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果実 6
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光が目を覚ますと、まだ朝と言うには早い深夜だった。それでも、四時間ほどは眠っていたことになる。
着ていた服は、ぐっしょりと汗に濡れていて、不快だ。具合の悪さは横這いといったところで、少し寝たくらいでは回復しそうにない。まだ、意識が朦朧としている。
「千秋さん……」
枕から顔を上げると、そこに千秋がいた。光の部屋の本棚にあったであろう本に目を落としている。
そんなわけない、いるわけない。光が目やにで滲んだ目を擦ると、視界がはっきりしてきた。
そこにいたのは千秋ではなく、さきほど購入した果実だった。当然だ。
果実は慌てた様子で、本を元に戻した。別に構わないのにと、段々と覚醒してきた意識の中で、光はそう思った。
「これ」
果実が差し出したのは、缶コーヒーだった。
眠る前に飲み物を買ってきてと頼んだ結果がこれだった。果実のチョイスにセンスを求めること自体間違っているのかもしれない。そもそも、きちんと商品を指定しなかった自分が悪いのだと、ありがたくそれを飲むことにした。一気に飲み干す。コーヒーとはいえ、水分は水分だ。体に染み渡る。
「あの、もう一回飲み物買いに行ってもらいたいんだけど。そこの自販機で」
「はい」
お釣りで返ってきた小銭を、もう一度果実に渡す。
「今度はスポーツドリンクをお願い。商品名言わなくても分かる?」
「はい」
果実がそう頷くので、信じることにする。玄関を出て行く果実を見送って、光はシャワーを浴びることにした。汗を流して、服を着替えた方がいい。激しい立ちくらみを感じながらも、光は服を脱ぎ、なんとか風呂場に辿り着き、極寒の浴室に震えながら蛇口をひねった。
簡単にシャワーを浴びて部屋に戻ると、果実は座って光を待っていた。
「はい」
差し出したのは、スポーツドリンク。間違いなく買ってきてくれた。だが問題がある。光は全裸だ。思わず下半身に手をやって、ぶら下がるそれを隠した。
が、光は考える。物である果実に対して、恥じらう必要があるのかと。そんな必要はないはずなのだ。そういう風に考えなければ、果実の目の前で体を拭くことができなかった。
体を拭いて、上下スウェットに着替えると、気分はいくらか良くなった。しかし、具合が良くなったわけではない。
「ごめん、しばらく寝るから。適当に本、読んでていいよ」
光は本棚を指差して、布団をかぶる。枕元にはティッシュを。凄まじい勢いで、鼻水が精製されていた。喉も痛い。うんざりだ、と光は鼻をかんで、ゴミ箱に投げ入れた。
「はい」
果実は本棚をちらっと見て、答えた。表情の乏しい顔がいくらか心配そうに見えた。果実でも人の心配をするのか、それとも光の願望が見せた幻覚か。そのどちらでも構わないと、光は布団に潜り込み、胎児のように丸まった。
結果から言って、光はインフルエンザに罹患していた。死ぬ思いで近くの内科医院に行き、診断された結果だ。
思い当たる節といえば、毎日不特定多数の人が訪れる図書館に通っていたこと。ハローワークで、という可能性もある。とにかく、数日は安静にしていなければならない。
光は、果実を購入したことを、心から幸運だと思っていた。一人暮らしで高熱が出るのは、かなり辛い。死ぬかもしれない、というのが、冗談に思えなくなってくるのだ。
果実は果実だから、そこまで高度なこと、例えばお粥を作ったりだとか、そういうことはできなかった。しかし、商品名を書いてお金を渡せば、近くのコンビニで買い物をしてきてくれる。それだけでもありがたかった。
「千秋さ――間違えた。ありがとう」
コンビニの袋をテーブルに置く果実のことを、千秋と呼びかけた。これでもう、何回目が数えるのも面倒なくらいに間違えていた。
「構いません」
平坦な声でそう言う果実の顔は、買ったときよりも、幾分歳を取って見えた。千秋に似てはいるが、僅かずつ、千秋の面影から離れていく。
「じゃあ、もういっそ、千秋って呼んでいい?」
千秋から離れていくから、そう呼べる。この果実が、千秋がいなくなった傷を抉るものではなく、千秋がいなくなった傷を埋めるものと思えるようになったから。
「……はい」
果実は頷くと、しばらくそのまま俯いていた。顔を上げると、僅かに笑顔のような。どうせこれも幻覚だと光は自分に言い聞かせて、布団に潜り込み、枕に顔を埋めた。
