25 / 131
第25話 ごえんの価値 (ホロ視点)
しおりを挟む
気が付くと、この前見た光景が目に映った。
暗闇の中、目の前に大きな画面が広がっている。
この前と違っているのは、猫の目の形の枠が、本物の猫の目の周りの様に毛深くなっている様だった。
気温はやはり、少し冷たい。
画面の中を覗き込むと、20代半ばぐらいの年齢の夫婦らしき人達と、5歳ぐらいの男の子と2歳ぐらいの女の子が映し出されていた。
カメラの目線の動きから今日の主人公は5歳の男の子の様だった。
始め映し出されていたのはリビング。
男の子の妹であろう女の子が泣いていて、母親が駆け寄る。
「次、お父さんの番だよ?」
父親も男の子と話していたが、妹が泣き止まないからか妹の方に駆け寄る。
目の前には、父親と積み上げていた積み木、慌てて駆け寄った父親の足に引っかけて崩された積み木。
一人残された男の子は、じっとその光景を眺めていた。
父親に渡そうとした積み木のカケラを片手に持ったまま。
また違う場面。
神社の様だ。
この神社は見覚えがある。
俺が幸太郎に拾われる前、昼寝場所として入り浸っていた神社だ。
裏手の木の陰になっている穴でウトウトするのが好きだったんだよな。
引き続き出てきた、あの男の子、年齢は、さらに若い様だ。3歳ぐらいか?
過去の事を主人公の男の子が思い出しているという事なのか?
父親と母親と男の子。
妹の姿が見えないから、まだ生まれる前という事か?
母親のお腹が膨らんでいる。
妹はお腹の中という事か?
「お母さんから元気な赤ちゃんが生まれてくるように、今日はお参りするんだぞ? お兄ちゃんになるんだからな? しっかりしないとな。今日も5円玉を賽銭箱の中に投げるんだぞ?」
そう言って父親は、男の子が賽銭を投げやすいように男の子を抱え上げた。
「よーく、狙えよ?」
父親はそう言うと、男の子は真剣に賽銭箱に5円玉を投げ入れた。
父親が、男の子が投げやすいように抱え上げていたからか、5円は賽銭箱の真ん中あたりにしっかり入った。
その様子を微笑みながら母親が見ていた。
また、場面が変わった。
場面は変わったが場所は同じ神社だ。
父親と母親と男の子、そして今回はまだ小さい妹も居た。
「早く、お参り行くんだ。神様にご挨拶するんだ」
そう言った男の子は一枚の5円玉を握り締めて、家族から離れて拝殿まで走る。
賽銭箱の前まで到着した男の子。
走ったからか息が切れている。
夢の中だからだろうか?
男の子以外は、人は誰も居ない。
男の子は、いつものように、賽銭箱に狙いを定めて5円玉を投げた。
だが……5円玉は賽銭箱の端の角にぶつかり跳ねて、どこかに飛んで行ってしまった。
男の子の顔が歪んだ。
『神様、僕からの5円玉は、いらないの? 』
男の子は呟き、呆然とした顔で賽銭箱をみつめた。
そして、賽銭箱から背を向け、数歩足を進める。
玉砂利は悲しそうな音を立てる。
『……僕は必要ないの? いらない子なの? お父さんもお母さんも僕は……』
掌を力いっぱい握りしめた男の子、目元には涙が溜まっていた。
何度も何度も、繰り返し、五円玉が賽銭箱に入らない場面がループのように繰り返された。
こんな夢を見せられて、俺はどうすればいいんだ?
どうやってあの子の心を救うと言うんだ。
俺はどうしたらいいか分からなかったが、必死にもがいている男の子を見て画面に飛び込んだ。
俺は男の子の5円玉が賽銭箱の外に落ちる度、拾って、男の子に届けた。
初め、猫である俺が咥えた5円玉を見て、男の子がびっくりしていたが、男の子は俺から5円を受け取ると、もう一度、賽銭箱に5円玉を投げた。
やはりうまく入らない。
俺は自分に何ができるか分からず、だけど男の子を励ましたくて、男の子の投げた5円玉を、賽銭箱の角にあたり跳ね返って賽銭箱の外に落ちた5円玉を、何度も何度も拾い口に咥えて男の子に届けた。
何回目の挑戦だっただろう。
男の子の額には汗がジンワリと浮かび、掌も泥だらけだ。
入れ!
俺も願いを込めた。
そして、放物線をえがき5円玉は賽銭箱の中に。
チャリン。
静かな中に音が響いた。
『にゃ~ニャ―(お父さんもお母さんも妹さんも、神様も君の事が大事だよ。お兄ちゃんな君は一人でも色んなことが出来る様になったんだよ。家族を守る事だってできるようになったんだよ)』
男の子に俺の声は聞こえない。俺は、ここに存在するだけ。
俺は道に落ちていた花を咥えて男の子に渡した。
花を受け取った男の子は柔らかく笑い、俺の頭を撫でた。
満足げに笑った男の子。
気が付くと男の子の周りには男の子の家族がいて、笑っていた。
俺は再び画面の前に戻った。
画面には神社の鳥居を家族4人でくぐっている場面が映る。
男の子は妹の手を引いていて、その横で両親が微笑み、男の子もその妹も満面の笑みで笑っている。
男の子、朝、起きたら笑ってるかな?
