「フィルト、ユウヒはこういう冗談を言うヤツじゃないって知っているだろう」
「じゃあ、これはいったい何なんだ!?」
フィルトさんに勢いよく指を突き付けられているソレに目を向ける。さっきまでは何とも感じなかったのに、今では禍々しい気配を纏っているように思えるのだから、情報というのは大切なのだ。
「これは……魔獣を呼び寄せる魔道具です」
クレディア様達が原因解明に苦慮している、この街周辺の森での魔獣大量発生。
その原因が、これだった。
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