翌日起きると、薬が効いたためか熱はすっかり下がっていた。人にうつしてはいけないから、あと二日は家で安静にしていなければならない。
昼間、まだ重い体を横たえて、ぼんやりとテレビを眺めていると、ついつい居眠りしてしまう。昼間のワイドショーから夕方のワイドショーへ、流れるニュースにほとんど変わりはない。いつもは興味を持ってみているグルメ特集も、今日は興が乗らない。
何もしないまま時間が経つのは早くて、気が付くとすっかり日が落ちて、外は真っ暗になっている。
果実がコンビニで買ってきてくれたゼリーを夕食にして、光はベッドに座っていた。昼間眠りすぎて、夜になっても一向に睡魔はその気配を見せない。家を出ることはできないが、意識だけははっきりしている。地獄はここからだった。
千秋にフラれたという事実が、光の腹の上に、重くのしかかる。告白して、はっきりフラれたのならまだましだ。
だが、クリスマス・イブ当日、彼女は何も言わずに姿を見せなかった。フラれたよりもなお重い。存在を拒絶されたような気分になっていた。気分というよりも、実際にそうだったのだろう。
誰かに愚痴りたい気分だった。体調が良かったらどうするだろう。誰か昔の友達でも呼んで、愚痴っただろうか。
元々友達は少なかった上に、大学を卒業して、就職してからは、激務薄給で遊んだ記憶は全然なかった。その上、今は無職だ。人を誘うには少々気まずい。
そんな状況で、果実が、千秋と名づけた果実がいてくれたことは、この上もなく幸運だった。果実は話を聞いてくれる。アドバイスなんて高等なことはできなくても、うんうんと頷いて、話を聞いてくれるのだ。それ以上に、慰めになることなどなかった。
「俺ね、フラれたんだ。好きだった人に」
だったと過去形にするのに抵抗があるほどに、今もまだ千秋への気持ちは生きている。
「クリスマス・イブにさ、デートに誘ったら、来てくれなかった……」
図書館を駆けずり回った時の記憶もまだまだ真新しすぎて、思い出と呼ぶには早く、未だ現在進行形だった。
「好きだったんだ……君によく似ていて」
真っ直ぐに自分を見ている果実の顔は、やはり千秋によく似ている。千秋があと十歳も年を取ったら、きっとこんな顔になるに違いない。
「彼女は繋がりを求めていて」
時間という縦軸、人と人という横軸、千秋は両方に繋がりを求めていた。
「俺も誰かと繋がりたくて」
自分と千秋は、似ているんだ。そう思っていた。
「でも、本当はそうじゃなかったみたいだ」
それは間違いだった。
「繋がれたらいいなって、思ったのに……彼女はそう思ってなかったみたいだ……初めから、迷惑だったのかもしれない」
何もなかった、これからも何もないと思っていた日々に光が差した。その光は、自分にしか見えていない、まやかしだったのだ。幻だ。
ベッドの上で膝を抱えていると、涙が滲んできた。フラれて泣くなんて、子供じゃあるまいし。自分でもそう思うのだが、感情の波を鎮めることは容易ではない。恋愛に関しては、今日日の子供の方が経験値を積み重ねているかもしれないと、心の中で言い訳してみる。
「その人は、何かのっぴきならない理由があって、来られなかったのかもしれません」
果実はそう言った。
「千秋……さん?」
千秋と呼ぶと決めた果実が、自分を慰めるようなことを言った。そのことに、光は驚いた。果実が人を気遣っている。
千秋はそっと、ベッドで膝を抱える光に近づくと、覆いかぶさるようにして、背中から抱きしめた。そして、ポンポンと優しく頭を撫でた。まるで子供をあやすように。
「きっとその人が来なかったのは、あなたのせいではありません。その人に行けない理由ができてしまって、来られなかっただけなんです。だからきっとその人も、あなたに会えなかったことで、苦しんでいます」
気休めだ。意地悪く言い返してやりたくなる。しかしもう、光は言葉を発することはできなかった。ボロボロと涙がこぼれて、何も言えず、ただ、膝にかかる布団に顔をうずめて、うんうんと、果実の、千秋の言葉に頷くことしかできなかった。
そうしてずっと、泣いていた。胸につかえていたものをすべて吐き出して、光は千秋に寄り添った。傍にいてくれなかった千秋ではなく、今ここにいてくれる千秋に。
泣いて泣いて、泣きつかれた光は、気がついたら眠りに落ちていた。夢に見たのは、幸福な自分だった。千秋と共に笑いながら歩く、そんな夢。千秋の笑顔なんて見たことないのに。二人並んで歩いていると、不意に千秋は駆け出した。
待ってよ。光は追いかけた。千秋が振り向く。そこにいたのは、果実の千秋だった。一瞬で歳を取ってしまったのかと錯覚した。しかし、すぐに千秋とは別の千秋だと気がつく。