俺も家族に、雪に会いたくなった……。
暗闇の中、目の前に大きな画面が広がっている。
この前と違っているのは、猫の目の形の枠が、本物の猫の目の周りの様に毛深くなっている様だった。
気温はやはり、少し冷たい。
画面の中を覗き込むと、20代半ばぐらいの年齢の夫婦らしき人達と、5歳ぐらいの男の子と2歳ぐらいの女の子が映し出されていた。
カメラの目線の動きから今日の主人公は5歳の男の子の様だった。
始め映し出されていたのはリビング。
男の子の妹であろう女の子が泣いていて、母親が駆け寄る。
「次、お父さんの番だよ?」
父親も男の子と話していたが、妹が泣き止まないからか妹の方に駆け寄る。
目の前には、父親と積み上げていた積み木、慌てて駆け寄った父親の足に引っかけて崩された積み木。
一人残された男の子は、じっとその光景を眺めていた。
父親に渡そうとした積み木のカケラを片手に持ったまま。
また違う場面。
神社の様だ。
この神社は見覚えがある。
俺が幸太郎に拾われる前、昼寝場所として入り浸っていた神社だ。
裏手の木の陰になっている穴でウトウトするのが好きだったんだよな。
引き続き出てきた、あの男の子、年齢は、さらに若い様だ。3歳ぐらいか?
過去の事を主人公の男の子が思い出しているという事なのか?
父親と母親と男の子。
妹の姿が見えないから、まだ生まれる前という事か?
母親のお腹が膨らんでいる。
妹はお腹の中という事か?
「お母さんから元気な赤ちゃんが生まれてくるように、今日はお参りするんだぞ? お兄ちゃんになるんだからな? しっかりしないとな。今日も5円玉を賽銭箱の中に投げるんだぞ?」
そう言って父親は、男の子が賽銭を投げやすいように男の子を抱え上げた。
「よーく、狙えよ?」
父親はそう言うと、男の子は真剣に賽銭箱に5円玉を投げ入れた。
父親が、男の子が投げやすいように抱え上げていたからか、5円は賽銭箱の真ん中あたりにしっかり入った。
その様子を微笑みながら母親が見ていた。
また、場面が変わった。
場面は変わったが場所は同じ神社だ。
父親と母親と男の子、そして今回はまだ小さい妹も居た。
「早く、お参り行くんだ。神様にご挨拶するんだ」
そう言った男の子は一枚の5円玉を握り締めて、家族から離れて拝殿まで走る。
賽銭箱の前まで到着した男の子。
走ったからか息が切れている。
夢の中だからだろうか?
男の子以外は、人は誰も居ない。
男の子は、いつものように、賽銭箱に狙いを定めて5円玉を投げた。
だが……5円玉は賽銭箱の端の角にぶつかり跳ねて、どこかに飛んで行ってしまった。
男の子の顔が歪んだ。
『神様、僕からの5円玉は、いらないの? 』
男の子は呟き、呆然とした顔で賽銭箱をみつめた。
そして、賽銭箱から背を向け、数歩足を進める。
玉砂利は悲しそうな音を立てる。
『……僕は必要ないの? いらない子なの? お父さんもお母さんも僕は……』
掌を力いっぱい握りしめた男の子、目元には涙が溜まっていた。
何度も何度も、繰り返し、五円玉が賽銭箱に入らない場面がループのように繰り返された。
こんな夢を見せられて、俺はどうすればいいんだ?
どうやってあの子の心を救うと言うんだ。
俺はどうしたらいいか分からなかったが、必死にもがいている男の子を見て画面に飛び込んだ。
俺は男の子の5円玉が賽銭箱の外に落ちる度、拾って、男の子に届けた。
初め、猫である俺が咥えた5円玉を見て、男の子がびっくりしていたが、男の子は俺から5円を受け取ると、もう一度、賽銭箱に5円玉を投げた。
やはりうまく入らない。
俺は自分に何ができるか分からず、だけど男の子を励ましたくて、男の子の投げた5円玉を、賽銭箱の角にあたり跳ね返って賽銭箱の外に落ちた5円玉を、何度も何度も拾い口に咥えて男の子に届けた。
何回目の挑戦だっただろう。
男の子の額には汗がジンワリと浮かび、掌も泥だらけだ。
入れ!
俺も願いを込めた。
そして、放物線をえがき5円玉は賽銭箱の中に。
チャリン。
静かな中に音が響いた。
『にゃ~ニャ―(お父さんもお母さんも妹さんも、神様も君の事が大事だよ。お兄ちゃんな君は一人でも色んなことが出来る様になったんだよ。家族を守る事だってできるようになったんだよ)』
男の子に俺の声は聞こえない。俺は、ここに存在するだけ。
俺は道に落ちていた花を咥えて男の子に渡した。
花を受け取った男の子は柔らかく笑い、俺の頭を撫でた。
満足げに笑った男の子。
気が付くと男の子の周りには男の子の家族がいて、笑っていた。
俺は再び画面の前に戻った。
画面には神社の鳥居を家族4人でくぐっている場面が映る。
男の子は妹の手を引いていて、その横で両親が微笑み、男の子もその妹も満面の笑みで笑っている。
男の子、朝、起きたら笑ってるかな?
俺も家族に、雪に会いたくなった……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる