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2章

49話 ベルモッド

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ラナ達の方でイスカリオテに動きがあった。
冒険者達が集められていた部屋に人が入ってきた。
「あれは…確かこの国の大臣サルマン…!…隣にいるのは?」
以前この国に来たことがあるリーンは大臣を見たことがあるようだ。

ラナはローブの男を一目見て警戒を強めた。
「何者かはわかりませんが…かなり手強そうですね。恐らく組織の幹部か…それとも…」

大臣と男が入り口の側のテーブルで何やら話をしているが流石に階下にいる三人には聞き取れなかった。

暫くすると大臣とローブの男が階段の上から洗脳された者たちに向けて言葉を発した。
「お前たちよく聞け!これからこの国を落とすための計画を実行する!半数の者たちはここから城内に入りアルマと王を狙え。残りの者たちはベルモッド様の指示に従って行動するように」

ラナの予想は当たっていた。
ローブの男はイスカリオテのトップ、ベルモッドだった。

続いてローブの男が口を開いた。
「……この中に潜入者が居る」
その言葉を聞いてラナ達に衝撃が走る
(いつから気づいていたの!?)

「残ったものはそいつらを潰せ。以上だ」

それだけいうとローブの男は大臣を残し去って行った。
大臣は片手を前に出し指示を出す。
「では私より右にいる者たち!お前たちは城内へ!残りの者たちは潜入者の始末だ!」
そういうと大臣はラナ達の方を見てにやりと笑った。

やはりばれていた。
そう思い三人が動き出そうとしたその時。
背後に立っていた人が飛び出した。
どうやらラナ達ではなく後ろの者を見ていたようだ。

それを見て大臣は声をあげた。
「追え!奴を絶対に逃がすな!」

半数は城へ、半数は飛び出したものを追って洗脳されている者たちが動き出した。
ラナ達は流れに乗じて二手に分かれて潜入を続けることにした。
ラナは謎の潜入者を追う側へ。
ミアとリーンは城に向かう側へそれぞれ潜伏をつづけた。


謎の侵入者を追う洗脳兵とラナ。
動きを見るからにただ物ではない様子。
しかし洗脳されている者たちからの攻撃を弾いたり避けたりするだけで反撃をする素振りがまるでない。
そんな様子を見てラナはその者の目的は自分たちと同じだと思った。
ラナは集団から抜け出し侵入者にせまった。
そして槍を向けあえて受け止めさせた。
その間に小声で語りかける。
「貴方はおそらく私と同じ目的でここへ来てる者とお見受けします。協力しませんか」

ラナの言葉に一瞬驚きを見せたが直ぐにまた逃げ始めた。
このまま後を追って自分の言葉にどういう行動を示すかをラナは見ることにした。


暫く進むと入り組んだ道にさしかかった。
ここで見失うと厄介だと思いラナは再び集団の先頭に出て追いかける。
しかし部屋に入ったのを見てラナも直ぐに追いかけて部屋に入ると。そこには誰もいなかった。

だがラナの背後から声が聞こえた。
「残念だったな…」
扉の裏から現れ男はそう呟いた。

ラナはその言葉でハッとした。
自分がはめられたことに気が付いてすぐに槍で男を追い払った。

男は身をひるがえして部屋の奥に。
「っとあぶねぇ。ようやく気が付いたか…はは。うちの組織に潜入するなんて度胸あんなぁ!あんた名前は?」

「ラナです。貴方は何者ですか」
「俺は王都のギルド最強の冒険者キースってんだ。覚えなくてもいいぜぇ?どうせあんたは今から死ぬんだからなぁ!」

ラナは黙って槍を構えている。
「……」

「先ほどベルモッド様が言った言葉はブラフ!居るかもしれない賊をあぶり出すための作戦さ!まんまと騙されて正体を表しやがって。ははは」

男が話している間にラナの背後に洗脳されている兵たちが集まってきた。
ラナは周囲を囲まれてしまった。
「どうするよ?竜人のお姉さん?」
「どうするも何も、貴方を倒すだけです」