光はそれを、不幸な夢だとは思わなかった。ハッピーエンドではないけれど、決定的なバッドエンドではない。夢の中では強がらず、素直にそう思うことができた。
一晩明けた。いつの間にか眠ってしまっていた自分の体には、きちんと布団がかけられていて、それに気がつくと、光はすぐに千秋を探した。もちろん、果実の千秋だ。
千秋は本棚の本を読んでいた。読んでいたのは『よく分かる世界史』だった。日本史選択だった光が、遅ればせながら世界史を勉強しようと思って買った本だ。
歴史に興味があるのだろうか。いや、自分の部屋にある本が、歴史物ばかりなだけだと、あの千秋とこの千秋の共通点を探そうとするのを、自分で諌めた。
「おはようございます」
「おはよう」
何気ない挨拶も、光にとっては貴重なものだった。
気遣いがあることもそうだが、ただ傍にいてくれることがありがたい。体はまだ違和感が若干残っているが、動かせないことはない。千秋に対して、所有者としての権利を行使して、果実本来の用途で使用することはできるようになっていたが、そうする気はもはや失せていた。
ただ今年いっぱい、そばに居てくれればそれでいいと思うようになっていた。
その日一日を穏やかに過ごし、そしてまた、次の日がやってくる。
もう人にインフルエンザをうつす心配がなくなったので、ハローワークに行くことにした。就職に対するモチベーションは下がっていたが、家には待っていてくれる人がいる。そう思うと、穏やかな気持ちでいることができた。正確には、人ではないのだが。
もし、果実の千秋がいてくれなければ、自分の心がどれだけ荒れていたか。光には果実の千秋に対する感謝しかなかった。これがもし、千秋でない果実を買っていたのなら、きっと、体調が戻り次第気の向くままに犯して、そして生ごみとして捨てていたに違いない。そして、最悪の気分で新年を迎えていた。想像に難くなかった。
何か、感謝の気持ちを伝えたいと感じていた光は、今年最後のハローワークの帰り道、何か果実の千秋にあげられるものはないかと、商店街を覗いてみた。
商店街とはいっても、並ぶ店は全国チェーンの服屋だとか、本屋だとか。本ならどうだろう。果実とは眠らないものらしく、自分が寝ている時はいつも千秋は本棚の本を読んでいるようだった。
千秋の期限は迫っているが、本なら千秋がいなくなった後、自分が読むこともできる。そう考えると寂しくなって、光は本屋を素通りした。
なら何がいいか。装飾品か。やはり、いなくなった後のことを考えると。食料品。いや、果実は食べ物を口にしない。
そんなことを考えていると、果実である千秋に、与えられるものはなかった。気落ちしながらも、なんとなく商店街を見て回る。光の足は、メガネ屋の前で止まった。
足が自然と吸い寄せられてしまう。店内を見て回る。目につくのは、メタルフレームのメガネばかり。まだ、自分の気持ちが、図書館で出会った千秋に引きずられている。
思えば、千秋に出会うまで、クリスマス・イブにトラウマを植え付けてくれた相手のことを、いつまでも引きずっていた。きっと自分は、また次のトラウマを植え付けられるまで、千秋のことを引きずるのだろう。トラウマは新しいトラウマで上書きされるのだということを、知ってしまった。
ふと、目が止まったメタルフレーム。それは、千秋がかけていたものとよく似ていた。このメガネ屋は安価で質のいいメガネを売る店だ。テレビでCMもやっているし、大きな駅には大抵支店がある。千秋がかけていたものとまったく同じということも、ありえなくない。
そんなことをぼんやりと考えていた光の意識が次にはっきりした時には、光はそのメガネの会計を済ませていた。光は我ながら、その行動を理解できなかった。凄まじい未練だ。
度の入っていないメガネが入った紙袋を手に、光は家に帰ることにした。これ以上商店街にいては、また何か、余計なものを買ってしまうかもしれない。
結局、果実である千秋に渡せるようなものは、何一つ買えなかった。
家に帰る。外から見ても自分の部屋に電気が付いているというのは、なんだか安心感があった。鍵を回して、第一声。
「ただいま」
光はメガネの紙袋を玄関に置いて、六畳一間に戻ってきた。
「おかえりなさい」
ただいまは、いつもなんとなく口にしていた。おかえりなさいを聞くのは、久しぶりだ。それこそ、実家に帰った時以来聞いていない。そういえば、前の正月に帰ったきり、実家には帰っていない。今年は帰る気になれなかった。せめて、再就職できるまでは。
「ただいま」
千秋の顔を見ながら今一度。鞄を床に置きながら本棚をチラと見ると、配置が変わっているような気がした。
