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第117話 雪の過去、俺が知らなかったアイツの姿(ホロ視点)
しおりを挟む雪の夢の中らしい、この空間で、辰吉と手を繋ぐ様に互いの前足を触れ合わせ、下にいる猫達を眺めていた。
『辰吉、俺、あの黒猫の近くに行きたいんだけど......』
俺の言った言葉に辰吉はキョロキョロと黒目を動かし、俺の見ていた黒猫の前で目線を止め頷いた。
緑、紫と色々な色の風の空の中、俺達はゆっくりとクウロに似た黒猫の側まで近寄った。
似ている。
ちょっと曲がった耳。
綺麗な真っ黒い毛色の様に見えて、光に透けるとキラキラとこげ茶の色が混じって見える。
何処にでもいる黒猫の様にも見えるかもしれないがクウロの黒い毛は少しだけ変わっていた。
そしてこの黒猫はそのクウロの毛色と瓜二つだった。
懐かしい。
俺の心臓がバクバクっとなった。
懐かしさとか、色々なモノが込み上げてくる。
俺にとっては、クウロもとてもかけがえのない存在だった。
居なくなった時は立ち直れないくらい泣いたし、貼り紙をしたりと手を尽くしたけど見つからなくて夜な夜な探しに行こうともしたんだ。
俺はまだ幼かったから親に止められて、諦めたけど......。
『辰也さん、あの黒猫ちゃんから雪さんと同じ、匂いがします。
ほら見て下さい。僕の頭からあの黒猫さんに向かって赤い線が伸びています。
間違えありません。
あの黒猫ちゃんは雪さんです』
辰吉が言う様に、辰吉の頭から赤い紐の様なモノが伸びていて、あの黒猫に繋がっている。
えっ?
あの黒猫はクウロ、ではなくて雪だと言うのか?
本当に雪はあの黒猫?
それに雪とプディの故郷の星は猫の星という事か?
俺は半信半疑なまま、クウロによく似ている辰吉が雪だと言う黒猫を眺めていた。
走り方、仕草、何を見てもクウロに見えるのに、辰吉は雪だと言う。
雪だと言う黒猫は荷物を運び終わった後、建物内に入り沢山の猫達と話し合いをしている様だった。
俺と辰吉もこっそりと浮かんだまま中に入り、近くまで近づいたが、猫達には俺達の事は見えない様だった。
不思議な違和感だ。
クウロの事はひとまず置いといて、あの黒猫が雪だとしよう。
雪、そう言われてみればそうかもしれない。
だけど、やはり違和感しかない。
だって、この雪は一度も笑っていない。
それに、ココにいる猫達全て、表情が何一つ変わらない。
まあ猫は表情は人間や犬よりも少ないかもしれないが......。
それに真面目な会議をしているなら表情は変わらない事が普通の事だよな?
だけど何というんだろう皆、仮面を被っている様に表情が変わらないんだ。
その時、俺の心の中にクウロに似た黒猫の気持ちが大量に流れ込んできた。
【今日は会議が長引いている。
募集したが数が多かったからか、地球と言う星に行くもの数匹を選ぶ為、誰が相応しいか考えあぐねいているんだろう。
地球には感情の量、質を調査しに行くらしい。
そしてその情報や感情から得た力を星に送る事が今回派遣されたものの任務なのだと言う。
感情を出してはならない。そう決められているのに、感情の調査に向かう。
どういう意味があるのだろう。
と皆不思議がっている様だ。
私は何故だか知っているけど、皆は知らない......。
しかし......。
地球に行くと決まれば王達がいる城で訓練が行われるらしい。
弟は私達姉弟が幼かった時、王の使いのモノに連れ去られた。
星が管理している職業に就いて、探っているのに弟の情報は手に入らない。
弟は何処にいるんだろう?
メンバーに選ばれれば内部に入りやすくなる。
弟の事も何か分かるかもしれない】
大量のに流れ込んできた冷え切った様に感情が見えない冷静な声。
だけど、その声を聞いた俺は、この声はまぎれもなく雪だと思った。
俺の側に居た雪はいつも、どんなしんどい時でもニコニコ
と太陽の様に笑っていた。
なのに、この雪は周り全部が敵であるかの様に空気がはりつめている様に感じた。
それだけ俺の知っている雪と違う。
けれど、この声が俺の心に響いた時、雪の声だとそう思ったんだ。
雪は地球には何か仕事で来ていたのか?
何故、地球人の感情についての調査が必要だったのだろう?
弟?
雪には弟が居たのか?
そんな話、聞いた事がないな。
そう言えば雪は、自分の家族の話をしない。
自分から言わないから敢えて聞かなかったんだけど......。
雪の弟に何かあったんだろうか?
連れ去られた?
雪は弟を探していたのか?
雪だと思った黒猫をもう一度見つめた。
見た目は本当にクウロそのものだ。
雪は......。
もしかして......。
そこで一瞬真っ暗になり自然に俺は目を瞑っていた。
そしてゆっくりと目を開くと目の前の風景というか、場面が変わっていた。
夢が変わったという事か?
俺と辰吉は相変わらず一緒にいた。
次に俺達が浮かんでいた場所はとても見覚えのある場所だった。
そこは俺の実家の庭。
そこには幼い人間である辰也の姿の俺と、クウロがいて。
縁側で昼寝をしている幼い俺にクウロが寄り添い俺の頬を舐めていた。
【辰君、ずっとずっと、アナタといたい】
雪の声がまた聞こえた。
やはり、クウロは雪だった。
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