緋色の鬼と月檻の花

椿灯夏

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月檻の少女

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両親の顔も知らない。そもそも自分には家族がいるのか、も。


家族ーー少女にはそれがどんな存在なのか想像もつかない。誰かと一緒に話したり、触れあうことを夢にはみるけど。



誰かに傍にいてほしい。


誰でもいい、この世界では恐れられているような者でも。


この深い孤独を埋めてくれるものならーー少女は緋色の月に祈るように、願う。



それは奇跡か狂気か。少女に何かが、語りかけてきた。



“ーーその想いに偽りはないな?それが真実なら、お前がオレの願いを叶えてくれるなら、叶えてやる”



普通なら迷ったりするのかもしれない。でも少女には、何もない。この世界に大切だと思えるものは一つも、ない。なら答えはーー決まっている。



「ええ。もちろんよ」


“契約成立だな”


ーーパキン


突如音がした。何かがひび割れたような。

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