近くの弁当屋に寄って買ってきた弁当を、テーブルの上に広げた。まだ温かい。普通の食事は久しぶりだから、なるべく刺激の少ないものをと選んだのり弁を食しながら、千秋にどの本を読んだのか聞いてみる。何気ない会話をしながらの食事は、誰もいない部屋で食べていた時よりも、ずっと美味く感じる。
食事の後、のんびりしてから風呂に入る。着替えは全部、浴室でした。全裸を見られるのが恥ずかしい。相手は果実だというのに、ついついその見た目から擬人化してしまう。
夜になり、ベッドで横になり、床に正座する千秋の姿を見る。朝よりもさらにやつれた気がする。期限はあと三日と少し。無理もない。
「あの……」
千秋が口を開いた。
「何?」
光が聞き返すも、千秋は口ごもる。果実にも逡巡はあるのだと、光は千秋の次の言葉を待つ。
「……あなたは、しないのですね」
「しないってのは?」
「私を、おもちゃとして扱わないのですね」
千秋の方からそんなことを言われるとは、思ってもみなかった。言葉に詰まる。
「あぁ……うん。もう夜遅いし」
もう寝る時間だと、それを言い訳にする。果実に対して、そんなことをする必要があるのかは分からないが。
「そうですか」
平坦な声が本当に平坦なのか、光にはもう分からなくなっていた。人に気遣いができる存在に感情がないわけがない。ただ平坦なだけに、その声に籠められた感情の種類が分からない。
「もう遅いから、電気消すね」
「はい」
「そっちの卓上ライトなら、つけてても大丈夫だから、本読んでていいよ」
「はい」
パソコンデスクの卓上ライトをつけてやって、椅子を引く。ここに座っていいよという意思表示として。千秋は頷き、本を選んで椅子に座った。
千秋が本に集中するのを待って、光は布団の中に隠れるようにして、携帯をタップした。
インターネットで検索をかける。検索ワードは『果実 使用 方法』だ。千秋を性玩具にする方向に気持ちを持っていくことができなくなっていたのは事実だったが、果実の利用の方法を知らないというのも事実だった。
聞いたことはある。しかし、どこをどうすればいいのかは知らない。コロッケを作るときに、じゃがいもを潰してパン粉をつけて揚げるということは知っていても、揚げ物をするには、具体的にどんな用意をして、どんな調子で何分間揚げればいいのかは知らない。それと同じようなことだった。
検索結果はほとんど無限とも思えるくらいに、膨大な量だった。とりあえず、その一番上に出てきたものを見てみることにする。
どうやら、初心者向けからある程度果実を利用したことのある者が、次のステップに進む手助けをするところまで、幅広い利用者に向けた情報サイトのようだ。光はもちろん、初心者向けのコーナーを見る。
どうやって行為に及ぶのか。果実に性器はない。だから、男性型の果実と行為をする女性、もしくはそういった趣味の男性は、果実に男性器を模したもの、つまりディルドやバイブなんかをつけさせて、行為に及ぶ。
では、女性型はどうするか。性器がないということは、穴があるところに穴がないということだ。穴がなければ、できない。ならば、穴を作るしかない。その穴はどうやって作るのか。
専用の道具も売られてはいるらしいが、果実を利用したことのない光はそんなもの持っていない。そんな時、何を使って穴を開ければいいのか、そういったことまで、サイトには記されていた。
それは、果実の股の、もし人間の女性であったら陰部があるはずの場所に、果物ナイフを突き立てて、穴を開けるというものだった。
穴のサイズが小さければ、果物ナイフの刃物としての効力を存分に発揮させろとのことだ。ぐっと刃を押し当てて、傷を広げるのだ。
果実にナイフを刺せば、そこからは果汁が出てくる。それは透明で、ベタベタして甘い。傷口から溢れでた果汁をすするのが好きという人もいるが、サイトには風呂場で穴を開け、果汁の出が落ち着くのを待つのがいいと書いてあった。そうすれば、ベッドやシーツが汚れない。
ちなみに、風呂場で果物ナイフの置き場に困ったり、置き場所があっても危険だと感じた時には、果実の体の目立たない場所や、行為に及ぶのに邪魔にならない場所に突き刺しておけば安全だと注釈があった。
そんなこと、千秋にできるだろうか。ナイフを突き立てるなんて真似。千秋を傷つけるような真似。
ますます、千秋と行為に及ぶ気持ちが失せていく。
本を読む千秋の横顔を盗み見た。やはり、恋した千秋によく似ている。姿勢なんてそっくりだ。