「へぇ?この状況でどうやって俺まで攻撃を届かせるつもりだ?先の槍さばき、あの程度で何とかなると思っているのか?はははは」

それを聞いてニヤリと笑うラナ。

「何がおかしい?この状況で笑うなんて気でも狂ったか?」
「いえ、確かにあの程度の動きではなんともならないと思いましてね」

「自分で言って笑うとかいかれてんのか?」
「ふふふ。それはどうでしょうね?」
そういうとラナは一気に一足飛びで男の前まで移動し槍を薙ぎ払った。
キースはギリギリのところで後ろに飛び退いてそれを交わした。
(ありえねぇ…何だ今の動き…こいつばけもんかよ!)

ラナは手に持った槍を眺めて困っている。
「やはり武器を振り回すのは苦手ですね…」
そういうとラナは槍を放り投げた。

「はぁ!?この状況で槍使いが槍を棄てるとか、てめぇほんとにイカレてんのか!?まぁ俺には好機だけどなぁ!」
そう言いながらキースはラナに飛び掛かった。

「いつ私が槍使いといいましたか?」
そういうとラナは両手に魔力を集中させていた。
「なっ!なんだこの魔力は…!」
キースが慌ててラナに攻撃をあてようと双剣をラナに向けて突き出した。

「遅いですね」
キースの攻撃が届く前にラナの雷の魔法がキースに直撃…したかに思えたが何者かがそれを阻んだ。

「…あなたは…ベルモッド…!」

ラナは距離を取って警戒する。
「やはり賊が紛れ込んでいたか…」

「あ、ありがとうございます…」
礼をいうキースをベルモッドは睨みつける。
「ひぃっ!」
「俺は別にお前を助けたわけじゃない…こいつの実力を確かめに来ただけだ…。仕えない雑魚に用はない」
そういうとベルモッドはキースを剣で貫いた。
「そんな…ベルモッドさ…ま」
キースは床に倒れこみ息絶えた。

「仲間に手を掛けるなんて…」
「…仲間…?こいつらは道具にすぎん。私には仲間などいない。信じれば裏切られる」
ベルモッドは歯を噛みしめていた。

その時、部屋の奥にあるが開いた。
そこからゲイルが飛び込んでいた。
ゲイルは直ぐにベルモッドに気が付き助けを乞う。

「よ、よかった!ベルモッド様!!敵に追われています!助けてください!!」
「敵だと…?」
ベルモッドが扉の方へ目を向けるとそこにはイザが到着していた。
続けてエルロンの姿も確認できた。

「イザ様!」
「ラナ!無事だったか!」


「ぞろぞろとまぁよくも入り込んできたものだ…」
そう言いながらイザたちを見ていたベルモッドが、ガルが入ってきたのを見て少し表情を変えた。

「ラナ!こいつは…?」
「こいつはイスカリオテのトップ…ベルモッドです!」

それを聞いて全員武器を構えた。

「ベルモッド様!こいつらやっちゃってください!」
ゲイルがイザたちを見ながらそういうと、ベルモッドは静かに返事をした。
「ああ、そうだな」

その直後、ゲイルの体をベルモッドの剣が貫いた。
「なっ!?なぜ…!俺を王にしてくれるはず…では…」
ゲイルはその場に倒れた。

ガルは歯を噛みしめて行き場のない怒りを感じていた。
「…ゲイルは仲間じゃなかったのか!?」

「仲間…?先ほどから言っているが俺に仲間などいない。それにこいつは俺が最も憎むべき奴だ」
ゲイルはベルモッドに何故恨まれているのか分からない様子。

「何故…私がなにか…」
「お前はまだ気が付かないのか?」
そういうと男はフードを取った。
男は額に角が生え魔人族の様相をしている。
「私は…わかりません…」
ゲイルはベルモッドの顔を見ても理由がわからないようだ。

