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第70話 ミー? ミーが生きている?(オヤブン視点)
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もう、ミーに逢う事はない。
逢いたくても逢えない。
ずっとそう思っていた。
『ミーちゃんはココにいる。生きているんだ。傷を負ってしまっているけど、ちゃんと、生きているんだ』
え?
生きている?
傷を負っているけど、生きている?
俺は自分の耳を疑った。
ミーが生きている、このチビ白猫はそう言った。
もしかして動けないけど生きているのか?
それとも俺に逢いたくないのか?
だけど、あの例の事故の前の晩まで、ミーからの俺に対する想いは、くすぐったいくらい伝わってきていた。
嫌われてはいないはずだ。
だけど、生きているんなら、なんらかの形で、覗き込んだ時、俺には見えた筈だ。
だから、アイツ、あのチビ白猫からの心の声は、きっと俺の妄想なんだ。
俺はもう、ミーの事を考えすぎて、妄想するようになってしまったんだ。
チビ白猫との頭の中の会話は、きっと俺の願望なんだろう。
そう思った。
そう思ったけど......生きている。
そう、一度聞いてしまったら、俺の心の一部がちょっとだけだけど期待した。
もう、絶対逢えない。
そう思っていたミーに逢える。逢えるかもしれない。
俺は確かめずにはいられなくなり、ミーの飼い主達に見つからないよう、忍び足でだけど素早く、ミーの家の庭に下りた。
少し前まで、雑草が生い茂っていた草が、やけにこざっぱりとしていた。
そうか、飼い主達もミーが居なくなった事への寂しさを乗り越えたのかもしれないな。
だからあのチビ白猫を飼い始めたのかな......。
俺も乗り越えなきゃならねーのか?
やるせねーよ。
俺はちゃんと現実を見ようと、窓から顔を出してミーの家の中を見渡した。
そして、チビ白猫のさらに奥に、俺の目がおかしくなったのか、ミーによく似た猫が塞ぎ込んでいる様に下を向いていた。
俺の心臓の鼓動がドクッと大きくなった。
そしてミーに良く似た猫が、顔を上げてこちらを向く。
目が合った。
ミーだ。
あの色っぽい艶のある顔はミーだ。
鼻の横に生えている1cm四方の黒毛が愛嬌あって可愛らしい。
口元の傷は痛々しいが目の前に、夢にまで見たミーが居た。
ミーと目が合い、あの艶っぽい緑の目と目が合い、ドキッとして、思わず俺は飛び上がった。
ミー、ミーが目の前に居る。
俺はミーに語りかけた。
「ミー、ミー」
俺が呼ぶとミーは辛そうに顔を背ける。
小さな可愛らしい前足で自分の顔を隠している。
「み、見ないで。私のこんな汚い顔見ないで」
本当に辛そうに言うミーの声。
だけど、何度も夢に見たミーの声。
「な、何言っているんだ。ミーは綺麗だよ。
傷は痛々しいけど、痛くないか、心配だけど、その色っぽい目元、変わらず綺麗だよ。
何より、生きてて良かった。本当に良かった」
俺はそう叫んでいた。
家の中の人の事も気にしていたから、そんなに大きな声ではないが......。
もう、俺の声は安堵からの感情の昂りがすごく、悲鳴の様に震えていた。
「う、嘘よ」
そう呟いたミー。
そんな風には言っているが、俺の声がミーの心に届いたのかゆっくりと俺の側、窓際まで、歩いて来てくれた。
戸惑っている様子で、信じられないとでも言うように、でも少し嬉しそうに、ゆっくりと俺の近くまできてくれた。
窓を挟んでだが、ココならミーの声がハッキリ聞こえる。
それに、ミーの足取りを見ると、外傷は顔だけだったのかふらつきも無く、しっかり歩いていた。
よ、良かった。
本当に、良かった。
「避けていて、ごめんなさい。こんな姿になった私は、もうアナタに嫌われてしまうかと思っていたの。辛かった。
貴方に、オヤブンさんに逢いたかった」
恥ずかしそうにミーが呟く。
「ミー、嫌いになんかなるものか。ミー、俺の可愛いミー。生きていてくれた。良かった。本当に良かった」
俺は窓ガラスの向こうに居るミーに向かって右の前足を伸ばした。
ミーも、戸惑いながらも、窓ガラス越しに俺の右の前足に自分の左の前足を重ねた。
視線を感じる。
チビ白猫がニヤニヤした顔でこちらを見ている。
き、気まずい......。
なんだか俺は無性に恥ずかしくなった。
それに、子供には教育上良くないよな。
「ミー、まだ傷に触るから夜の散歩は無理だよな? 日中に、許してくれるなら、また逢いにきても良いか? そして傷が治ったら、また二人で一緒に夜の散歩に行きたい」
俺がそう言うと恥ずかしそうにミーは頷いた。
「じゃー、またな」
そう言い、また俺は歩きだした。
後ろを振り向かなかった俺はミーがどんな表情をしているか分からなかったけど、子猫の前で臭い台詞を言い過ぎたからか、恥ずかしさで、どうにかなりそうだった俺は少し早足で、足を前に進めた。
でも、また明日、ミーに逢える。
ミー、何度も言うけど......良かった。
本当に良かった。
ミー、生きててくれて、ありがとう。
逢いたくても逢えない。
ずっとそう思っていた。
『ミーちゃんはココにいる。生きているんだ。傷を負ってしまっているけど、ちゃんと、生きているんだ』
え?