このまま千秋の期限が来るまで、一緒に居られればいい。千秋に失恋した苦しみを和らげてくれた千秋に、感謝の意味も込めて、せめて楽しく過ごしてもらいたい。光は目を閉じて、明日もまた穏やかに過ごせるようにと願った。
着ていた服は、ぐっしょりと汗に濡れていて、不快だ。具合の悪さは横這いといったところで、少し寝たくらいでは回復しそうにない。まだ、意識が朦朧としている。
「千秋さん……」
枕から顔を上げると、そこに千秋がいた。光の部屋の本棚にあったであろう本に目を落としている。
そんなわけない、いるわけない。光が目やにで滲んだ目を擦ると、視界がはっきりしてきた。
そこにいたのは千秋ではなく、さきほど購入した果実だった。当然だ。
果実は慌てた様子で、本を元に戻した。別に構わないのにと、段々と覚醒してきた意識の中で、光はそう思った。
「これ」
果実が差し出したのは、缶コーヒーだった。
眠る前に飲み物を買ってきてと頼んだ結果がこれだった。果実のチョイスにセンスを求めること自体間違っているのかもしれない。そもそも、きちんと商品を指定しなかった自分が悪いのだと、ありがたくそれを飲むことにした。一気に飲み干す。コーヒーとはいえ、水分は水分だ。体に染み渡る。
「あの、もう一回飲み物買いに行ってもらいたいんだけど。そこの自販機で」
「はい」
お釣りで返ってきた小銭を、もう一度果実に渡す。
「今度はスポーツドリンクをお願い。商品名言わなくても分かる?」
「はい」
果実がそう頷くので、信じることにする。玄関を出て行く果実を見送って、光はシャワーを浴びることにした。汗を流して、服を着替えた方がいい。激しい立ちくらみを感じながらも、光は服を脱ぎ、なんとか風呂場に辿り着き、極寒の浴室に震えながら蛇口をひねった。
簡単にシャワーを浴びて部屋に戻ると、果実は座って光を待っていた。
「はい」
差し出したのは、スポーツドリンク。間違いなく買ってきてくれた。だが問題がある。光は全裸だ。思わず下半身に手をやって、ぶら下がるそれを隠した。
が、光は考える。物である果実に対して、恥じらう必要があるのかと。そんな必要はないはずなのだ。そういう風に考えなければ、果実の目の前で体を拭くことができなかった。
体を拭いて、上下スウェットに着替えると、気分はいくらか良くなった。しかし、具合が良くなったわけではない。
「ごめん、しばらく寝るから。適当に本、読んでていいよ」
光は本棚を指差して、布団をかぶる。枕元にはティッシュを。凄まじい勢いで、鼻水が精製されていた。喉も痛い。うんざりだ、と光は鼻をかんで、ゴミ箱に投げ入れた。
「はい」
果実は本棚をちらっと見て、答えた。表情の乏しい顔がいくらか心配そうに見えた。果実でも人の心配をするのか、それとも光の願望が見せた幻覚か。そのどちらでも構わないと、光は布団に潜り込み、胎児のように丸まった。
結果から言って、光はインフルエンザに罹患していた。死ぬ思いで近くの内科医院に行き、診断された結果だ。
思い当たる節といえば、毎日不特定多数の人が訪れる図書館に通っていたこと。ハローワークで、という可能性もある。とにかく、数日は安静にしていなければならない。
光は、果実を購入したことを、心から幸運だと思っていた。一人暮らしで高熱が出るのは、かなり辛い。死ぬかもしれない、というのが、冗談に思えなくなってくるのだ。
果実は果実だから、そこまで高度なこと、例えばお粥を作ったりだとか、そういうことはできなかった。しかし、商品名を書いてお金を渡せば、近くのコンビニで買い物をしてきてくれる。それだけでもありがたかった。
「千秋さ――間違えた。ありがとう」
コンビニの袋をテーブルに置く果実のことを、千秋と呼びかけた。これでもう、何回目が数えるのも面倒なくらいに間違えていた。
「構いません」
平坦な声でそう言う果実の顔は、買ったときよりも、幾分歳を取って見えた。千秋に似てはいるが、僅かずつ、千秋の面影から離れていく。
「じゃあ、もういっそ、千秋って呼んでいい?」
千秋から離れていくから、そう呼べる。この果実が、千秋がいなくなった傷を抉るものではなく、千秋がいなくなった傷を埋めるものと思えるようになったから。
「……はい」
果実は頷くと、しばらくそのまま俯いていた。顔を上げると、僅かに笑顔のような。どうせこれも幻覚だと光は自分に言い聞かせて、布団に潜り込み、枕に顔を埋めた。
翌日起きると、薬が効いたためか熱はすっかり下がっていた。人にうつしてはいけないから、あと二日は家で安静にしていなければならない。
昼間、まだ重い体を横たえて、ぼんやりとテレビを眺めていると、ついつい居眠りしてしまう。昼間のワイドショーから夕方のワイドショーへ、流れるニュースにほとんど変わりはない。いつもは興味を持ってみているグルメ特集も、今日は興が乗らない。