しかしそのとき、ガルが男の顔を見て震えていた。
「…この顔…微かに面影がある…まさか…ランディス兄さん…?」

その言葉を聞いてゲイルと、屋敷で話を聞いていた銀牙は驚いた。

「なっ!そんなまさか!?あ、ああ…!」
ゲイルは恐怖していた。
「ふっ、流石ガル…お前は昔から人を見る目は一流だったからな。久しぶりだな」
「兄さん…どうしてこんなことを!それにその姿は…?」

「話せば長くなるが…」
そうしてランディスは過去に起きた出来事を語り始めた。
例の事故の前日、街を歩いているときにある魔導士に話しかけられたそうだ。
その魔道士はゲイルから殺されることを予言してランディスにあるアイテムを渡したらしい。はじめは予言などばかばかしいと思い追い払おうとしたが、もし予言が杞憂だったなら
アイテムはそのまま差し上げると。
そのアイテムとは人を仮死状態に出来る物だった。
そしてあの日ゲイルから討たれたふりをした俺は生き延びた。
俺はあの日から誰も信じることが出来なくなった。
そして魔導士に会いに行くと力が欲しければある条件と交換でくれてやるという。俺は力を欲し話を飲んだ。
その条件とはこの国を作り替えること。
王を討ちラグナ家の当主たる俺が王位に着けばこの国のありようを作り替えられる。悪い話では無いと思った。
この姿は悪魔族と契約して進化した姿だ。
まさか獣人がこのように進化出来るとは思っても見なかったがな。

「お前はこの国を力を得るためだけに滅ぼそうというのか!?」
「それは違う、この国は一度滅びるべきだ。万種調和国家としているが亜人の奴隷制度は黙認。人間種のことはいまだに下に見ている。聖教会の力にも屈して何も言わない。これを放置している王とはなんだ?平等とはなんだ?俺なら完全に平等な国を作れる。そのためには強力な力が必要だった。何物にも負けない力が。何物にも勝る力を持った王には誰も逆らわない。初代王がいい例だ、力でこの国をまとめあげ今の国の在り方を作っている」

ランディスはゲルの頭を踏みつけながら話した。
「ガル…お前はどうだ?お前はこの屑とは違うはず。この国をどう思っている?」

「確かに兄さんの言う通りです。この国には色々正さなければならないところがあります。でも、それは兄さんが変えることではない。国を一人の力で変えようとするなんて間違えてる。国民全員で変えていくべきはずだ」

「はぁ。お前なら分かってくれると思っていたが…残念だ。ああ…そうだガルの仲間達よ。バティスとファランをお前たちが討ったそうだな。礼を言うよ」

「あいつらは力があるから使っていたが俺の嫌いな屑だったからな。いずれ消すつもりだった。手間が省けたよ」

そういうとランディスはゲートの魔法の転移門を出した。
ガルが叫んだ。
「まて!何処へいく!」
「その質問に答えると思ったのか?」
そう言うとランディスはゲートの中に消えていった。

ランディスが消えてガルはゲイルに駆け寄った。
「がはっ!まさかランディスが生きていたなんて…俺は10年ずっと奴の手の上で踊らされていたということか…ちくしょう…」
ゲイルは涙を流してながら息を引き取った。

ガルは涙を流した。
「ガル…」
「イザさん…行きましょう。ランディスを止めなければ…」

ランディスが居たことで止まっていた兵士たちが再び襲いかかってきた。
「まずはこいつらを正気にもどそうか」
そういうとイザはアラクネ達を解放したときの魔法を行使する
部屋の中に居た全ての敵の魔道具が一瞬で壊れた。

「すごい…」
ラナはその魔法に息をのんだ。

洗脳から解除された者たちは何が何だかわからずに皆戸惑っていた。
「エルロン、銀牙!こいつらを連れてギルドに向かってくれないか!俺達は城に飛ぶ」
「任せされた!皆気を付けろよ!」

イザがギルド前へゲートと城内1階へのゲートを開いた。
「同時に複数のゲートを…」
エルロンは驚いた。

「んじゃいってくる」
イザたちはすぐさまゲートに入り城に向かった。
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