生きている?
傷を負っているけど、生きている?
俺は自分の耳を疑った。
ミーが生きている、このチビ白猫はそう言った。
もしかして動けないけど生きているのか?
それとも俺に逢いたくないのか?
だけど、あの例の事故の前の晩まで、ミーからの俺に対する想いは、くすぐったいくらい伝わってきていた。
嫌われてはいないはずだ。
だけど、生きているんなら、なんらかの形で、覗き込んだ時、俺には見えた筈だ。
だから、アイツ、あのチビ白猫からの心の声は、きっと俺の妄想なんだ。
俺はもう、ミーの事を考えすぎて、妄想するようになってしまったんだ。
チビ白猫との頭の中の会話は、きっと俺の願望なんだろう。
そう思った。
そう思ったけど......生きている。
そう、一度聞いてしまったら、俺の心の一部がちょっとだけだけど期待した。
もう、絶対逢えない。
そう思っていたミーに逢える。逢えるかもしれない。
俺は確かめずにはいられなくなり、ミーの飼い主達に見つからないよう、忍び足でだけど素早く、ミーの家の庭に下りた。
少し前まで、雑草が生い茂っていた草が、やけにこざっぱりとしていた。
そうか、飼い主達もミーが居なくなった事への寂しさを乗り越えたのかもしれないな。
だからあのチビ白猫を飼い始めたのかな......。
俺も乗り越えなきゃならねーのか?
やるせねーよ。
俺はちゃんと現実を見ようと、窓から顔を出してミーの家の中を見渡した。
そして、チビ白猫のさらに奥に、俺の目がおかしくなったのか、ミーによく似た猫が塞ぎ込んでいる様に下を向いていた。
俺の心臓の鼓動がドクッと大きくなった。
そしてミーに良く似た猫が、顔を上げてこちらを向く。
目が合った。
ミーだ。
あの色っぽい艶のある顔はミーだ。
鼻の横に生えている1cm四方の黒毛が愛嬌あって可愛らしい。
口元の傷は痛々しいが目の前に、夢にまで見たミーが居た。
ミーと目が合い、あの艶っぽい緑の目と目が合い、ドキッとして、思わず俺は飛び上がった。
ミー、ミーが目の前に居る。
俺はミーに語りかけた。
「ミー、ミー」
俺が呼ぶとミーは辛そうに顔を背ける。
小さな可愛らしい前足で自分の顔を隠している。
「み、見ないで。私のこんな汚い顔見ないで」
本当に辛そうに言うミーの声。
だけど、何度も夢に見たミーの声。
「な、何言っているんだ。ミーは綺麗だよ。
傷は痛々しいけど、痛くないか、心配だけど、その色っぽい目元、変わらず綺麗だよ。
何より、生きてて良かった。本当に良かった」
俺はそう叫んでいた。
家の中の人の事も気にしていたから、そんなに大きな声ではないが......。
もう、俺の声は安堵からの感情の昂りがすごく、悲鳴の様に震えていた。
「う、嘘よ」
そう呟いたミー。
そんな風には言っているが、俺の声がミーの心に届いたのかゆっくりと俺の側、窓際まで、歩いて来てくれた。
戸惑っている様子で、信じられないとでも言うように、でも少し嬉しそうに、ゆっくりと俺の近くまできてくれた。
窓を挟んでだが、ココならミーの声がハッキリ聞こえる。
それに、ミーの足取りを見ると、外傷は顔だけだったのかふらつきも無く、しっかり歩いていた。
よ、良かった。
本当に、良かった。
「避けていて、ごめんなさい。こんな姿になった私は、もうアナタに嫌われてしまうかと思っていたの。辛かった。
貴方に、オヤブンさんに逢いたかった」
恥ずかしそうにミーが呟く。
「ミー、嫌いになんかなるものか。ミー、俺の可愛いミー。生きていてくれた。良かった。本当に良かった」
俺は窓ガラスの向こうに居るミーに向かって右の前足を伸ばした。
ミーも、戸惑いながらも、窓ガラス越しに俺の右の前足に自分の左の前足を重ねた。
視線を感じる。
チビ白猫がニヤニヤした顔でこちらを見ている。
き、気まずい......。
なんだか俺は無性に恥ずかしくなった。
それに、子供には教育上良くないよな。
「ミー、まだ傷に触るから夜の散歩は無理だよな? 日中に、許してくれるなら、また逢いにきても良いか? そして傷が治ったら、また二人で一緒に夜の散歩に行きたい」
俺がそう言うと恥ずかしそうにミーは頷いた。
「じゃー、またな」
そう言い、また俺は歩きだした。
後ろを振り向かなかった俺はミーがどんな表情をしているか分からなかったけど、子猫の前で臭い台詞を言い過ぎたからか、恥ずかしさで、どうにかなりそうだった俺は少し早足で、足を前に進めた。
でも、また明日、ミーに逢える。
ミー、何度も言うけど......良かった。
本当に良かった。
ミー、生きててくれて、ありがとう。
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