何もしないまま時間が経つのは早くて、気が付くとすっかり日が落ちて、外は真っ暗になっている。
果実がコンビニで買ってきてくれたゼリーを夕食にして、光はベッドに座っていた。昼間眠りすぎて、夜になっても一向に睡魔はその気配を見せない。家を出ることはできないが、意識だけははっきりしている。地獄はここからだった。
千秋にフラれたという事実が、光の腹の上に、重くのしかかる。告白して、はっきりフラれたのならまだましだ。
だが、クリスマス・イブ当日、彼女は何も言わずに姿を見せなかった。フラれたよりもなお重い。存在を拒絶されたような気分になっていた。気分というよりも、実際にそうだったのだろう。
誰かに愚痴りたい気分だった。体調が良かったらどうするだろう。誰か昔の友達でも呼んで、愚痴っただろうか。
元々友達は少なかった上に、大学を卒業して、就職してからは、激務薄給で遊んだ記憶は全然なかった。その上、今は無職だ。人を誘うには少々気まずい。
そんな状況で、果実が、千秋と名づけた果実がいてくれたことは、この上もなく幸運だった。果実は話を聞いてくれる。アドバイスなんて高等なことはできなくても、うんうんと頷いて、話を聞いてくれるのだ。それ以上に、慰めになることなどなかった。
「俺ね、フラれたんだ。好きだった人に」
だったと過去形にするのに抵抗があるほどに、今もまだ千秋への気持ちは生きている。
「クリスマス・イブにさ、デートに誘ったら、来てくれなかった……」
図書館を駆けずり回った時の記憶もまだまだ真新しすぎて、思い出と呼ぶには早く、未だ現在進行形だった。
「好きだったんだ……君によく似ていて」
真っ直ぐに自分を見ている果実の顔は、やはり千秋によく似ている。千秋があと十歳も年を取ったら、きっとこんな顔になるに違いない。
「彼女は繋がりを求めていて」
時間という縦軸、人と人という横軸、千秋は両方に繋がりを求めていた。
「俺も誰かと繋がりたくて」
自分と千秋は、似ているんだ。そう思っていた。
「でも、本当はそうじゃなかったみたいだ」
それは間違いだった。
「繋がれたらいいなって、思ったのに……彼女はそう思ってなかったみたいだ……初めから、迷惑だったのかもしれない」
何もなかった、これからも何もないと思っていた日々に光が差した。その光は、自分にしか見えていない、まやかしだったのだ。幻だ。
ベッドの上で膝を抱えていると、涙が滲んできた。フラれて泣くなんて、子供じゃあるまいし。自分でもそう思うのだが、感情の波を鎮めることは容易ではない。恋愛に関しては、今日日の子供の方が経験値を積み重ねているかもしれないと、心の中で言い訳してみる。
「その人は、何かのっぴきならない理由があって、来られなかったのかもしれません」
果実はそう言った。
「千秋……さん?」
千秋と呼ぶと決めた果実が、自分を慰めるようなことを言った。そのことに、光は驚いた。果実が人を気遣っている。
千秋はそっと、ベッドで膝を抱える光に近づくと、覆いかぶさるようにして、背中から抱きしめた。そして、ポンポンと優しく頭を撫でた。まるで子供をあやすように。
「きっとその人が来なかったのは、あなたのせいではありません。その人に行けない理由ができてしまって、来られなかっただけなんです。だからきっとその人も、あなたに会えなかったことで、苦しんでいます」
気休めだ。意地悪く言い返してやりたくなる。しかしもう、光は言葉を発することはできなかった。ボロボロと涙がこぼれて、何も言えず、ただ、膝にかかる布団に顔をうずめて、うんうんと、果実の、千秋の言葉に頷くことしかできなかった。
そうしてずっと、泣いていた。胸につかえていたものをすべて吐き出して、光は千秋に寄り添った。傍にいてくれなかった千秋ではなく、今ここにいてくれる千秋に。
泣いて泣いて、泣きつかれた光は、気がついたら眠りに落ちていた。夢に見たのは、幸福な自分だった。千秋と共に笑いながら歩く、そんな夢。千秋の笑顔なんて見たことないのに。二人並んで歩いていると、不意に千秋は駆け出した。
待ってよ。光は追いかけた。千秋が振り向く。そこにいたのは、果実の千秋だった。一瞬で歳を取ってしまったのかと錯覚した。しかし、すぐに千秋とは別の千秋だと気がつく。
光はそれを、不幸な夢だとは思わなかった。ハッピーエンドではないけれど、決定的なバッドエンドではない。夢の中では強がらず、素直にそう思うことができた。
