嫌われ ライバル関係だったのに 消えたら執着されてお持ち帰りされた話

やまくる実

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4.アイツがいない【アルバード視点】

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 木々の間から差し込む光が眩しい。
 俺は剣に付着していた赤に緑が混じったような液体を布で拭った。
 

 この森に入って随分経つがまだ出口は見えない様だ。


 遅い、遅い、何もかも遅い。


 何処を探してもあいつは居ない。

 足場の悪い地面を駆ける。

 どんなに良い履き物でもこれだけ履き潰していれば傷んでくる。
 立ち寄った街で買い替える事も可能だったが、その時間すらも惜しかった。


 アイツが居ないと気づいた時、俺の中で何かが崩れた。

 アイツの家は取り潰されアイツの家が治めていた領地は別の者が治める事になったらしい。
 そんな噂を耳にしたが、アイツが学院を退学までするとは誰も思わなかった。

 ウチの学院は平民でも通う事ができる。

 しかもアイツぐらいの能力があれば、授業料もかからない。
 国が援助してくれるのだ。

 シュウ、どうして辞めたんだ。
 逃げたのか?

 いや、アイツは逃げたりしないし逃げ出す必要もない。

 そもそもどうして俺は今までこの事を知らなかったんだ。

 この情報を俺が手にした時はシュウが辞めてから既に二週間が経過していた。

 あれだけ執着していると俺自身が思いこんでいた女の事もどうでもよくなってしまった。
 その時、俺は初めて、俺が気になっていたのは執着していたのはシュウだったんだと気がついたんだ。


 遅い遅い遅すぎる。


 俺はガキか?
 好きだから、自分の思い通りにならないから腹を立てていたというのか?
 アイツの視界に自分を写したくて、特別に思って欲しかったとでもいうのか?



 アイツが俺は……好き、だったのか?

 コレが好きという感情だったのか?


 その事に気がついた俺は絶望感に打ちのめされそうになったが、その後の俺の行動は早かった。


 俺はアイツの後を追うようにして学院を辞めた。

 学院側にも親すらも文句は言わさなかった。

 両親も初めての俺の反抗に戸惑っている様だった。
 俺の気持ちを説得しようと、「言う事を聞かないなら勘当する」と言う言葉を俺は、これ幸いと喜んで受け入れた。


 どうせ公爵家に居座れば俺は望んでも居ない貴族の女と結婚させられてしまう。

 それはある意味、貴族に生まれてしまった者の定めだったのだろうし、アイツへの気持ちに気づくまでは普通に受け入れるつもりでいた。

 どうせ、これから先も、興味がある相手など出来るはずないと思っていた俺は結婚なんて誰としても変わらないと思っていた。

 だけど、今の俺は隣にいて欲しい奴はアイツだけだ。

 アイツ以外はいらない。

 目の前にいた時、どうして俺はその事に気がつかなかったのか、誰よりも優しくしなきゃならない相手に、俺はどんな目を向けていた。

 俺は過去の自分を呪いたくなるくらい、悔やんだ。

 しかし、悔やんだって過去は戻らない。

 アイツに会わなきゃ、アイツは俺がどんなにキツい言葉を吐いても優しかった。

 それは他者と同じ扱いで、アイツは表情無く、怖そうに見えるが、誰に対しても優しかった。

 それが俺は悔しかったんだけど……。


 だけど、次に逢った時は、次に逢えたなら……。
 今までの俺じゃない、今度逢えたなら俺は間違いを犯さない。


 そう思い、俺は冒険者として生計を立てながらアイツを探した。

 気がつくと4年の月日が経っていた。
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