一晩明けた。いつの間にか眠ってしまっていた自分の体には、きちんと布団がかけられていて、それに気がつくと、光はすぐに千秋を探した。もちろん、果実の千秋だ。
千秋は本棚の本を読んでいた。読んでいたのは『よく分かる世界史』だった。日本史選択だった光が、遅ればせながら世界史を勉強しようと思って買った本だ。
歴史に興味があるのだろうか。いや、自分の部屋にある本が、歴史物ばかりなだけだと、あの千秋とこの千秋の共通点を探そうとするのを、自分で諌めた。
「おはようございます」
「おはよう」
何気ない挨拶も、光にとっては貴重なものだった。
気遣いがあることもそうだが、ただ傍にいてくれることがありがたい。体はまだ違和感が若干残っているが、動かせないことはない。千秋に対して、所有者としての権利を行使して、果実本来の用途で使用することはできるようになっていたが、そうする気はもはや失せていた。
ただ今年いっぱい、そばに居てくれればそれでいいと思うようになっていた。
その日一日を穏やかに過ごし、そしてまた、次の日がやってくる。
もう人にインフルエンザをうつす心配がなくなったので、ハローワークに行くことにした。就職に対するモチベーションは下がっていたが、家には待っていてくれる人がいる。そう思うと、穏やかな気持ちでいることができた。正確には、人ではないのだが。
もし、果実の千秋がいてくれなければ、自分の心がどれだけ荒れていたか。光には果実の千秋に対する感謝しかなかった。これがもし、千秋でない果実を買っていたのなら、きっと、体調が戻り次第気の向くままに犯して、そして生ごみとして捨てていたに違いない。そして、最悪の気分で新年を迎えていた。想像に難くなかった。
何か、感謝の気持ちを伝えたいと感じていた光は、今年最後のハローワークの帰り道、何か果実の千秋にあげられるものはないかと、商店街を覗いてみた。
商店街とはいっても、並ぶ店は全国チェーンの服屋だとか、本屋だとか。本ならどうだろう。果実とは眠らないものらしく、自分が寝ている時はいつも千秋は本棚の本を読んでいるようだった。
千秋の期限は迫っているが、本なら千秋がいなくなった後、自分が読むこともできる。そう考えると寂しくなって、光は本屋を素通りした。
なら何がいいか。装飾品か。やはり、いなくなった後のことを考えると。食料品。いや、果実は食べ物を口にしない。
そんなことを考えていると、果実である千秋に、与えられるものはなかった。気落ちしながらも、なんとなく商店街を見て回る。光の足は、メガネ屋の前で止まった。
足が自然と吸い寄せられてしまう。店内を見て回る。目につくのは、メタルフレームのメガネばかり。まだ、自分の気持ちが、図書館で出会った千秋に引きずられている。
思えば、千秋に出会うまで、クリスマス・イブにトラウマを植え付けてくれた相手のことを、いつまでも引きずっていた。きっと自分は、また次のトラウマを植え付けられるまで、千秋のことを引きずるのだろう。トラウマは新しいトラウマで上書きされるのだということを、知ってしまった。
ふと、目が止まったメタルフレーム。それは、千秋がかけていたものとよく似ていた。このメガネ屋は安価で質のいいメガネを売る店だ。テレビでCMもやっているし、大きな駅には大抵支店がある。千秋がかけていたものとまったく同じということも、ありえなくない。
そんなことをぼんやりと考えていた光の意識が次にはっきりした時には、光はそのメガネの会計を済ませていた。光は我ながら、その行動を理解できなかった。凄まじい未練だ。
度の入っていないメガネが入った紙袋を手に、光は家に帰ることにした。これ以上商店街にいては、また何か、余計なものを買ってしまうかもしれない。
結局、果実である千秋に渡せるようなものは、何一つ買えなかった。
家に帰る。外から見ても自分の部屋に電気が付いているというのは、なんだか安心感があった。鍵を回して、第一声。
「ただいま」
光はメガネの紙袋を玄関に置いて、六畳一間に戻ってきた。
「おかえりなさい」
ただいまは、いつもなんとなく口にしていた。おかえりなさいを聞くのは、久しぶりだ。それこそ、実家に帰った時以来聞いていない。そういえば、前の正月に帰ったきり、実家には帰っていない。今年は帰る気になれなかった。せめて、再就職できるまでは。
「ただいま」
千秋の顔を見ながら今一度。鞄を床に置きながら本棚をチラと見ると、配置が変わっているような気がした。
近くの弁当屋に寄って買ってきた弁当を、テーブルの上に広げた。まだ温かい。普通の食事は久しぶりだから、なるべく刺激の少ないものをと選んだのり弁を食しながら、千秋にどの本を読んだのか聞いてみる。何気ない会話をしながらの食事は、誰もいない部屋で食べていた時よりも、ずっと美味く感じる。
食事の後、のんびりしてから風呂に入る。着替えは全部、浴室でした。全裸を見られるのが恥ずかしい。相手は果実だというのに、ついついその見た目から擬人化してしまう。
夜になり、ベッドで横になり、床に正座する千秋の姿を見る。朝よりもさらにやつれた気がする。期限はあと三日と少し。無理もない。
「あの……」
千秋が口を開いた。
「何?」
光が聞き返すも、千秋は口ごもる。果実にも逡巡はあるのだと、光は千秋の次の言葉を待つ。
「……あなたは、しないのですね」
「しないってのは?」
「私を、おもちゃとして扱わないのですね」
千秋の方からそんなことを言われるとは、思ってもみなかった。言葉に詰まる。
「あぁ……うん。もう夜遅いし」
もう寝る時間だと、それを言い訳にする。果実に対して、そんなことをする必要があるのかは分からないが。
「そうですか」
平坦な声が本当に平坦なのか、光にはもう分からなくなっていた。人に気遣いができる存在に感情がないわけがない。ただ平坦なだけに、その声に籠められた感情の種類が分からない。
「もう遅いから、電気消すね」
「はい」
「そっちの卓上ライトなら、つけてても大丈夫だから、本読んでていいよ」
「はい」
パソコンデスクの卓上ライトをつけてやって、椅子を引く。ここに座っていいよという意思表示として。千秋は頷き、本を選んで椅子に座った。
千秋が本に集中するのを待って、光は布団の中に隠れるようにして、携帯をタップした。
インターネットで検索をかける。検索ワードは『果実 使用 方法』だ。千秋を性玩具にする方向に気持ちを持っていくことができなくなっていたのは事実だったが、果実の利用の方法を知らないというのも事実だった。
聞いたことはある。しかし、どこをどうすればいいのかは知らない。コロッケを作るときに、じゃがいもを潰してパン粉をつけて揚げるということは知っていても、揚げ物をするには、具体的にどんな用意をして、どんな調子で何分間揚げればいいのかは知らない。それと同じようなことだった。
検索結果はほとんど無限とも思えるくらいに、膨大な量だった。とりあえず、その一番上に出てきたものを見てみることにする。
どうやら、初心者向けからある程度果実を利用したことのある者が、次のステップに進む手助けをするところまで、幅広い利用者に向けた情報サイトのようだ。光はもちろん、初心者向けのコーナーを見る。
どうやって行為に及ぶのか。果実に性器はない。だから、男性型の果実と行為をする女性、もしくはそういった趣味の男性は、果実に男性器を模したもの、つまりディルドやバイブなんかをつけさせて、行為に及ぶ。
では、女性型はどうするか。性器がないということは、穴があるところに穴がないということだ。穴がなければ、できない。ならば、穴を作るしかない。その穴はどうやって作るのか。
専用の道具も売られてはいるらしいが、果実を利用したことのない光はそんなもの持っていない。そんな時、何を使って穴を開ければいいのか、そういったことまで、サイトには記されていた。
それは、果実の股の、もし人間の女性であったら陰部があるはずの場所に、果物ナイフを突き立てて、穴を開けるというものだった。
穴のサイズが小さければ、果物ナイフの刃物としての効力を存分に発揮させろとのことだ。ぐっと刃を押し当てて、傷を広げるのだ。
果実にナイフを刺せば、そこからは果汁が出てくる。それは透明で、ベタベタして甘い。傷口から溢れでた果汁をすするのが好きという人もいるが、サイトには風呂場で穴を開け、果汁の出が落ち着くのを待つのがいいと書いてあった。そうすれば、ベッドやシーツが汚れない。
ちなみに、風呂場で果物ナイフの置き場に困ったり、置き場所があっても危険だと感じた時には、果実の体の目立たない場所や、行為に及ぶのに邪魔にならない場所に突き刺しておけば安全だと注釈があった。
そんなこと、千秋にできるだろうか。ナイフを突き立てるなんて真似。千秋を傷つけるような真似。
ますます、千秋と行為に及ぶ気持ちが失せていく。
本を読む千秋の横顔を盗み見た。やはり、恋した千秋によく似ている。姿勢なんてそっくりだ。
このまま千秋の期限が来るまで、一緒に居られればいい。千秋に失恋した苦しみを和らげてくれた千秋に、感謝の意味も込めて、せめて楽しく過ごしてもらいたい。光は目を閉じて、明日もまた穏やかに過ごせるようにと願った。
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